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早稲⽥⼤学⼈間科学部 公募制学校推薦⼊学試験 FACT 選抜 Fundamental Academic Competency Test 2次選考(筆記):「論述試験」 サンプル 2016 年 6 ⽉ 公開 早稲⽥⼤学⼈間科学部

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早稲⽥⼤学⼈間科学部

公募制学校推薦⼊学試験 FACT 選抜 ̶ Fundamental Academic Competency Test ̶

2 次選考(筆記):「論述試験」

サンプル

2016 年 6 ⽉ 公開

早稲⽥⼤学⼈間科学部

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早 稲 ⽥ ⼤ 学 ⼈ 間 科 学 部 で は 、 公 募 制 学 校 推 薦 ⼊ 学 試 験 “ FACT 選 抜 ”

(Fundamental Academic Competency Test)を、2017 年 4 ⽉⼊学者向け⼊試

より新たに導⼊します。 “FACT 選抜” では、学融合的な教育・研究を推進する当

学部への⼊学者に期待される “学術的探究のための基礎的な能⼒” を「1次選考

(書類審査)」と「2次選考(論述および⾯接試験)」を通じて総合的に評価しま

す。

このたび,2016 年 2 ⽉に先⾏して公開されております「事前課題」のサンプル

に続き、「2次選考(論述試験)」のサンプル*を公開しましたので、 “FACT 選抜”

への出願** を検討される上での材料としてご活⽤ください。

複雑化する現代の諸問題に対するソリューションを提供するための、学融合的

な学究を共に担う、未来の同僚となるべき皆さんの挑戦をお待ちしています。

* 公開されるサンプルは、 “FACT 選抜” における「2次選考(論述試験)」の出題の概要やねらいをお伝

えすることを⽬的として作成されたものであり、実際の出題とは形式・分量等において異なる場合がありますことをご了承ください。

** 試験の詳細に関して記載される⼊試要項および出願書類等は、2016 年 6 ⽉下旬以降に⼈間科学部 Webサイト(http://www.waseda.jp/fhum/hum/)にて公開の予定です。

公募制学校推薦⼊学試験(FACT 選抜) 2 次選考(筆記):「論述試験」サンプルの公開につきまして

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n “FACT 選抜” において求める⼒

早稲⽥⼤学⼈間科学部では、既存学問領域の枠内では扱いきれなくなりつつある現代の

諸問題に対して、諸科学の融合によるソリューションを提供するための研究・教育活動を⾏

っています。この⽬的を達成するため、早稲⽥⼤学⼈間科学部が新たに実施する “FACT 選

抜” においては、⽂系・理系の区別を問わず、科学に対する親和性と、探究する姿勢を有す

る⼊学者を強く求めます。

あらゆる科学的知⾒は、(1)「仮説の構築」と(2)「実験や観察による検証」、および、そ

れらを踏まえた(1́ )「仮説の再構築」という営みの循環・反復によって発展すると考えら

れます。この営みを途切れさせることなく推進するためには、理科的な発想ないしは現実世

界の法則性を利⽤して創意⼯夫する⼒と、実験・観察を正確に遂⾏するための技術や⽅法、

そして⾼度な思考⼒と忍耐⼒が要求されます。

この科学の営みは、多くの場合、単なる⽂献的な知識の習得のみでは完遂することはでき

ません。特に「実験や観察による検証」の部分で、⽣じている事象を、主観や先⼊観、思い

込みにとらわれずに鋭敏に知覚する⼒、そして、それを客観的なデータに落とし込む⼒が要

求されます。

加えて、この営みから得られる成果としての科学的な知⾒は、公表されることによって初

めて広く世の中に貢献する公共的な知識へと昇華します。そのように知識が共有化される

ためには、複雑な現象を簡潔にわかりやすくまとめ、表現するための確かな国語⼒の基礎が

必要です。とりわけ、「⼈間科学」を標榜する融合型の学問領域においては、異分野の専⾨

家や、必ずしも専⾨的知識を持たない⼀般の⼈々との知識の共有にもとづく協働が重要で

あり、複雑なことをわかりやすく、しかし過度に単純化することなく伝える⼒が期待されま

す。

“FACT 選抜” において求める⼒と 2 次選考(筆記):「論述試験」のねらい

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n 2 次選考(筆記):「論述試験」のねらい

上記の前提に⽴ち、特に “FACT 選抜” の「事前課題」においては、「実験や観察による検

証」のために必要な、「⽣じている事象を、主観や先⼊観、思い込みにとらわれずに鋭敏に

知覚する⼒、そして、それを客観的なデータに落とし込む⼒」について、重点的に確かめま

す。これは従来型の試験制度では評価することが難しかった能⼒であり、しかし同時に、当

学部が⼊学者に強く期待する能⼒でもあります。

さらに、この「論述試験」においては、⽂系・理系を問わず、⼈間科学部における学びの

ために必要な “5つの⼒” (対話の⼒、論理の⼒、表現の⼒、分析の⼒、省察の⼒)1 につ

いて、提⽰された題材に対する取り組みを基盤として、総合的に確かめたいと考えます。

“FACT 選抜”の「論述試験」には、 必ずしも“唯⼀の正解”が定まらない問題が多く含ま

れています。したがって、“FACT 選抜”を受験される皆さんは、

・ “5つの⼒”を駆使しつつ

・ 誰もが納得できると考えられる解答案を⾃⾝の⼒で創り出し

・ それを合理的で説得⼒のあるかたちとして表現する

ことが求められます。

1 対話の⼒ Communication、論理の⼒ Logic、表現の⼒ Expression、分析の⼒ Analysis、省察の⼒Reflection のそれぞれの頭⽂字(C.L.E.A.R.)をとって、これを現代社会の諸問題に対する“⼈間科学的ソリューション”を提供するために必要な“5つの⼒”(=クリアにする⼒)と考えています。

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2 次選考(筆記):「論述試験」 ̶ サンプル ̶

試験時間:120 分

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n ⼤問 1

事前課題(「マシュマロチャレンジ」に関する予備実験・および本実験)においてあなたが観察した「タ

ワー」のうち、もっともマシュマロの位置が⾼かったものについて、以下の指⽰に従い、解答欄2にそのお

およその形状を図解しなさい。

・ タワーを構成する材料(スパゲッティ、ひも[たこ⽷]、テープ、マシュマロ)について、それぞれ区別

できるように⼯夫して描きなさい。

・ 図を補うために、⾔葉や⽂章による説明を⾏ってもよい。

なお、作成された解答については、「芸術的な観点からの絵としての上⼿さ」よりも「図解としての役割、

すなわち、描かれた図解を⾒た第三者が、それを元にして、図解されている対象物を実際に再現する場合

における容易性」という観点から評価する。

2 解答⽤紙サンプルの公開はありません。

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⼤問 2

次に⽰す会話⽂(教員、⼤学院⽣、学部学⽣の、実験室での会話)を読み、指⽰に従って⼩問に答えなさ

い。

教員:学部の学⽣たちの課題に出した「マシュマロチャレンジ」のレポートはもう集まってるかな?

⼤学院⽣:はい。いくつか提出されていますよ。写真、ご覧になりますか?

教員:(「マシュマロチャレンジ」で作成された「タワー」の写真を⾒ながら)良くできてるね。だいたい 60 cm くらいのタワーは作れているようだね。

学部学⽣:ぼくたちの班も 60 cm 超えでした!

⼤学院⽣:最⾼で 75 cm のものがありますね。

教員:初めてでこれだけ作れるのだからすごいね。でも、皆、あまり「ひも」を使っていないねえ。

⼤学院⽣:「ひも」はむしろ使おうとしない⽅がいいのではないですか? 「ひも」の使い途ばかり考えていた班はそれに時間をとられてしまってよい結果が出ていなかったように⾒られましたが。「ひも」が材料に⼊っているのは出題者の「罠だ」と⾔っていた班もありましたね。

教員:確かに、制限時間のあるゲームで⼀定の成績を収めようとするなら、有効な使い途の思い浮かばない材料に対するこだわりはいったん捨てるのも⼀つの戦略かもしれないね。

やっぱり、⼀回のチャレンジだけだと、「ひも」の上⼿な活⽤⽅法まで考えるのは難しいかなあ。でも、「ひも」を使うことも⼗分に考えられるはずなんだよ。

たとえば、この写真のタワー、すごいでしょ?

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Needle Tower II, 1969 作者:Kenneth Snelson 所蔵:Kröller-Müller Museum, Otterlo, Netherlands 素材:アルミ・ステンレス鋼 ⼨法:30 × 6 × 6 m 写真:Kenneth Snelson 出典:Kenneth Snelson (2013). Art and Ideas, p.16.

Web Publication. (Retrieved from http://kennethsnelson.net/KennethSnelson_Art_And_Ideas.pdf)

Needle Tower II を調整する Kenneth Snelson 写真:Katherine Snelson 出典:Kenneth Snelson (2013). Art and Ideas, p.25.

Web Publication. (Retrieved from http://kennethsnelson.net/KennethSnelson_Art_And_Ideas.pdf)

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学部学⽣:おー!!

⼤学院⽣:30 m ですか。かなりの⾼さですね。周りの⽊より⾼そうです。2 枚⽬の写真を⾒ると、作者との対⽐で⼤きさが実感できますね。

教員:⾦属製の棒が⾦属製の細いケーブルで繋がれた構造になっているから、棒が空に浮かんでいるみたいに⾒えるよね。こういう構造は「テンセグリティ」と⾔うんだ。思想家であり建築家でもあったバックミンスター・フラーは、「テンセグリティ」を「張⼒の海に浮かぶ、圧⼒の島々」とたとえているね。

⼤学院⽣:「テンセグリティ」ですか。綴りは tensegrity でいいですか?

学部学⽣:Wikipedia にも出てますね。

Tensegrity, tensional integrity or floating compression, is a structural principle based on the use of isolated components in compression inside a net of continuous tension, in such a way that the compressed members (usually bars or struts) do not touch each other and the prestressed tensioned members (usually cables or tendons) delineate the system spatially. The term tensegrity was coined by Buckminster Fuller in the 1960s as a portmanteau of "tensional integrity". The other denomination of tensegrity, floating compression, was used mainly by Kenneth Snelson. [Wikipedia: The Free Encyclopedia より抜粋. 記事の更新⽇時: 2016 年 4 ⽉ 17 ⽇ 20:54 (UTC), Retrieved from https://en.wikipedia.org/wiki/Tensegrity]

____ 単語リスト structural: 構造的な principle: 基本原理 based on : に基づく isolated: 独⽴した component: 要素 compression: 圧縮⼒ inside: の内側 net: 網 continuous: 連続した tension: 張⼒ compressed members: 圧縮⼒のかかる部材 bar: 棒 strut: ⽀柱 prestressed: 〔あらかじめ〕⼒を加えられた tensioned member: 張⼒のかかる部材 cable: ケーブル tendon: 腱 delineate: 輪郭を描く system: システム/系 spatially: 空間的に term: ⽤語 was coined: 〔新しい語として〕つくられた Buckminster Fuller: 〔⼈名〕バックミンスター・フラー portmanteau: 複数の⾔葉の⼀部が組み合わされてできた⾔葉。混成語。かばん語 integrity: 統合 denomination: 呼称 Kenneth Snelson: 〔⼈名〕ケネス・スネルソン

⼤学院⽣:検索早いね(笑)。でも、Wikipedia は便利だけど、書かれていることを鵜呑みにしてはダメ

だから気をつけてね。あと、うちの研究室のレポートを書くときには使っちゃだめだからね。

教員:Wikipedia の記述は必ずしも正しくない場合もあるんだけど、これは良さそうだね。でも、もう少し専⾨性の⾼い本や論⽂などでも調べた⽅がいいよ。

学部学⽣:では、こんなのはどうですか?

教員:これは Snelson の資料だね。さっき⾒た写真も、実はこの資料に載っていたものなんだ。せっかくだから、少し読んでみようか。

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Early X-Piece, 1948 素材: ⽊・ナイロン ⼨法: 29 x 4.5 x 4.5 cm 出典:Kenneth Snelson (2013). Art and Ideas, p.21. Web Publication. (Retrieved

from http://kennethsnelson.net/KennethSnelson_Art_And_Ideas.pdf)

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This work was a rudimentary example of a principle for which Fuller later coined the word “tensegrity” (a combination of the words tension and integrity). Essentially, it refers to structures composed of bars or tubes that do not touch and are held in place by tension cables. (中略) The essence of tensegrity is flexibility—things maintain their form through the outward push of the compression tubes and the inward pull of the tension cables. As a result, the tubes, which in a more conventional sculpture would form a rigid armature, here never touch one another. The resulting structures will bend, rather than snap, when subjected to pressure. [Eleanor Heartney. (2013). Forces made visible. In Kenneth Snelson, Art and Ideas. Web Publication. (Retrieved from http://kennethsnelson.net/KennethSnelson_Art_And_Ideas.pdf )

___

単語リスト work: 作品 rudimentary: 初期段階の principle: 原理 coined:〔新しい⾔葉を〕作る essentially: 本質的には refer to: ⽰す composed of: 〜から成る tube: 管 flexibility: 柔軟性 maintain: 維持する form: 〔名詞〕形態, 〔動詞〕形作る As a result: 結果として conventional: 従来型の sculpture: 彫刻〔ここでは材料を組み合わせて⽴体的に制作された作品〕 rigid: 固い armature: ⾻組み bend: たわむ snap: 折れる subjected to: 〜にさらされる

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学部学⽣:うーん。この部分を読んだ感じだと、僕たちの班が作った「タワー」は、「テンセグリティ」とは⾔えないかもしれないなあ。(スマートフォンで撮影した写真を出して)これなんですけど、どうですか?

⼤学院⽣:ぎりぎりで踏ん張ってる感じだね。

教員:これだと、スパゲティの端と端を束ねるために「ひも」で縛っているだけだから、この「ひも」は「テンセグリティ」の構成要素の⼀つである ʼtension cableʼ の役⽬を果たしているとは⾔いにくいね。

⼤学院⽣:せっかく「テンセグリティ」について教わったのだから、次に作るときは「ひも」の有効な使い⽅を考えるのがいいかもね。

学部学⽣:そうします! 後で班のメンバーで試作してみようかな。今度また持ってきますね。

教員:楽しみにしているよ。⾝の回りのものを参考にするのもよいかもね。さっきの写真の例は芸術作品だったけれども、広い意味では「テンセグリティ」の⼀種と考えられるものはごく⾝近に⾒られるものなんだ。私たちのこの⾝体も「テンセグリティ」だと主張する説もあるんだよ。その場合、たとえば⾻がスパゲティで、筋⾁や腱が「ひも」になるかな。

⼤学院⽣:私たちの⾝体や、その他のものの構造が「テンセグリティ」であることにメリットはあるのですか?

教員:同じ⼤きさのものを作るとしたら、「テンセグリティ」は他の構造に⽐べてとても少ない材料で済むんだ。結果として、⼤きな構造をとても軽く作ることができるというメリットがあるね。ただし弱点もあって、それは全体が相互に繋がって強度を出していることと関係しているんだけど、それについては⼀度考えてみるとおもしろいよ。

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⼩問 2-1

上記の会話⽂やその中で提⽰された資料を参考にしながら、「テンセグリティ」について、5 ⾏程度の⽇

本語の⽂章で説明しなさい。

⼩問 2-2

⼤問 1 で図解したタワーの構造は「テンセグリティ」であると⾔える否かについて、その理由と共に 5

⾏程度の⽇本語の⽂章で説明しなさい。

⼩問 2-3

会話⽂中の下線部( )に⽰した、私たちの⾝近にあるもののうち広義のテンセグリティ(「テンセグ

リティ」あるいは「テンセグリティに類するもの」)の実例として、どのようなものが考えられるか。その

実例を 1 つ⽰し、かつ、あなたがそれをテンセグリティであると考える根拠について説明しなさい。なお、

解答⽂字数に指定は無いが、解答は解答欄の中におさめること。また、説明のために図を補助的に⽤いて

もよいこととする。

解答において、あなたが例⽰したものが厳密な意味での「テンセグリティ」の定義から外れたものであ

ったとしても、あなたがそれをテンセグリティと考える根拠の説明によっては評価されることがある。

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n ⼤問 3

次に⽰す会話⽂(教員、⼤学院⽣、学部学⽣の、実験室での会話)を読み、指⽰に従って⼩問に答えなさ

い。

教員:「マシュマロチャレンジ」のタワーの⾼さについて集計するレポートだけど、受講⽣からの提出状

況はどうかな?

⼤学院⽣:はい。7割くらいは受け取っていますよ。

学部学⽣:失礼します。授業の課題について質問があるのですが、今よろしいですか?

教員・⼤学院⽣:うん。何かわからないこと、あったかな?

学部学⽣:はい。わからない、というか、この表の集計の仕⽅についてちょっと確認しておきたいことがありましたので。課題の中に、各グループで作ったタワーの⾼さの平均値を求めるものがあったのですが、タワーが倒れて記録が「0.0 cm」になってしまったグループもあって、これを平均値の計算に含めるかどうか迷っています。先に課題を提出した友達は、「0.0 cm」ということはつまり「記録なし」ということだから、集計に含めない⽅が良いという意⾒だったのですが、私はちょっと気になってしまって。

表 「マシュマロチャレンジ」の結果

テープの⻑さ:最⼤ 90 cm; ひも[たこ⽷]の⻑さ:最⼤ 90 cm; 材料として使⽤可能なスパゲティの本数:20 本

「折れたスパゲティ」:作業ミスによって折れた場合のみ集計

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教員:いわゆる「外れ値」や「異常値」の問題だね。なかなかよいところに気がついたねえ。こういった他と⽐較して⼤きく違っている異常なデータの取り扱いについては、実験や観察を⾏う上では避けられない問題なんだよ。それで、君はどうするのがよいと考えるのかな?

学部学⽣:「マシュマロチャレンジ」の記録としては 0 cm だったとしても、実際にはタワーを⽴てようとしたという事実はあるのだから、それを「無かったこと」にするのはおかしいと思うんです。

それに、たとえば 0 cm の記録も含めて、すべての班のタワーの⾼さの平均値を求めると 49 cmくらいになるのですが、0 cm の記録を除外して平均値を求めると 54 cm くらいになり、ずいぶん良い感じの成績に⾒えてしまうのもひっかかると⾔うか… これって、何か、嘘をついているような気がしてしまって…

教員:なるほど、なるほど。君が気になっているところは、とっても重要な部分と思うよ。

⼤学院⽣:今、提出されているレポートでは⾼さ 0 cm の記録も平均値の計算に含めている例がほとんどですが、0 cm の記録を除外しているレポートもいくつかありました。でも、少なくともこの課題に限って⾔えば、0 cm の記録を平均値の計算に含めるかどうかについては、書き⽅次第だと思います。つまり、0 cm を除外して平均値を計算した場合でも、「0 cm の記録は無効と考え、これを除外して平均値を求めた」ことをしっかりとレポートに明記すれば、それはそれで成⽴すると思うんです。先⽣、いかがですか?

教員:うん、そうだね。しっかりと集計の⼿続や前提を明記すれば、それは少なくとも「嘘」や「だまし」にはならないんじゃないかな。誠実な対応だし、レポートを読む側にはデータ集計の⽅針が伝わるわけだから問題にはならないと思うよ。

科学は、誰かが書いた科学的なレポートを読む⼈たちがそこに書かれている記述を利⽤してさらに新しい知⾒を積み上げていくことで進んでいくんだよね。だから、科学的なレポートを書く⼈は、⾃⾝の提出するデータに責任を持てるように⼼がけるのが⼤事じゃないかな。

学部学⽣:わかりました。なんとかこのレポートは書けそうな気がします。

教員:よかった。じゃあ、もう少し深く考えてみようか。 この表に「3.0 cm」っていう記録があるよね。これはきっとタワーが横倒しになったのに、それ

を律儀に記録して申告した結果だと予想するんだけど、これの扱いはどうすればいいと思う? すでに提出されているレポートで 0 cm の記録を除外しているものでも、この 3 cm の記録は除外せず、平均値を求めるための計算に含めているみたいなんだよね。「0 cm か、そうでないか」ということで考えれば、3 cm は 0 cm ではないわけだから平均値の計算に含めることになるかもしれないとしても、「タワーが倒れたか、倒れていないか」で⾔えば、3 cm は倒れた結果の記録のはずだから、むしろ 0 cm と同じように「タワー倒壊=失敗」のカテゴリーになるわけで、ここで集計の⽅針に齟齬が⽣じてしまうじゃない? かといって、集計する⽴場の⼈が「3.0 cm」の記録をこっそり「0.0 cm」に書き換えるのは、「3.0cm」の事実をなかったことにする「嘘」になってしまうね。

それから、この表には「記録忘れ」と書かれた、いわゆる「⽋損値」もあるよね。こういったデータの⽋損があったときは、その⽋損したデータだけを集計から除外する⽅法だけでなく、その「⽋損値」がある班のデータを全部まるごと除外する⽅法もあるんだけど、今回のデータではそうすると実質的には 9 班分しかデータが使えなくなるわけで、なかなか厳しいよね。

さて、どうしようか。

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⼩問 3-1 表から読み取れるデータの傾向について、(1)その特徴についてグラフで表し、また、(2)10 ⾏〜20 ⾏の

⽇本語の⽂章で説明せよ。なお、解答においては以下の指⽰に従うこと。

・ 班の⼈数が同じものどうしでグループ分けし、グループ間での違いについて検討せよ。その他、あな

たが重要だと思う観点からの分析を含めてもよい。

・ グラフは、「グラフ解答欄」に記載し、⽇本語での説明は、「説明欄」に記載せよ。なお、図が複数とな

る場合は各図に固有の図番号(「図 1」「図 2」...等)を付し、⽂章での説明において⾔及する際はその

図番号を使⽤すること。

・ 「外れ値」や「異常値」、「⽋損値」の扱いに関するあなた⾃⾝の⽅針を明確にしつつ、その⽅針を採

⽤する根拠についても説明の中に含めること。

⼩問 3-2

あなたが実験者となる場合、表中の網掛部 X としてどのような分析項⽬を含めるのがよいと考えるか。

「事前課題」での経験を踏まえ、その分析項⽬を含める上でのあなたの仮説、および予想される結果と併

せて、10 ⾏程度の⽇本語の⽂章で述べなさい。

[以下、余⽩]