第72号 - siset.or.jp ·...

40

Transcript of 第72号 - siset.or.jp ·...

Page 1: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)
Page 2: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

 第72号

●巻頭グラビア 写真で見る協会活動……………………………………………………  1●巻頭言地域の「生業」のための資産としての下水道 ………………………………………………北海道大学工学研究院教授 船水 尚行  3●特別企画「下水道資源市場」の開拓者たち ~GAIA参加研究者インタビューから見えること~……………………………………  4●行政フラッシュ平成29年度下水道事業予算のポイント …………国土交通省水管理・国土保全局下水道部下水道事業課課長 加藤 裕之 10●施設協/平成28年度全国提言活動の結果………………………………市場調査委員会 14●水環境と下水道大学での教育・研究・業務と下水道……………………………………………日高 平 18●シリーズ・技術調査報告下水道界のISOへの対応…………………………………………………………松尾 英介 22●リレーエッセイ「下水道ひとすじ」北海道から下水道広報活動を発信……………………………………………坂田 和則 26●シリーズ 水域ルポ神話世界からの清流を取り戻す ~三重県伊勢市・勢田川~………………………… 28●会員会社トピックス高効率水中ミキサ SMEシリーズ…………………………………新明和工業株式会社 30陸上設置型フラップゲート式防潮壁「neo…RiSe」……………………日立造船株式会社 31〈協会だより〉………………………………………………………………………………… 32〈編集後記〉…………………………………………………………………………………… 34●巻末グラビア 特別企画/「下水道資源市場」の開拓者たち……………………… 35        水域ルポ 神話世界からの清流を取り戻す ~三重県伊勢市~… 36●表紙の写真:ハウステンボスの夜景       撮影:亀田泰武

Page 3: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)
Page 4: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)
Page 5: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

3日本下水道施設業協会誌

地域の「生業」のための資産としての下水道

      北海道大学工学研究院・人間文化研究機構総合地球環境学研究所

教 授  船 水 尚 行

巻 頭 言

 日本における少子高齢化社会の到来や地方創生との関連の中で社会インフラの維持・更新の問題が議論されてきている。北海道に住む私には、この問題が生活実感を伴って認識され、石狩川流域圏上下水道システム研究会の活動を2011年より継続しているところである。一方、世界的にはサニテーションに関するMDGsの達成に失敗して、新たに定められたSDGsのゴールを達成するための取り組みが求められていると認識している。 西アフリカのブルキナファソでの5年間にわたるプロジェクトから私が学んだことの一つに、サニテーションが用意している「価値」が地域のヒトの価値観、コミュニティの価値観、国の価値観とうまく整合していないのではないか?という素朴な疑問である。そして、サニテーションを地域のヒトの価値の連鎖の中にどのように組み込んでいけば良いのかを考える必要性である。そこで、私たちは「サニテーション価値連鎖」という考えを用意した。これは、「排水やし尿を貴重な個人資産と捉える」、「処理はこの個人資産の価値を高める操作である」という発想のもと、サニテーションにより排水とし尿から灌漑用水と肥料を作り、

「農業生産の増加」➡「収入増加」➡「栄養状態の改善」➡「健康状態の改善」➡「農業生産の増加」という個人の価値ループを駆動する力をサニテーションに持たせることを発想した。そして、サニテーション設備を「生産手段・資産」として認識していただき、この資産への投資を促す金融・農業技術・設備企業に関わる価値の連鎖をデザインすることを試みた。残念なことに私たちが一緒に働いたブルキナファソの農村では、地方自治体の仕組みが機能しておらず、かつ、農業団体等も力が弱いため、サニテーションを「生業のための個人資産」として位置付ける方向で検討した。 話を石狩川に戻そう、石狩川流域の農村部では

地方自治体の力が弱くなっていくことが予想されている。また、下水道の経営の観点から、料金収入が維持管理費用の半分以下となるような状況も予想されている。このような状況では、アフリカの経験が生かされると考えている。それは、ヒトの価値観に注目し、地域のヒトの価値観や地域の価値観と下水道の価値のマッチングを図ることである。今の農村での課題は「生産者が『生産者』としての誇りを持てない状況にある」と認識している。生産者は農作物にある「ものがたり」を付加価値として売り、消費者からの感謝を得ることで「誇り」を獲得しようとしているのではないかと考えている。このような状況で、サニテーション(下水道)はどのような価値を用意していけば良いであろうか? 地域のヒトの「生業」に直接結びついた、「生業のための資産」として下水道を再構成していく必要があると考える。また、現在の下水道の資産は少し大きすぎるように感じている。身の丈にあった資産へ転換していく必要もある。地域の生業のための資産として、下水道が地域の中の価値連鎖に入っていくことが求められている。 下水道そのものも多様な価値の連鎖を作っている。この連鎖の中で地域のヒトが主要なアクターとなるべき必要性はすでに述べた。価値連鎖に関わる別のアクターとして、下水道施設の設計・建設・機器導入・維持管理をしているグループも忘れてはいけない。このグループは石狩川流域のある特定の農村だけでなく、日本や世界の下水道というフレームの中でも価値連鎖を作っている。地域の「生業」のための資産としてヒトの価値観という小さなスケールから世界という大きなスケールの中でどのような価値連鎖作りをするか、なかなか難しい課題である。

Page 6: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

特 別 企 画

4 明日の下水道 No. 72(2017.1)

飼料用米をなぜ下水処理水で

 私は土木工学分野の出身で、2010年に山形大学農学部に赴任するまで、農業との接点がありませんでした。農業に関わる研究を考える中で、これまでの専門知識が多少役に立つだろうと、下水処理水を用いた水稲栽培を研究テーマに選びました。最初に指導した学生が兼業農家の出身で、彼女から稲作のイロハを教えてもらえたことも幸運でした。彼女には今でも感謝しています。 初めは食用米を栽培していましたが、窒素の含有量が多い下水処理水で育てると草丈が高くなり倒れやすくなる点と、米粒に含まれるタンパク質が増えて味が悪くなる点で問題が見つかりました。そこで、3年目からは飼料用の品種に切り替えました。飼料用の水稲には茎が固く倒れにくい利点がある上に、タンパク質を多く含む米の方が飼料としての価値が高いため、上記の問題に気を揉む

ことなく、多量の処理水を水田に投入することができるわけです。

GAIA採択で成果のデモができる

 GAIAプロジェクトには2014年度に採択されました。飼料用米に切り替えて初めての収穫を迎えた時期であり、スムーズにプロジェクトを始めることができました。これまでの研究は順調で、外部との連携も積極的に進めています。実験に使う処理水は鶴岡市の下水処理場から提供を受けていますし、稲作の指導や農業従事者への情報発信という点ではJA鶴岡の協力を得ています。鶴岡市、JA鶴岡、山形大学の3者で共同研究に関する協定を結び、これを核とした勉強会も組織しました。勉強会では本技術の普及を図るとともに、処理水以外の下水道資源(熱や汚泥肥料など)の農業利用についても議論を重ねています。当初は大学構

 下水から資源・エネルギーを産み出す取り組みは、コンポストや再生水など昭和50年代から徐々に広がっているが、ここにきて、全国各地で新たな資源化を目指す動きが生まれている。国土交通省は2014(平成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(GAIAプロジェクト)を公募している。 今回は、GAIAプロジェクトのうち資源化テーマに参加した5人の先生方にお話を伺い、技術開発と並行して下水道の外に「下水道資源市場」をいかに創出するか、その取り組みが必須であることを教えて頂いた。                               (35頁に関連グラビア掲載)

「下水道資源市場」の開拓者たち~GAIA参加研究者インタビューから見えること~

1:農家に新たなビジネスチャンスを(下水処理水利用による飼料用米栽培に関する研究)

山形大学 農学部 食料生命環境学科 教授 渡部 徹 氏

Page 7: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

「下水道資源市場」の開拓者たち

5日本下水道施設業協会誌

内で水田模型を用いた実験を行っていましたが、このプロジェクトのおかげで、2016年度には下水処理場内に実験水田(5m×15m、2面)を整備することができました。これで実際の水田環境での実験が可能となり、農家の皆さんへの説得力が増しました。

農家の新たなビジネスチャンス

 今後は実験水田で収穫した飼料用米を、実際に家畜に食べさせることを予定しています。家畜が米の味にこだわりがあるかは分かりませんが、たとえ高タンパクで栄養価の高い米を収穫できたとしても、それを家畜が食べてくれなければ意味がありませんので。 下水道資源の出口(販売先)は、飼料用米を栽培する農家です。飼料用米を栽培する農家は現在、その収量に応じて国からの補助金を受け取っています。窒素とカリウムを多く含む下水処理水を使

うことで、肥料代を大きく削減できれば、農家にとって大きなインセンティブになることでしょう。さらに、高タンパク米を通常の飼料用米よりも高値で流通させることができれば、処理水を使った飼料用米の栽培は農家の新たなビジネスチャンスにつながると思っています。 もちろん、個々の農家のためだけでなく、都市と農村の間での物質循環に貢献できる社会技術でもあります。

学生にとっては新しい栽培方法

 研究室の学生は、普段の研究を頑張ってくれるだけでなく、田植えや稲刈りのイベントを盛り上げてくれます。また、授業などでこの研究の話をすると、他の研究室の学生も興味を示してくれるので、農学部の学生にとって処理水利用は、新しい栽培方法として印象深く映るようです。

多様な下水道資源を栽培へ

 これまで国土交通省の協力も得ながら、新潟県と連携し、下水道で発生する未利用資源・エネルギーの回収技術の開発に取り組んできました。そんな中、下水道資源を活用した植物栽培技術への関心が高まっており、既に取り組んできた技術開発の成果を活用することで、すべてを下水道資源で賄う植物栽培が可能ではないかと考え今回の研究に取り組みました。下水道資源の中でも特に下水熱(冷熱)や、二酸化炭素の利用が遅れており、処理水と合わせて植物栽培に有効利用できます。 研究を行うに当たっては、新潟県立植物園との連携を検討しました。同植物園は日本を代表する実験植物園のひとつで、植物栽培の技術評価や開発の方向性に発展性が得られると考えました。連携するには、植物園側に連携ニーズを探る必要が

あります。すると、冷水と二酸化炭素を豊富に使い、希少水草であるバイカモの人工栽培を目指すニーズがあることがわかりました。

下水道資源活用プラントを設置

 実験は、新潟県西川流域下水道の西川浄化センターに、エネルギー供給、熱供給、二酸化炭素供給、水循環利用の各設備、冷水活用施設と温室からなるプラントを設置して行っています。当初はバイカモの栽培ということでしたが、その後、ワサビ、イチゴの栽培も加わり現在、いずれも順調に生育しています。さらに、温室ではパッションフルーツ、マンゴー、バナナが栽培されています。今後は、構築された植物栽培環境を評価するとともに、スケールアップの可能性や農業利用の可能性も検討していくことにしています。

2:植物園で組み合わせ利用(下水道資源・エネルギーを最大限に活かした希少水草栽培および微細藻類培養・エネルギー生産)

長岡技術科学大学 環境社会基盤工学専攻 准教授 姫野修司 氏

Page 8: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

特 別 企 画

6 明日の下水道 No. 72(2017.1)

下水サイドが連携しニーズに応える

 本研究はある特定の植物や作物に適した植物栽培技術のための下水道資源の活用を検討するものではありません。あくまで、下水道資源がどう使えるのか、どのような使用効果があるかを検証することが目的です。つまり、下水道から作られる水、熱、二酸化炭素、電力を組み合わせ、最適に供給できることを確認し、植物栽培のニーズを拡大することです。 下水道資源を組み合わせ、余すことなく使う本研究は、「新下水道ビジョンン」で謳われている「水・資源・エネルギーを量的・質的に健全に循環させる社会の構築に貢献する」ことを体現するひとつと考えています。また、本実験プラント設置に

あたっては各先端技術を保有している企業と新潟県下水道課といった行政サイド、そして我々研究機関が連携しました。この連携により県立植物園のニーズに応え、植物園単独でできない研究を可能にしました。これも本研究の大きな意義です。

見せて新たなエンドユーザー開拓

 本研究では、市民の方々に「見せる」ことにもこだわっています。多様な植物を通年で観察できるようにした温室を、ミニ植物園のようにして開放しています。そして、温室を見に来た人が新たな下水道資源の活用法を見つけてくれる。そういったサイクルができることで、下水道資源の新たなエンドユーザーができることも期待しています。

3:MBR処理水から魚のえさ(下水を利用して培養した微細藻類による漁業飼料生産技術の開発)

中央大学 理工学部 人間総合理工学科 准教授 山村 寛 氏

MBR処理水に付加価値を

 MBR(膜分離活性汚泥法)で処理した水を使って藻類を培養し、高付加価値な魚貝類の養殖餌として利用するプロセスの開発に取り組んでいます。 MBRによって、藻類の培養に適したSSが少なく光の透過性が高い処理水を得ることができます。このような処理水は現在主流の活性汚泥法だけでは得ることができません。活性汚泥処理水を膜ろ過することでMBRと同等のSSが少ない水を得ることが出来ますが、省スペース化を望めるMBRの方が藻類の培養との相性が高いと考えています。研究に取り組んだきっかけは、水処理と処理水の価値について整理していた時に、下水処理水の市場価値があまりに低いことに気づいたことです。河川水は処理して水道や工業用水として提供することで水の市場価値は上がりますが、下水は処理しても水の市場価値が上がるわけではない。では何が下水処理のモチベーションとなっているのだろうか?このままだと、将来的に下水処理のモチベーションが失われてしまうのではないかと考え

た末に、下水処理水に価値をつける研究に取り組みました。

資源の売り込み先を見つけるも…

 培養した藻類を魚貝類の養殖産業へ提供することを検討しています。養殖によって生産される魚貝類は、価格の高いものから低いものまで幅広く存在しています。魚貝類の価格に応じて養殖餌の価格も決まることから、市場規模と価格のバランスを考慮した上で魚種を選ぶ必要があります。現在、養殖には魚粉や魚油などをブレンドした配合飼料が利用されていますが、世界的に養殖業者が増え、魚粉の供給が近年ひっ迫しています。そこで、魚粉の代わりに藻類を利用する低魚粉飼料の開発が水産業界で研究されています。 問題は水産業界の理解、特に安全性についてのコンセンサスです。漁業飼料には国の安全基準がありますが、GAIAプロジェクトで研究を進めた結果、飼料となる藻類を安全に培養する技術が確立できました。そこで、漁業飼料に関わる商社や

Page 9: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

「下水道資源市場」の開拓者たち

7日本下水道施設業協会誌

関連企業に我々が生産した藻類の利用について打診しましたが、「魚の病気が心配。下水で培養した藻類はなんとなく使いたくない」という反応です。

市場ニーズを大学へフィードバック

 現在、取り組んでいるのは稚ナマコの養殖飼料に藻類を活用することです。市場規模は小さく、日本で生産される稚ナマコ用であれば下水処理場が数個で足ります。しかし、ナマコは輸出額では真珠に次ぐ高級水産物で、中国を中心としてキロ

数万円で取引されています。我々が培養している藻類はナマコの成長を促進することが北里大学の笠井先生によって確認されており、ナマコ業者も大きな関心を寄せています。 下水道資源を活用した飼料は、作って終わりではありません。それを誰がどう使うのか、その先を考えなければなりません。この視点なくしては、下水道資源活用は開けないと思います。市場構造を把握し、それを大学の研究にフィードバックすることで、新しい切り口で研究・開発に向き合えるようになるのではないでしょうか。

4:下水処理場を地域再生の拠点に(消化汚泥の肥料利用に関する研究)

高知大学 教育研究部 自然科学系農学部門 教授 藤原 拓 氏

きっかけは農業関係者の視点

 下水道を中心に研究してきましたが、高知大学農学部に赴任し農学系研究者や農業関係者とのかかわりの中で、「いかに生産物の付加価値を高めるか」という生産者サイドの視点を得ることができました。一方で、農学系研究者は農産物から高付加価値になる一部分だけを取り出し、残りの大部分には無関心でした。私は環境工学を専攻してきたこともあり、物質収支に基づき全体最適を追求する工学系の視点と、付加価値を産み出す農学系の視点を組み合わせることで、未利用バイオマスのすべての部分に付加価値を見いだし、使い尽くせないかと思いました。 そこで、マイナスのものをゼロにするのではなく付加価値(プラス)を作るプロセスを見いだす。しかも、一部のプロセスからではなく、階段状に流れおちる滝(カスケード)のように、処理プロセスごとに付加価値を見いだし、処理過程全体で新たな価値が生み出されるシステムを作れないかと考えるようになったのです。

エネルギー+肥料利用

 現在、下水汚泥からエネルギーを回収するとと

もに、肥料も回収するシステムの構築と、その結果生じる付加価値を最大にするための研究に、GAIAプロジェクト「消化汚泥の肥料利用に関する研究」で取り組んでいます。 汚泥に含まれている有機体窒素(タンパク質やアミノ酸など)に着目し、分解性が異なる有機体窒素が下水汚泥にそれぞれどの程度含まれているのかを測定するとともに、消化や堆肥化などの汚泥処理過程で有機体窒素の分解性がどのように変化するかを評価しています。その結果により、下水汚泥から出来る肥料の性質を速効性・遅効性の観点から明らかにするというものです。 汚泥については未消化汚泥と消化汚泥で比較を行っています。これにより、消化ガスを取り出した後に堆肥化した汚泥肥料の性質が明らかになり、汚泥のエネルギー利用と肥料利用というカスケード利用の最適化を図ることができます。

求められる肥料づくりへ

 下水汚泥肥料の性質を明らかにするということは、農家の肥料ニーズに適切に応えることに近づいていくということです。この研究を通じて、将来的には有機体窒素を指標にして、出来上がる汚

Page 10: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

特 別 企 画

8 明日の下水道 No. 72(2017.1)

泥肥料の性質をコントロールできればと考えています。もしこれが実現すれば、下水処理場を肥料生産工場に代えることができます。処理場の運転方法を、肥料を利用する農家のニーズに合わせてコントロールできるようになる。つまり市場ニーズに合った、下水汚泥肥料を生産できるということです。 今まで、下水汚泥肥料が受け入れられなかったのは、農家のニーズに対応することができていなかった点もあったと思います。やはり使う人のニーズを把握し、それにこたえていくことが重要です。そして、この先には、地域のニーズに応えた

資源を生み出す工場としての下水処理場ができ、下水処理場が価値を生む地域再生拠点になるのではないでしょうか。

夢の実現への足掛かりを作る

 下水処理場を工場に、地域再生の拠点にと言うと、違和感を持たれるかもしれません。しかし、大学の研究者だからこそ将来の夢を語り、実現に向けての足掛かりを作ることができるのではないでしょうか。そんな気概を持って日々、研究に取り組んでいます。

5:きのこ栽培で汚泥に価値(下水汚泥を用いた高付加価値きのこの生産技術及びその生産過程で発生する廃培地・炭酸ガスの高度利用技術の開発)

鹿児島工業高等専門学校 都市環境デザイン工学科   教授 山内正仁 氏   

きっかけ

 下水汚泥の脱水ケーキをきのこ栽培用の培地栄養材として活用するとともに、きのこの生育過程で発する二酸化炭素の有効利用、そして、きのこ栽培後の脱水ケーキ培地の肥料化に取り組んでいます。 もともと地元の焼酎工場から発生する焼酎粕の有効利用に約20年前から取り組んでいました。その過程で、焼酎粕を原料にした育苗用ポットからきのこが生えてきたので、きのこの栽培を思いつきました。その後、長く焼酎粕で作った培地できのこを育てることに取り組んでいましたが、あるとき、下水汚泥も使えないかという話がありました。しかし、正直なところ、下水汚泥は汚い物で重金属も含んでいるかもしれないという悪いイメージしかなく、むしろ大丈夫かな?という思いでした。

下水汚泥に秘められたパワー

 下水汚泥にはきのこの子実体(可食部分)形成に必要なカリウムが少なく、そのままではきのこの栽培に向きません。そこで、カリウムが豊富な

焼酎粕と孟宗竹を混ぜることにしました。いずれも地元(霧島市)に豊富にあるバイオマスです。ミックスした下水汚泥培地は危険どころか、きのこの栽培日数が通常の48日から38日に短縮できたり、きのこのうまみやタンパク質が増したりと、効率よくおいしいきのこを作ることができる有用な資材であることが分かったのです。もちろん、霧島市に関しては、汚泥に含まれる有害物質は基準値を下回っているほか、利用する下水汚泥は121℃で乾燥加熱、消毒するため安全性に問題はありません。

広がる下水汚泥+きのこ

 きのこは、動物と同じく呼吸するのできのこをハウスで栽培すると、ハウス内の二酸化炭素濃度が2,000~6,000ppmと高濃度になります。ちなみに、大気中の二酸化炭素は平均で350~400ppmです。この高濃度二酸化炭素をパッションフルーツなど他の作物の栽培に活用し、高付加価値化を図ることができます。さらに、きのこはダイオキシンなど、難分解性物質を分解する特長を持っており、きのこを栽培した後の下水汚泥培地をさらに

Page 11: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

「下水道資源市場」の開拓者たち

9日本下水道施設業協会誌

下水道資源原材料化研究とマーケティング活動を同時に行うことで、下水道資源を原材料にする製品、事業が創出され、その上に下水道資源市場が創出される。

 下水道の外に「下水道資源市場」を創出する取り組みの必要性が見えてきた。市場創出のためには、各「下水道資源」がどのような性質を持ち、何にどれだけ使えるのか、原材料としての特性を明らかにしていくとともに、ニーズを調査し、その結果を、「下水道資源」の原材料化(製品化)研究にフィードバックしていくことが重要である。 一般向けテレビ番組や雑誌でも下水からの資源・エネルギー回収技術が紹介され、「下水道資源」の存在が少しずつ知られるようになった。しかし、まだ関心が高いとは言えない。関心を高める上で

インタビューから見えること「下水道資源」を活用することがどのくらいの価値、つまり金額になるかを示すことが重要なステップである。 この点について、国土交通省が昨年発表した生産性革命プロジェクトの中で、下水道のエネルギー活用や農業利用のポテンシャルが金額として初めて示された。下水汚泥からのエネルギー回収で、年間200億円相当の化石燃料エネルギーを置き換えることや、輸入リン10%を下水からのリンで置き換えれば約120億円に相当すると示されている。合計で320億円規模である。コストはこれからだが、大きなビジネスになるポテンシャルを秘めている。 「下水道資源」の原材料化(製品化)研究と需要の開拓、下水道外での市場創出活動を行い、かつてロータスプロジェクトで示されたように、具体的な金額目標が明示できれば「下水道資源市場」の創出に近づくことができよう。 各地で更にどんな資源が見つかり、実現して地域が笑顔になるか、わくわくである。

*   *   * 本企画の取材に当たって、お忙しい中、インタビュー、資料提供にご協力いただいた先生方に心から御礼申し上げます。

(担当:施設協:堀江、水道産業新聞:生地)

肥料化することで、下水汚泥由来肥料の不安、環境ホルモンや抗生物質含有を解消分解する可能性があります。下水汚泥肥料の安全性をさらに高め、普及させることに役立つはずで、下水汚泥が、段階的に付加価値を生みながら利用されるようにしていきたいと考えています。

新しいフィールドを作っていく

 研究には地元霧島市と農家がかかわっているほか、できたきのこの販売ということで、地場のスーパーが参加するなど、地域との連携を進めています。また、学生も興味を示しています。廃棄物を有価物に替える技術に興味を持っているようで、新しいものを創る、新しいフィールドを創るということに魅力を感じているのではないでしょうか。

Page 12: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

行政フラッシュ

10 明日の下水道 No. 72(2017.1)

1.平成29年度国土交通省予算の基本方針

 日頃から下水道事業の推進に多大なご理解ご協力をいただき、心からお礼申し上げます。 さて、この度平成28年12月22日に平成29年度政府予算案が閣議決定されました。国土交通省では、激甚化する水害・土砂災害や切迫する巨大地震等から国民の生命と財産を守り、国土強靱化の取組を推進するため、防災意識社会への転換を図りつつ、ハード・ソフトを総動員した防災・減災対策を推進するとともに、戦略的なインフラ老朽化対策等に取り組むことが求められています。また、今後の社会資本整備に当たっては、生産性向上を導く社会資本のストック効果を重視することにより、我が国の成長を支えていくことが重要です。ストック効果の高い公共投資により経済成長を図り、経済再生と財政健全化の双方を実現するため、必要な公共事業予算を安定的・持続的に確保しなければなりません。限られた財政資源の中での効率的な事業執行に向け、地域のニーズを踏まえつつ、情報公開を徹底して、投資効果や必要性の高い事業への重点化を進めるとともに、地域活性化にも資するPPP/PFIの推進等により民間資金やノウハウを積極的に活用することが必要です。 このような認識の下、国土交通省平成29年度予算においては、東日本大震災や熊本地震等による

「被災地の復旧・復興」を加速させるとともに、「国

民の安全・安心の確保」、「生産性向上による成長力の強化」及び「地域の活性化と豊かな暮らしの実現」の4分野に重点化し、施策効果の早期発現を図ることとしています。

2.平成29年度下水道事業関連予算案

 下水道事業においては、国土交通省の方針を踏まえ、防災・減災対策、老朽化対策等を含むアセットマネジメント、未普及地域の早期解消、民間活力の導入、下水道資源の利用等による生産性向上及び水ビジネスの国際展開といった施策を中心に、予算案に盛り込んでいます。 特に、官民連携等による効率的な防災・減災対策、広域化や統合により汚水処理の効率化を図る事業及びPPP/PFI手法を活用した事業については、新しい日本のための優先課題推進枠として推進しております。 ここで、国土交通省所管および他省庁所管の平成29年度下水道関連予算案について詳述します。 ① 社会資本整備総合交付金および防災・安全  交付金 地方公共団体が行う社会資本整備について、基幹的な事業や関連する社会資本整備、効果を促進する事業等を一体的に支援するものを計上しています。 また、防災・安全交付金により、「防災・安全」

平成29年度下水道事業予算のポイント

国土交通省水管理・国土保全局下水道部下水道事業課

 課長 加藤 裕之

Page 13: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

平成29年度下水道事業予算のポイント

11日本下水道施設業協会誌

 ⑤ その他 前述の各予算以外にも、下水道に関する他府省計上予算として、地方創生推進交付金※1,000億円(内数)を計上しています。 ※平成28年4月に地域再生法が改正され、内閣府において「地方創生推進交付金(まち・ひと・しごと創生交付金)」を創設。この中の「地方創生汚水処理施設整備推進交付金」において、汚水処理施設の整備を支援。

3.平成29年度下水道事業予算に関する新規事項

 等

 平成29年度下水道事業予算の新規事項について、下水道部では国土交通省の基本方針を踏まえ、安全・安心を守るための防災・減災、老朽化対策及び地域の活力向上・持続的な運営に向けた下水道整備に必要な予算制度の創設や現行制度の拡充を行います。 本稿では、平成29年度の新規施策を上手く活用していただくためにも、各施策の新規事項等をご紹介させていただきます。 ⑴ 社会資本整備総合交付金、防災・安全交付

  金及び下水道事業費補助

 ① 下水道総合地震対策事業の拡充(図-1) 下水道施設における耐震化の促進と、避難所等での衛生環境を確保するため、地震被害があった地域での耐震化や、地域防災計画に位置付けられた一定規模以上の避難所等でのマンホールトイレ設置について、新たに下水道総合地震対策事業の交付対象に追加します。(予算額:社会資本整備総合交付金および防災・安全交付金の内数) ② 特定地域都市浸水被害対策事業の拡充 近年頻発する局地的な大雨に対して、官民が連携することで早期に都市の浸水安全度を向上させ、

に対して重点的な支援を実施しており、下水道事業においては、主に①地震対策、②浸水対策、③老朽化対策、④合流改善対策を支援しています。 平成29年度における社会資本整備総合交付金及び防災・安全交付金は、表-1のとおりで、下水道事業に係る費用は、それぞれの内数となります。 ② 下水道事業関連予算 PPP/PFI等民間活力を活用し、下水道資源の利用等を推進するため民間事業者への直接支援等を行う民間活力イノベーション推進下水道事業、日本下水道事業団による代行制度(下水道事業費補助)、国が自ら技術実証を行う下水道革新的技術実証事業(下水道事業調査費)及び官民連携して地域の浸水対策を進めるため民間事業者への直接支援等を行う特定地域都市浸水被害対策事業(下水道防災事業費補助)等の推進を図るため、表-2のとおり必要な予算を計上しています。 ③ 沖縄振興公共投資交付金(内閣府) 沖縄振興特別措置法に基づき、沖縄の実情に即した事業の的確かつ効果的な実施を図るため、平成24年度に創設され、内閣府に計上しています。下水道事業のうち、対象となる事業は、県の流域下水道の一部および市町村の公共下水道の一部であり、平成29年度予算は670億円計上しており、下水道事業に係る費用はその内数となっています。 ④ 東日本大震災復興交付金(復興庁) 東日本大震災により著しく被害を受けた地域の復興を進めるため、平成23年度第3次補正予算より創設され、復興庁に計上しています。下水道においては、地盤沈下に伴う雨水排水施設の整備、新たなまちづくりに伴う管渠整備等が主な交付対象事業となっています。 平成29年度予算として、525億円計上しており、下水道事業に係る費用はその内数となっています。

表-1 下水道事業関係交付金       (単位:百万円)

区分

平成29年度予算額

平成28年度予算額 対前年度

倍率国費 国費

社会資本総合整備 1,998,694 1,998,566 1.00

 うち社会資本整備総合交 付金

893,958 898,332 1.00

 うち 防災 ・ 安全交付金 1,105,736 1,100,234 1.01

※下水道事業に係る費用は、この内数。

表-2 下水道事業関係補助金等  (単位:百万円)

区分

平成29年度予算額

平成28年度予算額 対前年度

倍率国費 国費

下水道事業費補助 1,206 1,091 1.11

下水道事業調査費等 3,929 4,084 0.96

下水道防災事業費補助 240 200 1.20

合計 5,375 5,375 1.00

Page 14: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

行政フラッシュ

12 明日の下水道 No. 72(2017.1)

図-2 下水道老朽管の緊急改築推進事業の延伸

より一層地域の生産性向上を図るため、特定地域都市浸水被害対策事業の対象地域を拡大するとともに、雨水浸透施設等を対象施設として追加します。(予算額:下水道防災事業費補助の内数) ③ 下水道老朽管の緊急改築推進事業の延伸(図  -2) 道路陥没や下水道機能の停止等による社会経済活動への影響を未然に防止し、国民の安全・安心を確保するため、布設から標準耐用年数である50年を経過した管渠の改築を支援する下水道老朽管の緊急改築推進事業を延伸します。(予算額:社会資本整備総合交付金および防災・安全交付金の内数) ④ 下水道地域活力向上計画策定事業の創設 下水道事業の広域化・効率化や下水汚泥のエネルギー・農業利用を計画的に進めるとともに、PPP/PFI手法の導入を促進するため、これらの取組の計画策定を支援する下水道地域活力向上計画策定事業を創設します。(予算額:社会資本整備

総合交付金および防災・安全交付金の内数) ⑤ 新世代下水道支援事業制度の見直し 下水道職員の減少や、施設のストック増加により維持管理体制の弱体化が懸念されるなか、昨今のICT技術の動向を踏まえ、現行の新世代下水道支援事業制度の支援メニューである「高度情報化型」の名称を「ICT活用型」とします。(予算額:社会資本整備総合交付金の内数) ⑵ 下水道事業費

 ① 地産地消型エネルギーシステムの構築に向  けた低コストなバイオマス活用技術(図-3) 地域から発生するバイオマスを活用した低コストで革新的なバイオマス活用技術について、実規模レベルで技術的な検証を行うことにより、地産地消型のエネルギーシステムを構築し、再生可能エネルギーの活用を促進します。 ② 徹底した省エネ社会の実現に向けた低コス  トな地球温暖化対策型汚泥焼却技術 徹底した省エネルギー社会の実現に向けた、低

図-1 下水道総合地震対策事業の拡充

完了

Page 15: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

平成29年度下水道事業予算のポイント

13日本下水道施設業協会誌

コストな地球温暖化対策型汚泥焼却技術について、実規模レベルで技術的な検証を行うことにより、省エネ化と環境負荷の低減を同時に実現します。 ③ 既設改造で省エネ・低コストに処理能力(量  ・質)を向上する技術 既存施設の改造で水処理施設の処理能力を質・量共に向上させ省エネ化を図る技術について、実規模レベルで技術的な検証を行うことにより、施設の増設なしでの設備更新や、処理場統合などの際の一時的な水量増への対応を、効率的かつ低コストに実現します。 ⑶ 行政経費(新規拡充事項)

 ① 下水道分野の水ビジネス国際展開経費(拡  充)【予算額:国費110百万円】 我が国優位の下水道技術の国際展開を促進するために、本邦技術の普及方策の検討、地方公共団体等との知見の共有や国際標準化の推進等を実施します。また、下水道整備の必要性や整備効果の啓発、現地のニーズに適合した技術開発等や現地での実証試験の支援を行うとともに、当該技術に関して国が基準・指針化を支援し現地基準への組入を促進します。 ② 下水道におけるPPP/PFIの導入に向けた検  討経費(拡充)【予算額:国費33百万円】 コンセッション導入に先行的に取り組むモデルとなる地方公共団体において、案件形成のための支援を行い実施方針や募集要項等の作成を行うとともに、導入に関する課題抽出と解決方策の検討を行います。また、導入促進に必要な情報等の調査・分析を行います。  ③ 施設管理計画と経営改善等検討経費(拡充)  【予算額:国費52百万円】         

 下水道事業の持続的な運営を確保するため、複数の地方公共団体からなる協議会の活用を含めた広域化・共同化等の検討を行うとともに、中小の地方公共団体でも活用できる簡易な収支見通しの推計モデルの開発等を行います。

4.おわりに

 防災・減災、老朽化対策や、未普及対策等、下水道事業が抱える課題は多岐にわたり、これらの課題を早期に解消し、持続的な下水道事業の運営を実現することは、国民の安全・安心を確保し、地域の活力を向上させるためにも極めて重要です。 国としてもこれらの課題に対応するため、平成27年5月に下水道法を改正したところですが、この改正を受けた取組をさらに促進していかねばならないと考えています。そのため、平成29年度予算においては、法改正も踏まえ、下水道事業のニーズに応える制度改正を行うとともに、引き続き必要な予算の確保に努めたいと考えています。平成29年度予算に関しては微増とはいえほぼ横ばいで、非常に厳しい状況に変わりなく、引き続き効率的な事業に予算を重点化する必要があります。 下水道関係者が笑顔になり、それを通じて地域の方も笑顔になる。これを念頭に、日本の下水道業界が一丸となり、下水道事業の必要性について各方面に発信し、住民をはじめ関係者に対して下水道事業への理解を一層深めていただけるよう努めてまいります。

図-3 地産地消型エネルギーシステムの構築に向けた低コストなバイオマス活用技術

Page 16: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

平成28年度全国提言活動の結果

14 明日の下水道 No. 72(2017. 1)

1.はじめに 平成28年度提言活動は、7月6日の国土交通省下水道部との意見交換を皮切りに、全国地方ブロックからの要請に基づき選んだ自治体を含む38ヶ所(25団体)を本部から訪問し、下水道設備をとりまく状況、提言事項をお伝えしながら意見交換を行いました。

2.下水道設備をとりまく状況・平成4~12年度には毎年3~5兆円の投資が行われた下水道ですが、その後投資が急減し、平成22年度以降は1.5兆円レベルが続いています。耐用年数が土木の1/3、15年程度とされる設備については、ピーク期以前のものを含め部品交換等一定の長寿命化を行ったとしても更新先延ばし設備が年々増えていると考えられます。・全国の設備工事の2/3は改築更新工事となっており、新設に比べ現場・工程が複雑化していること等から、半分以上で設計変更の必要性が生じています。設計変更が行われる割合はかなり増えましたが、変更が受付けられない事例もまだ見られます。案件は小型化が著しい一方、必要書類など間接業務は増大したままです。・発注時期は、第1四半期がわずかで、9、10月が発注のピークとなっていることから、業務としては年度後半集中が続いています。作業量の多くなる工期末は3月が圧倒的で、極端な集中状態が続いています。次頁の図-1 発注時期月別件数

(平成25~27年度)および図-2 引渡時期月別件数(平成25~27年度)を参照。・監理技術者の資格が経験年数を要することなどから、技術者の高齢化・減少が課題で、発注時期・工期末の集中、落札決定までの期間が、技術者活用の障害、コスト増要因となっています。・事業費は大幅減少し、事業費当たり業務量は大幅増の一方、企業への投資家からの利益確保要求は増大、生存競争は世界で厳しさを増しています。利益なき技術開発投資も困難になっています。

3.本年度の提言項目と主旨 会員アンケートによる課題を基に、以下3部構成としました(地方公共団体向け)。 1.全国地方公共団体の下水道事業に対する力強 い財政・制度面での後押し  ⑴ 社会資本総合交付金における下水処理設備  関連予算の確保 各地方公共団体で処理設備の改築・更新予算の確保ができていないという声を耳にします。老朽化が著しい現在、下水道主管部門には是非とも必要な予算の確保を期して頂きたいと思います。 ⑵ 農業集落排水やし尿の処理場受入れ等、下  水部門主導のアセット最適化 次に老朽化対策と同時に、今後ますます課題となる人口減少時代を見据えた処理区の統合や農集排やし尿の受入れ等によるアセットの最適化についてです。その実現には省庁や部門をまたいだ柔軟な対応が求められ、下水道部局がイニシアティブを取って、既存の処理施設を大いに有効活用していただきたいと考えます。会員各社も技術でそれに貢献してまいります。2.改正品確法及び「発注関係事務の運用に関す る指針」の遵守 改正品確法の主旨を理解し、担い手の実状に目を向け、発注者の利益とのバランスを図りながら、官民双方のウイン=ウイン関係を模索する地方公共団体も増えてきました。全ての地方公共団体がそのようになることを願いながら、昨年に引き続き、以下3点を中心に改正品確法遵守を要望しました。 ⑴ 工事の性格等に応じた入札契約方式の選択 当協会では、入札契約方式はその工事内容や達成目標に応じたものであるべきと考え、数年前から提言して参りました。本年度も協会の考える随契に適した事例を具体例などを紹介しながら要望しました。 ⑵ 施工時期の平準化推進 近年会員各社、技術者の効率的配置は大きな課

施設協 平成28年度全国提言活動の結果

一般社団法人 日本下水道施設業協会 市場調査委員会

Page 17: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

平成28年度全国提言活動の結果

15日本下水道施設業協会誌

題です。そこで工事の大小を問わず集中している工期を前倒しし、可能な小規模の工期末は8月に設定して頂くよう要望致しました。 ⑶ 適切な見積り査定の実施、及び、最低制限  価格の設定 3.実態に即した各種制度の見直し ⑴ 国に対する、改築・更新時代に即した積算  基準改定の要望 現在の使われている積算基準類は新設・増設時代に策定されたものが基本であり、改築・更新工事において様々な不具合が生じています。基準類

の変更は、当協会も数年前から要望して参りましたが、地方公共団体からも歩掛検討委員会や適正化会議等を通じて声を上げて頂くよう要望しました。 ⑵ 工事一時中止制度の実施徹底 昨今、土建工事の不調・不落を原因とした工事の停滞が頻発しており、会員への調査だけでも100件以上の事案がありました。延期期間はケースによりますが、長いものでは一年以上に及ぶものも多々ありました。会員各社、それにより余計にかかる諸々の費用(機器の保管費等)の精算や監理技術者の他工事への配置換えを実現するため

にも適宜「工事中止措置」を取って頂きたいのですが、実現していません。制度としては確立されており、適切な履行を要望しました。 ⑶ 過度な地元企業優遇措置の  是正 近年、地場育成の観点から総合評価案件において地元本社企業への優遇措置増が見られます。それ自体は理解できるのですが、会員企業が参加意欲を損なう大きな配点を地元企業に与えている地方公共団体に改善を要望しました。

4.国土交通省下水道部との意見 交換会の結果 森岡新下水道部長の就任後、最初の意見交換となりました。また、下水道部には今年度より各種意見交換の窓口となる「事業マネジメント推進室」が創設されました。 提言文は、地方公共団体向けの提言に対し、「1.力強い財政・制度面での後押し⑴交付金の大幅な増額と要望措置率の向上 2.発注指針の周知とフォロー、3.実態に即した各種制度見直し⑴工期延長における適切な設計変更の指導(積算基準への工期追加、工事一時中止の指導)⑵業務を円滑にする各種通達等」など国向けの表現となっています 協会からは多数の理事が出席し、全国の地方公共団体から昨今一番寄せられる意見である交付金措置率の向上を訴えるとともに、広域化や農集排受入れなどのアセット

図-1 発注時期月別件数(平成25~27年度)

図-2 引渡時期月別件数(平成25~27年度)

Page 18: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

平成28年度全国提言活動の結果

16 明日の下水道 No. 72(2017. 1)

見直しに下水道部の力強いイニシアティブを要望しました。併せて、改正品確法遵守や工事中止制度の活用など事業発注機関である地方公共団体の牽引をお願いしました。それに対し、下水道部より次のような意見やアドバイス、要望を頂きました。・予算措置率は地方公共団体の期待に応えられていないが、努力する。施設協の活動にも期待している。・広域化は骨太の方針にも謳われており、支援メニューを充実し、後押ししている。施設協にも案件形成での協力を期待する。その際には統合や広域化によってどのような恩恵があり、どのような絵姿になるのかを示すことが重要と考えている。・処理場の機械・電気設備工事の発注ガイドラインは作成を検討するが、施設協の協力をお願いする。・整備局企画部は各ブロックの発注者協議会を主催している。品確法遵守はそちらにも実状説明、意見交換を行ってみてはどうか。・最近処理場での事故が多く、安全対策に万全を期して欲しい。 これらの中のうちいくつかは継続的にフォローを行い、現在進行形で協議を行っています。また、全国ブロック提言を終えましたので、地方公共団体の声を下水道部に適宜フィードバックしていこうと考えています。

5.日本下水道事業団(JS)との意見交換会の結果 今年も昨年と同様、本社と東日本設計センター及び関東北陸総合事務所の三者にお集まり戴き、以下の大きく3項目を要望しました。また、全国

の総合事務所でも地域毎の実情を伺いながら同様の意見交換を行いました。1.不調・不落の回避に関する提言 工事の不調・不落の回避に向けて、機器単価、仮設費の見積り、土建との合体工事、小規模工事の8月工期等に関して、昨年に引き続き提言しました。これらは今後も当委員会にて考察を続けていく予定です。 2.入札契約制度に関する提言 改善に向けて⑴10月7日付けで国交省より出された事務連絡「工事の一時中止に伴う増加費用等の算定等について」の運用⑵競争参加申請書の簡素化、等を要望しました。3.その他 最後に、⑴落札候補者の早期公表と⑵発注図書のデータ化について要望しました。    上記要望を中心に意見交換を行い、活発な発言をいただきました。議論の結果を基に、今後担当部署との対話を重ねながら成果に向けたフォローを行っていきたいと思います。

6.全国各地での提言活動の結果1)予算確保・アセット最適化関連 要望に対する措置率が落ち、老朽化の改築が思うにまかせない地方公共団体がある一方、交付金が不足してもやるべきことは起債してでも行うという頼もしい地方公共団体もおられ、事業への姿勢は自治体それぞれですが、考えさせられました。増大するニーズに予算が追いつかない中、確保のために庁内を納得させるストーリーや説明能力を持つ人材がいる地方公共団体と、技術者の引退や配置転換等によりそのような人材が不足する地方

▲国土交通省との意見交換

Page 19: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

平成28年度全国提言活動の結果

17日本下水道施設業協会誌

▲地方公共団体との意見交換(大阪府)

公共団体とでは、たとえ同じような経営基盤の自治体であったとしても、将来下水道サービスの質に相当な開きが出て来るのではないか、あるいはもう既に相当な格差が存在するのではないかと感じました。それと関連して、都道府県と会話すると、市町村にはもう公共下水をやめて流域下水に参加したいと切望する自治体が散見されるようで、財源・人材不足から下水道事業は益々効率化(省人・省力・省コスト等)が要求され、中長期的には統廃合の時代へと移っていくと感じています。その際、農集排やし尿処理場の包含を視野に入れた下水主導のアセット最適化を実現していくには、人材が不足してくるとそのようなイニシアティブを取ろうとしても果たせません。地方公共団体の政策の立案や実現を補完する機能について我が協会でも数年前から議論してきましたが、一歩踏み出す日も近いのでは、と感じさせられました。2)改正品確法関連 今年も引き続き漸進的ながら前向きな取り組みが出てきていることは慶賀の至りです。予定価格の事後公表化(F市)や最低制限価格の引上げ(K市)。ダンピング防止を強化するため、低入札調査制度廃止と最低制限価格制度の導入実施(K市)。 これら地方公共団体の動きには我々担い手に対する敬意とパートナーシップを感じ取ることができます。当協会会員にとって、例えば共同実験等のパートナーを選ぶ際にこのような姿勢も重要な要素かもしれません。逆に憂慮すべき残念な事態としては、一定額を超える大規模の工事に対して最低制限価格制度を設けない(いわゆる底なし)入札制度を採用する自治体が未だにあることです。改正品確法の精神に沿わない行為と言わざるをえません。また、そのような規模の工事は新技術が採用された大規模のものもあります。そのような工事の受失注が価格要素にのみ左右されるようでは、技術開発に対する企業の投資意欲は大きく損なわれてしまいます。懸念を表明させて頂きましたが、発注手法や採用技術において他の自治体に対しての影響もあり、また会員企業にとり今後も大切な自治体であるため、訴え続けていきたいと思います。 一方、自治体から協会会員への注文として、現場代理人に対する各種法令順守指導やそれに向けた研修の充実を要望される自治体もありました。会員に周知し各社へ対応を促すようにしたいと思います。    3)各種制度の是正関連 改築・更新に適用する積算基準を現実に即した

ものに是正してもらうには、地方公共団体から声を上げて頂くことが最も肝要ですが、趣旨を理解頂く地方公共団体が多く、概ね賛同を得られました。時間のかかる課題とは思いますが、根気強くお願いしていくつもりです。工事の一時中止ですが、今年からの要望事項であり、こちらも直ぐに成果は難しいですが、国からの事務連絡もあり、今後委員会でも重点的に取り組んでいくつもりです。最後に地方公共団体の持つ「地場育成」という大方針にも、我々会員企業はどう見える化し、応えて行くのか。今後の課題として委員会で優先的に取り組んでいこうと思います。

7.最後に 今年は従来対象外としていた部署にも訪問し意見を伺いました。その結果、これまでとは違う視点での気付きや知見を得ることができ、望外の収穫がありました。これらを基に、次回の要望内容やアプローチの手法を考察して参ります。また昨年同様、改善を確約された事項についての定期的なフォロー、課題が発生した際の意見交換や要望は適宜行う予定です。これら検討と行動のサイクルを通じ、逆風下にある会員企業の体質強化の一助となれるよう努めて参りますので、苦言・提案・ご要望等ございましたら是非お寄せ願います。 最後になりましたが、本活動に貴重な時間を割いて意見を頂いた客先関係者の皆様と、提言日時調整や議事録作成等、活動をサポート頂いた全国ブロック幹事や会員の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

Page 20: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

水環境と下水道

18 明日の下水道 No. 72(2017.1)

1.はじめに

 大学教員の仕事といえば「教育・研究」ですが、現在下水道の関係者にお世話になりながら、教育・研究+業務に携わっております。茨城県つくば市にある独立行政法人(当時)土木研究所での勤務41ヶ月間を含めて、これまで学んできた下水道の魅力を、微力ですが学生に伝えたいと試行錯誤しております。その内容について紹介したいと思いますが、下水道現場で求められている内容にあっていないかもしれません。講義では何を教えるべきか、卒業論文ではどのような技術を身につけることが求められているのかなど、ご指導賜りたく、よろしくお願いいたします。

2.大学までで学んだ下水道

 初めて下水道を意識したのは、おそらく小学校の社会見学です。当時住んでいた神戸の下水道は、一部が合流式です。汚水と雨水が混ざって処理場へ流れている絵を見て、子供心に「なぜ混ぜるんだろう? 汚水を雨水で薄めていいのだろうか?」と不思議に思った覚えがあります。小学校の授業や見学先の処理場で説明してくれたのかと思いますが、算数理科より国語社会が苦手だったためか、合流式の由来、下水道が相手にするのは汚水だけでなく雨水もという話は全く理解していなかったことを反省しています。近所には「ポンプ場」がありましたが、なぜか「キャンプ場」と思

い込んでおり、夏休みに山でやってるキャンプがここでもできるのかと思っていました。 こうしたことがきっかけかどうかは別にして、大学では衛生工学科に入学しました。高校の同級生には、受験前から「人工衛星を作るのか?」とまじめに言われたことがありますし、「似非工学」という言葉も聞きました。入学式の日に「衛生工学はいのちをまもる工学である」と聞いて頑張ろうと思い、現在は環境工学へと発展していますが、原点を忘れてはならないと感じています。1回生での下水処理場の見学、3回生での実験実習や下水道工学の講義を通じても正直どれくらい理解できていたか怪しいですが、卒業論文のため下水処理場に“通学”するようになり、現場の重要性を認識するようになりました(写真-1)。

3.大学での教育と下水道

(グループ学習、1回生) 毎年十人程度の新入生を対象に、水環境に関するテーマを自由に設定し発表してもらうグループ学習を行っています。毎年数人が下水道をテーマにし、資源やエネルギーを回収できることに驚いています。地元の下水処理場を訪問して、自分で*京都大学講師

水環境と下水道

大学での教育・研究・業務と下水道

日高 平*

Page 21: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

大学での教育・研究・業務と下水道

19日本下水道施設業協会誌

た時、計算方法の数式は分母と分子に色々あり複雑に見えてよく分からなかった覚えがあります。ただ、意味を理解すれば、BOD濃度とか水量とかの単位を考えながらその場で計算できることに気づきました。慣れてくると体積Vとか書いてしまいますが、リットルなのか立米なのかとか、単位を常に明記するようにと強調しています。数式の説明とかは黒板に書いて展開を示すことで理解が進むと考え、嫌がられますが演習問題の宿題は受講生に黒板に書いてもらいます(写真-2)。最近は黒板を書き終えた段階で写真撮影となることも多く、便利な道具を否定するわけではありませんが、まずは地道に紙と鉛筆で計算してほしいとも思います。受講生の中でどれくらいが将来下水道分野で仕事をするのか分かりませんが、これらは下水道分野に限ることではなく、別の世界で働く場合でも役に立つ考え方として伝えたいです。

(卒業論文、研究室配属後) 研究所と大学では、下水道の実験のやり方に違いがあると感じています。例えば活性汚泥を連続的に飼っていると、最終沈殿池の操作でトラブルが生じ、翌日実験室に行くと汚泥がなくなっていたという事故が時々発生します。研究所なら、すぐに新しい活性汚泥を下水処理場で採取して、なるべく早く復旧させるように対処するかと思います。学生が新しい汚泥を欲しがったところ、当時の教授は「わずかに壁面に残った活性汚泥がいるのだから、このまま育てるように」としていました。元の濃度まで増やすのは手間がかかり面倒ですが、活性汚泥を大切に育てる教育だったと思います。

撮影した写真で説明してくれる学生もいました。慣れないプロジェクターを操作しながら活き活きと発表する姿を見て、下水道に興味を持っていることが感じられます。最近はインターネットで何でも調べられますが、なるべく現場を訪問するとか、図書館で資料を調べるとか、インターネットを用いる場合でも引用元を明示して、単に調べたことを並べるのではなく、自分なりの考察を加えるようにとしています。

(水質分析の実習、3回生) 現場では便利な分析機器が充実してきたので、サンプルを入れてボタンを押せば測定できるようになってきました。中身を理解した上で使うのはよいのですが、ブラックボックスになるとまずいので、実習ではあえて時代遅れと言われそうな基礎的な分析も行っています。下水試料のBOD測定で、DO 80㎎/l とか、明らかにおかしな値を報告するレポートも時々見られます。初めての測定でミスは当然ですし、専門家が思いつかないような学生の新鮮なアイディアに触れることもあります。手分析の経験を積み重ねることで、機械が自動的に測定したデータでも、原理を理解してその意味が判断できるような力を身につけてほしいと願っています。

(下水道工学の講義、3回生) 国土交通省や現場の関係者に特別講演をお願いすることで最新の話題に触れるような機会を設けつつ、大学教員による講義としては退屈でも基礎的な概念を伝える必要があると感じています。例えば、BOD-MLSS負荷率の計算ですが、初めて見

写真-1 下水処理場へは通学定期券で通学 写真-2 黒板は書かれた最後より書く過程     が重要

Page 22: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

水環境と下水道

20 明日の下水道 No. 72(2017.1)

 シミュレーション計算では、市販の計算ソフトを使うのでなく、まずは自分でプログラムを書くようにしています。例えば反応に関わる物質や微生物濃度に応じた反応速度から水質の経時変化を計算するモデルについて、自分で微分方程式を解析するのは面倒で、慣れない作業をするとかえって計算ミスが生じる可能性もあります。処理水の窒素濃度1万㎎N/Lとか、明らかにおかしい計算値ならすぐ気づきますが、もっともらしい計算結果でミスが含まれていても、見落とす可能性があります。試行錯誤で苦労する経験を重ねることで、将来市販ソフトを使う時に、計算原理とか注意すべき点とかを考えながら操作できるようになることを期待しています。 下水道研究発表会や下水道展も、貴重な機会です。発表会で伺う現場でのノウハウやトラブル事例とかは、他の学会であまり聞くことができません。下水道展では、処理の原理を理解しやすい模型の展示が魅力的です。教科書の図や動画より、かなり分かりやすいと感じます。本来の目的とは違うかもしれませんが、学生向け教育にも活用させて頂ければありがたいです。

4.大学での研究と下水道

 国土交通省下水道技術研究開発(GAIAプロジェクト)では、「下水処理施設の高品質資源回収・流域リスク低減拠点化を目指したオゾン処理導入技術開発」と題する提案を採択頂きました(図-1)。ここでは、民間企業および地方公共団体で水環境や下水道に関わっている研究者と連携しております。生々しい話ですが、新しいシステムの導入にお金がいくらかかるとか、新聞では○○○が話題になっているが本当に重要なのは□□□とか、大学の実験室では分からない現場の状況を勉強しながら、研究に務めております。自分の勉強不足を感じることが多いのが、正直なところです。現場のことを知らずに教育・研究はできないと感じつつ、大学だからこそできることは何だろう?と考える機会になっています。 科学研究費補助金やその他の研究費では、下水汚泥の肥料利用について、農学分野の研究者との共同研究を試みております。農学の世界でも、農業集落排水処理施設とか家畜糞尿の処理とか、下水処理と似ているような話が多くあります。これからの時代、いわゆる省庁の壁を越えた連携が重

図-1 GAIAプロジェクトの概要

Page 23: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

大学での教育・研究・業務と下水道

21日本下水道施設業協会誌

要と考えております。持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想策定マニュアル(国土交通省・農林水産省・環境省、平成26年1月)や、関連7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)の連携の下進められているバイオマス活用推進基本計画(平成28年9月改定)、また水循環基本法などにより、従来の下水道の枠組みにとらわれない新たな展開に期待しています。

5.大学での業務と下水道

 現在大学内の兼務として、工学研究科附属環境安全衛生センターの業務にも関わっています。大学を環境にやさしく安全衛生に配慮した教育研究にふさわしい場にすることを目的として、安全衛生関係諸法令の遵守などに向けた業務を一元的に行う組織です。毎年新入生を対象にした環境安全衛生教育を実施しており、実験排水および生活排水いずれも学内で処理されるわけでなくそのまま下水道へ放流されることや、それをふまえた使用上の注意を説明しています。 下水道工学を受講していれば排水基準などを勉強するのも当然ですが、下水道工学受講の有無に関わらず、大学で活動する全員が、下水道に正しく“接続”する必要があります。教育・研究では下水処理場での下水処理が中心でしたが、ここでは「公共下水道へ排除する場合の水質基準」が重要になります。実験で使用する薬品類に注意しなければならないのは当然として、食べ残し食品なら何でも居室から流してよい訳ではないといったことも含めて、下水道を考えてもらう機会にしたいと考えております。

6.大学の外での下水道

 一般向けテレビ番組や一般雑誌の特集記事でも下水からの資源・エネルギー回収技術が紹介されるように、また下水処理場の一般公開で多くの住民が訪問しているように、下水道は一般にも身近な存在になりつつあるように感じます。高校生向けオープンキャンパスでも、保護者の方を含めて、水環境や下水道への関心を感じます。内水と外水の違いをどのように説明するのがよいかという議

写真-3 スペルチェックでセグウェイから下水へ

論を、何度か下水道関係者の集まりで伺いました。下水道の役割は、汚水を集めて処理することだけではないということも、下水道の役割を伝える上では重要と感じています。 英語で下水を表す単語「sewage」を、今でこそよく使いますが、大学受験の時に覚えた覚えがありません。ある高校生用英和辞典の重要語3500語には、含まれていません。この言葉を初めて意識したのは、おそらく英語論文を書いたときです。専門用語かと思いきや、米国の一般学生向けニュース(CNN Student News)で聞いて、英語圏では普通の言葉だと分かりました。土木研究所のあるつくば市内でよく見かけたセグウェイツアーですが、Segwayと書くつもりでうっかりsegwagyと入力すると、スペルチェックが働き、修正候補にはsewageも登場します(写真-3)。こういうところで、一般市民の目に触れているかもしれません。

7.おわりに

 水環境および下水道の今後の課題を考える上では、生物、化学、土木、機械、電気、エネルギー、農業、法制度、流域管理、地方自治のあり方など、幅広い分野の英知を結集する必要があります。大学では、同じ学科卒業でも進路はまちまち、学科や学部が異なれば別世界の進路が普通です。異分野間のネットワークが下水道の縁で活性化し、従来の縦割りではなく、一般市民、省庁、地方公共団体、民間企業、農業といった所属にとらわれない議論が深まり、それぞれの得意分野を活かして水環境に関わる連携が強まることを期待しています。

Page 24: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

シリーズ・技術調査報告

22 明日の下水道 No. 72(2017.1)

1.はじめに

 日本の下水道は、戦後の大きな社会資本の投入政策により下水道人口普及率が昭和40(1965)年度末で8%、昭和50(1975)年度末23%(「日本の下水道」昭和62年版より)と推移し、それから40年後の今や77.8%(平成27(2015)年度末)(汚水処理普及率は、89.9%)が得られている。その間、下水道事業は主に国内産業として発展をしてきたのだが、平成13年(2001年)に、ISO/TC(専門委員会)224 による上下水道サービスの国際規格化がフランスから提案されたことから、国際化が無視できなくなるという一大転機を迎えることになった。

2.国際規格(ISO)の影響

 ISO規格の成立による影響は、以下のように考えられる。 規格文作成にあたり、放っておくと会議を主導される事が多いヨーロッパの技術が採用され、本邦の技術が反映されない。しかし、もし本邦に優位性のある技術がありそれを盛り込むことができれば国際的市場形成の基礎にすることが出来る。 海外のニーズにも日本との共通点(安価、省スペース、省エネ、維持管理性など……)は多く、海外展開を行いその実績を次の技術開発へ還元することにより国内技術を向上させることが出来、即ち海外での実績作りも技術の維持向上に重要である。 また、国際規格は海外市場に展開する場合には、当然直接的影響を考慮しなくてはならないが、国

���������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������������

下水道界のISOへの対応一般社団法人 日本下水道施設業協会

技術部長 松 尾 英 介

シリーズ・技術調査報告

内 規 格 作 成 の 場 合 に も 尊 重 す る こ と と 定 義(WTO/TBT協定/第2条2.4)されており、国際規格が一旦成立すると、関連国内規格への影響が無視できなくなる。ISO規格に日本の技術・状況が反映されていなければ、日本企業のみならず自治体においても、海外の技術・手法を選択・採用せざるを得なくなるなどのケースも考えられる。 平成13年以降、下水道界でも以下(表-1)に記述するような様々な規格が国際的に提案され、国内での組織的対応を余儀なくされている。 3.現在日本が取り組んでいるISOのTC(専門委

  員会)等

 ① TC224(上下水道サービス) 平成13年(2001年)4月フランスが提案した「飲料水及び下水に関するサービス活動の規格化(上下水道サービス)」が下水道界に大きな話題を提供した。特に上下水道界の民営化の流れが一方にあり他国の国際的な水会社の動向も注目される中で、国内行政上あるいは業界にも不利な規格作成は防ぐ必要があるとの認識が高まり、国内の上下水道各分野から担当者が選抜されて体制が組まれ、緊張感の中で検討した。 懸念されたのは単なるガイドラインでなく認証規格として成立すると、設計、建設、維持管理が分割されて成長してきた日本の下水道界がガラパゴス化したものとして世界の草刈り場になるのではないかということである。日本代表団の活躍もあり、結果としてはそのような形態にはならず

Page 25: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

下水道界のISOへの対応

23日本下水道施設業協会誌

 その後TC224は(当初はWG(作業グループ)1~4が設立され活動したが)当初の2~4のWGこそ解散したものの、別途いくつものWGが成立し盛んに活動している(表-1)。EUとしての規格統一が盛んなヨーロッパ等では、ISO委員が専門職化していて新たな問題点も提起されるので、一旦活動を始めると終わりが無いことを認識しておく必要がある。 WG6は下水道の資産管理(マネジメント・オブ・アセット)ガイドラインとして、一旦検討を始めたが、別途英国から社会インフラ全体のアセットマネジメントが提案され、各国合意(TC224とは別に、当初PC251(単発のプロジェクト委員会)、後にTC251(恒久の技術委員会)として設立)により検討が始まったために下水道に限定しての活動は一旦中断となった。その後TC251が認証規格としてISO55000シリーズを2014年に成立させたことを受け、下水道に特化したガイドラインとして、再度TC224/WG6の活動が始まっている。下水道分野は下水道管路と処理場ポンプ場とは別々に(他に水道分野として管路と浄水場もある)記述されるが、当初下水道はコンビーナ(座長)2名

(独国と日本)で管路部分が先行し、現在は1名(独国)となって処理場ポンプ場の検討が始まった。 他にWG10が、トイレに流せる製品を対象に規格化が進んでいて、日本の繊細な商品に対して他国の水でほぐれない商品が認められるなど、看過できない点もある。 ② TC251 ISO55000(アセットマネジメント) TC251は上述のように認証規格のISO55000シリーズを成立させた。これは様々な社会インフラのアセットマネジメントをおこなう規格として、

(ISO9000シリーズの様に)組織が行うべきこととその手順を定め、必要な文書化、定期的見直しも行うことにより改善していくものであり、上下水道分野でも公共団体や民間会社が既に認証取得して利用している。 ③ TC282(再生水利用) 当初イスラエルが「再生水の灌漑利用」の品質確保のために提案し、各国の賛同を得てPC253として成立したが、その後「再生水の都市利用」の品質確保のための規格が必要ではないかと日本の

ISO24510シリーズ(飲料水及び下水サービスに関する活動-下水事業のマネジメント及び下水サービスの評価に関するガイドライン等。日本版はJISQ24510シリーズ。)が成立(ISOは2007年)した。

表ー1 主なISO委員会リスト(国内)

№ ISOコード 内容 備考

1 TC224飲料水及び下水サービスに関する活動-サービス品質基準及び業務指標(上下水道サービス)

2 WG1 用語の定義 休止中

3 WG2(ISO24510) 上下水道サービスの評価・改善指針(2007.12発行) 当WGは解散

4 WG3(ISO24511) 下水道事業マネジメント指針(2007.12発行) 同上

5 WG4(ISO24512) 上水道事業マネジメント指針(2007.12発行) 同上

6 WG5 ISO24510シリーズ規格の適用例

7 WG6 飲料水供給システムと下水システムに関するサービス活動

8 ISO24523ベンチマーキング/上下水事業のベンチマーキングのためのガイドライン[TG5]

9 ISO24516 アセット管理のためのガイドライン

10 ISO24516-1[TG3]パート1 飲料水管路システム

11 ISO24516-2[TG3]パート2 水道ポンプ場・浄水場

12 ISO24516-3[TG4]パート3 下水道管路

13 ISO24516-4[TG4]パート4 下水道ポンプ場・処理場(施設のストックマネジメント)

14 ISO24516-5 水道事業 優良な実施事例

15 ISO24516-6 下水道事業 優良な実施事例

16 WG7 上下水道事業のクライシスマネジメント

17 WG8ローテクを用いたオンサイト生活用水のマネジメント(上下水道は除く)

18 WG9 水質事故検知プロセス

19 WG10 トイレに流せる製品

20 WG11 雨水管理

21 TC251(旧PC251) アセットマネジメント(社会インフラに関するAM(2014.1発行))(下水道のAMにも適用)

22 ISO55000 概要、原則、用語

23 ISO55001 要求事項(認証規格)

24 ISO55002 ISO55000適用ガイドライン

25 TC282 水の再利用

26 SC1 灌漑利用

27 SC2 都市利用

28 SC3 再生水利用システムにおけるリスクと性能の評価

29 TC275 汚泥の再生、再利用、処理処分

30 WG1 用語の定義

31 WG2 評価方法

32 WG3 嫌気性消化

33 WG4 土壌還元

34 WG5 熱利用処理

35 WG6 濃縮と脱水

36 WG7 無機物と栄養塩類の回収

37 TC138 管路更正工法の品質管理システム

注.AM:アセットマネジメント

Page 26: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

シリーズ・技術調査報告

24 明日の下水道 No. 72(2017.1)

提案により中国、韓国との三か国会議(都市における再生水利用に関する北東アジア協力会議

(RWUUA会議)第1回会議は2012年3月)で設立された。特に日本にとっては都市活動用再生水生成用の膜製品の品質レベルを粗悪品により低下させないための規格の必要性もあったが、中国が先にISOに提案を行ったため日本も追加提案し、ISO本部調整により3つの委員会からなる合同の委員会TC282が設立された。議長に立候補し決定した。「農業用水」議長イスラエル(SC(分科委員会)1)、「都市利用」議長中国(SC2)に対して、日本は「再生水利用システムにおけるリスクと性能の評価」(SC3)の議長となり、所定の目標をリスク管理や評価の立場からの検討により果たすことにしている。その後、SC4(工業利用)なども2016年7月に成立している。 ④ TC275(汚泥の再生、再利用、処理処分) 下水汚泥についても有効利用等の重要性が高まっており、フランスの提案で2013年2月に「汚泥の再生、再利用、処理及び廃棄」に関わる専門委員会(ISO/TC275)が設置された。 施設協は日本下水道事業団(JS)とともにISO/TC275の国内審議団体(規格内容を日本として議論する事務局)として登録(平成25年7月)された。作業分担は、JS国際室が日本代表としてISO/TC275国際事務局であるAfnor(フランス規格協会)等とのやりとり、施設協は対応チームを内部で募り、規格案文等の作成や確認、国内審議委員等との調整や資料まとめ、また共同して審議委員会開催や国際会議資料つくり、専門家派遣などにあたっている。これまで年に一度の国内審議委員会を4回開催した。第4回会審議会(平成28年10月3日、日本下水道事業団にて)(写真-1,写真-2)と国内事務局会議(写真-3)の風景を示す。 設立された7つのWGに対して、日本は限られた体制から、WG5(熱利用処理)とWG7(無機物と栄養塩類の回収)を主体的参加することとし、その他のWGの検討内容についても極力情報収集し、問題が有れば指摘することにしている。 WG5は、ヨーロッパの規格を原案に検討しているので、日本規格と合わないところや、日本が

得意とする技術が反映していない部分があり、原案に対して日本から約130項目のコメント(エキスパートが担当)を提出し、ほぼ採用される見通しとなっている(平成28年4月12日開催web会議等にて提案や説明をおこなった)。 WG7は、決まっていた英国のコンビーナが降

写真-1 TC275第4回国内審議委員会にて委員長挨拶

写真-2 TC275第4回国内審議委員会全景

写真-3 TC275国内事務局会議

Page 27: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

下水道界のISOへの対応

25日本下水道施設業協会誌

りて、日本の大地佐智子氏の就任が要請された。これを受けることとし、施設協グループから国内専門家を増員、分担して本文案等作成することとした。コンビーナについては、平成28年7月の国際投票により、賛成12カ国、反対なし、棄権3カ国で大地氏が選任された。

4.日本の対応について

 水分野での各国から新規提案が続き、ISOのTCやWGが増えるに従い国内での対応チームが必要になる。国、地方公共団体、協会等の法人、民間企業などのうち利害関係のある部署がボランティア対応している部分が多いが、日本の問題として、まず英語での対応の出来る人が限られる。加えて、国・公共団体担当者は異動が激しく、2~3年、時には1年で異動するため、知識の伝承と人脈形成面で困難がある。民間においても、その重要性の認知が行き渡るのはこれからの情勢で、戦略的に対応できていると言える分野は少ない。欧州では同一人物が長期間対応できる体制が歴史的に出来てきているので、その影響は大きい。 また、これまで日本では、いかに無駄を省き洗練化してコスト削減をするかを目標に事業推進体制を(また対象とする製品自体も)構築してきた。

いちいち「エビデンス」を残すなど、なぜわざわざ体制を面倒くさくするのかとの思いがあるなど、業務の取り組み方や国民性においてISO的(欧州的)考え方との違和感が多い。 このような様々なハンディキャップが影響するのが残念だが、グローバル化が大きく進展したところに自国第一主義が勃興する今、まさに熟慮してしっかり対応できる体制に舵を切るタイミングが訪れているのではないかと感じる。 なお、国(下水道部)に対しては、活動中の様々なTCに対する支援の一層の充実と共に、それら全体を管理調整する組織の立ち上げを希望したい。

5.おわりに

 以上日本における下水道に関連したISO関係の経緯について、これまで関係してきた活動によって感じるところを記載した。正確には下水道協会誌等に掲載された各分野の責任者の方のレポートにてご確認いただきたい。 筆者は、平成18年度から当協会の技術部長として毎号に「シリーズ・技術調査報告」を執筆させていただき、11年間で全22回となったが、本号が最後の執筆となった。これまでお読みいただいた方には深く感謝を申し上げます。

51号(2006.7)総合評価入札制度に関する提案の       ポイント52号(2007.1)機械基礎設計基準について53号(2007.7)改築更新技術に関する提案54号(2008.1)防食工事への取り組み55号(2008.7)下水道プラント設備における長寿       命化支援制度の運用56号(2009.1)地球温暖化と下水道設備での対策57号(2009.7)当協会の災害支援ルール58号(2010.1)下水道長寿命化支援制度における       当協会に関連する課題59号(2010.7)下水道設備におけるLC-CO2の試算60号(2011.1)下水処理場汚泥処理設備における       温暖化ガス削減対策61号(2011.7)標準活性汚泥法およびOD法下水処

       理場におけるLC-CO2計算の簡易化62号(2012.1)下水道処理技術の最近の流れ63号(2012.7)下水処理場消化槽設備の変遷64号(2013.1)汚泥脱水機の固形物回収率について65号(2013.7)東日本大震災における初動時の対       応に関するアンケート調査について66号(2014.1)技術調査委員会の活動67号(2014.7)「下水処理場の温室効果ガス発生       削減対策パンフレット」について68号(2015.1)霊岸島水位観測所69号(2015.7)下水処理場水処理設備の省エネル       ギー化に関する一考察70号(2016.1)下水汚泥脱水機選定に関わる一考察71号(2016.7)下水汚泥濃縮設備の変遷について72号(2017.1)下水道界のLSOへの対応

技術調査報告・総目次

Page 28: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

リレーエッセイ

26 明日の下水道 No. 72(2017.1)

はじめに

 36年間務めた札幌市を昨年3月に退職し、現在民間企業で働いております。役所生活の大半の23年間を、下水道の計画・設計・建設・維持管理などの仕事に携わってきました。しかも最初と最後の職場が下水道ということで、下水道を通じて札幌市のインフラ整備の変遷や、普及拡大から維持管理へのシフトなど、時代の大きな変化を実感することができました。また技術職員として育てられ成長できたのも、下水道のおかげと思っています。今回このような機会をいただきましたので、これまでの振り返りとこれからも下水道に関わっていきたいという思いから、今後の抱負についてお話ししたいと思います。仕事の成果が実感できた時代

 昭和55年に入庁したころの札幌市の下水道は、まさに整備の時代でした。施設建設課という処理

場の建設を担当する部署に配属され、処理場の設計や施工管理を担当しました。当時の札幌市は、冬季オリンピックが開催された後、急激な人口増加や市街地の拡大に対応するため、道路・水道・下水道などインフラ整備が急速に進められた時期です。下水道普及率は80%を超えていましたが、100%を目指し、管路や処理場の整備が盛んにおこなわれていました。仕事の量も多く、新人にもかかわらず先輩たちから厳しい指導を受けながらどうにか仕事をこなしてきましたが、今思えば大変ありがたく貴重な経験ができたものと思います。また下水道整備に対する市民の期待感も大きく、直に住民の喜びを垣間見ることができるなど仕事の成果が実感できる時代だったように思います。日本下水道事業団への派遣

 平成6年4月に日本下水道事業団北海道総合事務所に派遣され、道内の処理場の建設を担当しました。当時の北海道の普及率は70%を超えていましたが、都市部に比べ市町村の普及率が低く、下水道整備は喫緊の課題でした。北海道は広く、現在は179の市町村ですが当時は212の市町村があり、また都市間の距離も長いことから集落ごとに処理場を作らなければならず、現在も200か所を超す処理場が存在しています。3年間の派遣でしたが12の自治体の処理場を担当することになり、道内を走り回っていた思い出があります。 またこの3年間の勤務により、かけがえのない経験をさせていただきました。それは道内の自治体職員と交流することができたことです。札幌市は職員も多く、どちらかというと専門的な仕事の進め方が多いですが、小さな自治体では職員も少なく事務職、技術職関係なく仕事をしなければならずオールマイティな仕事の進めかたであり、仕事に対する視野の広さを持つことの重要性を改めて実感する機会ともなるなど、大きな刺激となりました。道内の処理場は短い期間で整備が進みましたが、今後心配なのは改築更新時期が集中し、必要な財源や職員が確保できるかどうかです。JS

北海道から下水道広報活動を発信

伊藤組土建株式会社顧問

坂田 和則

昭和55年 札幌市入職 下水道局施設建設課平成 6 年 日本下水道事業団へ出向平成 9 年 企画調整局総合交通計画部係長平成15年 建設局土木部街路課長平成18年 建設局下水道河川部下水道計画課長平成19年 日本下水道事業団北海道総合事務所長平成21年 建設局土木部長平成23年 手稲区長平成25年 建設局下水道河川担当局長

〈略歴〉

Page 29: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

リレーエッセイ

27日本下水道施設業協会誌

や札幌市などが中心となって道内自治体を支援する取り組みがますます重要となっていくものと感じています。JICA研修の開設

 印象的な仕事の一つとしてJICA研修の開設があります。札幌市にJICA研修センターを誘致しようということで、目玉となる研修コースの開設が求められました。当時は国が主体となったJICA集団研修「下水道技術コース」がありましたが、地方で開催する研修は初めてです。これまでの研修との違いを打ち出すために、札幌市では処理場をフィールドとした維持管理研修を開設しました。初めての経験であり、開設に向けてカリキュラムやテキストの作成、職員の講師養成など大変苦労しました。この研修は平成4年に開設され、平成22年に閉講しましたが、19年間で48か国122名の研修生を受け入れるなど、大きな成果があったものと思っています。 私も開設準備の一員として奔走しましたが、技術を伝えることのむずかしさを実感するとともに、自分たちのやっていることが開発途上国の発展につながるという喜びを感じることができました。約2か月間の研修でしたが、海外から来た研修員をもてなすため、自宅に呼んでホームステイを経験してもらうなど良い経験ができました。残念ながら現在は実施していませんが、職員にとっても自己啓発の機会となるなど、そのような機会が失われたことを残念に思っています。GKP北海道の立ち上げ

 下水道からしばらく離れていましたが平成18年に10年ぶりに下水道の職場に復帰しました。時代は整備から維持管理へと大きくシフトしており、経営の効率化や施設の老朽化対策など、下水道を将来的にも維持していくためのビジョンが求められました。特に経営面では民間委託の拡大が求められるわけですが、一方では職員の人材育成や技術力の向上が求められる中での選択に悩むことになりました。 また下水道の多様な役割が期待される中で、資源としての活用が求められています。そんな中、下水道の存在や役割など「下水道の真の価値を伝えたい」と、下水道広報プラットホーム(GKP)

前・神戸市建設局担当局長(下水道)現・神戸すまいまちづくり公社  国際インフラ整備支援室長

が発足しました。しかし活動の拠点が東京中心であり、遠い北海道までその活動が伝わってきません。北海道の下水道普及率も全国平均に比べ高くなりましたが、普及が進むにつれて関心は低い状況にあります。今後改築更新が増え、一方では人口減少に伴う使用料の減少や小規模自治体における財政や職員減少に伴うインフラ維持に対する不安が増加するなど厳しい状況にありますが、そのためにも下水道の広報がますます重要となります。 そこでGKP活動を北海道から発信しようということで、北海道庁や札幌市のOBが中心となり平成27年にGKP北海道を立ち上げました。現在、会員は50名を超え、月1回程度集まり道内の下水道遺産の発掘や歴史について情報交換を行っています。9月の下水道の日に合わせて開催される札幌市のパネル展にも参加するなど徐々に活動が充実しています。立ち上げにはGKP本部との関係など会としての位置づけや、規約、会費、会員の募集方法、活動の拠点や内容などいろいろな課題がありましたが、特に北海道と札幌市の下水道職員の長年にわたる親密なネットワークにより問題を解決することができました。 私もOBの一人としてこれからもGKP活動に取り組んでいきたいと考えています。

GKP北海道キックオフイベントのテープカット

畑 惠介氏

次回の執筆者

Page 30: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

水 域 ル ポ

28 明日の下水道 No. 72(2017.1)

 伊勢を流れる川といえば五い す ず

十鈴川がわ

のイメージがあり、神話の世界とつながっているように感じるが、今回訪ねた勢田川は伊勢に暮らす人々の営みにつながっている。そのため汚水が勢田川に流れ込み、五十鈴川と対照的な様相を呈している。しかし、人々は、「川はそこに暮らす人々の日々の営みを映す」ということに気づき、取り組みを始めた。

勢田川とは

 勢田川は伊勢市の中心部を南西から北東に流れる延長7.3㎞の都市河川である。市街地のすぐそばの森から湧き出た水は、たちまち民家に取り囲まれる。建物が密集する地域を抜けると蛇行しながら流れ、やがて五十鈴川と合流し伊勢湾に注ぐ。 勢田川と人々の暮らしの関わりは古く、かつては伊勢神宮へ献上するための魚を取る川であった。そのため別名「御

おんべがわ

贄川」とも呼ばれている。また、下流は伊勢参りや、物資輸送の舟運に使われ、短い延長にも関わらず沿川には二軒茶屋や河崎といった河岸(川港)が設けられ、人と物資の結節点として賑わった。 明治に入り、道路網が整備され鉄道が開通すると、物資輸送の中心は陸上交通に移り、勢田川を使った舟運は終焉を迎え、河岸の賑わいも過去のものとなった。そして、高度経済成長とともに、流入する生活排水の質が変化し水質汚濁が進んだ。

下水道整備のきっかけは五十鈴川の浄化

 「三重県下は全般的に下水道整備のスタートが遅く、現在も普及率は49.9%と全国平均77.6%に比

べると低い状況です。伊勢市でも着手が遅く、最初に供用開始したのは平成11年からです」と倉野隆宏・伊勢市上下水道部下水道建設課長が説明する。「伊勢市で下水道整備が始まったきっかけは、内宮より下流での汚水流入に伴い、五十鈴川の汚濁が進んだことです。伊勢神宮では毎年、その年に収穫された新穀を下流から上流にある内宮へ、川曳で奉納する行事『初穂曳』を行っているのですが、この行事が水質悪化のため1981年を最後に中止されたのです。しかし、市民の間にこの行事を復活させたいとの機運が高まり、市民有志が

『五十鈴川水系会議』を立ち上げ、水質の測定や下水道勉強会などの活動が始まったのです。」と倉野さんは続ける。 当初、五十鈴川周辺は広範な区域を対象とする宮川流域下水道の処理区となる予定であったが、整備に時間を要するため、下水道整備の機運の高まりを受けた伊勢市は国が実施しているフレックスプランを活用して整備を進めることにした。 事業は1993(平成5)年にスタートし、1999(平成11)年には一部供用を開始、周辺住民が下水道への接続に協力し、『初穂曳』は、2000(平成12)年に復活した。

勢田川と下水道

 「子供の頃、悪いことをすると『勢田川に放り込むぞ』と叱られました。勢田川はそれくらい汚れていました。」そう話すのは山本佳典・伊勢市環境生活部環境課環境対策係長だ。 「勢田川流域には市内人口の約40%が暮らし、汚水が流入しています。しかし、川沿いには水運

神話世界からの清流を取り戻す

ポズ

ルー

域リ

水シ

~三重県伊勢市・勢せ

田た

川がわ

Page 31: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

神話世界からの清流を取り戻す

29日本下水道施設業協会誌

で栄えた当時の面影を残す歴史的に重要な場所も多くあり、このままでいいとは考えられません。勢田川の水質改善は伊勢市の重要な課題です。」と山本さんが続ける。 「勢田川については、1999(平成11)年より流域関連伊勢市公共下水道事業を開始しました。その結果、変動はあるものの勢田川の水質は確実に改善しています。現在、伊勢市の下水道事業は2016(平成28)年3月に策定された『第2期伊勢市生活排水対策推進計画』に基づき取り組まれています。当市では、すべての汚水を下水道で受け入れるのではなく、公共下水道と合併処理浄化槽を併用することで処理することにしています。平成27年度末時点で当市の下水道普及率は49.9%、合併処理浄化槽も含めた水洗化率は70.8%となっています。」と倉野さん。

水環境について自ら学ぶ市民

 「2008(平成20)年に『伊勢市総合計画』を策定するにあたって、市民と協働することになり『まちづくり市民会議』が発足しました。この会議は、総合計画策定後も市民の自主活動として存続し、そこから環境について活動を行う環境部会が発足しました。これが『伊勢市環境会議』です。この会議は現在、行政、企業の代表者と一般市民19名で運営されており、地域の環境保全活動に取り組んでいます。勢田川に関しては通算21回実施されている『勢田川七夕大そうじ』や、全国的にも珍しい、一級河川の中に市民らが中心となって設置した浄化設備『勢田川とおりゃん瀬』、勢田川沿いにキャンドルを並べる『100万人のキャンドルナイト伊勢』などを実施しています。」こう説明するのは松岡薫・環境生活部環境課環境対策係だ。ちなみに今年(2016年)の勢田川七夕大そうじには2,500名もの市民が参加したという。 「勢田川を何とかしなければならないと考える人が多くいます。活動は縮小せず、むしろ広がっています。この活動に参加することで市民自らが水環境に関する学習を行い、下水道や浄化槽についても知識を深めています。そして、今では環境出前講座を実施し、その講師として活躍しています。つまり、市民の間で人材が育っているので

す。」と松岡さんの説明に力が入る。

勢田川を訪ねる

 最初に河口、五十鈴川との合流点付近を訪ねる。そこには水門と勢田川排水機場がある。1974(昭和49)の「七夕水害」を受けて整備されたものである。今度は上流へ。ところどころで下水道の敷設工事が進んでいる。一方で排水が流れ込むあたりでは、水が陽の光に反射し黒く光っている。さらに上流に進むと、浄化実験設備「勢田川とおりゃん瀬」が設けられている。そのあたりは実験の効果だろうか水が澄んではいるものの、洗剤の泡がぽつぽつと流れている。 最上流は神宮の森に連なる森林の入り口であり、水が湧きだしている。五十鈴川に神聖なものを感じるように、この湧水にも神聖さを感じる。しかし、この湧水は人々の暮らしから流れ出る汚水を引き受け、伊勢湾に注ぐころにはすっかり汚れてしまう。 「川が抱えている矛盾…それは、私たちの生活を象徴しているように思います。」との一文を、勢田川を紹介するパンフレットに見つけた。川はいつもそこに流れ、その時々の暮らしの一端を映し出している。このことに気付いた人々は、下水道や浄化槽の整備にも関心を向け、日常の暮らしの中に、神話世界から湧き出る清流を取り戻そうとしている。

▲二軒茶屋付近で大きく蛇行する勢田川

Page 32: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

30 明日の下水道 No. 72(2017.1)

会員会社トピックス

新明和工業株式会社

高効率水中ミキサ SMEシリーズ新開発のプロペラとモータにより

消費電力最大40%削減

1.はじめに 水中ミキサは処理水槽内に水流を発生させることにより沈殿防止や均一撹拌などの用途に使用される撹拌機のひとつで、軸流形のプロペラと水中モータから構成され、下水処理施設をはじめ生活排水や工場排水処理施設に広く使用されています。 撹拌が止まると下水に含まれる汚泥が沈降してしまうなど、汚水処理に悪影響が生じることから、撹拌機は24時間連続運転されることも珍しくありません。 従来から広く使用されている高速型撹拌機の水中ミキサは軽量・コンパクトという利点だけでなく、低水位や異形槽などにも対応できるといった高い設置の自由度が特長となっています。 当社の水中ミキサSMシリーズは2001年の発売以来、多くの処理施設で採用頂いています。同製品の持つ数々の特長を継承しつつ省エネルギー化の要求にお応えできる新型高効率水中ミキサを開発しましたので本稿で紹介します。2.製品の特長 高効率水中ミキサSMEシリーズは定格出力

(0.75kW~4.0kW)および主要材質(鋳鉄仕様、ステンレス仕様)により11機種をラインアップしています。これらの機種は以下の開発項目によってSMシリーズに対して同反力発生時の消費電力を10~40%削減することに成功しました。 ⑴ 高効率プロペラの開発 流体解析および強度解析によって、低動力を実現した高効率プロペラを新規開発することで大幅な省エネルギー化を実現しました。 また低動力化によって従来品では清水向けであった一部の大反力プロペラが汚水および汚泥の撹拌にも使用できるようになりました。 ⑵ 高効率モータの開発 巻線仕様および珪素鋼板形状・寸法・材質・積厚等を最適に設計することで高効率モータを新規開発し、省エネルギー化を実現しました。

 また高効率化によってモータの発熱量が抑制されることで信頼性もさらに向上しています。 ⑶ 独立浸水溜り室を標準装備 メカニカルシールの損耗から浸水が発生した場合でもモータ室の手前に浸水を一時貯留させる浸水溜り室を標準装備しています。点検プラグを備え容易に点検可能であるとともにオプションの浸水検知器取付により警報接点出力が得られます。3.おわりに 下水処理に使用される電力は国内で消費される年間消費電力量の0.7%とも言われ、大量の温室効果ガスを排出している現状です。また地球温暖化防止の観点だけでなく、世界的に逼迫したエネルギー事情からも省エネルギー化は非常に重要な課題となっています。 本製品により下水処理施設の省エネルギー化が推進され、これらの問題解決に少しでも貢献できれば幸いと考えます。 今後も当社は高効率な水処理機器の開発を通じて、微力ながら社会に貢献していく所存です。

製品外観

Page 33: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

会員会社トピックス

31日本下水道施設業協会誌

日立造船株式会社

陸上設置型フラップゲート式防潮壁「neo RiSe」

−無動力/人為操作不要の水災対策設備−

【はじめに】 東日本大震災では、水門等の閉鎖に関係して多くの消防団員が殉職され、今後の防災計画を考える上で大きな課題となっています。さらに人口減少に向かう我が国では、限られた財源の中で持続可能な対策を行うことが求められており、今後の陸閘には、操作に危険を伴わないこと、いつでも確実に機能することに加えて、維持管理の負担が小さいことが強く求められています。

【従来技術の課題】 水門操作に伴う危険回避方法としては、設備の遠隔操作が一般的ですが、電子機器等を多用することとなり、突発的な故障を回避できないことや、部品交換等に伴う維持管理負担の増大が課題となっています。また、これとは別の方法として、河川ゲートで利用されている浮力を利用する方法もありますが、これまで車両通行に対する強度確保と軽さの両立や、不安定な扉体の挙動の問題が解決できず、実用化が困難でした。

【neo RiSeの特長と効果】 neo RiSeは、津波・高潮・洪水などによる浸水に伴い、設備自身の浮力により自動的に開口部を閉塞します。ITに頼らず、自然に逆らわず、その場にあるエネルギーを活用するというコンセプトの下、扉体内部充填材により強度と軽さを両立し、ウエイトを活用した仕組みにより、扉体挙動の安定化を実現しました。neo RiSeでは、人による操作そのものが無いため、以下に示す効果が得られます。◆操作者の安全確保 陸閘閉鎖に人為的な操作を必要としないため、操作者が危険にさらされることがありません。◆確実な陸閘の閉鎖 人為的な操作ミスや操作忘れ、操作遅れなどによる失敗リスクがゼロであり、かつ動力や信号も必要としないことから、地震による停電や通信インフラ被災の影響も受けません。

◆緊急時の避難を後押し 津波来襲前に陸閘を閉鎖する必要がなく、これまで陸閘閉鎖に費やしていた時間を避難や避難支援に使えます。さらに陸閘を開放した状態としておけるため、自動車による避難の邪魔にもなりません。◆維持管理負担の縮減 耐用年数が短く、かつ突発的な故障リスクを内包する電子機器を使用しないため、部品交換などの負担を大幅に縮減します。

【実用化状況】 neo RiSeの開発は、2009年に“動力のみならず人による操作も無くしたい”という顧客からの相談をきっかけに開始し、2014年4月には、実証実験ながら公共施設としては初となる徳島県日和佐港への設置を完了。1年間の検証期間を経て2015年4月に徳島県への引渡しを完了しました。その後、国発注工事でも採用され、2016年10月末時点で施工中を含め計78基(扉体幅:1.25m~20m、扉高:0.5m~4m)に採用、うち42基の設置が完了しています。

neo RiSe浸水に伴う作動の様子

Page 34: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

協 会 だ よ り

32 明日の下水道 No. 72(2017. 1)

 平成28年7月より12月までの当協会の事業活動、主要行事の概要を報告します。早いもので、私が協会だよりなるものを書き始めて6冊目の機関誌発行。いつも変わり映えがしないと思いつつも、淡々と、活動結果について記載させていただいております。その一方ここ半年間の世の中の動きは激しく、6月末のイギリスのEU離脱に始まり、8月に安倍第3次内閣、小池都知事の誕生、11月には次期アメリカ大統領にトランプ氏が選ばれ、パク・クネ大統領は退陣へと、ふと気づいたら周りの景色が変わっていました。 より便利でたくさんの物を求めた時代から、成熟化を迎え、より緩やかで本当に価値あるものを求める世の中に変わりつつある予感を胸に、新しい年を迎えたいと思います。                        Ⅰ.広報・普及・啓発事業

1)機関誌「明日の下水道」の発行(年2回) ⑴ 第71号 平成28年7月発行3,700部 ⑵ 第72号 平成29年1月発行予定3,200部・協会事業活動の広報用として下水道関係者等、 全会員に無償配布。2) 会報「施設協会報」の発行(年3回)  ⑴ 第106号 平成28年8月発信    ⑵ 第107号 平成28年12月発信  ⑶ 第108号 平成29年4月予定  ・主として協会会員に、協会事業活動の広報用と して活用。3)国土交通省下水道部、GKPと共催にて、2016年度ミス日本「水の天使」須藤櫻子さんをメインのモデルに下水道ポスターを作成し、全国約1,500の自治体に送付するとともに、東京メトロの主要駅にも掲示いただきました。施設協有志会員の協

一般社団法人 日本下水道施設業協会事務局長 川 口   隆

賛によるもので、9月10日の下水道の日から、1か月以上にわたり掲示いただいた自治体の方々、東京メトロの皆様に感謝申し上げます。4)下水道広報プラットホーム(GKP)への参加・当協会会員のGKP団体会員が20社を越えました。

Ⅱ.講習会・公開講座・研究会の開催

表 講習会等の開催一覧

開催日 会場 講演内容 講師・参加者数

平成28年8月31日

馬事畜産会館

第28回 下水道循環のみち研究会セミナー下水道循環のみちへの多様な取組み

(CPD認定プログラム)

参加者:約70名国土交通省下水道部加藤下水道事業課長

10月20日 馬事畜産会館

第1回講習会JSの工事安全推進について

(CPD認定プログラム)

参加者:約60名下水道事業団事業統括部西郷事業課長代理

12月19日 馬事畜産会館

第29回 下水道循環のみち研究会セミナー

「埼玉県の下水道資源・エネルギーへの取組」

(CPD認定プログラム)

参加者:約70名埼玉県下水道局本田康秀下水道事業課長

注)循環のみち研究会等、一般市民の方等にも参考になると思われるセミナーについては、詳細な講演録、又は簡潔な講演内容を作成し、施設協HP(新着情報コーナー)に掲載しています。

Page 35: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

協 会 だ よ り

33日本下水道施設業協会誌

Ⅲ.意見交換会の開催

1)国土交通省下水道部との意見交換会・日時:平成28年7月6日・場所:国土交通省下水道部長室・出席者:下水道部(森岡部長、住本企画課長、     加藤下水道事業課長他)     施設協(松木会長、吉ヶ江・立林・渡     邊・西原各理事、中田監事、各委員長     他)・議事次第 ① 施設協 松木会長挨拶 ② 下水道部 森岡部長挨拶 ③ 平成28年度提言書等の説明 ④ 提言書に対する下水道部の回答 ⑤ 意見交換

▲国土交通省下水道部での提言活動

 2013年7月に日本下水道事業団と施設協が、日本工業標準化調査会(JISC)よりTC275国内審議団体として承認されている。・開催日:平成28年10月3日・場所:事業団本社会議室・議題委員長選任:植松委員長選任、高岡副委員長再任第4回ダブリン国際会議(12/6~9)について植松委員長はじめ5名が参加WG5 日本からのコメントは、全て承認された。WG7 日本(大地氏)がコンビーナに就任し初めての会議で、日本からの提案は合意された。2) 施設見学会の実施・開催日 平成28年11月18日・「G&U技術研究センター」と「富岡製糸場」・参加者 48名(内女性18名) 新人からベテランまで多くの方に参加いただき、G&Uではマンホールの仕組みと試験について勉強するとともに、富岡製糸場では、世界遺産を通して歴史を学びました。3)2016エコプロダクツ展に出展・下水道関連法人と共同で出展  ・開催日:平成28年12月8日~10日・場所:東京ビッグサイト・入場者:全体167,000人(GKPブース5,800人)

2)日本下水道事業団本社との意見交換会・日時:平成28年11月22日・場所:事業団本社(7階会議室)・出席者:事業団(増田理事、松浦理事、事業統     括部、技術戦略部、東日本設計センタ     ー、関東北陸総合事務所幹部)     施設協(堀江専務理事・各委員長他)・議事次第 ① 開会挨拶 増田事業団理事 ② 施設協 堀江専務理事挨拶 ③ 平成28年度提言書等の説明 ④ 施設協からの要望事項等の説明 ⑤ 施設協の要望に対する事業団の回答 ⑥ 意見交換

Ⅳ.その他の行事等

1)第3回ISO/TC275国内審議委員会開催

▲エコプロダクツ会場、GKPブース

Page 36: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

34 明日の下水道 No. 72(2017. 1)

 2017年。21世紀の幕開けから16年が過ぎた。 この16年間、下水道はどうであったろうか。 2001年度の普及率は63.5%、2016年度の普及率は77.8%。整備が着実に進んで来たことがわかる。 同時に普及促進というテーマが達成されるにつれ新たなテーマが求められ、その模索、種まきが行われてきた。ロータス、A-jump、B-dash、そして本号の特集で取り上げたGAIAの各プロジェクトである。

 「新たな事業を創造し、地域再生にもつながる下水道資源市場の創造。そのインフラたる下水道施設のマネジメントをしっかりしなければ。そして、改築更新が求められている今がチャンス」こういった流れを作ることができれば理想的である。 下水道資源はまだ研究段階である。コストが掛かりすぎてとてもビジネスにならないとの声もある。しかし、この下水道資源はどんなことに役立つのかを考え、下水道資源のニ

に下水道から資源を再生できることを示すだけでなく、資源の利用先も見据えた取り組みに可能性を感じた。 「こういう資源の利用先があるのではないか」、「地域と連携を深めてゆけば下水処理場が地域再生の拠点になるのではないか」等々、想像力が刺激される。そして「下水道資源市場」という言葉につながった。 下水道資源市場の創造はこれからの下水道の大きなテーマのひとつになりうるのではないか。下水道にはまだ未普及もあるし、豪雨・大震災、施設の改築更新という重要なテーマがある。だが、下水道資源市場の開拓は、こういった下水道に誰もが目を向け、内在するテーマに弾みをつけるという役割も担えるのではないだろうか。

 普及した下水道が持つ資源に新たな光を当て、下水処理場を資源再生工場に変えうることが具体的に示された。普及促進により形成された下水道ストックをさらに有効活用し、新たな価値を生み出そうという動きである。 本号の特集で取り上げたGAIAプロジェクトの各ケースは、いずれも先端を拓くものである。単

ーズを探し続けることは、時間は掛かるかもしれないが、下水道資源の世界を確実に広げていくであろう。 取材中、「下水道界には今、何十年かに一度の大きなチャンスが巡ってきている。これを逃すとこの先、しばらくチャンスはないかもしれない」との話しが印象に残った。 16年前、今や誰もが知

り、利用するインターネット上の多様なサービスは、小さな動きに過ぎなかった。下水道資源も今は小さな動きではあるが、チャンスをモノにし大きく展開していくにはどうすればいいか。特に、改築更新は下水処理場に新たな役割を付加する好機である。 関係者が好機を活かすために、本誌ではどんなことができるだろうか。そんなことを思った編集作業だった。      (編集子)

編記後集

明日の下水道 第72号 2017年1月

 発  行 一般社団法人日本下水道施設業協会      東京都中央区新川2丁目6番16号             馬事畜産会館2階     郵便番号 104-0033     TEL(03)3552-0991     FAX(03)3552-0993 編  集 日本下水道施設業協会事業委員会

機関誌分科会  編集協力 ㈱水道産業新聞社

*当協会のホームページアドレス http://www.siset.or.jp/

【表紙写真募集】 当協会では、機関誌「明日の下水道」の表紙に掲載する写真を読者の皆様から募集しています。水環境や下水道などをテーマに、本誌にふさわしい作品をお待ちしています。採用させていただいた方には図書カードを差し上げます。

◦作品の送り先 日本下水道施設業協会事業委員会宛

(住所は右記の通り)

Page 37: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

 GAIAプロジェクトによって、全国に眠る「下水道資源」のタネが研究者のアイデアと足によって次々見つかっている。各地で更にどんな下水道資源が見つかり、実現して地域が笑顔になるか、わくわくである。

特別企画(※本文4頁〜)

「下水道資源市場」の開拓者たち

※写真はいずれも各プロジェクト提供

GAIA参加研究者インタビューから見えること

長岡技術科学大学 環境社会基盤工学専攻 准教授 姫野修司 氏

植物園で組み合わせ利用下水道資源・エネルギーを最大限に活かした希少水草栽培および微細藻類培養・エネルギー生産

下水処理場内に設置された実験プラントの全景

ワサビも栽培

水槽での実験風景(梅花藻)

バイオガス発電装置中央大学 理工学部 人間総合理工学科 准教授 山村 寛 氏

山形大学 農学部 食料生命環境学科 教授 渡部 徹 氏

MBR処理水から魚のえさ下水を利用して培養した微細藻類による漁業飼料生産技術の開発

農家に新たなビジネスチャンスを下水処理水利用による飼料用米栽培に関する研究

下水処理場内に設けられた実験用の水田

藻類培養槽 微細藻類の顕微鏡写真

下水処理場内で田植えを行う

高知大学 教育研究部 自然科学系農学部門教授 藤原 拓 氏

下水処理場を地域再生の拠点に消化汚泥の肥料利用に関する研究

下水汚泥堆肥で栽培される小松菜 下水汚泥堆肥を生産するコンポストセンター鹿児島工業高等専門学校 都市環境デザイン工学科 

教授 山内正仁 氏

きのこ栽培で汚泥に価値下水汚泥を用いた高付加価値きのこの生産技術及びその生産過程で発生する廃培地・炭酸ガスの高度利用技術の開発

下水汚泥(脱水ケーキ)+焼酎粕の培地 「水の天使」やGAIA関係者が集まり成果発表と情報交換 

ヒラタケのバター醤油炒め

マッシュルームのサラダ

下水道展でもPR活動。できた「きのこ」を味わう

Page 38: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)
Page 39: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)

アクアインテック 株式会社 ☎※03-3256-8321 株式会社 広島メタル&マシナリー ☎ 03-3226-6511

株式会社 大 原 鉄 工 所 ☎ 0258-24-2351 ラ サ 商 事 株式会社 ☎ 03-3667-0295

新明和工業 株式会社 ☎※045-575-9845

株式会社 IHI環境エンジニアリング ☎※03-3642-8361 株式会社 東     芝 ☎※044-331-0816

株式会社 石       垣 ☎※03-3274-3517 巴   工   業 株式会社 ☎※03-3442-5156

株式会社 荏 原 製 作 所 ☎※050-3416-0123 株式会社 酉 島 製 作 所 ☎ 03-5437-0821

オ ル ガ ノ 株式会社 ☎※03-5635-5180 株式会社 西 原 環 境 ☎※03-3455-4718

株式会社 ク ボ タ ☎ 03-3245-3337 日 新 電 機 株式会社 ☎※03-5821-5907

三 機 工 業 株式会社 ☎ 03-6367-7634株式会社 日 立 製 作 所 ☎※03-5928-8203

JFEエンジニアリング 株式会社 ☎ 03-6212-0040

株式会社 神鋼環境ソリューション ☎※03-5739-6531 日 立 造 船 株式会社 ☎※03-6404-0823

シンフォニア テクノロジー株式会社 ☎※03-5473-1830 株式会社 フ ソ ウ ☎ 03-3552-7051

水 道 機 工 株式会社 ☎ 03-3426-2953 前 澤 工 業 株式会社 ☎※048-253-0907

水 i n g 株式会社 ☎ 03-6830-9000 株式会社 丸島アクアシステム ☎※03-3242-1972

住友重機械エンバイロメント株式会社 ☎※03-6737-2728 三 菱 化 工 機 株式会社 ☎※044-246-7236

株式会社 タ   ク   マ ☎※03-5822-7817 三 菱 電 機 株式会社 ☎※03-3218-2579

月 島 機 械 株式会社 ☎※03-5560-6530 株式会社 明  電  舎 ☎※03-6420-7320

株式会社 鶴 見 製 作 所 ☎ 03-3833-9765 メタウォーター 株式会社 ☎ 03-6853-7300

株式会社 電業社機械製作所 ☎※03-3298-5111 株式会社 安 川 電 機 ☎※03-5402-4532

株式会社 東 光 高 岳 ☎※03-6371-5430

会員会社一覧下水処理施設やポンプ場のプラント工事にかかわる機械・電気設備メーカー37社で構成されています。

正会員

風 水 力電 機

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

電 機

電 機

電 機

電 機

電 機

電 機

電 機

風 水 力

風 水 力

処理装置風 水 力

電 機

風 水 力

風 水 力

電 機

処理装置

風 水 力

処理装置

処理装置

処理装置風 水 力

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

処理装置

賛助会員

風 水 力

処理装置

処理装置

風 水 力

処理装置会員会社一覧凡例 水処理、汚泥処理など 受変電、計装など ポンプ、送風機など  ※ダイヤルイン

Page 40: 第72号 - siset.or.jp · 成26)年から、地域毎に異なる下水道の政策課題の解決を目的として、大学等の研究機関が有する先端 的な技術の活用や実用化を促進し、成果の普及を図るため、下水道技術研究開発(gaiaプロジェクト)