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修士論文 ALMA データアーカイブによる 近傍銀河 NGC253 の回転曲線および質量分布の導出 2014 年度 明星大学 大学院 理工学研究科物理学専攻博士前期課程 13M1-001 内間克豊

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修士論文

ALMAデータアーカイブによる

近傍銀河 NGC253の回転曲線および質量分布の導出

2014年度

明星大学 大学院

理工学研究科物理学専攻博士前期課程

13M1-001 内間克豊

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概要 私たちの宇宙は、ビッグバンから始まり、その中から生まれたわずかな密度揺らぎの中

のさらにわずかな密度の濃い部分が重力収縮することによって、銀河団が生まれ、その中

でさらに銀河が生まれてきたと推測されている。そして、これらの構造形成の主役は暗黒

物質(ダークマター)と呼ばれる未知の物質であり、星や星間ガスと言った電磁波を発す

ることで観測にかかる物質の6~7 倍もの質量があることが最近の研究結果によりわかっ

てきている。

このような宇宙初期のわずかなゆらぎから銀河団サイズの構造が形成される過程につい

ては、大規模なシミュレーション計算が行われ、銀河団サイズの構造の中のダークマター

の質量分布は、NFW分布と呼ばれる構造の中心に向けて密度がどんどん増加して行く分布

になる結果が得られている。そして観測的にも、この分布に大きく矛盾しない結果が得ら

れつつある。この銀河団サイズの構造が作られていく最中、その中の小さなスケールの密

度の濃い部分が重力収縮して、銀河サイズの構造が作られていくと考えられ、大規模シミ

ュレーションによっても銀河サイズの構造ができることが確認されている。しかし、銀河

サイズの構造の中のダークマターの質量分布については、理論的にも観測的にも必ずしも

明らかになっていないというのが現状である。そこで本研究では、銀河の回転曲線を用い

た方法によって銀河中心部の質量分布を導出することにした。

銀河の回転曲線は、渦巻銀河の運動学的特徴を表す重要な観測量の一つであるとともに、

銀河の質量分布を求めるうえでも大切な観測量である。Sofue.et.al (2003)による先行研究

では、野辺山ミリ波干渉計を使用して一酸化炭素 CO12 (J=1-0)分子輝線の観測をおとめ座銀

河団の 12 銀河(距離~16𝑀𝑝𝑐)について行い、中心部の回転曲線を描いて質量分布を求め、

半径数百𝑝𝑐以内に109𝑀⨀という大質量コアの存在を示した。これは、多くの銀河中心部に

存在が確認されている大質量のブラックホール(質量がおよそ107𝑀⨀)、ひいてはバルジとブ

ラックホールの共進化に関連する可能性がある。野辺山ミリ波干渉計の分解能は 6 秒角程

度であったが、電波望遠鏡において世界最高峰の分解能と感度を誇る ALMAのアーカイブ

データ(Cycle0:分解能~2")を使用することでより精度が高く詳細な情報が得られる。

本研究では、ALMA アーカイブの中から銀河中心部に多く存在する一酸化炭素

12CO(J=1-0)輝線に絞り込み、NGC253 をピックアップした。NGC253 は私達天の川銀河

から3.5𝑀𝑝𝑐と近く、回転曲線を描きやすいエッジオン銀河(私達天の川銀河から見ると銀河

がほぼ真横になっている銀河のこと)であるため、この天体を解析の対象とした。ALMA デ

ータアーカイブを電波観測における解析ソフト「AIPS」を用いて解析を行うと、NGC253

については過去最高の空間分解能(~50𝑝𝑐)で中心部の回転曲線を得られた。その結果、空間

分解能の範囲内において、中心部での回転速度は140𝑘𝑚/𝑠から下がらずほぼ flat であるこ

とがわかった。このことにより、銀河中心部には回転速度をほぼ一定に保つ物体が存在し

ていることが証明された。そこで、銀河が球対称であると仮定し、中心部の質量分布を天

体にかかる遠心力と引力のつり合いの式から導出したところ、中心部の半径50𝑝𝑐以内に

2.3 × 108𝑀⨀があることに初めて解明し、それによって銀河中心部には大質量なコアが存在

することが判明した。

本文はこの結論に至った内容について説明する。

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目次

概要 ................................................................................................................................... 2

1.序論 ................................................................................................................................ 4

1.1 銀河について ........................................................................................................... 4

(1)銀河の発見 ............................................................................................................. 4

(2)銀河の種類 ............................................................................................................. 4

(3)天の川銀河の構造 ................................................................................................... 7

1.2 天の川銀河の回転とダークマター ........................................................................... 8

1.3 系外銀河の回転曲線について ................................................................................. 10

2. 研究目的と観測装置について ....................................................................................... 11

2.1 研究目的 ................................................................................................................. 11

2.2 本研究で行われた研究対象の決定方法 ................................................................... 11

(1)渦巻銀河であること .............................................................................................. 11

(2)近傍銀河であること .............................................................................................. 11

(3)エッジオンである .................................................................................................. 11

2.3 NGC253について ................................................................................................... 12

2.4 電波と電波望遠鏡について ..................................................................................... 13

(1)電波(radio wave)とは ............................................................................................ 13

(2)電波観測の始まり .................................................................................................. 13

(3)一般的な電波望遠鏡の構造 .................................................................................... 14

(4)「単一鏡型」電波望遠鏡とは ................................................................................ 15

(5)「干渉計型」電波望遠鏡とは ................................................................................ 17

(6)ALMAとは ........................................................................................................... 19

3. 研究方法と結果 ............................................................................................................ 20

3.1 ALMAのデータの所得 ............................................................................................ 20

3.2 データの選択 .......................................................................................................... 20

3.3 データ解析 ............................................................................................................. 20

(1)AIPSについて ...................................................................................................... 21

(2)PV図の作り方 ....................................................................................................... 21

3.4 PV図から回転曲線を描く ....................................................................................... 31

3.5 回転曲線から質量を求める ..................................................................................... 34

4. 考察 ............................................................................................................................. 35

5. まとめ .......................................................................................................................... 38

6. 備考 ............................................................................................................................. 39

6.1 研究結果における NGC253のデータ表 .................................................................. 39

(1)NGC253の回転曲線作成のためのデータ表 .......................................................... 39

(2)NGC253の質量分布作成のためのデータ表 .......................................................... 40

(3)NGC253の質量面密度作成のためのデータ表 ....................................................... 41

6.2 Sofue.et.al (1990)にある NGC253のデータ表 ........................................................ 42

(1)Sofue.et.al (1990)のデータ表(変更前) ................................................................... 42

(2)Sofue.et.al (1990)のデータ表(変更後) ................................................................... 43

7. 参考文献 ...................................................................................................................... 44

8. 謝辞 ............................................................................................................................. 45

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1.序論 夜空に輝く星は、ほとんどが私達の住む銀河系の星々である。しかし、私達の天の川銀

河を離れて広大な宇宙を詳しく観測すると、そこには銀河の世界が広がっている。この宇

宙には数 1000億個もの銀河が存在しており、私達天の川銀河もその一つである。

1.1 銀河について

(1)銀河の発見

1920 年代には天の川の構造だけではなく、渦巻星雲の正体についても大きく発展した。

その発展に大きく影響を及ぼしたのが、アメリカのハッブル(E.Hubble 1889-1953)である。

1924年、彼は、アメリカのカリフォルニア州のパサデナ郊外にあるウィルソン山天文台で、

渦巻星雲中にセファイド(脈動変光星と呼ばれる、星自身が膨張と収縮を繰り返すために明

るさが変化する星の一種である。このような変光星は変光周期と星の光度の間に相関がみ

られるものがあるので、宇宙における距離を測るための距離指数として使われている)を発

見し、周期光度関係を利用して距離を求めた。その結果、渦巻星雲が天の川銀河の外側に

あることを示した。

こうして、宇宙には天の川銀河の外側に同様な星の大集団が多数あることが分かった。

現在、これらの集団は一般的に銀河(galaxy)と呼ばれている。例えば、渦巻星雲(spiral

nebula)は渦巻銀河(spiral galaxy)と呼ばれている。

(2)銀河の種類

銀河の数は多く、宇宙には数 1000億個の銀河が存在すると見積もられている。銀河はそ

の形により分類される。この分類を最初に行ったのもハッブルであり、それはハッブル分

類(Hubble classification)と呼ばれている。ハッブル分類によれば、銀河は渦巻銀河、楕円

銀河、不規則銀河に大別される(図 1)。

図 1 銀河のハッブル分類(祖父江義明の HPより)

楕円銀河

渦巻銀河

棒渦巻銀河

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(ⅰ)渦巻銀河

渦巻銀河は、天の川銀河のように、円盤部、バルジ、ハローから成り、円盤部が渦巻模

様をしている銀河である。

中心部に棒状模様の見られる棒渦巻銀河とそれが見られない渦巻銀河に分かれる。円盤

部には恒星の母体である星間物質も集中しており、恒星が盛んに生まれている。バルジと

ハローには古い星が多く、古い星の集団である球状星団もハローに分類している。

(ⅱ)楕円銀河

楕円銀河には円盤銀河のような円盤部は見えず、全体が楕円形をしているものを楕円銀

河という。ただし、楕円銀河と呼ばれるものの中には銀河中心部では円盤が存在している

ものもある。

図 3 の右上は、M87 の中心部であり、よく見るとジェットが出ているのがわかる。この

銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在すると考えられている。

図 2 すばる望遠鏡がとらえた渦巻銀河NGC6946

図 3 2MASSで見た楕円銀河M87の中心部

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(ⅲ)不規則銀河

不規則銀河は図 4 を見ても分かる通り、はっきりした形を持たない銀河のことであり、

その姿は散開星団といわれてもわからないほどよく似ている。その不規則銀河として代表

的なのが、図 4 の大マゼラン雲である。大マゼラン雲は南半球でしか観測することが出来

ないため、北半球の日本では観測は出来ない。その大マゼラン雲の隣には、同じように不

規則銀河の小マゼラン雲もあるので、二つ合わせて「マゼラン雲」と呼ぶことが多い。

楕円銀河や渦巻銀河は形の違いを基に細分されている。そして、楕円銀河を早期型銀河、

渦巻銀河を晩期型銀河と呼んでいる。

天の川銀河が渦巻銀河であろうことは前から推定されていたが、アンドロメダ銀河のよ

うに外から眺めて形を決めることが出来なかったが、1958 年、オランダのオールト(J.H.

Oort 1900-1992)たちのグループが、強い吸収を受けることがなく、全体を見通すことが出

来る中性水素原子の放つ波長 21cmの電波の観測を基に、円盤部内で中性水素ガスの濃い場

所が渦巻の腕に沿って繋がっており、天の川銀河が渦巻銀河であることを鮮やかに示した。

その後、中心部には棒状の構造があることが分かり、天の川銀河は棒渦巻銀河であると考

えられている。

ハッブル以降、ハッブル分類をもっと細部にした分類や別の観点からの銀河の分類が提

案されてきたが、彼の分類は現在でも使われている。

図 4 南半球で見られる大マゼラン雲

(Copyright Robert Gendler and Josch Hambsch 2005)

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(3)天の川銀河の構造

天の川は太陽を含む星の円盤である天の川銀河を見ているので、遠くに伸びる面の方向

が多く、それが帯のように私達を取り巻いて見えるのだとは、ウィリアム・ハーシェルが

丁寧な観測で獲得した理解である。天の川銀河は、バルジ、ディスク、ハローの 3 つの成

分から出来ていて、これは他の銀河も変わらない。

バルジは、円盤部に重なって天の川銀河の中心部に位置しており、やや平べったい楕円

体に近い形をしている。バルジは恒星を主体とし、また、古い星が多い。その厚さは、中

央部で300~1000𝑝𝑐ほどである。さらにバルジとディスクを球状にハローが取り巻いている。

ディスクには恒星とともに星間物質が集中している。太陽系は円盤部内にあり、中心か

ら約8𝑘𝑝𝑐離れた位置にある。ディスクの直径は約30𝑘𝑝𝑐で、中心部ほど厚く、太陽付近では

約300𝑝𝑐ほどの厚さになっている。散開星団はディスクに集中しており、若い恒星も多い。

ハローには星間物質がほとんどなく、恒星の空間密度も低い。また、ハロー内の恒星には

古い星が多い。ハローの直径は約90𝑘𝑝𝑐で、球状星団が散在している。

バルジ

ディスク

ハロー

球状星団

図 5 天の川銀河の構造

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1.2 天の川銀河の回転とダークマター

天の川銀河の年齢は、球状星団に含まれる恒星の年齢などから 100 億年以上で、宇宙の

年齢と大きくは違わないと見積もられている。これは、太陽系の天体が太陽を中心として

公転していて、公転するときの遠心力と太陽からの重力が釣り合っていて、その運動が平

衡状態に保たれているのと同じである。天の川銀河の場合、太陽のように銀河の中心から

重力を及ぼしている源は、銀河内の他の天体である。これらの天体の及ぼす重力は大きさ

も向きもまちまちではあるが、これらの天体が全体として銀河中心の周りに対称的な空間

分布をしていると、その及ぼす重力の総和は銀河中心を向いており、その大きさは銀河中

心部を中心とし、その天体までの距離を半径とする球体内に含まれる天体の質量が、銀河

中心に集中した場合の重力にほぼ等しいことが理論的に導かれている。

円盤部内の多くの天体は、円盤部内で銀河中心の周りを同じ向きにほぼ円軌道を描いて

公転している。太陽を含む太陽系も銀河中心の周りをほぼ円軌道していて、その速さは約

240𝑘𝑚/𝑠である。太陽の近くにある星々も、銀河中心の周りを同じ速さで円軌道している。

ただし、全てが同じ方向の向きで円軌道しているわけではない。この円軌道に重なって、

およそ 1/10ほどの速さでいろいろな向きの運動をしていることがわかっている。

図 7 は、円盤部の天体の銀河中心の周りの円運動の速さ𝑣が銀河中心からの天体の距離𝑅

とともにどのように変化するかの観測結果を示したグラフで、回転曲線(RC:rotation curve)

と呼ばれている。銀河中心から離れた場所では観測による誤差が大きいが、太陽の外側で

は、𝑣は𝑅によらずほぼ一定であることがわかる。

速度 v 質量m

万有引力 F

半径 R

質量M

図 6 天体の運動と力について

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これらの結果は、天の川銀河の質量が銀河中心からの距離とともにどのように変化する

かを反映している。図 6 のように、銀河中心の周りを等速円運動している天体の場合に質

量𝑚の天体に及ぼされる重力は、その天体より内側の天体の質量の和𝑀𝑅が銀河中心に存在

する場合に等しい。銀河中心から天体までの距離を𝑅とすれば、万有引力定数を𝐺として次

の式が成立する。

𝑮𝒎𝑴𝑹

𝑹𝟐 =𝒎𝒗𝟐

𝑹 ········································· (1)

𝐺 ························ 重力加速度

𝑚 ······················· 回転している天体の質量

𝑀𝑅 ······················ 回転内の天体の質量の和

𝑅 ························ 銀河中心から天体までの距離

𝑣 ························ 円運動の速度

式(1)より、次の𝑣と𝑅、𝑀𝑅の関係式が導かれる。この式を𝑣について解くと、

𝒗 = √𝑮𝑴𝑹

𝑹 ·············································· (2)

𝑣 ························ 円運動の速度

𝐺 ························ 重力加速度

𝑀𝑅 ······················ 回転内の天体の質量の和

𝑅 ························ 銀河中心から天体までの距離

である。ただしこの関係式は、銀河が球対称な密度分布であることを仮定している。銀河

は円盤であるため、何らかなモデル(例えば 3 次元の密度分布を表すことが出来る「宮本-

永井モデル」)を利用する必要もある。

さて、太陽より外側でも𝑣がほぼ一定であることは、最初予測されていたことと大きく違

っている。なぜなら天の川銀河の外側にはほとんど天体が観測されず、内部に比べて含ま

れる質量も無視できる、と考えられていたからである。その場合、𝑀𝑅は𝑅が大きくなっても

ほとんど増加せずに一定なので、𝑣は𝑅の平方根に反比例して減少するはずである。𝑣が𝑅に

回転速度

(km

/s)

銀河中心からの距離(太陽までの距離を 1とする)

図 7 天の川銀河の回転曲線(Honma and Sofue (1997) PASJ.49.453H)

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よらずほぼ一定ならば、𝑀𝑅は𝑅にほぼ比例して増加することになる。

このように、天の川銀河には観測されずに重力のみを及ぼしている物質が存在している。

天体の存在が観測されるのは、その天体が放つ放射を望遠鏡が観測される場合のみなので、

これらは放射をしないか、または放射していてもあまりにも微弱なので観測できない物質

ということになる。この正体不明の物質のことを、一般的に「ダークマター」と呼ばれて

いる。

1.3 系外銀河の回転曲線について

1970 年代になると、大型の望遠鏡による系外銀河の分光観測が行われた。その際、系外

銀河の特に渦巻銀河の力学的性質を果たしたのが「銀河の回転曲線」である。

図 8 は、銀河中心の一酸化炭素(CO)輝線観測と、ハローの中性水素(HI)輝線観測を合わ

せた回転曲線である。系外銀河は(一部を除いて)銀河中心から5~10𝑘𝑝𝑐以降は平坦な回転曲

線になっている事が見て取れる。

図 9 は縦軸を回転速度、横軸は銀河中心距離として対数スケールで銀河中心部を拡大し

たものであり、回転曲線が内側の領域に向かって増大していることがわかる。よって、銀

河の回転曲線を求めることにより、銀河の力学的性質がわかると同時に、銀河中心部の質

量分布を導くことが出来る。

図 9 銀河中心部まで伸ばした回転曲線

(Sofue & Rubin.et.al (2002) ARA&A.39.137S)

図 8 系外銀河の回転曲線(Sofue.et.al (1999) Apj.523.136S)

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2. 研究目的と観測装置について 2.1 研究目的

・ 銀河円盤部の回転の情報を用い、銀河中心部の質量分布を得ることを目的とする。

・ 銀河円盤部の回転の情報を得る手段としては、円盤部で回転している原子や分子の特定

の波長の輝線観測し、そのようなドップラーシフトから回転速度を知る方法を用いる。

原子や分子の特定の波長としては、一酸化炭素 CO12 (J=1-0)分子輝線を用いることにす

る。これは、銀河中心部には COがよく見られ、またその輝線は多くの銀河から十分な

強度が得られる。

本研究では、研究対象として渦巻銀河NGC253を選んだ。それは以下の理由である。

2.2 本研究で行われた研究対象の決定方法

(1)渦巻銀河であること

本研究は、回転速度と質量分布を解明するために回転曲線を使うが、回転曲線は渦巻銀

河であれば何でも可能であることがわかっている。これは、電波観測による回転曲線の方

法が使えるのが、低温ガスの多い渦巻銀河だけで、楕円銀河には低温ガスの量が少ないか

らである。ただし、不規則銀河にも低温ガスがあるので観測されたことがある。

(2)近傍銀河であること

本研究は、銀河中心部の回転速度と質量分布を解明するため、私達天の川銀河から近い

銀河、つまり「近傍銀河」であることも重要である。何故なら、観測対象の天体が近いほ

ど分解能が高くなるためである。

(3)エッジオンである

私達天の川銀河から他の銀河を図の矢印方向から見ると、銀河の回転軸の傾き

(inclination:𝑖)によって見え方が違っている。

この傾きによって、銀河は

i = 0° ··························· フェイスオン (face-on)

i = 90° ·························· エッジオン (edge-on)

と分けることができる。

回転曲線を作成するのに向いているのは、銀河全体が天の川銀河を向いているフェイス

オンよりも、銀河が傾いているエッジオンである。それは、銀河の inclination補正による

不安性が低いからである。

𝑖

図 10 銀河の傾き(inclination)

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2.3 NGC253について

NGC253 とは、ちょうこくしつ座方向にある渦巻銀河であり、天の川銀河から3.4𝑀𝑝𝑐と

比較的近くに存在している近傍銀河である。NGC253の特徴としては、「スターバースト銀

河」と呼ばれる、大量の大質量星が短期間に生成される現象があり、NGC253 の他の近傍

銀河では、M82が有名である。

ハッブル分類 SAB(s)c

RA (J2000.0) 00h47m33.1s

DEC (J2000.0) -25d17m17s

距離 (𝑴𝒑𝒄) 3.4 (Dalcanton.et.al (2009)より)

後退速度 (𝒌𝒎/𝒔) 243

赤方偏移 0.000811±0.000007

銀河の長軸 (arcmin) 27.5

銀河の短軸 (arcmin) 6.8

銀河の傾斜角 (deg) 78.5

銀河の位置角 (deg) 51

図 10 2MASSでみた NGC253

表 1 NGC253のデータ表(距離以外は NASA/IPAC-NEDより)

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2.4 電波と電波望遠鏡について

本研究は、干渉計型電波望遠鏡ALMAを用いた観測によって得たデータを使用している。

そのためここでは、電波と干渉計型電波望遠鏡について説明する。

(1)電波(radio wave)とは

電波とは、波長が 0.1mm程度より長い電磁波の名称のことである。波長による電磁波の

分類を図 11に示している。

そして電波は波長によってさらに細分化していて、短い方からサブミリ波、ミリ波、マ

イクロ波、極超短波、極短波、中波、長波、超長波、極超長波などと呼ぶことがある。

初めて宇宙から電波が届いていることは、1931-33 年にかけてアメリカのジャンスキー

(K.G. Jansky 1905-1950)によって発見された。天体が電波を放射する典型的なプロセスの

一つはシンクロトロン放射である。そのほかにも宇宙に豊富にある中性水素原子の出す波

長 21cmの輝線、絶対温度 2.7Kの黒体放射、低温度の星間物質中にある分子が出す輝線な

どが電波領域で観測されている。

(2)電波観測の始まり

19世紀末の電波通信技術の発展により電波の検出装置が実用化し、20世紀に入り、大気

の窓の一つである電波の観測がなされるようになった。しかし、最初の電波観測は偶然の

産物であった。

1931年、アメリカのジャンスキーが無線通信回路に影響を及ぼす空電を 15mの波長の短

波で測定していたところ、その強さの変化が 24時間よりも約 4分短い周期で繰り返される

ことに気付いた。この周期は、ちょうど地球が 1回自転して同一天体を向く周期に等しい。

このことは、この電波が地球にある物体が放射しているものではなく、宇宙から来ている

ことを意味している。その後ジャンスキーは、その電波が天の川の中心方向であるいて座

から来ることを突き止めた。しかし、天文学者はこの観測にあまり注目しなかった。当時

放射の原因として知られていた熱的放射では、可視光に比べて電波は弱すぎて観測出来な

いだろうという見方が、一般的だったからである。第二次世界大戦後、その間に開発され

たレーダー技術や電波観測の専門家が宇宙の観測に乗り出したこともあり、宇宙における

電波観測が盛んになった。それが電波観測の始まりなのである。では、一般的に行われて

いる電波観測は一体どうしているのかを説明する。

図 11 電磁波のスペクトル分類図

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(3)一般的な電波望遠鏡の構造

電波による宇宙の観測装置を電波望遠鏡と呼ぶが、その大まかな構造は光学望遠鏡とさ

ほど変わらない。すなわち電波望遠鏡は、(ⅰ)電波を集めるアンテナ、(ⅱ)電波を受信する

受信機、(ⅲ)電波をスペクトルに分ける電波分光器、(ⅳ)制御しまた取得したデータを解析

するための計算機から構成されている。

(ⅰ)アンテナ

電波を集める(集光する)ため、放物面積(パラボラアンテナ)が主に使われている。

(ⅱ)受信機

受信した電波による電気信号を増幅する。可視光による観測でも、光電子増倍管や写真

乾板は受け取った光を増幅して電流や乾板の黒みの形で検知する増幅器の役割も果たすが、

波長が桁違いに長く、光子としてのエネルギーが桁違いに小さい電波では、異なる方法で

増幅している。特に電波の中では周波数の高いミリ波(波長 1~10mm)やサブミリ波(波長

0.1~1mm)では増幅前に周波数を下げるために、ミキサー型受信機が用いられる。これは、

観測される周波数𝑓の電波を受信機自身で局部発信させた𝑓に近い周波数𝑓′の電波を重ね合

わせ、そのビートにより𝑓 − 𝑓′という低い周波数の電波として取り出す装置である。天体か

らの電波が弱くて、受信機自身の発する熱雑音が邪魔になるので、受信機を極低温に下げ

る点は、可視光の検出器と同様である。

(ⅲ)分光器

電波をスペクトルに分ける装置である。可視光観測では分光器として主に回析光子が使

われるが、電波観測ではデジタル型分光器が主流になっている。これは、受信機から出て

きたアナログ信号を A/D 変換機でデジタル信号に変えた後、高速でスペクトルを得る装置

である。

(ⅳ)計算機

取得したデータを解析する。

このように、電波望遠鏡は光学望遠鏡と構造的にはあまり変わらない。しかし電波望遠

鏡には、「単一鏡型」と「干渉計型」と呼ばれる、それぞれ違った観測方法で天体を観測し

ているのが、現在の電波望遠鏡の観測手法である。では、「単一鏡型」と「干渉計型」とは

一体どういった観測方法であるかを説明しながら、それぞれの長短を見比べ、本研究は何

故「干渉計型」での観測方法を行ったのかを説明する。

受信機 分光器 計算機

図 12 電波望遠鏡の構造図

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15

(4)「単一鏡型」電波望遠鏡とは

望遠鏡は、どんな波長を観測するにもかかわらず、口径の大きさが一番重要である。た

だし、向いている方角の一点しか観測出来ない。

電波望遠鏡の場合、図 13のように、その方角から来る電波の総量のみが分かることにな

る。よって、

(視野の大きさ)=(分解能)

の式が成り立つため、

𝛉 =𝝀

𝑫 ····································· (3)

θ ························ 分解能

λ ························ 観測波長

D ························ 望遠鏡の有効口径

という式となる。

式(3)を見てみると、分解能を小さくするためには望遠鏡の有効口径を大きくすればいい

ので、口径が大きな望遠鏡を建設すればよいのである。特に電波の波長は可視光よりも桁

違いに長いので、面精度の要求は低くてすむので、大口径のものが作られた。

現在、世界最大のものは、アメリカが 1963年にプエルトリコのアレシボに建設した口径

305mの球面鏡があり、観測波長は 0.03~1mである。

図 13 電波望遠鏡による観測

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日本も 1982年、長野県の野辺山に口径 45mのパラボラ鏡を建設した(図 15)。口径はア

レシボに及ばないが、面精度が 0.1mm 以下であり、上述のものがセンチ波(波長 1~10cm)

以上の電波しか観測できないのに対して、45m 鏡はミリ波を観測することもできる。その

意味で、これはミリ波観測の最大の望遠鏡である。

だが、地上でアレシボよりも口径を大きくし、面精度を良くしながら建設するのは非常

に困難となってきた。望遠鏡の分解能の値は「波長÷口径」に比例するので、波長の長い電

波の波長では分解能は低い。そこで考案されたのが、「干渉計型」電波望遠鏡である。

図 14 野辺山宇宙電波観測所の口径 45mミリ波望遠鏡

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(5)「干渉計型」電波望遠鏡とは

干渉計型電波望遠鏡とは、単一鏡型電波望遠鏡が 2 台以上の望遠鏡を同時観測することによって、たった一つの電波望遠鏡として扱う望遠鏡である。

その為、視野の大きさは単一鏡型電波望遠鏡と同じではあるが、分解能𝜃は

𝜽~𝝀

𝑳 ··················································(4)

θ ························ 分解能

𝜆 ························ 観測波長

𝐿 ························ アンテナ間の距離

となる。アンテナの間隔のことを基線(baseline)と呼ぶが、この基線の距離 Lを延ばすほど

分解能は高くなる。ちなみに、これが超長基線電波干渉計 VLBI(Very Long Baseline

Interferometer)である。例えば、アメリカでは 1993 年にアメリカ国内に設置された口径

25m のアンテナ 10 台と VLA とを組み合わせて、口径 8600km に相当する干渉計

VLBA(Very Long Baseline Array)が建設された。

日本も 2003 年に、水沢(岩手県)、入来(鹿児島県)、小笠原(東京都)、石垣島(沖縄県)の 4

局に、口径 20mのアンテナを設置して、口径 2300kmに相当する干渉計型電波望遠鏡を建

設した。

ただし干渉計型の場合、アンテナとアンテナの距離を離すと、分解能が上がる一方で感

度が下がるという問題がある。そのため、これらの干渉計型電波望遠鏡は観測できる天体

が限られている。

アンテナ間の距離 L

図 15 干渉計型電波望遠鏡の配置

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図 16のように、電波の波面は光線に垂直になってやってくる。これがアンテナにやって

くるのだが、アンテナ①の方が先に天体の電波を受信する。よって、図の赤い波の部分が

電波の進む距離の差となる。よって到達時間の差は、

𝝉𝒈 =𝑫 𝒔𝒊𝒏 𝜽

𝒄 ············································(5)

𝜏𝑔 ························ 幾何学的遅延

𝐷 𝑠𝑖𝑛 𝜃 ·················· 光路差

𝑐 ························· 光速度

となる。これを「幾何学的遅延」という。

大口径鏡ほど分解能が高いのは、鏡のより広い範囲から来る放射を一点に集めて干渉さ

せた結果、回折像がより小さくなるからである。したがって、大きな鏡の作成が無理であ

るならば、小さな鏡を広い配置に配置し、それらの鏡で受け取った放射を干渉させれば、

高い分解能が得られることになる。そのような構想で干渉計型電波望遠鏡による観測が始

められた。現在、干渉計による観測は可視光でも行われているが、電波のほうが早かった

のは、波長の長い電波のほうが容易に干渉させることが出来るからである。

干渉計による観測には、望遠鏡群をコンパクトに配置することによって、その基線長が

たった一つの反射鏡の口径に相当する分解能を得られる方法で観測している望遠鏡がある。

例えば、アメリカがニューメキシコ州ソテロから約 80km西に、1980年に建設した巨大干

渉計 VLA(Very Large Array)は、可動式の口径 25mパラボラ鏡 27台を 36kmの範囲に配

置しており、波長 0.7~400cmの観測で 40mm秒角の分解能を得ている。

日本も 1982 年、野辺山にミリ波干渉計を建設し、口径 10m のパラボラ鏡 6 台を 600m

の範囲に配置してミリ波で 1 秒角ほどの分解能の観測をしている。また、それに隣接して

1992年に建設された電波ヘリオグラフと呼ばれる干渉計では、口径 80cmのパラボラ鏡 84

台を 500m弱の範囲に配置して 1cm前後の波長で太陽からの電波を 5秒角ほどの分解能で

0.1秒の時間間隔で観測している。

アンテナ間の距離 D

① ②

𝜽 𝜽

図 16 干渉計型望遠鏡の構造図

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(6)ALMAとは

ALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)

ALMA は、日米欧が共同で南米チリのチャナント―ル・パンパラボラ領域に広がる標高

5000m近い高地で建設されたミリ波・サブミリ波帯の電波干渉計である。ALMA では、直

径 12m の高精度アンテナと、広がった構造を捉えるための小口径の超高精度アンテナ 16

台(直径 12mが 4台と直径 7mが 12台)の ACA(Atacama Compact Array)を組み合わせた

システム(ただし、cycle0の時には 12mアンテナが 16台のみで運用していた)で、開口合成

面積 100m 鏡級の集光力と 15km の基線長による高分解能 0.035 秒角という、これまでの

ミリ波干渉計をはるかにしのぐ分解能と感度が達成されている。

表 2 で示しているデータは Bolatto.et.al (2013)を使用した。解析に使用したデータは

Bolattoのチームが観測提案したものであり、ALMAの全てのデータには言えることではな

い。

Beam Position Angle −𝟏𝟒. 𝟓𝟐 𝒅𝒆𝒈

Resolution 𝟑. 𝟏𝟑 × 𝟐. 𝟐𝟏 (𝒂𝒓𝒄𝒔𝒆𝒄)

𝟓𝟏 × 𝟑𝟔 (𝒑𝒄)

感度 𝟔 𝒎𝑱𝒚/𝒃𝒆𝒂𝒎 𝟓𝟒 𝒎𝒌 𝟐. 𝟓 𝒌𝒎/𝒔

図 17 夜空を見上げる ALMA

表 2 データの緒元

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3. 研究方法と結果 NGC253の CO輝線観測のデータは、ALMAによるものを用いた。ALMAの観測データ

は、ある一定期間を過ぎると全てアーカイブデータとして一般利用が出来るようになって

おり、それを利用した。

3.1 ALMA のデータの所得

まず初めに ALMA のデータを取得する必要がある。そこで ALMA アーカイブデータに

ついて説明する。ALMAのアーカイブデータを使う場所は2つある。1つは直接 ALMAの

サイトにアクセスし、未解析の生データをダウンロードする。もう1つが、「JVO Data

Search」である。

JVO Data Searchには 1次リダクションされたデータが公開されている。そのデータを

使って、銀河の質量を得ることにする。

3.2 データの選択

次にデータを選択する。データは観測された波長などによって分けられている。使用目

的によって、目標天体や観測された波長が異なることがある。今回は一酸化炭素 CO12 (J=1-0)

分子輝線の領域のデータを選んだ。

3.3 データ解析

データを取得後、回転曲線を作成するのだが、回転曲線を得るためには位置-速度図

(Position-Verocity diagram:PV図)を作成した後に回転曲線をグラフとして示すのが必須

となっている。

位置-速度図(PV図)とは、天球上で広がりをもつ天体に対して、ある空間方向 1次元の断

面で観測した線スペクトルのデータ列を基に、横軸にその方向の位置をとり、縦軸に速度

をとって線スペクトルの強度分布を表示した図のことで、その方向の線スペクトルの速度

変化を読み取るのに適している。これらの解析には、電波天文学ではよく使われている

「AIPS」を使用して PV図を作成した。

図 18 JVO Data Searchの HP

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(1)AIPSについて

AIPS(Astronomical Image Processing System)とは、主に電波観測で得られたデータ解

析のために使用されている解析ソフトである。AIPSの他にも、ALMAのデータ解析の為に

開発された CASA(Common Astronomy Software Applications package)などもある。今回

は AIPSを使って解析を行い、PV図を作成する。

(2)PV図の作り方

観測によって得られたデータは、三次元情報からなっている。これは図 19のようになっ

ていて、X 軸(赤経:RA)と Y 軸(赤緯:DEC)は観測天体(青色の部分)の占める座標を表し、

Z軸(V)はその天体の視線速度であるということがこのデータの特徴である。

電波望遠鏡は天体の空間情報(輝度分布)だけでなく、スペクトル線の分光観測により速度

が得られる装置であるので、スペクトル線の静止周波数がわかっている場合は、観測され

た周波数とのずれがドップラー効果であるとすると、視線速度 Vが求められる。

これらより、一群の観測データからは、3 次元(空間 2 次元+速度 1 次元)データキューブ

が得られる。

図 19 3次元データキューブ

RA

De

c

V

図 20 NGC253の表面輝度図

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図 20はNGC253の(RA-DEC)の表面輝度図である。強度の強さを色で表しており、赤い

色は一番強度が高いということを示している。

(RA-DEC)の表面輝度図に銀河の長軸方向(1ピクセルあたり 0.5秒角)を図 21のように入

れ、X、Y座標を固定する。

図 19の 3次元データキューブにある銀河を水平にする。これは、水平にすることで観測

天体の長軸に沿ったピクセルのデータを容易に取り出せるからである。

図 22 銀河を水平にした 3次元データキューブ

X

Y

V

図 21 NGC253の表面輝度図

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水平にした銀河の 3 次元データキューブ(図 22)の Y 軸と Z 軸を入れ替える。(X、Y、V)

の 3次元空間での CO強度の分布から Y 方向に中心部にある範囲を起用し、(X、V)の 2次

元上での CO 強度の分布を得る。その強度分布を強度のピークの 80%、60%、40%、20%

の等高線を引いたものが図 24の PV図である。

図 23 PV図の完成例

X

Y

V

図 24 NGC253の PV 図

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さて、図 24の横軸を 1秒角(銀河の長軸方向では 2ピクセル)おきに Vに対する CO強度

の分布(スペクトル)を並べたものが、下の図 25である。

-25秒角 -24秒角 -23秒角

-22秒角 -21秒角 -20秒角

-19秒角 -18秒角 -17秒角

-16秒角 -15秒角 -14秒角

-13秒角 -12秒角 -11秒角

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25

-10秒角 -9秒角 -8秒角

-7秒角 -6秒角 -5秒角

-4秒角 -3秒角 -2秒角

-1秒角 0秒角 1秒角

2秒角 3秒角 4秒角

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26

5秒角 6秒角 7秒角

8秒角 9秒角 10秒角

11秒角 12秒角 13秒角

14秒角 15秒角 16秒角

17秒角 18秒角 19秒角

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27

20秒角 21秒角 22秒角

23秒角 24秒角 25秒角

この視線方向の速度 Vに対する CO強度の分布図の意味する所を考えてみる。

今、CO 分子が図 26 のように銀河の中心の周りを円運動しているとする。簡単のため、

回転速度はどの場所でも一定(𝑣𝜑,0)であるとする。

図 26 銀河の回転

図 25 視線方向の速度 Vに対する CO強度スペクトル

(このデータの感度は 6mJ/beamである)

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求めた図 25のスペクトルは、図 26 で見ると X上にある点𝑋0から、Y方向に沿って回転

速度を Y方向へ斜線した速度𝑉𝜑を、重ねて見ているものとなる。ここで、

𝑽𝝋(𝒀) = 𝑽𝝋,𝟎𝑿𝟎

√𝑿𝟎𝟐+𝒀𝟐

······································ (6)

である。

ところで、回転円盤上の(𝑋0, Y)付近の∆𝑋 ∙ ∆𝑌 ∙ 𝐷(Z 方向の厚みを D とする)の微小体積か

ら発生られる CO輝線強度、∆𝐼は、その場所での COの数密度𝑛𝑐𝑜(𝑋0𝑌)に比例するとして、

∆𝑰 = 𝑪𝒏𝒄𝒐(𝑿𝟎, 𝒀) ∙ ∆𝑿∆𝒀 ∙ 𝑫 ······························ (7)

と仮定する。また、𝑛𝑐𝑜は中心からの距離 Hのみによるとして、

𝒏𝒄𝒐 = 𝒏𝒄𝒐,𝟎𝒆−(𝑿𝟎

𝟐+𝒀𝟐)𝟏𝟐

𝑯 ································· (8)

で表しておくとする。ここで式(A)は、

図 27 上から見た銀河の回転

𝑋0

𝑌

𝑉𝜑,0

𝑉𝜑(𝑌)

X

Y

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29

𝑽𝝋

𝑽𝝋,𝟎≡ 𝑾 ·········································· (9)

とおくと、

𝑾𝟐 =𝑿𝟎

𝟐

𝑿𝟎𝟐+𝒀𝟐

··································· (10)

とかけるから、

𝐘 = (𝑿𝟎

𝟐

𝑾𝟐− 𝑿𝟎

𝟐)

𝟏

𝟐= 𝑿𝟎 (

𝟏

𝑾𝟐− 𝟏)

𝟏

𝟐 ······················ (11)

よって、

∆𝐘 =−𝑿𝟎

𝑾𝟐(𝟏−𝑾𝟐)𝟑𝟐

∆𝑾 ····························· (12)

となるから、式(7)は

∆𝑰 = 𝑪𝒏𝒄𝒐,𝟎𝒆−𝑿𝟎𝑾𝑯 ∙

𝑿𝟎

𝑾𝟐(𝟏−𝑾𝟐)𝟑𝟐

∙ ∆𝑿 ∙ 𝑫 ∙ ∆𝑾 ················ (13)

となる。∆𝐼 ∆𝑊⁄ をWの関数で書くと、

のようになる。これに COの出す分子雲のランダムな運動(速度~10km/s)のものが重なって

観測されるとすると、観測されるスペクトルは

1

図 28 W の関数図

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のようになるはずである。これと観測した X方向ごとのスペクトルを比べて𝑉𝜑,0を求めるこ

とが出来る。

1

図 29 観測にされるスペクトルの理論図

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3.4 PV図から回転曲線を描く

PV 図を作成した後は、計算をして回転曲線を描く。まずは、図 24 の PV 図の銀河中心

距離 0 から半分に分け、1 秒角ごとに最大ピークレベルの 20%の位置をプロットし、プロ

ットした所の速度を 1km単位で読み取る。

次に、ExcelやMathematicaなどを使って、

(プロットした点の位置の速度)-(銀河の後退速度) ············· (14)

で計算し、計算された速度を、銀河中心距離 0 を境に速度差の絶対値をとって平均の視線

速度を出す。

その後、銀河の傾き(inclination)の補正を行うことで回転速度を計算する。ここで、銀河

の傾き補正の計算式について説明する。

図 30 PV 図にプロットした回転曲線

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図 31のように、回転軸 aをもつ銀河(青色)を右の矢印から見ると、銀河の回転速度𝑣は、

𝒗 =𝒗𝒓𝒂𝒅

𝒄𝒐𝒔(𝟗𝟎−𝒊) ··································· (15)

𝒗 ························· 銀河の回転速度

𝒗𝒓𝒂𝒅 ······················ 銀河の視線速度

𝒊 ·························· 銀河の傾き

の式になる。この式が銀河の inclination補正を行う計算式である。そして、この計算式を

用いて回転曲線を描くが、横軸はパーセク(𝑝𝑐)にしたいので、

𝑹 = 銀河までの距離(𝒑𝒄) ×𝝅

𝟏𝟖𝟎×𝟑𝟔𝟎𝟎× (秒角) ·········· (16)

𝑹 ························· 銀河中心距離(𝒑𝒄)

秒角 ····················· 銀河中心距離の秒角

から求めた。その結果、NGC253の回転曲線は図 32のグラフによって示した。

𝟗𝟎 − 𝒊

𝟗𝟎 − 𝒊

𝒊

𝒗

𝒗𝒓𝒂𝒅

𝐚

図 31 銀河の傾きの説明

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図 32は、図 28の PV図から描いた NGC253の回転曲線である。このグラフを見る限り

だと、NGC253の回転速度は銀河中心距離50𝑝𝑐ではおよそ140𝑘𝑚/𝑠と表している。

図 32 NGC253の回転曲線

回転速度

(𝒌𝒎

/𝒔)

銀河中心距離(𝒑𝒄)

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3.5 回転曲線から質量を求める

得られた回転曲線より、球対称の質量分布を仮定して質量分布を計算する。この式は 1.2

の式(2)を変形することによって、

𝑴𝑹 =𝑹𝒗𝟐

𝑮 ········································ (17)

𝑴𝑹 ··························· 回転内の天体の質量の和

𝑹 ····························· 銀河中心から天体までの距離

𝒗 ····························· 円運動の速度

𝑮 ····························· 重力加速度

の式が得られるので、質量を求めることが出来る。この式を先ほど求めた回転曲線に使用

すると、図 33のようなグラフが出来る。

図 33は、銀河中心距離に対しての質量である。このグラフを見ると、50𝑝𝑐の半径の中に

2.3 × 108𝑀⨀の大質量が存在していることが判明した。

図 33 NGC253の質量分布

銀河中心距離(𝒑𝒄)

質量

(𝟏𝟎𝟖𝑴

⨀)

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4. 考察 本研究によって、NGC253の回転速度は

銀河中心距離50𝑝𝑐・・・・およそ140𝑘𝑚/𝑠

と判明した。よってこの結果を利用して、先行研究と比較をしてみる。

図 34は、本研究で得られた回転曲線と先行研究である Sofue.et.al (1999)を比較したグラ

フである。青い線(先行研究)が銀河中心部では点線となっているのは、観測機器の分解能と

感度を考慮し、点線部分は誤差が大きいのではないかと考え、あえて点線とした為である。

また、先行研究で NGC253 までの距離が2.5𝑀𝑝𝑐と現在の値と違っていた為、図 34 のグラ

フは、2.2 の表 1 にある NGC253 までの距離を3.4𝑀𝑝𝑐として統一しており、この値は研究

結果で出した全グラフにおいて統一している。

このグラフを見てみると、回転速度が flatとなっていることがわかる。よって、NGC253

の回転速度は、銀河中心距離に対して影響していないということが判明した。また、本研

究の結果は、先行研究では得られなかった銀河中心距離~130𝑝𝑐よりも内側までの回転速度

を導いたことを表している。これは本研究で使用した観測機器の分解能が、先行研究より

も詳細な結果をもたらしてくれることを意味する。

また、NGC253は bar銀河なので、非円運動(Non-circular Motion)により質量を大きく

見積もる可能性があるが、Koda&Wada (2002)によるシミュレーションによれば、渦巻銀河

中心部の質量は大きく見積もっても最大 5~6 倍となるので、図 30 より、本研究の結果が

図 34 Sofue.et.al (1999)との比較

銀河中心距離(𝒑𝒄)

回転速度

(𝒌𝒎

/𝒔)

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最も overestimateしていた場合でも108𝑀⨀の大質量のコアは存在することが判明した。こ

の結果を利用して、NGC253の質量面密度を求める。

銀河中心距離𝑅が、𝑅~100~数 100𝑝𝑐スケールでの回転曲線はほぼ flat になっているよう

に見えるので、3.5の式(17)を変形すると、

𝑴𝑹 ∝ 𝑹 ··············································· (18)

となる。密度𝜌は、

𝝆 ∝𝑴𝑹

𝑹 ··········································· (19)

だから、𝑅~100~数 100𝑝𝑐あたりの密度分布は、

𝝆 ∝ 𝑹−𝟐 ·············································· (20)

となる。次に具体的な計算式を説明する。

まず、単位面積当たりの質量を計算するので、

∆𝐌 = 銀河中心距離𝐛の質量−銀河中心距離𝐚の質量 ······ (21)

という式を使う。

次に単位面積を計算するため、

∆𝐀 = 𝛑𝒃𝟐 − 𝝅𝒂𝟐 ······································· (22)

という式を使う。

最後に、

∑ =∆𝑴

∆𝑨 ············································· (23)

と計算を行えば、質量面密度を導くことが出来る。よって、式(23)を計算した結果は、図

35である。

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図 35は、銀河中心距離に対しての質量面密度である。これはある距離 aからある距離 b

までの間にある一酸化炭素CO12の質量がどの位存在しているのかを示したグラフである。

このグラフを見ると質量面密度は銀河中心部が一番ピークとなり、その後は急斜面にな

っている。このことから、NGC253の質量は銀河中心部に集中していることが図 35によっ

て示せた。

質量面密度

(𝟏𝟎𝟒𝑴

⨀/𝒑𝒄𝟐

)

銀河中心距離(𝒑𝒄)

図 35 NGC253の質量面密度

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5. まとめ ALMAのデータを使うことで、今まで見えなかった NGC253の銀河中心の詳細が明らか

になった。本研究により、

銀河中心距離50𝑝𝑐では銀河の回転速度は~140km/sである

銀河中心距離50𝑝𝑐の半径内に2.3 × 108𝑀⨀の質量が存在している

ことが判明し、空間分解能の範囲内において、中心部での回転速度は140𝑘𝑚/𝑠から下がら

ずほぼ flat であることがわかった。このことにより、銀河中心部には回転速度をほぼ一定

に保つ物体が存在していることが証明された。

また、銀河中心距離に対する質量の制限を付けた先行研究によると、

Koda.et.al (2001)

近傍銀河NGC3079 ································ M~109𝑀⨀(R~100𝑝𝑐)

Sofue.et.al (2003)

おとめ座銀河団 12個の銀河 ····················· M~109𝑀⨀(R~200𝑝𝑐)

という制限を付けているが、本研究の結果は先行研究よりもさらに内側までの半径に対す

る質量の制限を付けたことになる。

それと、質量面密度を調べることによって、銀河中心部の狭い範囲内に大質量なコアが

存在することも突き止めた。

今後の研究では、質量分布を求める為の回転曲線に関する更なる改良と、それに伴う膨

大なサンプルデータの収集を考えている。

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6. 備考 6.1 研究結果における NGC253のデータ表

(1)NGC253の回転曲線作成のためのデータ表

回転速度(𝒌𝒎/𝒔) 銀河中心距離(𝒑𝒄)

114.65 0

122.00 16.48

129.35 32.95

137.68 49.43

144.54 65.90

146.50 82.38

147.48 98.85

124.45 115.33

123.96 131.80

121.51 148.28

117.59 164.75

106.32 181.23

109.75 197.70

110.73 214.18

111.22 230.65

110.24 247.13

108.28 263.60

108.28 280.08

109.75 296.56

110.73 313.03

99.95 329.51

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(2)NGC253の質量分布作成のためのデータ表

質量(𝟏𝟎𝟖𝑴⨀) 銀河中心距離(𝒑𝒄)

0.57 16.48

1.28 32.95

2.18 49.43

3.21 65.90

4.12 82.38

5.01 98.85

4.16 115.33

4.71 131.80

5.10 148.28

5.30 164.75

4.77 181.23

5.54 197.70

6.11 214.18

6.64 230.65

6.99 247.13

7.20 263.60

7.64 280.08

8.32 296.56

8.94 313.03

7.66 329.51

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(3)NGC253の質量面密度作成のためのデータ表

銀河中心距離(𝒑𝒄) 質量面密度(𝑴⨀/𝒑𝒄𝟐)

16.48 66979.28

32.95 27868.33

49.43 21063.78

65.90 17163.86

82.38 11871.83

98.85 9487.04

115.33 -7644.66

131.80 4354.30

148.28 2634.90

164.75 1277.25

181.23 -2984.75

197.70 3951.67

214.18 2673.77

230.65 2297.34

247.13 1414.40

263.60 769.48

280.08 1598.87

296.56 2249.20

313.03 1964.27

329.51 -3826.01

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6.2 Sofue.et.al (1990)にある NGC253のデータ表

(1)Sofue.et.al (1990)のデータ表(変更前)

Sofue.et.al (1999)による

NGC253 の銀河中心距離(pc)

Sofue.et.al (1999)による

NGC253 の回転速度(km/s)

0 0

50 135.63

100 190.13

150 198.31

200 200.81

250 200.99

300 200.14

350 198.96

400 197.77

450 196.48

500 195.19

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(2)Sofue.et.al (1990)のデータ表(変更後)

Sofue.et.al (1999)による

NGC253の銀河中心距離(pc)

Sofue.et.al (1999)による

NGC253の回転速度(km/s)

0 0

68 99.73

136 139.79

204 145.82

272 147.66

340 147.79

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7. 参考文献 論文

[1]. Bolatto.et.al (2013) arXiv1307.6259B

[2]. Dalcanton.et.al (2009)ApJS.183.67D

[3]. Honma&Sofue (1997) PASJ.49.453H

[4]. Koda.et.al (2002) ApJ.573.105K

[5]. Koda&Wada (2002) A&A.396.867K

[6]. Navvaro,Frenk&White (1996) ApJ.462.563

[7]. Sofue.et.al (1999) ApJ.523.136S

[8]. Sofue.et.al (2003) PASJ.55.59

[9]. Sofue.et.al (2003) PASJ.55.17S

[10]. Sofue&Rubin (2002) ARA&A.39.137S

書籍

[1]. 岡村定矩(編)『天文学辞典』(シリーズ現代の天文学)、日本評論社

[2]. 谷口義明(他)『銀河Ⅰ』(シリーズ現代の天文学)、日本評論社

[3]. 祖父江義明(他)『銀河Ⅱ』(シリーズ現代の天文学)、日本評論社

[4]. 家正則(他)『宇宙の観測Ⅰ-光・赤外天文学-』(シリーズ現代の天文学)、日本評論社

[5]. 中井直正(他)『宇宙の観測Ⅱ-電波天文学-』(シリーズ現代の天文学)、日本評論社

[6]. 石田蕙一『銀河と宇宙』(理科年表読本)、丸善株式会社

[7]. 祖父江義明『銀河物理学入門』(BLUE BACKS)、講談社

[8]. 岡村定矩『銀河系と銀河宇宙』、東京大学出版会

[9]. 塩谷泰広;谷口義明『銀河進化論』(天文学・宇宙科学叢書)、プレアデス出版

[10]. 富田晃彦『活きている銀河たち-銀河天文学入門-』(EINSTEIN SERIES)、恒星社厚

生閣

[11]. 国立天文台(編)『干渉計サマースクール 2005 教科書』

[12]. 赤羽賢司(他)『復刻版 宇宙電波天文学』、共立出版株式会社

[13]. 祖父江義明『電波でみる銀河と宇宙』(モダン・スペース・アストロノミー・シリー

ズ)、共立出版

[14]. 吉田一男;海部宣男『改良版 宇宙を読み解く』、放送大学教材

[15]. 桜井邦朋『現代天文学が明かす宇宙の姿』、共立出版株式会社

[16]. James Binney ; Scott Tremaine『GALACTIC DYNAMICS』、PRINCETON SERIES

IN ASTROPHYSICS

画像

[1]. 2MASS

[2]. すばる望遠鏡

ホームページ

[1]. 祖父江義明個人のHP

http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/~sofue/indexj.html

[2]. NASA/IPAC-NED

http://ned.ipac.caltech.edu/

[3]. JVO Data Search

http://jvo.nao.ac.jp/portal/top-page.do

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8. 謝辞 この研究をするにあたり、小野寺幸子先生には、学部生の時から貴重な時間を使って、

電波、銀河、「AIPS」を初めから教えてもらい、井上一先生には、1年間知識が乏しい私の

為にいろんなアドバイスを授けて頂きまして有難う御座います。お二人には最初から最後

までいろんな知識を教えてもらい、感謝感激で一杯です。

退任してしまった祖父江義明先生や、明星大学天文台長(?)の日比野さんには、迷惑をか

けてばかりでしたけど、質問に対しては丁寧な回答で答えて貰いまして有難う御座います。

また、今は工学院大学で勤務している小麥真也さんは、私のような素人にNGC300の観測

や解析に参加させてもらいまして有難う御座いました。

研究室仲間の博士後期課程の津田さん、博士前期課程の阿久津さん、大枝さん、倉橋さ

ん、同級生や下級生には、とてもとてもやさしく研究室を出迎えてもらいまして有難う御

座います。皆さんのおかげで研究室がとても居心地良くさせてもらい、研究室外での飲み

会やカラオケに連れていってもらいとっても感謝しています。

またこのような論文が書けるのでしたら、謝辞にはこれ以上の人々と関わっていきたい

です。最後にはなりますが、私に関わった全ての皆様、本当に有難う御座いました。