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テクノロジー 2009 –93– 静脈麻酔管理に対応した自動麻酔記録システム * * * * * はじめに ・各 する「 カルテ」 あり, 々に まりつつある.一 ,患 モニターからオンライ して しつつある につ がっているか うか がある. 2008 4 するこ り,これに システム HISして NECカルテ システム(MegaOak), システム PrimeGAIA されるこ った.こ PrimeGAIA システム あり, あった.そこ に, してシステムを した から システム について する. 開発目標 システムに される して, した. 1. HIS から みが きる,2. をコンピューター うこ きる,3. オンラインにより チャートが される,4. するこ 態シュミレーションが きる,5. HIS し,HIS するこ 1 手術室エントランスでの HIS および部門システム システム(HISこれを して, りが より われる.右 システム(PrimeGAIAバーコードリー ダーを して患 われる. 2 エントランスで使用されるバーコードリーダー リストバンド をバーコードリーダー り, システム する に○ され る.一 × され, る. きる,6. システムに するこ きる. お, したシステムにおける 大学医学

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麻酔・集中治療とテクノロジー 2009 –93–

静脈麻酔管理に対応した自動麻酔記録システム

吉田祥子,長田 理 ∗,嵐 朝子 ∗,成島光洋 ∗,山崎隆史 ∗,尾崎 眞∗

はじめに

診療録・各種検査結果などの診療情報を電子

的に記録する「電子カルテ」は診療報酬上の優

遇措置などもあり,徐々に広まりつつある.一

方,患者情報を生体情報モニターからオンライ

ンで情報を収集して麻酔記録を自動的に作成す

る自動麻酔記録は普及しつつあるものの,我々

麻酔科医の業務軽減につながっているかどうか

は議論の余地がある.

当院は 2008年 4月に東京都中野区へ新設移転することとなり,これに伴い病院情報システム

(HIS)として日本電気(NEC)社製電子カルテシステム(MegaOak),手術部門システムとして日本光電社製 PrimeGAIAが導入されることとなった.この PrimeGAIAは最新型の日本光電社製手術部門システムであり,東京警察病院

が最初の導入病院であった.そこで,静脈麻酔

管理での先進的な機能を組み込むと共に,操作

性の改良を目的としてシステムを開発したので,

麻酔科医の業務軽減の面から本システムの特徴

について報告する.

開発目標

手術部門システムに要望される機能は以下の

6項目を重点課題として,開発目標を設定した.

1. HISからの手術申し込みができる,2. 手術室入室の確認をコンピューター上で行うことがで

きる,3. オンラインにより麻酔チャートが自動作成される,4. 薬物投与量を入力することで薬物動態シュミレーションができる,5. 麻酔記録情報を HISに転送し,HIS上で確認することが

図 1 手術室エントランスでのHISおよび部門システム

左側が病院情報システム(HIS)でこれを使用して,患者の申し送りが病棟看護師より行われる.右側が手術部門システム(PrimeGAIA)でバーコードリーダーを利用して患者の入室認証が行われる.

図 2 エントランスで使用されるバーコードリーダー患者のリストバンドの情報をバーコードリーダーで読み取り,手術部門システムの内容と一致すると画面上に○と表示され入室可能となる.一致しないと×と表示され,入室が不可能となる.

できる,6. 麻酔記録情報を麻酔台帳システムに対応することができる.

なお,開発したシステムにおける個々の具体

東京警察病院麻酔科∗東京女子医科大学医学部麻酔科学教室

–94– 静脈麻酔管理に対応した自動麻酔記録システム

的な内容は,次項「開発システムの特徴」で項

目ごとに説明する.

開発システムの特徴

1. HISからの手術申し込み

外科系医師が病院情報システム(HIS)より手術申し込みを行い,申し込みオーダーが発

行される.申し込みオーダーが発行されると

PrimeGAIA がその情報をうけとり,その手術申し込み情報をもとにタイムチャートを使用し

て手術室の割り当てなど利用スケジュールが作

成される.手術申し込みの仮締め切りは毎週金

曜日の正午でそれをもとに翌週分の定例手術が

決定される.手術確定である本締め切りは二日

後の手術分までである.そのため仮締め切りか

ら本締め切りまでの期間の申し込みは臨時手術

となり,本締め切り後の申し込みは緊急手術と

して扱う.また当然であるが,患者の基本情報

(身長・体重・血液型など)は申し込みオーダー

から自動的に転記される.

2. 手術室入室確認

患者誤認を防ぐために行われる手術室入室確

認作業は,患者の引き継ぎを正確かつ迅速に行

うことが要求される.本システムでは手術室入

室に際して患者に装着されたリストバンドの ID情報をバーコードリーダーで読み込み,瞬時に

手術予定と照合することができる.手術予定患

者であることが確認された場合には,手術室入

室処理が行われると共に手術室入室時刻が自動

的に麻酔記録に入力される.この際に,立ち会っ

た医療従事者(手術室看護師,病棟看護師,麻

酔科医,外科系医師)の ID をバーコードリーダーで同時に記録することができるため,当院

ではこの4者の ID を患者入室時に記録している.また,手術室退室時にも同様の手順を行う

ことで,手術室退室時刻が自動的に麻酔記録へ

入力される.

3. 麻酔チャートの自動作成

生体情報モニター(日本光電社製)からの血

図 3 全静脈麻酔での麻酔記録一段目は薬物投与歴が表示され,二段目は血圧(オレンジ色)・脈拍(緑点)・体温(黄色点)が表示されている.三段目は緑線がプロポフォールの予測血中濃度で黄緑線がプロポフォールの効果部位濃度,黄色点が BISの値を示している.

図 4 吸入麻酔での麻酔記録一段目・二段目は全静脈麻酔記録と同様で,三段目の明黄色線が吸入麻酔濃度,暗黄色線が呼気中の吸入麻酔濃度を表示している.

図 5 薬物動態シュミレーションの実際一段目はプロポフォールの予測血中濃度・効果部位濃度・BIS値を表示している.二段目はレミフェンタニルの血中濃度(C1)と効果部位濃度(Ce)を表示し,三段目はフェンタニルの血中濃度(C1)と効果部位濃度(Ce)を表示している.

麻酔・集中治療とテクノロジー 2009 –95–

図 6 転送される PDFファイルの一例この形で HISに転送され,病棟などの端末でも確認することができる.

–96– 静脈麻酔管理に対応した自動麻酔記録システム

圧・脈拍・酸素飽和度などはオンラインで情報が

転送され,それをもとに麻酔チャートが作成さ

れる.また接続機器であるシリンジポンプ(テ

ルモ社製の TE-371TCI& TE-332)からは薬物の持続投与濃度が,全身麻酔期(アコマ社製)か

らは呼吸器設定や吸入薬濃度がネットワーク経

由で情報を麻酔記録として表示・保存される.血

液ガス分析装置(ラジオメータ社製)からは血

液ガス結果が自動転送され,表示・保存される.

4. 薬物動態シミュレーション

近年,静脈麻酔薬の薬物効果を推定するため

に薬物動態シュミレーションが利用されている.

もしオンラインで収集された情報にもとづく薬

物動態シュミレーションが実行できれば,別途

にPDA機器を準備することなく実際の投与履歴に即した予測が可能となる.当院のPrimeGAIAは薬物動態薬力学モデルを用いたシュミレーショ

ンを実装しており,麻酔記録と同一画面上に表

示される.そのためリアルタイムに予測血中濃

度・効果部位濃度が計算され,トレンド表示さ

れていく.現時点でオピオイドは同時に一種類

の薬物(Remifentanylか Fentanyl)のみしか表示されないが,今後増やしていく予定である.

5. 麻酔記録情報のHIS転送

使用した薬物・麻酔手技料を含めた麻酔記録情

報がオンラインで HIS に転送される.これにより,手術室内の記録がペーパーレスで利用でき

る上に,医事請求の合理化が実現できるように

なった.また麻酔・看護記録を PDF形式でHISに転送することにより,手術室だけでなく病棟

の電子カルテ端末からも手術室記録を閲覧でき,

電子カルテから記録へのアクセスが可能となっ

た.しかし,最新の手術予定の確認や医事請求

現場からの手術伝票の確認などの要望に対応す

ることはできていない.

6. 麻酔台帳システムへの対応

麻酔記録に加えて偶発症に関する情報を入力

することで,日本麻酔科学会が提供する麻酔台

帳システムに対応することができる.よってデー

図 7 麻酔台帳システムに対応する画面手術情報や偶発症例情報をこの画面に入力することにより,麻酔台帳システムに情報が転送される.

ターベースとしての活用が可能となった.部門シ

ステムは手術情報を手術当日の 26時に JSA麻酔台帳システムに自動転送している.その手術

翌日以降から JSA麻酔台帳システムを利用することができ,記入漏れや必要事項の不備のない

転送データを手動で確定(登録)をする.転送

エラーデータは部門システムで修正すると(自

動的に)再送信される.集計や・検索には JSA麻酔台帳システムを利用する.

おわりに

本システムを一言で表現すると,「みんなのた

めの手術部門システム」となろう.従来の麻酔記

録は麻酔科医のみ記録に使用しているものがほ

とんどであるが,この部門システムは医師(麻

酔科医,外科系医師)・看護スタッフ(看護師,

臨床検査技師)・医療事務(コスト請求部門,物

品管理部門 SPD)が利用できることがその理由である.

部門システムは従来「自動麻酔記録システム」

と呼ばれており,麻酔チャートの自動作成が中

心であった.本システムでは単純な麻酔チャート

の作成に止まらず,リストバンドのバーコード

認証機能は,短時間で確実な患者認証だけでな

く,患者誤認の早期発見と医療安全の向上につ

ながることが期待される.さらに,シリンジポ

ンプからの情報処理により投与履歴(時刻,投

麻酔・集中治療とテクノロジー 2009 –97–

与速度)の自動記録や自動記録に基づく薬物動

態の予測(解析)が可能となったことから,単な

る記録としてのシステムではなく,麻酔管理に

有用な情報を提供する診断・治療支援システム

の面も加わっている.この分野については,今

後さらなる発展が期待されよう.

以上から,今回導入した PrimeGAIAは当初設定した開発目標像を満足する機能を持ちなが

ら,次世代の手術部門システムとして麻酔科医

の負担軽減につながる機能を備えており,スムー

ズな導入により麻酔科医の負担が大幅に軽減す

ることが確認された.

参考文献

1. 讃岐 美智義.自動麻酔記録装置の存在意義と可能性.麻酔  54 (Suppl.)S143~154,2005

2. 讃岐 美智義. 自動麻酔記録は麻酔器の発展にどうかかわるか. 日本臨床麻酔学会誌 26(5);516-521,2006

3. 奥田佳朗.麻酔記録の自動化. 日本臨床麻酔学会誌  8(3):239-241,1988

ABSTRACT

Electronic Recording System Correspondingwith Anesthetic Management for

Intravenous Anesthesia

Shoko Yoshida1, Osamu Nagata2,Tomoko Arashi2, Mitsuhiro Narushima2,Takashi Yamasaki2, and Makoto Ozaki2

Electronic Recording System Correspondingwith Anesthetic Management   The use ofElectronic Clinical charts which record med-ical records and test results electronically isslowly spreading. Additionally, an ElectronicRecording System Corresponding with Anes-thetic Management is spreading throughoutJapan. The latter collects information froma living body monitor online and automati-cally keeps an anesthesia record. But thereis room for the argument as to whether itleads to a reduction in the amount of ouranesthesiologists ’work. As our hospital wasmoved from Iidabashi to Nakano in Tokyolast April, we introduced a Hospital Informa-tion System (MegaOak) as electronic clinicalrecord keeping and Operation Department Sys-tem (PrimeGAIA) as an electronic recordingsystem corresponding with anesthetic manage-ment operation. PrimeGAIA is the newest sys-tem made by Nihon Kohden, and now thissystem, with it ’s high level of thoroughness, is used in the Tokyo Metropolitan PoliceHospital. We introduce a practical use situa-tion of this Electronic Recording System Corre-sponding with Anesthetic Management for In-travenous Anesthesia. And we report on thecharacteristics of this system from the aspectof a reduction in our duties.

1. Department of Anesthesia, Tokyo Metropoli-tan Police Hospital

2. Department of Anesthesiology, Faculty ofMedicine, Tokyo Women’s Medical Univer-sity