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東京都立新宿山吹高等学校 社会や地域からの刺激を積極的に取り入れた実践的な授業で、第一線で活躍できる人材を育成 クリエイティブツールが支援する、情報教育の先にある「社会」とのつながり 授業事例 | Campus 事 例 新宿山吹高等学校は、 1991年(平成3年)に創設された、単位制・無学年制による柔軟な教育を実施する 「新しいタイプの高校」。普通科と併せ、専門学科「情報科」を設置する都内唯一の高校でもある同校で は、平成29年度から文部科学省のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)の指定を受け、Adobe Creative Cloudなどのツールも活用しながら、高度な情報人材の育成を推進している。その経緯と教育効 果についてうかがった。 「情報デザイン」で取り組んだショップカード。地元商店会の 協力を得て、各店舗のインタビューから制作を行った 「情報コンテンツ実習」の様子。神楽坂の観光ガイドを題材に、 ARコンテンツやパンフレットなど様々な作品を制作 東京都唯一の情報科、初のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール指定 単位制・無学年制により、生徒一人ひとりが自分の興味とペースに合わせて自分で時間割を作成できる柔軟 な学習環境を提供するなど、特色ある教育で知られる東京都立新宿山吹高等学校。同校は東京都内で唯一 の情報科を設置し、専門教科「情報」に定められた全科目を開講、システム分野からコンテンツ分野まで幅広 い情報教育を提供していることに加え、平成29年度からは文部科学省のスーパー・プロフェッショナル・ハイス クール(SPH)の指定を受け、さらに深化した情報教育に取り組んでいる。 SPH事業において同校は、育成すべき人材像を「使命・情熱」「確かな技術力」「問題解決能力」の3要素を備 えた「多様な未来に対応する情報技術者」と定義。開校当初から採用していたアドビのクリエイティブツールも Adobe Creative Cloudにバージョンアップし、基礎的なコンテンツ分野の授業で利用するとともに、企業や高等 教育機関との連携授業や講演会、地域の協力で行う実習など、単元学習と社会や地域からの刺激を柔軟に組み 合わせた実践的な授業にも活用している。 実社会のニーズがリアルタイムに反映されるクリエイティブツールの教育効果 アドビのツールを活用して地域と連携する授業としては、主にIllustratorを用いて地元商店会のショップカード を制作する「情報デザイン」、地元・神楽坂の観光情報発信をテーマに、IllustratorやInDesignなどそれぞれの ツールを用いて作成した各種コンテンツを制作する「情報コンテンツ実習」、ウェブアプリケーションの総合的な 制作・運用をグループワークで行う「情報総合実習」(学校設定科目)などが挙げられる。また、活動の発表展示 や企業・高等教育機関との連携の際に用いる各種資料の制作にもCreative Cloudは欠かせないという。 SPH研究主任の和田祐二氏は「実社会で使われているツールを使うのが自然であり、思い通りの表現が制限な くできることは重要です。現代のクリエイティブ環境では、一口にコンテンツと言っても非常に幅が広くなってきて います。こうした実社会の変化をリアルタイムに反映するツールやチュートリアル、作例があるのもアドビ製品なら ではです。Creative Cloud内のツールは異なるツールであってもUIや操作の共通性が高く、少し慣れれば生徒自身 が、多彩なツールを自分で考えて活用できる点も利点です」と述べる。 東京都立新宿山吹高等学校 http://www.yamabuki-hs.metro.tokyo.jp/ 所在地:東京都新宿区山吹町81 概 要 東京都が生徒の多様なニーズに応え学校の特色 化を進めるため、1991年(平成3年)創設。普通科 と情報科を設置する単位制・無学年制の昼夜間 定時制、および通信制高校として開校。情報科は 専門教科「情報」の全科目と学校設定科目を開 講し、東京都唯一の専門学科情報科として幅広 い情報技術教育を提供する。 東京都立新宿山吹高等学校 SPH研究主任 和田祐二教諭 東京都立新宿山吹高等学校 藤田豊副校長 製品の利用目的 情報科におけるコンテンツ分野の 各単元を理解するための実習教材 として、また地 域・企業・高等 教 育 機関等と連携して行う校外活動で の各種コンテンツの制作ツールと して Adobe Creative Cloudを 採用した理由 専門高校として実社会で使われて いるツールを教育活動に使うこと は当然の選択。コンテンツの多様 化やクリエイティブ環境の変化な ど実社会のニーズがリアルタイム に反映されるツールであり実践的 な教育に役立つ アドビ製品を 使用している設備 パソコン教室のPC150台 使用製品:Adobe Creative Cloud ・ Illustrator ・ Photoshop ・ Premiere Pro ・ After Effects ・ Dreamweaver ・ Animate ・ InDesign

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東京都立新宿山吹高等学校社 会や地 域からの刺激を積極的に取り入れた実践的な授 業で、第一 線で活躍できる人材を育成クリエイティブツールが支援する、情 報教育の先にある「社 会」とのつながり

授 業 事 例 | Campus 事 例

新宿山吹高等学校は、1991年(平成3年)に創設された、単位制・無学年制による柔軟な教育を実施する「新しいタイプの高校」。普通科と併せ、専門学科「情報科」を設置する都内唯一の高校でもある同校では、平成29年度から文部科学省のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)の指定を受け、Adobe Creative Cloudなどのツールも活用しながら、高度な情報人材の育成を推進している。その経緯と教育効果についてうかがった。

「情報デザイン」で取り組んだショップカード。地元商店会の協力を得て、各店舗のインタビューから制作を行った

「情報コンテンツ実習」の様子。神楽坂の観光ガイドを題材に、ARコンテンツやパンフレットなど様々な作品を制作

東京都唯一の情報科、初のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール指定 単位制・無学年制により、生徒一人ひとりが自分の興味とペースに合わせて自分で時間割を作成できる柔軟な学習環境を提供するなど、特色ある教育で知られる東京都立新宿山吹高等学校。同校は東京都内で唯一の情報科を設置し、専門教科「情報」に定められた全科目を開講、システム分野からコンテンツ分野まで幅広い情報教育を提供していることに加え、平成29年度からは文部科学省のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)の指定を受け、さらに深化した情報教育に取り組んでいる。

 SPH事業において同校は、育成すべき人材像を「使命・情熱」「確かな技術力」「問題解決能力」の3要素を備えた「多様な未来に対応する情報技術者」と定義。開校当初から採用していたアドビのクリエイティブツールもAdobe Creative Cloudにバージョンアップし、基礎的なコンテンツ分野の授業で利用するとともに、企業や高等教育機関との連携授業や講演会、地域の協力で行う実習など、単元学習と社会や地域からの刺激を柔軟に組み合わせた実践的な授業にも活用している。

実社会のニーズがリアルタイムに反映されるクリエイティブツールの教育効果 アドビのツールを活用して地域と連携する授業としては、主にIllustratorを用いて地元商店会のショップカードを制作する「情報デザイン」、地元・神楽坂の観光情報発信をテーマに、IllustratorやInDesignなどそれぞれのツールを用いて作成した各種コンテンツを制作する「情報コンテンツ実習」、ウェブアプリケーションの総合的な制作・運用をグループワークで行う「情報総合実習」(学校設定科目)などが挙げられる。また、活動の発表展示や企業・高等教育機関との連携の際に用いる各種資料の制作にもCreative Cloudは欠かせないという。

 SPH研究主任の和田祐二氏は「実社会で使われているツールを使うのが自然であり、思い通りの表現が制限なくできることは重要です。現代のクリエイティブ環境では、一口にコンテンツと言っても非常に幅が広くなってきています。こうした実社会の変化をリアルタイムに反映するツールやチュートリアル、作例があるのもアドビ製品ならではです。Creative Cloud内のツールは異なるツールであってもUIや操作の共通性が高く、少し慣れれば生徒自身が、多彩なツールを自分で考えて活用できる点も利点です」と述べる。

東京都立新宿山吹高等学校http://www.yamabuki-hs.metro.tokyo.jp/

所在地:東京都新宿区山吹町81

概 要東京都が生徒の多様なニーズに応え学校の特色化を進めるため、1991年(平成3年)創設。普通科と情報科を設置する単位制・無学年制の昼夜間定時制、および通信制高校として開校。情報科は専門教科「情報」の全科目と学校設定科目を開講し、東京都唯一の専門学科情報科として幅広い情報技術教育を提供する。

東京都立新宿山吹高等学校SPH研究主任 和田祐二教諭

東京都立新宿山吹高等学校 藤田豊副校長

製品の利用目的

情報科におけるコンテンツ分野の各単元を理解するための実習教材として、また地域・企業・高等教育機関等と連携して行う校外活動での各種コンテンツの制作ツールとして

Adobe Creative Cloudを 採用した理由

専門高校として実社会で使われているツールを教育活動に使うことは当然の選択。コンテンツの多様化やクリエイティブ環境の変化など実社会のニーズがリアルタイムに反映されるツールであり実践的な教育に役立つ

アドビ製品を 使用している設備

パソコン教室のPC150台

使用製品:Adobe Creative Cloud ・ Illustrator ・ Photoshop・ Premiere Pro ・ After Effects・ Dreamweaver ・ Animate・ InDesign

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情報技術の教育に止まらず、情報技術を使って社会で活躍したい人材の育成へ SPHの指定校となった経緯について、和田氏は「情報社会といわれるなかで、情報科の存在感をどのように示すのか、どのような人材を育てていくのかという課題意識がありました」と振り返る。「教員は情報技術を教えることは当然できますが、ともすれば学校内の学びで終わりがちです。学んだことを社会でどう生かすかを考え、情報技術を使って社会で活躍する生徒を育てたいと考えました」。従来から生徒が日々触れていたアドビ製品は、その観点からも活用価値が高かったという。

 同校では学校外から講師を招いて、平成29年度にはクリエイティブツールが社会でどのように用いられているかを学ぶ「情報コンテンツ実習」の特別授業を、平成30年度にはAI(人工知能)が今後の社会にもたらす影響を中心とする講演会を実施した。「自分たちが使っているのと同じツールで、有名な映画や本も作られているというワクワク感。またコスト意識など、実社会では当然の情報技術活用の観点。情報や社会の未来についての意識。そうした、本校の目指す『社会に繋がる学び』の第一歩が得られたと思います」。

責任感、コミュニケーション、情報の受け手の視点 … 社会から得られた「学び」 このように、ツールを活用し社会との繋がりを意識する授業からは、生徒自身も様々な学びを得ている。情報科の青木さんは「地元商店会のショップカード作成では、実際に店舗に置いていただき、お店の印象や次回来店を左右する重要なものなので、プレッシャーを感じました」と話す。また青木さんは「課題研究」で、中学校への出張ワークショップや企業との連携ワークショップも経験した。「相手の時間や労力を割いていただき、大人の仕事として依頼を受けている以上、学校の授業だからという言い訳はできません。プロが使うツールを使っているので見た目は整ったとしても、そこだけで満足していてはいけないと感じます」。

 同じくショップカード制作を経験した水村さんは「最初はお店の方に何を聞いたら良いかもわからなくて、沈黙が恐怖でした」と笑う。しかし授業やAIに関する講演会での学び、またアルバイトなどの経験を経て「やはりコミュニケーションは大切で、AIとは違う人間の存在価値になる」と感じるようになったという。また第28回全国産業教育フェア山口大会で、学習成果や作品の展示を担当した大河内さんは「どうしたら人の目に止まるのか、どういうニーズに応えることを意識して作るのか、世に出たときどう評価されるかなど、デザインの向こうに、受け手がいることを意識するようになりました」と話す。さらに「例えばSNSや動画投稿サイトを見ていても、どういう人が運営しどのように利益を上げているのかといったことを考えるようになりました」と振り返った。

未来は予測がつかない。だからこそ「自ら学び続ける力」がこれからのすべての社会人に必要 文科省によるSPH事業の目的は、社会の第一線で活躍できる専門的職業人の育成を図ることだ。では、情報社会の第一線で活躍できる人材の条件とは何か。和田氏はそれを「基礎的な力に加え、変化に対応できる力、自ら学び続ける力を持っていること」と考えているという。「特定の分野に特化し専門性を持たせる教育もあり得るとは思いますが、情報社会の未来は予測がつきません。むしろ現段階では幅広い選択肢を知り、また社会と情報の関わりを学ぶなかで、自分のきわめたい進路を見つけて欲しい」。こうした教育方針に即し、同校ではルーブリックの開発も進めている。生徒自身が自己を客観的に評価し、今の段階や次の目標を具体的に把握できるツールとして、和田氏は「個々の授業も大切ですが、学び続けられる人材を育てるという観点からは、この『学びの自己評価』が非常に重要」と強調する。

 また、情報科教員の取り組みを支える副校長の藤田豊氏は「SPH事業を通じ教員にも生徒にも、0から1を作ることの大変さと楽しさ、達成感を経験してほしい」と根底にある思いを語る。「例えばショップカードを作るにしても『どんなデザインがいいですか?』と聞くのではなく、その事業に対する思いを聞き取ってデザインを提案できることが大切です。そもそも、東京都初のSPH指定校となったことで、現場の先生方は書類から授業まで本当に手探りで一つひとつを作り上げています。そうした先生方の姿からも、大勢の人々の日々の取り組みや思いで社会が成り立っていることを学んでほしいです」。

「主体的・対話的で深い学び」を推進 SPHの指定期間は原則として3年。その後は「SPH事業でできた社会とのつながりをいかに継続していくか、また蓄積できた活動の体系やノウハウを、学習指導要領改訂後の新カリキュラムにうまく整理・移行していくことが課題と考えています」と和田氏は語る。同校の場合、新カリキュラムで望まれる「主体的・対話的で深い学び」への対応は、先行する「社会に繋がる学び」やルーブリックの開発が軸。「また専門教科の情報には、従来にない『発信』や『サービス』の語を付した科目が登場し、どう伝えていくかという観点がより強くなってきていると感じます。マスメディア等では小学校からのプログラミング教育が注目されていますが、現代社会で必要とされているのはむしろその先、使い勝手や優れたユーザー体験を考えるUIやUXです。共通教科の情報においても、そうした観点から『情報デザイン』が意識されています。センスではなく、色彩や配置などの理論をおさえたうえで情報をデザインする力は、これからの社会で活躍するために普遍的に必要になる力だと思います。」と和田氏は分析する。

左から、情報科の大河内さん、水村さん、青木さん。アドビのツールに触れたときの感想を「一見難しそうだけれど、手を動かしていくうちに形になって、自分にもできそうだと楽しくなった」「自分で操作してみて、世界が変わった。何気なく見える動画も作るのはこんなに大変なんだなと刺激を受けた」「操作は簡単なのに、出来上がったものの完成度が高いのがうれしい」などと話した

第28回全国産業教育フェア山口大会の様子。展示ブースは4名の生徒が担当し、展示方法や声かけなどに工夫をこらすとともに、PHPを利用したアンケートシステムも作り、活動終了時の振り返りに生かした。意見発表では、「情報デザイン」「情報コンテンツ実習」などコンテンツ系授業の履修を通じて学んだことが発表された