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1 国士舘大学文学部教授 芸術療法士

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芸芸 術術 療療 法法

鈴 木 康 明国士舘大学文学部教授

芸術療法士

第第ⅠⅠ部部

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■芸術療法の定義

Arts Therapy

さまざまな表現活動を通して行う精神療法(人

間を理解し、成長を援助する治療法)の総称

■領域

絵画療法、コラージュ療法、陶芸療法、

箱庭療法、音楽療法、詩歌療法、心理劇、

ダンス療法など

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■原理

①表現

②遊び③創造性

原理Ⅰ

①表現

その1

表現することそれ自体=自己治癒的な意義

→抑圧された情動の解放

→完成させる喜び

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その2

表現されたもの=作った人と見守る人が交流

することでもたらされる意義

→深い内的世界の理解と交流

→作品を媒体にした想像による交流

→作品に投影された無意識内容の分析

その3

表現活動と集団=相互作用の持つ意義

→対人交流の活発化

→シェアリングによる気づき

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原理Ⅱ

②遊び

子どもにとっての遊び=成長の手だて

→発散、レクリエーション、カタルシス、抑圧された情動の解放、喜び、慰め、鼓舞、鎮静

→内的世界の形成

原理Ⅲ

③創造性

イメージや象徴による表現に活力を与える

創造性・・・・・・・→生きていく力

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■導入する際の留意点

その1

-計画的に行う

-目的を明確にする

-安易に行わない

-漫然と行わない

-実施対象の好みと意志を尊重する

-中止する勇気を持つ

その2

病態レベルでの把握

a 明らかに自我障害がある 禁忌

b 自我境界が希薄 自由連想法的、退行促

進的なものは禁忌

c 自我障害のおそれがない 可能

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■言葉の力

非言語的療法???

言葉は表現、イメージの表出を促す

表現、イメージは言葉の土壌である身体を刺激

する

第第ⅡⅡ部部

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◎なぐり描き法

◎卵画

第第ⅢⅢ部部

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■コラージュ

collage フランス語で糊付け(する)ことの意味

-現代美術の技術の一つ

-雑誌やパンフレット、カタログなどの既成のイ

メージを、はさみなどで自通に切り抜き、それを台紙のうえで再構成し、糊付ける

■美術史におけるコラージュ

パピエ・コレキュビズム(立体主義)の技術の一つ。抽象的な画面に、新聞紙や切符、楽譜、ラベルなどの断片を貼り付ける。

ピカソ『籐椅子のある静物』(1912)を発表、これ以降1914まで盛んにコラージュを制作する。

マルセル・デュシャン『自転車の車輪』(1913) 初めてのレディメイド作品

マックス・エルンスト『百頭女』(1929)

シュールレアリスム(超現実主義)運動

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■日本での動き

美術として

1977 横尾忠則 1987 池田満寿夫

個人心理療法として

1986 山中康裕 クライエントの自発的な制作

1987 森谷寛之 治療技術として導入、発表

1989 森谷寛之、杉浦京子・入江茂、発表

■コラージュ療法の実際

-準備するもの

-教示

-時間

-場所

-方法

-特質 など

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準備するもの

①素材 雑誌、パンフレット、カタログ、チラシ、

新聞、マンガなど

②台紙 A4~A3、B4~B3判の画用紙また

はケント紙

③その他 糊、テープ、ハサミ、カッターなど

教示

これらの切り抜き(雑誌やパンフレット)のなか

から、自分が気になるもの何か心ひかれるもの

を選び(切り抜き)、台紙の上で構成して下さい。

それができましたら、糊付けして下さい。

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時間の制限

特に設けない

方法

◎コラージュ・ボックス法

◎マガジン・ピクチャー・コラージュ法

◎その他

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特質

◎簡便性

-表現上の技術はほとんど問わない

-広範な対象に実施できる

◎治療的要因が強い

-心理的な退行を促す

-自己表出が可能である

-自己表現と美意識が確保できる

-作品の完成がもたらす達成感を味わえる

-内面の意識化も可能である

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◎「自分らしさ幻想」からの解放

-選択の自由 嫌なら切らないでよい

-組み合わせの自由 あらゆる組み合わせが可

能である

-自由自在に自分が作った作品は唯一無二の

ものである

■コラージュ・ボックス法

雑誌などから、あらかじめ絵や写真、文字など

を切り抜いておき、箱に入れておく。そこから紙

片を選んでもらう。

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素材を集める際の留意点

-できるだけ自己表現がしやすいものを集める

-可能な限り幅広い主題や領域から選ぶ

特質

-事前に切片の内容がわかっている

-危ないイメージを取り除けるなど内容の調整

ができる

※集団での使用はむずかしい

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■マガジン・ピクチャー・コラージュ法

自分が日頃見慣れている雑誌などを、自分で

切り抜く。

特質

-集団でも使用できる

-思いもよらぬ表現が生まれることもある

※何が表現されるかわからない

※制作者の想像力がもたらす制限が見られる

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■フィードバック

◎話し合う

-作っている時何を感じていましたか?

-この切り抜きとてもいいですね、何でしょう

か?

-終わった今どんな感じですか?

※解釈や評価を優先させない

■適用の際の留意点

◎自由と安心の保障

なにを表現してもよいし、表現しなくてもよい

◎共感的理解

制作者の内的な世界に関心を寄せる

◎制作の自由

強制的に作らせない

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◎集団で行う時

無理やりしない 自由であること

作品をバカにしない 尊重すること

成績と関連づけない 評価しないこと

■アセスメント

刺激が無造作、手続があいまい

→評価法として弱い

→断定できないしするべきではない

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アセスメントの6段階

1 話し合い

2 作品からうける印象

3 象徴的な解釈

4 切り方、貼り方

5 空間の使い方

6 時系列での理解

1 話し合い

もしタイトルをつけると?

この作品のテーマは?

どの紙片が好き?

あなたはどこにいるの?

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2 印象

全体から受ける感じは?

バラバラでまとまりがない

乱雑にただ置かれている

どこか投げやりでいいかげん

まとまっていて安定している

3 象徴

食べ物、乗り物、衣服、靴、バック、装飾品、化

粧品など

性別、年代、職業、パーソナリティ、ヒーロー・ヒロイン

など

神話や伝承、ジェンダーアイデンティティ、性など

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4 切り方

小さいー大きい

四角いー丸みを帯びる

ていねいー乱雑

内容を大切にして縁取るー無視

ありきたりー独創的、デザイン的

貼り方

枠としての紙のサイズにおさめるーはみ出す

単独で置くー重ねる

常識的ー倒置するなど独特な貼り方をする

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5 空間の使い方

内的

身体的

外的

精神的

全体性self

6 判断軸(森谷、1999)

自己像を確認することで視点が定まる

時間(過去ー現在ー未来)、空間(上ー下、右ー

左)、内向ー外向、思考ー感情、意識ー無意識、

女性性ー男性性、エネルギー(高いー低い)、テ

ンポ(早いーゆっくり)、冷たいーあたたかい、暗

いー明るい、具体的ー抽象的、身体ー精神など

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7 時系列的な理解

3要素:

何が(内容分析)

どのように(形式的分析)

どこに(空間象徴)

これらの変容の様子を見る

■集団コラージュ

-5~8人を目安とする

-テーマを決めて作るか、決めずに作るか話し

合う

-作り方を話し合う

-完成後、作成のプロセスで感じたことを話し合

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効果について

-イメージの放出

-他者とのイメージの共有

-自我の変容 さまざまな気づき

文献、学会

【芸術・表現療法の現状と課題】 精神療法Vol.31,No.6.金剛出版 2005

森谷寛之・杉浦京子ら 【コラージュ療法入門】創元社 1993

森谷寛之・杉浦京子編 【コラージュ療法】 至文堂 1999

日本芸術療法学会

〒162-0851 新宿弁天町91 神経研究所内

電話 03-3260-5598