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Connecting Markets East & West 株式会社野村資本市場研究所 20191023シニアフェロー -米中貿易摩擦の影響を中心に- 中国経済情勢

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Connecting Markets East & West

株式会社野村資本市場研究所2019年10月23日

シニアフェロー

関 志 雄

-米中貿易摩擦の影響を中心に-

中国経済情勢

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中国が欧米と異なる政治経済体制を維持しながら、経

済大国として台頭してきたことを背景に、米国は、対中

政策を「関与」から「抑止」に転換した。

– トランプ政権時代:「戦略的な競争相手」(『国家安全

保障戦略報告』、2017年12月)

対中「関与政策」(「和平演変」)

– 中国を本格的に国際社会の一員として受け入れ、中

国に米国が担う国際責任の一部を担う「利害関係国」

になってもらう

対中「抑止政策」

– 中国の行動と経済成長を抑え、米国が持つ世界にお

ける主導権に脅威を与えないようにする

– ハイテク分野を中心に中国経済を米国経済から切り

離すデカップリング政策の実施

米中貿易摩擦が激化する背景

三つの原因

(出所)野村資本市場研究所作成

貿易不均衡

-経済の争い

中国異質論

-政治・経済制度の争い

中国脅威論

-覇権争い

対中関与から抑止へ

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米中の制裁関税・報復関税の実施状況

2018年3月22日に米国が「1974年通商法301条」(Section 301 of the Trade Act of 1974)に基づいて対中制裁措置の発動

を決定。その後、米中両国は関税引き上げ合戦を繰り広げ、貿易摩擦は、貿易戦争へとエスカレートした。

2

(出所)米商務省統計、中国海関統計、各種資料より野村資本市場研究所作成

340 160

600

451

(合計1,551億ドル)

中国の対米輸入

(2018年)

750

340 160

2,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000(合計5,395億ドル)

米国の対中輸入

(2018年)

(億ドル)

約3,000

第四弾

2019年5月13日にUSTRが方針を発表、

税率25%

2019年6月29日の米中首脳会談で

当面発動しないと一旦合意

2019年8月1日に、2019年9月1日に

発動すると発表、税率10%

(ただし、8月13日にその一部を対象に

12月15日まで発動を延期すると発表)

第三弾

2018年9月24日に発動、税率10%

2019年5月10日から

税率25%へ引き上げ

第二弾

2018年8月23日に発動、税率25%

第一弾

2018年7月6日に発動、税率25%

第三弾

2018年9月24日に発動、税率5%または10%

2019年6月1日から税率を最大25%へ引き上げ

第二弾

2018年8月23日に発動、税率25%

第一弾

2018年7月6日に発動、税率25%

追加関税を5%上乗せ

(2019年8月23日に発表、

9月11日に一部変更)

15%で発動

(

9月1日の分は発動済)

10月15日に30%に引き上げ

(

見送りを10月11日に発表)

第四弾

2019年9月1日と12月15日の

二回に分けて発動、

税率は最大10%(2019年8月23日発表)

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交渉が行き詰まった理由(2019年5月)

– 米国側の主張

− 中国政府が、米中貿易交渉の合意文書案を大幅に修正し、また知的財産・企業秘密の保護、技術の強制移転、競争政策、金融サービス市

場へのアクセス、為替操作の分野で、米国が強い不満を示していた問題を解決するために法律を改正するとの約束を撤回したためである。

– 中国側が主張する合意の前提条件

− 米国側による追加関税を全面的に撤廃する

− 対米追加輸入をより現実的規模に限定する

− すべての国には尊厳があり、合意文書のバランスを改善する

米中貿易協議の部分合意(2019年10月11日)

– 中国が米農産品の購入拡大(年間最大500億ドル)

– 知的財産権保護の強化

– 金融分野の市場の開放

– 米国は15日予定の中国からの輸入品2,500億ドル分への制裁関税引き上げを見送り

– 中国は意図的な通貨安誘導を控える。米国は為替操作国認定を外すかどうかを精査

– 中国通信機器大手ファーウェイへの禁輸措置緩和は今後協議

困難を極める米中交渉

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対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する「2018年外国投資リスク審査近代化法」(FIRRMA)– 重要な技術や産業基盤を持つ米国企業への外国企業による投資を規制。

– 従来の米国企業を「支配する」外国企業による投資に加え、重要技術・重要インフラ・機密性の高いデータを持つ米国企業に対する非受動的投資も審査対象になる。

米国の重要技術の海外流出への対策が盛り込まれた「2018輸出管理改革法」(ECRA)– 現行の輸出管理では捕捉できていない「新興・基盤技術」も今後は管理対象となる。

– 当該技術の米国からの持ち出し、付加価値が一定以上含まれた製品の外国から第三国への輸出(再輸出)は、米商務省産業安全保障局の許可が必要になる。

– 対象となる新興・基盤技術の範囲はまだ決まっていないが、その中で検討すべき新興技術として①バイオテクノロジー、②人工知能(AI)・機械学習技術、③測位技術(Position, Navigation, and Timing)、④マイクロプロセッサー技術、⑤先端コンピューティング技術、⑥データ分析技術、⑦量子情報・量子センシング技術、⑧輸送技術、⑨付加製造技術(3Dプリンターなど)、⑩ロボット工学、⑪脳コンピュータインターフェース、⑫極超音速、⑬先端材料、⑭先進監視技術という14分野が挙げられている。これらは、中国が進めている「中国製造2025」計画が示している10の分野と大きく重なっている。

中国企業5社の通信機器などの政府調達を禁止する条項など

– ①ファーウェイと中興通訊(ZTE)製の通信機器、②海能達通信(ハイテラ)、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器。

– 禁止措置

− 第一段階:2019年8月以降、これら製品・サービスを主要な部品または重要なテクノロジーとしている通信機器・サービスの政府による調達、取得、使用、契約および契約延延長・更新を禁止

− 第二段階:2020年8月以降、これら製品・サービスを主要な部品または重要なテクノロジーとしている通信機器・サービスを利用している企業などと政府との契約および契約延延長・更新を禁止する。

米国「2019会計年度国防権限法」

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米国は、ハイテク産業における中国の切り離しに向けて、世界通信網に大きなシェアを占め、5G通信技術において最先端に

位置するファーウェイへの締め付けを強化している。

– 2018年4月17日に米連邦通信委員会(FCC)はファーウェイとZTEを念頭に国内の通信会社に対し、安全保障上の懸念が

ある外国企業から通信機器を調達することを禁止する方針を決めた。

– 8月に「2019会計年度国防権限法」が施行された。

– 12月1日にファーウェイの孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が対イラン制裁を回避する金融取引に関与した疑いで

米国の要請によりカナダで逮捕された。

2019年5月15日には、米商務省はイランへの経済制裁違反などを理由に、ファーウェイとその関連会社68社を輸出管理規

則に基づく「エンティティー・リスト」に載せ、同社への米国製ハイテク部品などの輸出を原則として禁止する措置を発表した。

同じ日に、ファーウェイをはじめとする中国企業を念頭に、米企業が、安全保障上の懸念がある外国企業から通信機器を調

達することを禁止する大統領令も出された。

2019年8月19日にファーウェイ関連企業46社をエンティティー・リストに追加。

米国政府によるファーウェイの排除措置は、ファーウェイのみならず、米国企業を含む世界のサプライヤに打撃を与えること

が避けられない。

– ファーウェイとの取引規制は米国の半導体産業に市場の縮小、企業の収益減などのリスクをもたらしかねない。

– こうした懸念から、ファーウェイの全面排除の発表を受けて、米株式市場において、ファーウェイのサプライヤを中心に、ハ

イテク株や半導体関連銘柄の下落が目立った。

米国政府によるファーウェイの全面排除

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米国は、同盟国に対しても排除の協力を要請し、日本やオーストラリア、ニュージーランドなど数ヵ国が米国に同調。

日本政府の姿勢

– 2019年5月27日に、重要な情報や技術の国外流出を防ぐための対応として、外資による日本企業への投資に関する規制

の強化を発表。

− 8月から安全保障上の理由から事前に届け出が必要な対象として、ITや通信関連の20業種を追加する。これに先立っ

て、政府は2018年12月に、ファーウェイ製品の排除を念頭に情報通信機器の政府の調達方針を改定。

– 外資による原子力や半導体など安全保障上重要な日本企業への出資規制を強化。株式を10%以上取得する際に義務づ

けている事前届け出の基準について「1%以上」を軸に変更する調整に入った(日本経済新聞2019年9月18日)。

ファーウェイに加え、他の中国ハイテク企業も「エンティティー・リスト」に掲載

– 宇宙開発、半導体、スーパーコンピューター、監視カメラなどを手掛ける企業・研究所が対象に

米政界にはかつての共産主義を排斥する「赤の恐怖」に似た動きが広がり始めた。

– 大学による中国側の研究提案に対する審査の強化、会議や交流のために訪米する中国人科学者へのビザ発給の遅れ、

ロボットや高度な製造業などをテーマに学ぶ中国人大学院生へのビザの期限の5年から1年への短縮などがある。

– さまざまなテクノロジー企業の従業員が企業秘密を盗んだとして摘発されている。

米国のさらなる措置

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米国からの輸入に対して報復関税をかけることに加え、2019年5月31日に、「信頼できないエンティティー・リスト制度」を構

築する方針を発表。理由:「一部の外国のエンティティは、非商業的な目的で、正常な市場の規則や契約の精神に反して、中

国企業に対して、封じ込め、供給停止及びその他の差別的措置を講じて、中国企業の正当な権益を損ない、中国の国家安

全や利益を脅かしているほか、世界の産業チェーン、サプライチェーンの安全をも脅かし、世界経済に打撃をもたらし、関連

の企業や消費者の利益を損なっている」。

「人民日報」は2019年6月9日に、中国政府が国家の安全にかかわるリスクの予防と解消を目指して、対外技術輸出の規制

強化を軸とする「国家技術安全管理リスト制度」を構築すると報じた。

2019年5月20日に、習近平国家主席が対米貿易交渉の責任者を伴ってレアアースの関連施設を視察したことを受けて、中

国は対米貿易戦争での対抗措置としてレアアースにおける優位を利用する準備を進めている。

これらの措置は、対米協議における中国の交渉力を向上させると期待される一方で、新たな摩擦の種になりかねない。

中国の対抗措置

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激化する米中摩擦は、米中両国経済だけでなく、世界経済にも大きな陰を落としている。

– 中国

− 米国との貿易が大きく制限される中で、外資企業による生産移転が加速している。

− 米国による対内直接投資への規制強化を受けて、中国の企業や投資ファンドによる米国企業、特にハイテク企業の買収・出資が難しくなっ

ている。現に、中国の対米直接投資は、2016年の460億ドルから2017年には290億ドルに、さらに2018年には48億ドルに大幅に減少。

− 米国のデカップリング政策に対して、中国は、自主開発能力の強化を図りながら、一帯一路を中心に米国と距離を置く途上国との関係強化

を図っている。それでも、海外からの技術獲得が困難となることに加え、資源の配分や、市場規模が制限されるようになることから、成長率

が従来と比べて低下せざるを得ないだろう。

– 米国

− 米国にとって中国は最大の貿易相手国(輸入先としては第一位、輸出先として第三位)である上、多くの米国企業が中国に進出している。中

国はグローバルサプライチェーンの要であり、米中間貿易と米国企業の中国における生産の中には、最終消費財に加え、多くの中間財・部

品が含まれている。米中経済関係のデカップリングが進めば、多くの米国企業が中国からの撤退を余儀なくされる。

− 投資先と輸入先を中国よりコストの高い国々に切り替えていかざるを得ない。その結果、米国は中国市場を失うだけでなく、輸入物価が上昇

し、自国産業の競争力が低下するだろう。このような懸念から、アップルに加え、HP、デル、マイクロソフト、インテル(四社連名)などの米国

の大手テクノロジー企業は、2019年6月17日から始まった「第四弾」の追加関税の公聴会に合わせて、関税発動に反対する声明を発表。

世界経済は米国と中国を中心とする二つのブロックに分裂する恐れがある。

− 米中両国の間で、規制が一層強化され、経済関係のデカップリングがさらに進めば、多くの産業においてサプライチェーンが分断され、多国

籍企業は生産体制のグローバル展開を通じた資源の最適配分ができなくなる。

− 世界貿易や直接投資、ひいては世界経済も停滞の道を辿っていくだろう。その影響は、脱グローバル化の象徴となった英国のEU離脱より

はるかに大きいと見られる。

勝者なき戦い

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ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授による命名。

キンドルバーガー(国際経済学者、マーシャルプラン設計の経済学者)は、1930年代に、イギリスから覇権

交替した米国が世界的な安全保障システム、国際通貨・金融システム、自由貿易システムといった国際公共

財を提供するという役割まで引き受けていなかったゆえに、世界システムが崩壊し、大恐慌や世界大戦が起

こってしまったと指摘。

現在、衰退する覇権国としての米国は、孤立路線に走っており、その結果、国際公共財の不足が深刻化し、

国際経済秩序が動揺しかねないと、ジョセフ・ナイ教授が警告。

– それを象徴するのは、米国の環太平洋経済連携協定(TPP)、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協

定」、イランの核開発阻止に向けた包括合意からの離脱、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退、

中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄など。

キンドルバーガーの罠

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中国の対米輸出と対世界輸出

-鮮明になった駆け込み需要の反動-

10

(注)ドルベース(出所)CEICデータベース(原データは中国税関)より野村資本市場研究所作成

-35

-30

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9

2018 2019

(前年比、%)

(年、月)

対世界輸出

対米輸出

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米国の国別輸入の伸び率(2019年1-8月)

11

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

(前年比、%)

(出所)CEICデータベース(元データはU.S. Census Bureau)より野村資本市場研究所作成

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米国の上位貿易相手国

-輸出入の合計に占める国別のシェア-

12

(注)*2019年は1-8月のみ。(出所)CEICデータベース(元データはU.S. Census Bureau)より野村資本市場研究所作成

10

11

12

13

14

15

16

17

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019*

(%)

(年)

中国

メキシコ

カナダ

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失速する中国の北米・欧州への直接投資

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(出所)”Chinese FDI in Europe and North America: 1H 2019 Update,” Roduium Group, July11, 2019.

(10億ドル)

60

50

40

20

30

10

0

1H20

082H

2008

1H20

09

1H20

102H

2009

2H20

101H

2011

2H20

111H

2012

2H20

12

2H20

131H

2014

1H20

13

2H20

141H

2015

2H20

151H

2016

2H20

161H

2017

2H20

171H

2018

2H20

181H

2019

北米 欧州

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中国と米国の購買担当者景気指数(PMI)の推移

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(出所)CEICデータベース(原データは中国が国家統計局、米国がInstitute for Supply Management)より野村資本市場研究所作成

40

45

50

55

60

65 2

018/0

1

201

8/0

2

201

8/0

3

201

8/0

4

201

8/0

5

201

8/0

6

201

8/0

7

201

8/0

8

201

8/0

9

201

8/1

0

201

8/1

1

201

8/1

2

201

9/0

1

201

9/0

2

201

9/0

3

201

9/0

4

201

9/0

5

201

9/0

6

201

9/0

7

201

9/0

8

201

9/0

9

(年/月)

中国

米国

米国が対中制裁

措置を発表

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貿易摩擦の影響を受けた米中株価の推移

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(出所)CEICデータベースより野村資本市場研究所作成

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

(2018年3月21日=100)

NYダウ平均株価

上海総合指数

米国が対中制裁措置を発表

(年/月/日)

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鮮明になった中国における景気の減速

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(注1)固定資産投資は各年の当月までの累計。また、固定資産投資と工業生産の各年の1月のデータが公表されておらず、1月と2月の数字はともに1-2月の累計。(注2)小売売上はCPIにより実質化。(出所)CEICデータベース(原データは国家統計局)より野村資本市場研究所作成

47

48

49

50

51

52

53

1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7

2016 2017 2018 2019(年、月)

(%、50%=前月比変化なし)

PMI

49.8

4

5

6

7

8

9

1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7

2016 2017 2018 2019(年、月)

(前年比、%)

工業生産

0

2

4

6

8

10

12

1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7

2016 2017 2018 2019(年、月)

(前年比、%)

小売売上(注1)

0

2

4

6

8

10

12

1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7

2016 2017 2018 2019(年、月)

(前年比、%)

固定資産投資(注2)

低下するPMIと工業生産の伸び 減速する消費と投資

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中国における経済成長率と都市部の求人倍率の推移

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(注)中国の都市部の求人倍率は、約100都市の公共就業サービス機構に登録されている求人数/求職者数によって計算される。(出所)中国国家統計局、人力資源・社会保障部の統計より野村資本市場研究所作成

0.600.650.700.750.800.850.900.951.001.051.101.151.201.251.30

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

Q1 Q3

2001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

(年、四半期)

(倍)(前年比、%)

↑都市部の求人倍率

(右軸)

実質GDP成長率

労働力過剰 労働力不足

ルイス転換点

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産業別PMIの推移

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(出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

35

40

45

50

55

60

65

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 79

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 18 19

非製造業

製造業

(年、月)

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国有企業と民営企業の売上高の推移

19

0

10

20

30

40

50

60199

6199

7199

8199

9200

0200

1200

2200

3200

4200

5200

6200

7200

8200

9201

0201

1201

2201

3201

4201

5201

6201

7201

8

(工業企業に占めるシェア、%)

(年)

国有企業

民営企業

(注)国有企業は、統計の分類では(国有資本の出資比率が非国有資本より高い)国有支配企業。(出所)CEICデータベース(原データは国家統計局)より野村資本市場研究所作成

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警戒すべき人民元の切り下げと

資金流出の悪循環

2019年8月5日に米国が中国を

「為替操作国」に認定

– 米国は、中国が元安を通じて追

加関税による対米輸出への悪

影響を相殺しないように牽制。

注目される人民元の行方

(出所)CEICデータベース(原データは中国国家外為管理局および中国人民銀行)より野村資本市場研究所作成

0.00.51.01.52.02.53.03.54.04.5

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 79

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

(兆ドル)

(年、月)

6.0

6.5

7.0

7.5

8.0

8.51 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 79

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

(元/ドル)

(年、月)

元高

元/ドルレート

外貨準備

人民元の対ドルレートと中国の外貨準備の推移

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CPIインフレ率の推移

-豚肉価格の寄与度-

21

(出所)中国国家統計局より野村資本市場研究所作成

0

1

1

2

2

3

3

4

1 2 3 4 5 6 7 8 9

2019

(前年比、%)

(年、月)

豚肉の寄与度

1.65

CPI 3.0

豚肉以外の

寄与度

1.35

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調整局面にさしかかる住宅市場

22

住宅販売面積、住宅販売価格、住宅開発投資の推移

(注)住宅販売価格は70大中都市の単純平均。住宅販売面積は商品住宅。住宅販売面積と住宅開発投資の各年の1月と2月のデータは2ヵ月まとめた形でしか発表されないため、図の作成に当たり、同じ計数を使用した。(出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

中国の主要都市における住宅価格/世帯所得比(2018年)

(出所)易居房地産研究院「2018年全国50都市における所得の対住宅価格比報告」(2019年3月)より野村資本市場研究所作成

0

5

10

15

20

25

30

35

40

深圳

三亜

上海

北京

厦門

福州

杭州

広州

珠海

石家庄

南京

東莞

太原

海口

天津

合肥

鄭州

蘇州

南寧

武漢

(倍)

- 30- 20- 10

0102030405060

1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 72012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

(年、月)

(前年比、%)

住宅販売価格

←住宅販売面積

住宅開発投資

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中国における不動産業の規模

23

2014年 2018年

金額(億元) 対GDP比(%) 金額(億元) 対GDP比(%)

不動産開発投資 95,036 14.9 120,264 13.4

 うち住宅 64,352 10.1 85,192 9.5

不動産販売額 76,292 12.0 149,973 16.7

 うち住宅 62,396 9.8 126,393 14.0

金融機関の不動産融資額 173,700 27.3 387,000 43.0

 うち個人向け住宅ローン 115,200 18.1 257,500 28.6

土地譲渡金 42,606 6.7 65,096 7.2

参考

GDP 636,463 - 900,310 -

金融機関の融資総額 816,800 128.3 1,358,402 150.9

全国財政総収入(政府性基金収入を含む) 194,443 30.6 258,756 28.7

(出所)中国国家統計局、財政部、中国人民銀行のデータより野村資本市場研究所作成

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警戒すべき中国の債務問題

24

中国の民間非金融部門債務の対GDP比とその傾向線からの乖離-日本、タイ、スペインとの比較-

(出所)BISより野村資本市場研究所作成

中国において急増する企業を中心とする各部門の債務

(注1)期末値。2019年はQ1。(注2)家計と企業を合わせると、民間非金融部門となる。(出所)BISより野村資本市場研究所作成

0

50

100

150

200

250

Q1 Q1

1980 85 90 95 00 05 10 15 1819

タイ

スペイン

中国

(年、四半期)

(対GDP比、%)

日本

民間非金融部門の債務(実績) 民間非金融部門の債務(傾向線)

0

50

100

150

200

250

300

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

201

8

201

9

(対GDP比、%)

(年)

政府

家計

企業

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依然として低迷しているマネーサプライ(M2)とインフラ投資の伸び

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(注)インフラ投資は年初から当月までの累計値に基づく。各年の1月と2月のデータは2ヶ月まとめた形でしか発表されないため、図の作成に当たり、同じ計数を使用した。(出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

0

5

10

15

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 9

2015 2016 2017 2018 2019

(前年比、%)

(年、月)

M2

0

5

10

15

20

25

30

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 9

2015 2016 2017 2018 2019

(前年比、%)

(年、月)

インフラ投資(注)

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生産性を如何に高めるか

26

(出所)野村資本市場研究所作成

生産性を高める

ための方策

海外からの技術導入

産業の高度化農業から工業とサービス業へ、

付加価値の低い分野

から高い分野へ

所有制改革国有企業から

民営企業へ

資源の再配分生産性の低い分野から

高い分野へ

イノベーションの促進

自主研究開発能力の向上

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第15期四中全会(1999年9月)の決定で示された「国有経済の戦略的再編」という方針

– 「国有経済の戦略的再編」方針に基づき、国有経済が主導すべき産業は主に以下4分野に限定される。

① 国家の安全に関わる産業

② 自然独占および寡占産業

③ 重要な公共財を提供する産業

④ 基幹産業とハイテク産業における中核企業

– この方針に従えば、上記の分野以外の国有企業は民営化の対象となったはずだが、実際、民営化の対象

は中小国有企業にとどまった。

習近平政権下の国有企業改革

– 目標:「2020年までに、中国の基本的経済制度と社会主義市場経済の発展という要求により適合する国有

資産管理体制、現代的企業制度、市場化経営メカニズムを形成させ、国有資本の配置をより合理的にし、

才徳とも優れた経営者やイノベーション能力と国際競争力を持つ国有主力企業を育成し、国有経済の活

力、制御力、影響力、及びリスク対応能力を絶えずに向上させることである。」

– 軸となる「混合所有制改革」

遅れた国有企業改革

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混合所有制改革に伴うチャイナユニコムの株主構成の変化

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(注1)一部の戦略的投資家は、直接ではなく、子会社を通じて出資している。(注2)四捨五入の関係でシェアの合計が100にならないことがある。

(出所)チャイナユニコム「チャイナユニコムの混合所有制改革に関連する状況の特定事項に関する公告」(2017年8月20日)より野村資本市場研究所作成

(シェア、%)

分類 株主 改革前 改革後

大株主 チャイナユニコム・グループ 62.7 36.67

金融グループ 中国人寿 - 10.22

インターネット企業 テンセント - 5.18

バイドゥ - 3.30

京東 - 2.36

アリババ - 2.04

ニッチ企業 蘇寧雲商 - 1.88

光啓互聯 - 1.88

淮海方舟 - 1.88

産業ファンド 中国国有企業構造調整基金 - 6.11

興全基金 - 0.33

従業員持株 - 2.70

その他の株主(主に公開市場で株式を取得) 37.3 25.40

合計 100.0 100.00

戦略的投資家

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「フォーチュン・グローバル500」の国別構成の推移

29

(注)本土のみ、香港と台湾の企業を含まない。(出所)"Fortune Global 500"(各年版), Fortuneより野村資本市場研究所作成

121

116

52

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500199

5199

6199

7199

8199

9200

0200

1200

2200

3200

4200

5200

6200

7200

8200

9201

0201

1201

2201

3201

4201

5201

6201

7201

8201

9

その他

日本

米国

中国

(社)

(年)

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「フォーチュン・グローバル500」における中国の国有企業と民営

企業の数の推移

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(注)本土のみ、香港と台湾の企業を含まない。(出所)"Fortune Global 500"(各年版), Fortuneより野村資本市場研究所作成

26

90

22 2634

43

58

70

8692 94 98

105 107116

0

20

40

60

80

100

120

140

2007200820092010201120122013201420152016201720182019

(社)

国有企業

民営企業

合計

(年)

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略歴関志雄(かんしゆう)野村資本市場研究所 シニアフェロー

学歴・職歴 1957 香港生まれ

1979 香港中文大学経済学科卒

1986 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、東京大学経済学博士(1996年)

1986 香港上海銀行(Hong Kong & Shanghai Bank)入社、本社経済調査部エコノミスト

1987 野村総合研究所入社、経済調査部主任研究員、経済調査部アジア調査室室長など

(1999.9~2000.6 ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センター客員研究員)

2001 独立行政法人 経済産業研究所 上席研究員

2004 野村資本市場研究所 シニアフェロー

日本政府委員 経済審議会21世紀世界経済委員会委員(1996-97年)財務省関税・外国為替等審議会専門委員(1997-99年、2003年-2010年)内閣府「日本21世紀ビジョン」に関する専門調査会 グローバル化WG委員(2004年 )

主な著書・論文 『円圏の経済学』、日本経済新聞社、1995年(アジア・太平洋賞特別賞受賞)

『日本人のための中国経済再入門』、東洋経済新報社、2002年『中国 未完の経済改革』、樊綱著・関志雄訳、岩波書店、2003年(アジア・太平洋賞特別賞受賞)

『人民元切り上げ論争』、編著、東洋経済新報社、2004年『共存共栄の日中経済』、東洋経済新報社、2005年『中国経済革命最終章』、日本経済新聞社、2005年『中国経済のジレンマ』、筑摩書房、2005年『中国を動かす経済学者たち』、東洋経済新報社、2007年(第三回樫山純三賞受賞)

『チャイナ・アズ・ナンバーワン』、東洋経済新報社、2009年『中国 二つの罠』、日本経済新聞出版社、2013年『中国 「新常態」の経済』、日本経済新聞出版社、2015年

ホームページ 「中国経済新論」(http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/index.htm)というホームページを主宰し、

日本の読者向けに発信している。

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