1030 PR matsuyama jp nukaga · 2020. 10. 30. · EMAIL:[email protected] TEL:03-6433-1247...

3
2020 年 10 月 20 日 プレスリリース PRESS RELEASE 松山智一「Accountable Nature」 龍美術館西岸館において、中国本土初の個展を開催。 龍美術館西岸館(Long Museum West Bund)は、2020 年 11 月 12 日から 2021 年 1 月 24 日まで、松山智一による中国本土初の個展 「Accountable Nature」を開催いたします。本展では松山の代表作や 最新作となる、鮮やかなキャンバス作品から巨大な立体作品を体系的 に展示し、現代においてアーティストが果たすべき使命に支えられた その思想とあわせて紹介します。 日本とアメリカという異なる文化背景の中で育ち現代を生きる松山の 作品は、都市という「一つの世界」における様々な文化の融合を体現 しています。日本古来の伝統色や蛍光色の独特な組み合わせが画面を 構成するキャンバスの上では、幅広い世界から引用されたイメージが 融合され、多様で曖昧な現代のカルチャーを描写しています。古典絵 画やアンティークの文様、雑誌のピンナップやインターネット広告、 そして東洋と西洋のイメージなどを氾濫させながらあらゆる要素を並 置させる、あたかも編集のような松山の制作プロセスは一見感覚的で 即興的に思えます。しかし、時空を超えた膨大な情報を解体し、そし て丹念に再構築していくことで、画面上では通常ではあり得ない物や 柄が破綻することなく同居し、絶妙のバランスを保ち、すべての要素 が有機的に作用するのです。見慣れたモチーフの関連性が視覚的な手 がかりとなり、鑑賞者は作品の中に自分のストーリーを発見し、そこ に新たなアイデアや物語が生まれます。絵画言語としてマッシュアッ プやサンプリングという編集的なプロセスを成立させることで、松山は現代美術のパラダイムに挑戦し、鑑賞者に新たな視点や概 念を与えます。千羽鶴をモチーフにした抽象シリーズでは、松山はさらに大胆に芸術の既成概念に挑みます。東洋美術に見られる 願掛けや縁起担ぎという要素は、西洋の近代美術の文脈では排除されてきました。松山は千羽鶴を記号のようにデフォルメし、独 自の色彩を用いてフラットで抽象的に描くことにより、西洋で確立された抽象画の概念に挑戦し、未知の領域へと美の定義をいざ なうのです。 本展覧会のタイトル「Accountable Nature」は、自然災害や予期せぬ出来事が社会や経済の機能を麻痺させることを意味する force majeure(不可抗力)という専門用語にちなみます。人は自然の恵みを享受し、平時は両者の間に安定的な関係が築かれま す。しかし、時として猛威を振るう自然はその信頼関係を揺るがし、人は抵抗するすべを失います。理不尽とも思える自然の力に 説明責任(accountable)はありません。移ろいゆく自然の中で松山が見たものは、人々が日々生き、未来に希望を持ち、生活を 再構築していく姿でした。本展を象徴する7mの巨大彫刻≪Nirvana Tropicana≫はまさしく、松山が人々の生活空間に漂うこの ような観念を彫刻し具現化した作品です。 松山は常より、我々の生きる時代を捉え、表現することがアーティストの役割であると述べます。そしてその興味は、窓の外で起 こるリアルな事象をデジタルの画面で認識するような、現実と非現実の境界線が益々曖昧になっていく現代社会に向かいます。松 山が「編集」をキーワードに制作してきたノマディックでユートピアンな世界観をもつキャンバス群は、自然とデジタル、現実と 非現実といった我々の時代を構築する不安定な二項対立を描き出し、強烈な同時代性を放つのです。社会が「新しい生き方」に適 応しようと模索する中で、松山の作品は、人々がアイデンティティを見出す「現実(リアリティ )」とは本当の世界なのか、そ もそも「現実(リアリティ )」とは一体何なのか、という問いを投げかけます。

Transcript of 1030 PR matsuyama jp nukaga · 2020. 10. 30. · EMAIL:[email protected] TEL:03-6433-1247...

Page 1: 1030 PR matsuyama jp nukaga · 2020. 10. 30. · EMAIL:info@kotaronukaga.com TEL:03-6433-1247 FAX:03-6433-1257 . Title: 1030_PR_matsuyama_jp_nukaga Author: kngallery-2 Created

2020年10月 20日 プレスリリース PRESS RELEASE 松山智一「Accountable Nature」

龍美術館西岸館において、中国本土初の個展を開催。

龍美術館西岸館(Long Museum West Bund)は、2020年 11月12日から2021年 1月 24日まで、松山智一による中国本土初の個展「Accountable Nature」を開催いたします。本展では松山の代表作や最新作となる、鮮やかなキャンバス作品から巨大な立体作品を体系的に展示し、現代においてアーティストが果たすべき使命に支えられたその思想とあわせて紹介します。 日本とアメリカという異なる文化背景の中で育ち現代を生きる松山の作品は、都市という「一つの世界」における様々な文化の融合を体現しています。日本古来の伝統色や蛍光色の独特な組み合わせが画面を構成するキャンバスの上では、幅広い世界から引用されたイメージが融合され、多様で曖昧な現代のカルチャーを描写しています。古典絵画やアンティークの文様、雑誌のピンナップやインターネット広告、そして東洋と西洋のイメージなどを氾濫させながらあらゆる要素を並置させる、あたかも編集のような松山の制作プロセスは一見感覚的で即興的に思えます。しかし、時空を超えた膨大な情報を解体し、そして丹念に再構築していくことで、画面上では通常ではあり得ない物や柄が破綻することなく同居し、絶妙のバランスを保ち、すべての要素が有機的に作用するのです。見慣れたモチーフの関連性が視覚的な手がかりとなり、鑑賞者は作品の中に自分のストーリーを発見し、そこに新たなアイデアや物語が生まれます。絵画言語としてマッシュアッ

プやサンプリングという編集的なプロセスを成立させることで、松山は現代美術のパラダイムに挑戦し、鑑賞者に新たな視点や概念を与えます。千羽鶴をモチーフにした抽象シリーズでは、松山はさらに大胆に芸術の既成概念に挑みます。東洋美術に見られる願掛けや縁起担ぎという要素は、西洋の近代美術の文脈では排除されてきました。松山は千羽鶴を記号のようにデフォルメし、独自の色彩を用いてフラットで抽象的に描くことにより、西洋で確立された抽象画の概念に挑戦し、未知の領域へと美の定義をいざなうのです。 本展覧会のタイトル「Accountable Nature」は、自然災害や予期せぬ出来事が社会や経済の機能を麻痺させることを意味するforce majeure(不可抗力)という専門用語にちなみます。人は自然の恵みを享受し、平時は両者の間に安定的な関係が築かれます。しかし、時として猛威を振るう自然はその信頼関係を揺るがし、人は抵抗するすべを失います。理不尽とも思える自然の力に説明責任(accountable)はありません。移ろいゆく自然の中で松山が見たものは、人々が日々生き、未来に希望を持ち、生活を再構築していく姿でした。本展を象徴する7mの巨大彫刻≪Nirvana Tropicana≫はまさしく、松山が人々の生活空間に漂うこのような観念を彫刻し具現化した作品です。 松山は常より、我々の生きる時代を捉え、表現することがアーティストの役割であると述べます。そしてその興味は、窓の外で起こるリアルな事象をデジタルの画面で認識するような、現実と非現実の境界線が益々曖昧になっていく現代社会に向かいます。松山が「編集」をキーワードに制作してきたノマディックでユートピアンな世界観をもつキャンバス群は、自然とデジタル、現実と非現実といった我々の時代を構築する不安定な二項対立を描き出し、強烈な同時代性を放つのです。社会が「新しい生き方」に適応しようと模索する中で、松山の作品は、人々がアイデンティティを見出す「現実(リアリティ )」とは本当の世界なのか、そもそも「現実(リアリティ )」とは一体何なのか、という問いを投げかけます。

Page 2: 1030 PR matsuyama jp nukaga · 2020. 10. 30. · EMAIL:info@kotaronukaga.com TEL:03-6433-1247 FAX:03-6433-1257 . Title: 1030_PR_matsuyama_jp_nukaga Author: kngallery-2 Created

■開催概要 松山智一「Accountable Nature」| Tomokazu Matsuyama Accountable Nature 会期:2020年 11月12日(木)― 2021年 1月 24日(日)

時間:10:00 -18:00 休館:月曜日

会場:龍美術館西岸館(Long Museum West Bund) 3398 Longteng Avenue, Xuhui District Shanghai TEL: +86 (0) 21-64227636 thelongmuseum.org

■アーティスト 松山智一 Tomokazu Matsuyama 1976 年 岐阜県(日本)生まれ。上智大学卒業後 2002 年渡米。NY Pratt Institute を首席で卒業。ペインティングを中心に彫刻やインスタレーションも手がける。作品には、東洋と西洋、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素が見られ、これは日本とアメリカの両国で育った松山自身の経験が反映されている。これまでにニューヨーク、ワシントン D.C.、サンフランシスコ、ロサンゼルス等の全米主要都市、日本、ドバイ、香港、台北、ルクセンブルグなど、世界各地のギャラリー、美術館、大学施設等にて展覧会を多数開催。また、ロサンゼルス・カウンティ美術館、サンフランシスコ アジア美術館、Microsoft コレクション、ドバイ首長国の王室コレクション等に作品が収蔵されている。2012 年から 2017 年 5 月までの 5 年間、School of Visual Arts(SVA)の非常勤教授を勤めた。2020 年、新宿駅東口広場のアートスペースを監修、中心に7mの巨大彫刻を制作する。現在はブルックリン・グリーンポイントにスタジオを構え、活動を展開している。 ■作品

Desktop Utopia, 2020, Acrylic and mixed media on canvas, 261.5×190.5 cm

Cluster2020, 2020, Dimension Variable, Acrylic and mixed media on canvas, 33 panels of 60.0×60.0 cm

Perfect Head Over Feet, 2020, Acrylic and mixed media on canvas, 185.0×262.0cm

Nirvana Tropicana (image), 2020, 316L Stainless Steel, 460.0×750.0×440.0 cm

Page 3: 1030 PR matsuyama jp nukaga · 2020. 10. 30. · EMAIL:info@kotaronukaga.com TEL:03-6433-1247 FAX:03-6433-1257 . Title: 1030_PR_matsuyama_jp_nukaga Author: kngallery-2 Created

■龍美術館西岸館 世界的に著名なアートコレクターである劉益兼(Liu YiQuan)・王薇(Wang Wei)夫妻が 2014 年に設立した世界有数の私設美術館。ここ西岸館のほか、上海・浦東館と重慶市の重慶館がある。夫妻は伝統的な中国美術の骨董品から、国内外の近代美術や現代美術作品に至るまで、幅広いジャンルの膨大な点数の作品をコレクションする。地域や自国に根ざしながら、時代や文化を超えた様々な作品をグローバルな視点で鑑賞できる美術館となっている。洗練された文化発信の中心地として開発される西岸エリアを代表する本館は、上海を代表する建築家・柳亦春(Liu Yichun)により設計された。

お問合せ KOTARO NUKAGA 担当:奥山、中野 EMAIL:[email protected] TEL:03-6433-1247 FAX:03-6433-1257 www.kotaronukaga.com