2019/7/17
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エンテロウイルスD68型(EV-D68)ー わかっていること・わかっていないこと ー
第18回みちのくウイルス塾 @ 仙台医療センター
国立成育医療研究センター 今村 忠嗣
今村 忠嗣(32歳)
【出身】鹿児島市
【略歴】
2007年:東北大学医学部入学
2011年:微生物学分野(博士課程 / MD-PhDコース)
2016年:東北大学医学部卒業
2016年:仙台市立病院(臨床初期研修)
2018年:国立成育医療研究センター(小児科研修)
いま むら ただ つぐ
自己紹介
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きっかけ
子供のときのウイルス学者のイメージ
映画 『アウトブレイク』(1995年, 米国)より
未開の地
防護服
ヘリコプターで登場
出血熱
軍といっしょに村を封鎖
学生時代:「学内にすごい先生がいるらしい」
→ 「そうだ, 研究室実習で選択しよう」
押谷 仁 先生
①フィリピンで水牛を…
②蚊帳に入れて蚊を集めて…
③早朝に掃除機で捕獲して…④日本脳炎を媒介するイエ蚊を選別
きっかけ
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きっかけ
ライノウイルスのPCRしてたら変なウイルス捕まえたんだけど
解析してみませんか?
そんなある日…
………ん?
押谷 仁 先生
急性呼吸器感染症
急性胃腸炎
狂犬病
人獣共通・節足動物媒介性感染症
マニラ
フィリピン
共同研究機関:フィリピン国立熱帯医学研究所
はじめに
フィリピンにおける感染症に関する基礎・疫学研究
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フィリピン
3
12
4
マニラ
パラワン
ビリラン
レイテ急性呼吸器感染症
急性胃腸炎
狂犬病
人獣共通・節足動物媒介性感染症
はじめに
共同研究機関:フィリピン国立熱帯医学研究所
フィリピンにおける感染症に関する基礎・疫学研究
フィリピン
3
12
4
マニラ
パラワン
ビリラン
レイテ急性呼吸器感染症
急性胃腸炎
狂犬病
人獣共通・節足動物媒介性感染症
はじめに
フィリピンにおける感染症に関する基礎・疫学研究
共同研究機関:フィリピン国立熱帯医学研究所
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① 小児肺炎研究
② 成人肺炎研究
③~⑤ インフルエンザ様疾患(ILI)研究
▷ 3次医療施設▷ 重症呼吸器感染症(SARI)で入院した重症患者が研究対象
▷ 外来医療施設(3箇所)▷ 外来受診しILIと診断された軽症患者が研究対象
Google map
Eastern Visayas Regional Medical Center
12
34
5
Leyte provincial hospital Tacloban City Health Center Tanauan Regional Health Unit
はじめに
2008年よりレイテ州でウイルス性呼吸器感染症について研究
レイテ州
はじめに
Suzuki A et al, BMC Infect Dis, 2012.
PCR法により複数種類の呼吸器ウイルスを検出
▷ インフルエンザウイルス▷ RSウイルス▷ ヒトメタニューモウイルス▷ ライノウイルス
▷ コロナウイルス▷ ボカウイルス▷ WUウイルス▷ KIウイルス
研究対象となったウイルス
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はじめに
Suzuki A et al, BMC Infect Dis, 2012.
PCR法により複数種類の呼吸器ウイルスを検出
▷ インフルエンザウイルス▷ RSウイルス▷ ヒトメタニューモウイルス▷ ライノウイルス
▷ コロナウイルス▷ ボカウイルス▷ WUウイルス▷ KIウイルス
研究対象となったウイルス
はじめに
ライノウイルスを標的とした疫学研究の”思わぬ副産物”
Imamura T et al, EID, 2011.
小児肺炎患者から採取した鼻咽頭拭い液(N=816)
ライノウイルス 5‘非翻訳領域(5’UTR)を標的としたPCR
陽性(N=274)
陰性(N=542)
シークエンス解析
ライノウイルス(N=245)
EV-D68(N=21)
不明(N=8)
電気泳動
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エンテロウイルスD68型(EV-D68)
• ピコルナウイルス科エンテロウイルス属D種
• 急性呼吸器感染症の起因病原体
• 1962年米国で小児下気道感染症患者から初分離
• 2000年代前半まで希な発生のみ… CDCが米国で行ったEVサーベイランス(1970-2005)で26件のみ報告
はじめに
フィリピンの小児肺炎患者 21名=当時最大のクラスター
はじめに
Imamura T et al, EID, 2011.
なぜライノウイルスを狙ってEV-D68が検出された?
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遺伝子構造
保存領域 可変領域
スクリーニングを目的としたPCRの標的領域
血清型・遺伝子型の決定を目的としたPCRの標的領域
エンテロウイルス:一本鎖プラス鎖RNAウイルス
遺伝子学的相同性
(%)
5’UTRで他エンテロウイルス・ライノウイルスと高い相同性
Oberste MS et al, JGV, 2002.
HEV-D種 ライノウイルス
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遺伝子学的相同性
5’UTRで他エンテロウイルス・ライノウイルスと高い相同性
HEV-D種 ライノウイルス
(%)
50%前後
65%前後
Oberste MS et al, JGV, 2002.
EV-D68 HRV エンテロウイルス一般
酸抵抗性 なし なし あり
至適増殖温度 33℃ 33℃ 37℃
ちなみに
EV-D68のライノウイルス(HRV)に類似した生物学的性質
胃(pH1.0)
気道(33℃)
腸管(37℃)
EV-D68およびHRV↳気道親和性
エンテロウイルス一般↳腸管親和性
Oberste MS et al, JGV, 2002.
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疫学
2000年代後半以降 EV-D68検出数が世界規模で増加
疫学
2008年以降にEV-D68検出が報告されている国々
1-20 cases21-40 cases
41-60 cases61-80 cases
81-100 cases101- cases
2014年9月~2015年1月に49州から計1,153例の報告(死亡例14例/1%)
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疫学
Midgley CM et al, Lancet Respir, 2015.
EV-D68陽性者 (n=611)
年齢
1歳未満 51 (8%)
1~4歳 209 (34%)
5~11歳 251 (41%)
12~17歳 251 (41%)
18歳以上 39 (6%)
性別(女子) 250 (41%)
基礎疾患
喘息・喘鳴性疾患 322 (52%)
未熟児 39 (6%)
心疾患 15 (2%)
免疫抑制状態 10 (2%)
米国アウトブレイク(2014年):EV-D68感染者の患者背景
重症化因子:気管支喘息・喘鳴性疾患の既往
・EV-D68陽性者と陰性者の比較:
- 喘息or反復性喘鳴の既往が有意に多い- 心疾患, 未熟児は統計学的有意差なし
・ICU入室/人工呼吸器管理となったEV-D68陽性者:
- 喘息・喘鳴性疾患の既往が有意に多い- 未熟児は統計学的有意差なし
Shuster JE et al, JCV, 2015.
Midgley CM et al, Lancet Respir, 2015.
疫学
気管支喘息や反応性気道疾患*のある児への注意勧告
* 乳幼児期にウイルス感染や環境因子などにより喘鳴を繰り返す病態
(日本小児アレルギー学会喘息治療・管理ガイドライン委員会)
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疫学
Midgley CM et al, Lancet Respir, 2015.
EV-D68陽性者 (n=611)
症状
発熱 294 (48%)
喘鳴 427 (70%)
多呼吸 296 (48%)
陥没呼吸 261 (43%)
治療*
酸素投与 436 (80%)
NPPV 118 (23%)
挿管/人工呼吸 145 (28%)
ECMO 8 (2%)
転帰集中治療管理 338 (59%)
死亡 5 (1%)
米国アウトブレイク(2014年):EV-D68感染者の症状・転帰
* NPPV; non-invasive positive pressure ventilation, ECMO; extracorporeal membrane oxygenation
重症例と軽症例のどちらが多い?成人患者は本当に少ない?
① 小児肺炎研究
② 成人肺炎研究
③~⑤ インフルエンザ様疾患(ILI)研究
▷ 3次医療施設▷ 重症呼吸器感染症(SARI)で入院した重症患者が研究対象
▷ 外来医療施設(3箇所)▷ 外来受診しILIと診断された軽症患者が研究対象
Google map
Eastern VisayasRegional Medical Center
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34
5
Leyte provincial hospital Tacloban City Health Center Tanauan Regional Health Unit
はじめに
2008年よりレイテ州でウイルス性呼吸器感染症について研究
レイテ州
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肺炎(小児)n=1187
肺炎(成人)n=456
インフルエンザ様疾患n=3597
2 1n=9
臨床像
レイテ州での研究(2008-2011年):小児では重症例が多い
0.76% 0.028%0.44%
* p<0.0001 (Fisher’s exact test) *Imamura T et al, PLOS One, 2013.
EV-D68陽性者数 →
臨床像
EV-D68による呼吸器感染症の重症度:全体像は不明
医療機関受診を要した患者(肺炎, ILI …)
医療機関受診に至らない軽症患者
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中枢神経疾患
Sejvar JJ et al, Clin Inf Dis, 2015.
米国(2014年9~12月):計120例の急性弛緩性脊髄炎(AFM*)
* AFM; acute flaccid myelitis
中枢神経疾患
Messacar K et al, Lancet, 2014.
MRI検査において脳幹および脊髄に病変部位が散在
橋被蓋
Case2FLAIR
歯状核(小脳)
Case5FLAIR
Case5T2WI
Case1T2WI
頚髄腹側
Case1T2WI
脊髄前角(頚髄)
Case1T1WI
Case6T2WI
脊髄前根(脊髄円錐)
脊髄灰白質(頚髄)
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中枢神経疾患
これらAFM患者の属性 ( ≠ 注 EV-D68によるAFM )
AFM患者 (n=120)
年齢 0.4~20.8歳(中央値:7.1歳)
性別(女子) 49 (41%)
先行する発熱/呼吸器症状 105 (90%)
四肢症状脱力 29 (24%)
疼痛 61 (51%)
脳神経症状
顔面神経麻痺 17 (14%)
嚥下障害 14 (12%)
複視 10 (9%)
Sejvar JJ et al, Clin Inf Dis, 2015.
EV-D68の検出:24/120(20%)のみ(すべて呼吸器検体)
EV-D68が起因病原体?!
中枢神経疾患
Messacar K et al, Lancet Inf Dis, 2018.
EV-D68の流行と同時期に急性弛緩性麻痺の患者が増加
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中枢神経疾患
年 検出地 患者数 診断EV-D68検出
呼吸器 CSF 血液 便
2008 米国1 1 髄膜脊髄脳炎 0 1 NA NA
2012-13 米国2 2 AFP NA NA NA NA
2014 米国3 4 脳神経障害, AFP 4 0 NA NA
2014 フランス4 1 AFP 1 0 NA 1
2014 ノルウェー5 2 AFP 2 0 0 0
2010-14 米国6 5 脳神経障害, AFP 5 0 0 0
2012-14 米国7 13 AFP, 脳炎 13 0 1 1
2012-15 米国8 9 AFM 11 0 NA NA
2015 日本9 1 急性脳症 1 0 NA 1
2015-16 英国10 2 AFP, GBS 1 NA NA 2
2016 ヨーロッパ11 29 AFM 27 2 NA 8
* AFP; 急性弛緩性麻痺, AFM; 急性弛緩性脊髄炎, GBS; ギランバレー症候群, NA; 報告なし.
EV-D68が検出された中枢神経疾患の患者は少数*
1 Kreuter JD et al, Arch Pathol Lab 2011.2 Roux A et al, Neurology 2014.3 Maloney JA et al, AJNR Am J Neuroradiol 2015.4 Lang M et al, Euro Surveillance, 2014.
5 Pfeiffer HC et al, Euro Surveillance 2015.6 Greninger AL et al, Lancet, 2015.7 Messacar K et al, Lancet, 2015.8 Sejvar JJ et al, CID, 2015.
9 Nakata K et al, Frontier Pediatrics, 2015.10 Williams CJ et al, Euro Surveillance, 2016.11 Knoester M et al, Ped Inf Dis J, 2018.
(現在) EV-D68と中枢神経疾患の関係性
多 :疫学情報からの示唆
少 :患者からの病原体同定
中枢神経疾患
Greninger AL et al, Lancet, 2014.
中枢神経疾患発症に関与するアミノ酸変異の有無は不明
*
*
*
* ; CladeDark red ; 脳炎患者Red ; AFP患者Blue ; 呼吸器症状のみ
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国内状況
日本国内でも2010年以降に検出報告数が増加
国立感染症研究所 病原微生物検出情報(Infectious Agents Surveillance Report; IASR)
(検出件数)
(年)
国内状況
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・・・
・・・
陽性者数 (n=538) 陽性患者割合(%)
発熱 402 75
下気道炎 285 53
上気道炎 122 23
喘鳴/喘息 113 21
脊髄炎 5 2
脳炎 3 3
脳症 1 1
国内状況
国立感染症研究所 病原微生物検出情報(Infectious Agents Surveillance Report; IASR)
EV-D68陽性患者の診断名(2005-2015年):呼吸器疾患が主体
・・・ 死亡例からの検出報告は少数
(症例1/2010年) 4歳児, 胃腸炎症状(症例2/2013年) 0歳児, 発熱症状
国内状況
Chong PF et al, Clinical Inf Dis, 2017.
EV-D68流行期にAFM患者数が増加(その一部からEV-D68が検出)
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まとめ①
わかっていること
- 世界各地で2010年台以降に検出数が増加
- 小児患者の報告数が多く, 重症例も含まれる
- 呼吸器疾患に加えて中枢神経疾患も起こす
(かも)
わかっていないこと
- 2010年台に流行拡大を起こしたのはなぜ?
- 複数システム(呼吸器/中枢神経)の疾患を起こすのはなぜ?
EV-D68の疫学や臨床像についての報告から…
まとめ①
わかっていないこと
- 2010年台に流行拡大を起こしたのはなぜ?
- 複数システム(呼吸器/中枢神経)の疾患を起こすのはなぜ?
EV-D68の疫学や臨床像についての報告から…
わかっていること
- 世界各地で2010年台以降に検出数が増加
- 小児患者の報告数が多く, 重症例も含まれる
- 呼吸器疾患に加えて中枢神経疾患も起こす
(かも)
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分子疫学
近年の流行は遺伝子学的3系統のウイルスで構成
Imamura T et al, Rev Med Virol, 2015.
VP1 (capsid) 546nt, Neighbor joining method x 500
(Clade C)
(Clade B)
(Clade A)
(Clade B1/D)
分子疫学
遺伝子型交代と流行拡大の関係性は不明
医学のあゆみ253巻1号
台風ハイアン
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↓BC-loop
↓ DE-loop
抗原性
Lineage 1-3を分けるアミノ酸変異はVP1:BC・DE-loopに集積
Imamura T et al, JVI, 2014.
P
1
2
3
P
1
2
3
P
1
2
3
: Prototype
: Lineage 1
: Lineage 2
: Lineage 3
P
1
2
3Mateu MG, Virus research 1995より改変
VP1蛋白:loop構造が抗原性に関与(”epitope”)
βストランド
ループ
VP1
異なる抗原性の遺伝子型の出現が近年の流行拡大の原因では?
抗原性
ハートレー系モルモット
(生後6週メス)
Lineage 1(2010年山形)
Lineage 2(2010年山形)
Lineage 3(2010年山形)
Y YYY YY
Y YY
EV-D68
抗血清
中和試験HI試験
抗原性比較研究のデザイン
抗血清
腹腔内投与
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抗原性
初代分離株と近年流行株で異なる抗原性
Imamura T et al, JVI, 2014.
0
2
4
6
8
10
12
Log 2
(中和
抗体
価/1
0)
抗Lineage 1 Yモルモット血清
抗Lineage 2 Yモルモット血清
抗Lineage 3 Yモルモット血清
近年流行株, 初代分離株, EV71
Y Y Y
抗原性
* P<0.05 by Wilcoxon rank sum test
Log 2
(HI価
/ 1
0, 1
00
)
抗Lineage 1 Yモルモット血清
抗Lineage 2 Yモルモット血清
抗Lineage 3 Yモルモット血清
近年流行株も遺伝子型間で異なる抗原性
Y Y Y
多様な抗原性の遺伝子型の出現が近年の流行拡大に関与した可能性
- ヒトで再感染を起こしうるレベルの違いか不明- その他ウイルス学的性質の違いは未検討
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まとめ①
わかっていないこと
- 2010年台に流行拡大を起こしたのはなぜ?
- 複数システム(呼吸器/中枢神経)の疾患を起こすのはなぜ?
EV-D68の疫学や臨床像についての報告から…
わかっていること
- 世界各地で2010年台以降に検出数が増加
- 小児患者の報告数が多く, 重症例も含まれる
- 呼吸器疾患に加えて中枢神経疾患も起こす
(かも)
✔
EV-D68は赤血球凝集性あり
血球種類
赤血球凝集性
モルモット 七面鳥 ニワトリ 羊
× ×[1] [2] [1,2] [2]
[1] Schieble JH et al, J Epidemiol, 1967.[2] Imamura T et al, Rev Med Virol, 2015.
EV-D68はシアル酸を介して細胞培地表面に接着し増殖
受容体結合性
[3] Uncapher CR et al, Virology, 1991.
何に結合してるの?
2019/7/17
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受容体結合性
シアル酸:いろいろ種類がある(特に重要なのは2種類)
Kumlin U et al, Influenza Other Resp Viruses, 2008.
α2-3結合型シアル酸
α2-6結合型シアル酸
受容体結合性
α2-6/2-3結合型シアル酸:立体構造が違う
α2-6結合型シアル酸 α2-3結合型シアル酸
Viswanathan K et al, Glucoconju J, 2010.
“アンブレラ(傘)” “コーン(円錐)”
2019/7/17
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受容体結合性
EK Miller et al, JCV, 2013より改変.Mastrosovich M et al, Top Curr Chem, 2015.
Kumlin U et al, Influenza Other Resp Viruses, 2008.
肺胞
気管支
気管
細気管支
咽喉頭
鼻腔
α2-6結合型シアル酸
α2-3結合型シアル酸
結膜
α2-6/2-3結合型シアル酸:体内分布が違う→疾患が違う
受容体結合性
グリカンアレイ法:6種類のシアル酸糖鎖への結合性を調査
α2-6結合型シアル酸 α2-3結合型シアル酸
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Imamura T et al, JVI, 2014.
EV-D68はα2-6結合型シアル酸に親和性あり
受容体結合性
α2-6結合型シアル酸 α2-3結合型シアル酸
細胞培地での増殖にもα2-6結合型シアル酸が関与
Baggen J et al, PNAS, 2015.より改変.
コントロール α2-3 SA (-) α2-6 SA (-) α2-6 SA (-)α2-3 SA (-)
受容体結合性
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27
Baggen J et al, PNAS, 2015.
EV-D68表面の”canyon”がシアル酸結合部位と推定
受容体結合性
受容体結合性
EK Miller et al, JCV, 2013より改変.Mastrosovich M et al, Top Curr Chem, 2015.
Kumlin U et al, Influenza Other Resp Viruses, 2008.
肺胞
気管支
気管
細気管支
咽喉頭
鼻腔
α2-6結合型シアル酸
α2-3結合型シアル酸
結膜
α2-6/2-3結合型シアル酸:体内分布も違う→疾患が違う
どうやって中枢神経細胞に感染しているの?(別の受容体があるのでは…?)
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受容体結合性
Wei W et al, Cell, 2016.より改変.
神経特異的なICAM5(intercellular adhesion molecule 5)も受容体
(予想される)病態まとめ
EV-D68
呼吸器感染 → ウイルス血症? → 中枢神経播種
EK Miller et al, JCV, 2013より改変.
* Hixon AM et al, JVI, 2019.
α2-6 SA
ICAM-5
(神経行性?*)
2019/7/17
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まとめ②
わかっていること
- 近年流行株は多様な抗原性の株で構成(近年の流行拡大の一因?)
- α2-6 SAとICAM-5を受容体として利用して複数システムに感染
わかっていないこと
- 動物モデルでは?
EV-D68に関する近年の基礎研究により…
呼吸器疾患 中枢神経疾患
動物モデル
近年報告されたEV-D68の動物モデル
マウス
コットンラット
フェレット - 経鼻投与- 肺内増殖- 血中サイトカイン値上昇
(Zheng HW et al, Viruses, 2017)
- 経鼻投与- 鼻腔, 肺内増殖- 気道病理変化- 血中サイトカイン上昇
(Patel M et al, PLOS ONE, 2016)
- Balb/c- 経鼻投与- 肺内ウイルス増殖- 気道病理変化- 血中サイトカイン値上昇
(Rajput C et al, JCI Insight, 2018)
- Swiss, C57BL, AG129- 経鼻, 筋中, 脳, 腹腔内投与- 神経内ウイルス増殖- 麻痺発現- 神経病理変化
(Rajput C et al, JCI Insight, 2018Hixon AM et al, JID, 2017, Morrey JD et al, Viruses, 2018)
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動物モデル
呼吸器・中枢神経疾患を同時に発症するBalb/c mice
神経細胞損傷
間質性肺炎
Sun S et al, Antivir Res, 2018.より改変.
全体まとめ
わかっていること
- 近年世界的に流行(多様な抗原性の株の出現)
- 複数システムの疾患(複数種類の受容体)
- 小児重症例報告多数
- 動物モデル開発中
わかっていないこと
- 流行予測は可能?(周期性, 流行間の感染維持)
- 真の臨床像は?(成人, 軽症患者も含めて)
- ワクチン, 治療薬は?
以上の全てをまとめると…
さらなる研究が必要!
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