後編 Visual Studio 2005で開発する開発言語としては,Visual C#,Visual...

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開発言語としては,Visual C#,Visual Basic.NET を利用 するマネージド・コード(コラム 1 を参照)のアプリケーション 開発以外に,これまで,eMbedded Visual C++ でしか行えな かった C/C++ によるネイティブ・コード・アプリケーション の開発も行えます. ● 組み込みシステム開発における 製品ラインナップの注意点 Visual Studio 2005 の製品ラインナップでは,Professional Edition,Team System が Windows CE のアプリケーション開 発をサポートしています.開発言語としては,Visual C#, Visual Basic,Visual C++ を利用できます. Platform Builder との違い Windows CE 5 までの開発環境である Platform Builder との 大きな違いは,Shell にあります.これまでは,専用のユーザ・ インターフェースによる開発であり,エンジニアはアプリケー ションと OS の開発環境を切り替えて開発する必要がありまし た.しかし,今回の Windows CE 6 からは,OS とアプリケー ションを同一のユーザ・インターフェースで開発できます.そ のため,複数の開発環境を導入する必要がなくなりました. Visual Studio .NET 2003 との違い 旧バージョンの Visual Studio .NET 2003 との大きな違いの 一つとして,ツールの構成が挙げられます. 192 Dec. 2006 KEYWORD ――Windows CE 6,OS 開発,開発環境 後編 Visual Studio 2005 で開発する 図1 Visual Studio 2005 で開発を行う場合の 概念図 Visual Studio 2005 OS� Windows CE アプリケーション� マネージド・コード ネイティブ・コード Visual C Visual Basic NET Visual C C OAL イバ アプ ケーシ Windows CE は,これまで専用の開発環境として Platform Builder, eMbedded Visual C++ が 必 要 で し た . し か し , Windows CE 6 からは,開発環境が Visual Studio 2005 に統合 されました.今回は,Windows CE 6 の開発環境に注目して解 説を進めていきます. Platform Builder / eMbedded Visual C++ から Visual Studio 2005 へ 開発環境が Visual Studio 2005になったことで,通常の Windows アプリケーション以外に,以下のような開発が可能 となりました(図1). sWindows CE 6 の OS 開発 これまで Platform Builder で行っていた作業を Visual Studio 2005(図2)上で行えます.OAL,ドライバなどのOSを構成 する基本モジュールの開発,および Windows CE 6 で提供する コンポーネントの抽出や選択が可能となります. sWindows CE 6,Windows Mobile 上のアプリケーション開発 従来は eMbedded Visual C++,Visual Studio 2003 で行って いたアプリケーション開発が可能となりました.

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Page 1: 後編 Visual Studio 2005で開発する開発言語としては,Visual C#,Visual Basic.NETを利用 するマネージド・コード(コラム1を参照)のアプリケーション

開発言語としては,Visual C#,Visual Basic.NETを利用

するマネージド・コード(コラム1を参照)のアプリケーション

開発以外に,これまで,eMbedded Visual C++でしか行えな

かったC/C++によるネイティブ・コード・アプリケーション

の開発も行えます.

● 組み込みシステム開発における

製品ラインナップの注意点Visual Studio 2005の製品ラインナップでは,Professional

Edition,Team SystemがWindows CEのアプリケーション開

発をサポートしています.開発言語としては,Visual C#,

Visual Basic,Visual C++を利用できます.

● Platform Builderとの違いWindows CE 5までの開発環境であるPlatform Builderとの

大きな違いは,Shellにあります.これまでは,専用のユーザ・

インターフェースによる開発であり,エンジニアはアプリケー

ションとOSの開発環境を切り替えて開発する必要がありまし

た.しかし,今回のWindows CE 6からは,OSとアプリケー

ションを同一のユーザ・インターフェースで開発できます.そ

のため,複数の開発環境を導入する必要がなくなりました.

● Visual Studio .NET 2003との違い旧バージョンのVisual Studio .NET 2003との大きな違いの

一つとして,ツールの構成が挙げられます.

192 Dec. 2006KEYWORD――Windows CE 6,OS開発,開発環境

後編 Visual Studio 2005で開発する

図1Visual Studio 2005で開発を行う場合の概念図

Visual Studio 2005

OS�

Windows CE 6�

アプリケーション�

マネージド・コード� ネイティブ・コード�

Visual C#�

Visual Basic .NET

Visual C/C#�OAL�

ドライバ�

アプリケーション�

Windows CEは,これまで専用の開発環境としてPlatform

Builder, eMbedded Visual C++が必要でした.しかし,

Windows CE 6からは,開発環境がVisual Studio 2005に統合

されました.今回は,Windows CE 6の開発環境に注目して解

説を進めていきます.

● Platform Builder / eMbedded Visual C++から

Visual Studio 2005へ開発環境が Visual Studio 2005になったことで,通常の

Windowsアプリケーション以外に,以下のような開発が可能

となりました(図1).

sWindows CE 6のOS開発

これまでPlatform Builderで行っていた作業をVisual Studio

2005(図 2)上で行えます.OAL,ドライバなどのOSを構成

する基本モジュールの開発,およびWindows CE 6で提供する

コンポーネントの抽出や選択が可能となります.

sWindows CE 6,Windows Mobile上のアプリケーション開発

従来はeMbedded Visual C++,Visual Studio 2003で行って

いたアプリケーション開発が可能となりました.

Page 2: 後編 Visual Studio 2005で開発する開発言語としては,Visual C#,Visual Basic.NETを利用 するマネージド・コード(コラム1を参照)のアプリケーション

Visual Studio .NET 2003においては,Visual C#と Visual

Basic が利用できました.ネイティブ・コードの開発には,

Visual Studio .NET 2003とは別に,eMbedded Visual C++を

利用する必要がありました.

Visual Studio .NET 2003では,Visual C#や Visual Basic

.NETを利用してマネージド・コード・アプリケーションを開

発し,eMbedded Visual C++でネイティブ・コード・アプリ

ケーションを開発する構成となっていました.一方,Visual

Studio 2005では,両方のコードの開発が行えるようになってい

ます.

● 組み込みシステム開発マネージド・コード・アプリケーションは,.NET Compact

Frameworkで提供されるクラス群やCLRのガベージ・コレク

ションによるメモリ・リソース管理が利用できるという利点も

あります..NET Compact Frameworkが提供している機能のみ

利用することも可能です.そのため,たとえばデバイス固有の

処理などにおいて,.NET Compact Frameworkでは提供されて

いない機能はネイティブ・コードを利用することになります.

マネージド・コードでのアプリケーション開発は,先に説明

したとおり,さまざまな利点があります.しかしながら,数ms

193Dec. 2006

Windows CEのアプリケーションには,マネージド・コード・

アプリケーションとネイティブ・コード・アプリケーションの2

種類が存在します.

● CPUに依存しないマネージド・コード・アプリケーションマネージド・コード・アプリケーションは .NET Framework

のサブセットである組み込みシステムおよびモバイル端末向け

の .NET Compact Framework上で動作するアプリケーション

です.

マネージド・コード・アプリケーションの実行モジュールに

は,ILと呼ばれる中間コードが格納されています.この中間コー

ドは.NET Compact Frameworkの CLR(Common Language

Runtime)によって各ハードウェア固有のネイティブ・コードに

変換され,実行されます.Windows CEでは,4種類のCPUを

サポートしていますが,このCLRによってCPU命令の違いを吸

収しているため,CPUごとに実行モジュールを用意する必要が

ありません.

● CPUに依存するネイティブ・コード・アプリケーションそれに対して,ネイティブ・コード・アプリケーションでは,

プロセッサごとに固有のネイティブ・コードが格納されるため,

サポートするプロセッサごとに実行モジュールを用意する必要が

あります.

マネージド・コードとネイティブ・コード

コラム1

図2Visual Studio 2005の画面