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1 EMC ® Symmetrix ® VMAX ® 向けFAST VPの原理および 計画とパフォーマンスのための ベスト プラクティス テクニカル ノート P/N 300-012-014 REV A06 20135このテクニカル ノートには、以下のトピックに関する情報を掲載してい ます。 エグゼクティブ サマリー ...................................................................................2 概要 ............................................................................................................................2 FASTFully Automated Storage Tiering................................................3 FAST VP ...................................................................................................................7 FAST VP のアーキテクチャ.............................................................................16 FAST VP の構成...................................................................................................18 FAST VP パフォーマンス データ コレクション.......................................26 FAST VP パフォーマンス データ分析..........................................................31 FAST VP データ移動 ..........................................................................................37 高度な FAST VP 機能.........................................................................................44 FAST VP の相互運用性 .....................................................................................54 ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項........................59 評価結果..................................................................................................................92 付録 AFAST VP の状態................................................................................93 付録 B 機能サポート ......................................................................................96 付録 Cベスト プラクティスのクイック リファレンス .....................98 参考資料............................................................................................................... 101

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EMC® Symmetrix® VMAX® 向けFAST VPの原理および

計画とパフォーマンスのための ベスト プラクティス

テクニカル ノート P/N 300-012-014

REV A06 2013年5月

このテクニカル ノートには、以下のトピックに関する情報を掲載しています。

エグゼクティブ サマリー ...................................................................................2 概要 ............................................................................................................................2 FAST(Fully Automated Storage Tiering) ................................................3 FAST VP ...................................................................................................................7 FAST VP のアーキテクチャ .............................................................................16 FAST VP の構成 ...................................................................................................18 FAST VP パフォーマンス データ コレクション .......................................26 FAST VP パフォーマンス データ分析 ..........................................................31 FAST VP データ移動 ..........................................................................................37 高度な FAST VP 機能 .........................................................................................44 FAST VP の相互運用性 .....................................................................................54 ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項 ........................59 評価結果 ..................................................................................................................92 付録A: FAST VP の状態 ................................................................................93 付録 B: 機能サポート ......................................................................................96 付録 C: ベスト プラクティスのクイック リファレンス .....................98 参考資料 ............................................................................................................... 101

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エグゼクティブ サマリー

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

エグゼクティブ サマリー

情報インフラストラクチャは、変化し続けるビジネス要件に継続的に対応する必要があります。EMC® Symmetrix® FAST VP™(Fully

Automated Storage Tiering for Virtual Pools)は時間とともにパフォーマンス特性が変化するのに伴い、Symmetrix階層間のワークロードを簡単に移動することで、Virtual Provisioning™環境の階層型ストレージ戦略を自動で操作します。FAST VPは、重要なサービス レベルを維持しながら、データ移動を実行し、パフォーマンスの向上とコストの削減を行います。

概要

EMC Symmetrix VMAX® FAST VPでは、アレイ内のパフォーマンス/容量が異なる階層間でデータを再配置するためのアクティブまたは非アクティブなアプリケーション データの識別が自動化されます。FAST VPはLUNおよびサブLUNレベルのワークロードをプロアクティブに監視して、高性能のドライブに移動した方がよいビジー データを特定します。また、FAST VPは現在のパフォーマンスに影響を与えずに大容量ドライブに移動できるビジーでないデータを特定します。このプロモート/デモート アクティビティは、仮想プールを介して複数のドライブ テクノロジー(RAID保護スキーム)とストレージ グループを関連づけるポリシーに基づきます。また、ストレージ グループ内に含まれるアプリケーションのパフォーマンス要件にも基づいています。このアクティビティでのデータ移動はビジネス継続性やデータ可用性に影響を与えずに、無停止で実行されます。

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FAST(Fully Automated Storage Tiering)

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

対象者

このテクニカル ノートは、FAST VPの構成に最適なパフォーマンスを実現するために、FAST VPの原理、ベスト プラクティス、関連する推奨事項を理解する必要があるすべてのユーザーを対象としています。特に、FAST VPをすでに導入している、あるいは将来の導入を検討しているEMCのお客様、セールス スタッフ、フィールド テクニカル スタッフを対象としています。

本書の大部分は、読者がFAST VPの導入と管理について基礎的な知識を有していることを想定して書かれています。仮想プロビジョニング環境におけるFAST VPの導入と管理については、「Implementing Fully

Automated Storage Tiering for Virtual Pools (FAST VP) for EMC

Symmetrix VMAX Family Arrays」テクニカル ノートを参照してくだ

さい。

FAST(Fully Automated Storage Tiering)

FAST™(Fully Automated Storage Tiering)では、アレイ内のパフォーマンス/容量が異なる階層間でアプリケーション データを再配置するためのデータがアクティブであるか非アクティブであるかが自動的に識別されます。

FASTの主なメリットは、次のとおりです。

同じコストでアプリケーション パフォーマンスを向上できる、または、より低いコストで同じアプリケーション パフォーマンスを提供できる。コストは、以下のように定義されます。(ハードウェアとソフトウェア両方の)購入、設置面積/電力、管理の費用。

ワークロード特性が時間の経過とともに変化する場合、手動によるアプリケーションの階層化を排除できる。

EFD(エンタープライズ フラッシュ ドライブ)によってメリットが得られるデータ、または、パフォーマンスに影響を与えることなく容量が大きく、低価格なSATAドライブに保存できるデータを識別するプロセスを自動化できる。

ビジネス アプリケーションの最適化および優先度設定により、お客様は、単一アレイ構成内のストレージ リソースを動的に割り当てることができる。

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FAST(Fully Automated Storage Tiering)

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

異なるコスト パフォーマンスに応じて、より大きな柔軟性を、保存された情報のライフサイクル全体にわたり提供できる。

FASTの必要性

ドライブ テクノロジーの進化とストレージ統合の必要性により、Symmetrixアレイでサポートされるドライブ タイプの数も大幅に増加しています。これらのドライブは、ストレージ サービスの専門性およびコスト特性がそれぞれ大きく異なり、多岐にわたっています。

Symmetrix VMAXファミリ アレイによってサポートされる、ドライブ

タイプには、いくつかの相違点があります。主な違いは次のとおりです。

レスポンス タイム

ストレージ容量単位あたりのコスト

ストレージ要求処理単位あたりのコスト

EFD(エンタープライズ フラッシュ ドライブ)は、レスポンス タイムが非常に短く、非常に高いレベルの要求を処理できますが、ストレージ容量単位あたりのコストが高くなります。

それとは正反対なのが、SATAドライブまたはニアラインSASドライブなどの7,200 RPMの速度を持つ回転ドライブです。これらは、ストレージ容量単位あたりのコストが低いですが、レスポンス タイムが長く、また、ストレージ要求処理単位あたりのコストも高くなります。

これらの両極端の間には、ファイバ チャネルやSASドライブなどの10,000~15,000 RPMの間の速度を持つ回転ドライブがあります。

これら4種類のドライブ タイプの性質の違いに基づき、各ドライブに最適なワークロード タイプについて、次のように考察できます。

EFD は、高密度のバックエンド ランダム リード ストレージ要求を持つワークロードに、より適している。そのようなワークロードの場合、ドライブが提供する短いサービス タイムを活用でき、また、大容量のストレージを必要としないためストレージ要求処理単位あたりのコストも低くすることができます。

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FAST(Fully Automated Storage Tiering)

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SATAおよびニアライン SAS ドライブは、低密度のバックエンド ストレージ要求を持つワークロードに適しています。

FCドライブと SASドライブは、バックエンド ストレージ要求の密度が一定していないワークロードに最適なドライブ タイプ。

このように、適したワークロードがそれぞれ異なることは、ストレージ管理者にとって、オポチュニティでもあり課題でもあります。

ストレージ ワークロードが最適なドライブ テクノロジーによって処理されるようにできれば、相違はオポチュニティとなり、アプリケーション パフォーマンスが向上し、ハードウェアの購入コストや(設置面積/

電力のコストを含む)運用コストが削減される。

ただし、管理オーバーヘッドの増加や複雑化を招くことなく、どのようにしてこれらのメリットを実現するかが課題となります。

FASTは、指定のドライブ テクノロジーに配置されるべきデータの識別を自動化し、ストレージ リソースの使用を最適化するために自動的に無停止でデータを階層間で移動させるものです。これを行う際、特定のアプリケーション ストレージ グループに課せられる可能性のある階層容量使用についての任意の制約も考慮に入れる必要があります。

FAST DPとFAST VP

EMC Symmetrix VMAX FAST DPおよびFAST VPでは、アレイ内のパフォーマンス/容量が異なる階層間や、FTS(Federated Tiered Storage)を使用して外部アレイにアプリケーション データを再配置するためのデータ ボリュームが自動的に識別されます。

注:Federated Tiered Storageは、オープン システム環境のみで使用できます。また、FTSのサポートはFAST VPのみに適用されます。

Federated Tiered Storageの詳細については、「Design and Implementation Best Practices for EMC Symmetrix Federated Tiered Storage (FTS)」テクニカル ノート(http://support.emc.com)を参照してください。

FAST DPは、ディスク グループ プロビジョニングSymmetrixボリューム上で動作します。階層間で実行されるデータ移動は、フルLUNレベルで実行されます。

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FAST(Fully Automated Storage Tiering)

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FAST VPは仮想プロビジョニングのシン デバイスで動作します。そのため、データの移動はサブLUNレベルで実行できます。単一のシン デバイスには、アレイ内の複数のシン プールや、FTSを使用した外部アレイに割り当てられたエクステントがある場合があります。

注:仮想プロビジョニングの詳細については、「Best Practices for Fast,

Simple Capacity Allocat ion with EMC Symmetrix Virtual Provisioning」テクニカル ノート(http://support.emc.com)を参照してください。

FAST DPとFAST VPは、それぞれ異なるデバイス タイプ(ディスク グループ プロビジョニングと仮想プロビジョニング)をサポートしているため、単一のアレイ内で同時に動作できます。両者は一部の構成パラメータを共有していますが、管理と運用は個別に考えることができます。

本書では、仮想プロビジョニング環境でのFAST VPの実装と管理の説明に重点を置いています。

注:FASTの詳細については、「Implementing Fully Automated Storage

Tiering (FAST) for EMC Symmetrix VMAX Series Arrays」テクニカル ノート(http://support.emc.com)を参照してください。

FAST管理オブジェクト

Symmetrix VMAXアレイでのFASTおよびFAST VPの使用に関連する3つの主要要素があります。以下のとおりです。

ストレージ階層 :共通のドライブ テクノロジーと RAID 保護を持つ共有リソース

FAST ポリシー :1 個または複数のストレージ グループのサービス レベルを達成するために、Symmetrix 階層間でのデータ配置と移動に関するガイドラインを示す階層使用ルール

ストレージ グループ :共通の管理のためのデバイスの論理グループ

図1に、FAST管理オブジェクトを示します。

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FAST VP

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図1. FAST管理オブジェクト

3つの管理オブジェクトはそれぞれ、Unisphere® for VMAX、Symmetrix

Management Consoleのグラフィカル インタフェースまたはSYMCLI

(Solutions Enablerコマンド ライン インタフェース)を使用して作成および管理できます。

FAST VP

前述のとおり、FAST VPでは、単一アレイ内のパフォーマンスが異なる階層間または外部アレイにアプリケーション データを再配置するためのシン デバイス エクステントの識別が自動化されます。FAST VPはLUN

レベルおよびサブLUNレベルのワークロードをプロアクティブに監視して、高性能のドライブに移動した方がよいビジーなデータを特定します。また、FAST VPはパフォーマンスに影響を与えずに大容量ドライブに移動できるビジーでないデータを特定します。

FAST VPを動作させる場合、3つのストレージ要素の構成が必要です。それは、ストレージ階層、FASTポリシー、ストレージ グループです。

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FAST VP

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ストレージ階層

Symmetrixストレージ階層は、所定のRAID保護タイプ(RAID 1、RAID

5、RAID 6、未保護)と組み合わされた、同一のドライブ テクノロジー

タイプ(EFD、FC、またはSATA)およびロケーション(内部または外部)と同一のエミュレーション(FBAまたはCKD)のリソース セットの仕様です。

注:未保護のRAIDタイプは、FTSで接続されたストレージ アレイ上に存在する外部階層のみに適用できます。

ストレージ階層化には、次の 2種類あります。DP(ディスク グループ

プロビジョニング)およびVP(仮想プロビジョニング)

ディスク グループ プロビジョニング階層

FASTによって使用されるストレージ階層タイプを、DP階層と呼びます。DP階層は、同じテクノロジー タイプの1個以上の物理ディスク グループとRAID保護タイプを組み合わせることにより定義されます。

注:FAST DP階層は外部にはできません。

仮想プロビジョニング階層

FAST VPの場合、ストレージ階層はVP階層と呼ばれます。定義すると、VP階層は1~4個のシン ストレージ プールを含みます。単一の階層の各シン プールは同じRAID保護タイプ(同数のデータ メンバーを持つ)のデータ デバイスを含み、同じドライブ テクノロジーで構成されてい

ます。

VP階層の特性

シン ストレージ プールをFAST VPで使用するには、単一のドライブ テクノロジー上の同じRAID保護として構成され、同じエミュレーションのデータ デバイスが含まれている必要があります。FC、SAS、SATAドライブの場合は、ドライブの回転スピードも一致する必要があります。ただし、速度が異なるがエミュレーションが同じドライブ上で構成され

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FAST VP

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たデータ デバイスを含む2台以上のシン プールは、単一のVP階層において組み合わせることができます。

注:FAST VPの目的のために、回転速度が10,000~15,000 RPMの間のすべてのドライブはFCとして分類されます。そのため、1つの階層に組み合わせることができます。同様に、回転速度が7,200 RPM以下のすべてのドライブはSATAに分類されます。

シン プールは1つのVP階層にのみ属することができます。階層間のプールの重複は許可されません。

すべてのVP階層は静的であるとみなされます。つまり、シン プールは、階層に明示的に追加される必要があります。ただし、データ デバイスを既存のプールに追加した場合は、追加の容量がVP階層内で自動的に使用可能になります。

Symmetrix VMAXストレージ アレイでは、最大256のSymmetrix階層がサポートされます。各Symmetrix階層名には、32文字までの英数字、ハイフン(-)、下線(_)を含めることができます。階層名は大文字と小文字が区別されません。

FASTポリシー

階層が1~4個の間のFASTポリシー グループ(最大3個の内部階層と1つの外部階層) このポリシーは、各ストレージ階層に使用上限を割り当てるので、これによりポリシーに関連づけられたストレージ グループの容量のうち、特定の階層上に配置できる最大容量が指定されます。

FASTポリシーは、DP(ディスク グループ プロビジョニング)またはVP(仮想プロビジョニング)のうち、1種類のストレージ階層のみを含みます。同様に、FASTポリシーには、1種類のエミュレーション タイプ(FBAまたはCKD)のストレージ階層のみが含まれます。

ポリシーに追加された最初の階層が、その後に追加できる階層のタイプを決定します。

VP階層を含むポリシーの場合、各ストレージ階層の容量使用量上限は、関連づけされたストレージ グループの構成済み論理容量のパーセンテージとして指定されます。

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FAST VP

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各階層の使用量制限は、1~100%でなければなりません。組み合わせた場合、ポリシーにおけるすべてのシン ストレージ階層の使用量上限は合計で少なくとも100%でなければなりませんが、もちろん100%を超えてもかまいません。

合計で100%を超える使用量上限値でポリシーを作成すると、ストレージ

グループを柔軟に構成することができます。データを階層間で移動させることができ、かつ同じストレージ グループ内で、それに対応する量の他のデータを移動させる必要はありません。

複数のFASTポリシーで同じ階層を再使用できるため、同じ階層に対して、異なる使用量制限を異なるストレージ グループに適用することが可能です。

Symmetrix VMAXストレージ アレイは最大256個のFASTポリシーをサポートします。各FASTポリシー名は、最大32文字の英数字、ハイフン(-)、アンダースコア(_)を使用できます。ポリシー名は大文字と小文字が区別されません。

注:FAST VPは、異なるデバイス テクノロジーに対して定義されている階層間のプロモート/デモート アクティビティだけを行います。RAID保護とドライブの回転スピードは考慮されません。そのため、FAST VPポリシーは、2個以上の階層が同じドライブ タイプを使用している場合は作成しないでください。たとえば、FAST VPポリシーには、2個以上のFC階層を含めないようにします。

ストレージ グループ

ストレージ グループは一緒に管理されるSymmetrixデバイスの論理コレクションです。ストレージ グループの定義はFASTおよび自動プロビジョニング グループ間で共有されます。ただし、SymmetrixデバイスはFASTの管理下にある1つのストレージ グループにのみ属することができます。

ストレージ グループがFASTポリシーと関連づけられることによって、ストレージ グループ内のデータを割り当てられるVP階層を定義します。

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FAST VP

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FAST VPでは、特定のデバイスタイプの移動のみがサポートされます。そのため、FAST VPのために作成されたストレージ グループには、次のデバイス タイプを含められません。

ディスクレス

IBM i(520 バイト ブロック エミュレーション)、ICOS、ICL

メタ デバイス メンバー

SAVE(SAVDEV)

DATA(TDAT)

DRV

SFS

Vault

注:IBM i D910エミュレーション(512バイト ブロック)のサポートは、FBAエミュレーションプール、階層、FAST VPポリシーによって提供され

ます。

Symmetrix VMAXシリーズ ストレージ アレイでは、最大8,192のストレージ グループがサポートされます。ストレージ グループには4,096個までのデバイスを含めることができます。各ストレージ グループ名には、64文字までの英数字、ハイフン(-)、下線(_)を使用できます。ストレージ グループ名では、大文字と小文字が区別されません。

FASTポリシーの関連づけ

ポリシーは、ストレージ グループを4個までの階層に関連づけ、特定の階層に存在するストレージ グループの論理ストレージ容量の最大割合を定義します。

同一のFASTポリシーは複数のストレージ グループに適用できます。しかし、1つのポリシーにストレージ グループが1つしか関連づけられない場合もあります。

FAST VPは、シン ストレージ階層を含むFASTポリシーで、最大1,000個のストレージ グループの関連づけをサポートします。

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FAST VP

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同じストレージ グループにディスク グループ プロビジョニング デバイスとシン デバイスの両方を含むことが可能です。ただし、ストレージ

グループは1つのポリシーのみと関連づけられます。FASTおよびFAST

VPによって、両方のデバイス タイプを管理する必要がある場合は、別のストレージ グループを作成する必要があります。これらのストレージ

グループは、適切なタイプのポリシーと関連づける必要があります。

FASTポリシーに関連づけられたストレージ グループは、単一のエミュレーション(FBAまたはCKD)用に構成されたシン デバイスのみを含むことができます。混在は許可されません。同様に、ストレージ グループ内のシン デバイスのエミュレーションは、グループが関連づけられているFASTポリシーのエミュレーションに一致する必要があります。

注:VP階層を含むポリシーにストレージ グループを関連づける場合、グループ内のバインドされたシン デバイスは、ポリシーの階層に属する少なくとも1個のシン プールにバインドする必要があります。

FAST VPポリシーに関連づけられているストレージ グループにはバインドされていないデバイスを含めることができます。ただし、それらのデバイスは、ポリシー内の階層に含まれているシン プールのみにバインドできます。

優先度

ストレージ グループがFASTポリシーに関連づけられると、優先値もこのストレージ グループに割り当てる必要があります。この優先度値は

1~3を指定でき、1の優先度が最も高くなります。デフォルトは、2です。

複数のストレージ グループがFAST VPポリシーに関連づけられている場合、ストレージ グループ内のデータが、関連する階層のいずれかにある共通リソースに対して競合するときに優先度が使用されます。別の階層に移動するデータを決定する場合、優先度の高いストレージ グループに優先権が与えられます。

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FAST VP

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ストレージ グループに関する考慮事項

ストレージ グループに関連づけられたポリシーのタイプ(DPまたはVP)は、どのデバイスがポリシーによって管理されるかを決定します。たとえば、ストレージ グループがVP階層を含むポリシーに関連づけられている場合、そのグループ内のシン デバイスだけがそのポリシーによって管理されます。

FASTポリシー構成

FAST VP環境は、複数のシン ストレージ階層、FASTポリシー、およびストレージ グループを含むことができます。

図2に、3個のストレージ グループを示します。各ストレージ グループは、1つのポリシーに関連づけられています。これらのポリシーは、アレイ内に定義された3個までのストレージ階層にストレージ グループを関連づけます。

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FAST VP

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図2. FASTポリシーの関連づけ

FAST VPはSystem_Optimizationポリシーに基づいて、3つの関連づけられた階層の任意の場所に、VP_ProdApp1ストレージ グループの構成された論理容量の最大100%を配置できます。3つの階層とは、EFD上のRAID 5(3+1)、FC上のRAID 1、SATA上のRAID 6(6+2)です。常に、すべてのデータを最も適切な階層に配置できるため、ポリシーによって最大の柔軟性が得られます。

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FAST VP

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注:新しく作成されたポリシーのデフォルトは、含まれる階層のいずれにも配置できるように、ストレージ グループの容量の100%を許可することです。

カスタム ポリシーの場合、VP_ProdApp2ストレージ グループの構成された容量の10%がEFD階層に、50%がFC階層に、最大100%がSATA階層および外部FTS階層の両方に配置できます。

No_EFDポリシーはEFDにデータを移動しませんが、VP_Development

ストレージ グループの容量の100%をSATAまたはFTS階層に配置でき、最大50%をFC階層に配置できます。

すべての結合された階層の合計は100%であり、ストレージ グループのシン デバイスが完全に割り当てられると、各階層はポリシー内で設定されたとおりに使用されます。たとえば、ポリシーが10% EFD、20% FC、70% SATAとして設定された場合、ストレージ グループの容量の10%が、常にEFD階層に配置され残りの階層も同様であることを意味します。

FASTポリシー コンプライアンス

ストレージ グループ内のすべてのデータがポリシーに含まれる各階層の使用上限の範囲内で割り当てられている場合、ストレージ グループは関連づけられたFASTポリシーに準拠しているとみなされます。

ストレージ グループのすべてのデータがFASTポリシーに含まれる階層に割り当てられているが、ある階層に割り当てられた容量がその階層の使用上限を超えている場合は、ストレージ グループは非準拠であるとみなされます。このような場合、FASTコントローラは、使用条件を超えているVP階層からポリシーに含まれる別の階層(1つまたは2つ)にデータを再配置してこの非準拠を是正しようとします。望ましい結果は、ストレージ グループが準拠状態になることです。

非準拠の特別なケースとして、ストレージ グループのデータの一部が、FASTポリシー内のVP階層に属さないシン プールに割り当てられている場合があります。この場合、ストレージ グループは非準拠とみなされ、データはポリシー外とみなされます。再び、FASTコントローラは、ポリシーに属する3つの階層のうちの1つ、2つ、または3つすべてにポリシー外のデータを再配置して、この状態を是正しようとします。

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FAST VPのアーキテクチャ

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FAST VPのアーキテクチャ

FAST VPには2つのコンポーネントがあります。Symmetrix Enginuity™とFASTコントローラです。

Symmetrix Enginuityは、アレイ内のコンポーネントをコントロールするストレージ オペレーティング環境です。FASTコントローラは、サービス プロセッサ上で実行される1つのサービスです。

図3. FAST VPのコンポーネント

FAST VPがアクティブなとき、両方のコンポーネントは2つのアルゴリズム(インテリジェント階層化アルゴリズムおよび割り当て準拠アルゴリズム)の実行に関与し、適切なデータ配置を決定します。

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FAST VPのアーキテクチャ

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インテリジェント階層化アルゴリズムは、Enginuityによって収集されたパフォーマンス データ、およびFASTコントローラによって実行された確証計算を使用して、VLUN VPデータ移動エンジンにデータ移動リクエストを発行します。

アロケーション コンプライアンス アルゴリズムは、特定のストレージ

グループに基づいて各階層で使用可能なストレージ容量の上限を適用します。また、データ移動リクエストをVLUN VPデータ移動エンジンに発行します。

FAST VPコントローラがパフォーマンス データを収集する時刻を指定するために、パフォーマンス タイム ウィンドウを定義することができます。その後、分析が実行され、デバイスに適切な階層が決定されます。デフォルトでは、パフォーマンス データ コレクションは1日24時間実行されます。

データ移動ウィンドウは、階層間でデータを移動するために必要なデータ移動をいつ実行するかを決定するために使用されます。

Enginuityが行うデータ移動は、割り当てられたエクステントを階層間で移動することにより実現します。データ移動の最小サイズは12トラックであり、割り当てられた1個のシン デバイス エクステントを表します。より一般的には、エクステント グループ(10個のシン デバイス エクステント、サイズ120トラック)単位で移動されます。

注:「FAST VPデータ移動」(37ページ)に実際のデータ移動に関する詳細な情報が記載されています。

FAST VPには、[Automatic]と[Off]の2つの動作モードがあります。[Automatic]モードで運用する場合、データ分析とデータ移動は、定義済みデータ移動ウィンドウで継続的に発生します。[Off]モードでは、パフォーマンス統計が継続して収集されます。しかしデータ分析もデータ移動も行われません。

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FAST VPの構成

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FAST VPの状態

FAST VPには報告される状態が5つあります。以下のとおりです。

有効: FAST VP のすべての機能が実行されます(パフォーマンス

データ コレクション、パフォーマンス データ分析、データ移動要求生成、データ移動の実行)。

無効: パフォーマンス データ コレクションのみが実行される。データ分析は実行されず、データ移動は実行されない。

Disabling: FAST コントローラは Enabled からDisabled の状態に移行中。

DisabledwithError: FAST コントローラは、内部エラーが原因で動作を停止。統計情報の収集と FAST VP パフォーマンス データの移動は実行が継続され、FAST VP コンプライアンス移動は実行されま

せん。

[Degraded]: FAST VP はその機能の一部またはすべてを実行できる。ただし、各機能を完全に実行することはできません。

注:「付録A:FAST VPの状態」(93ページ)に各FASTコントローラ状態に関する詳細な情報が記載されています。

FAST VPの構成

FAST VPには、その動作を制御する複数の構成パラメータがあります。その中に、タイム ウィンドウがあります。タイム ウィンドウは、パフォーマンス データの収集を行う時期、分析に含める時期、データ移動を行う時期を制御できます。その他の設定は、分析時の履歴パフォーマンス データの適合率、FAST VPに関連しないアクティビティのために各プールに確保する割合、データ移動要求の生成と実行のアグレッシブ性要因を決定します。

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FAST VPの構成

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FAST VPタイム ウィンドウ

FAST VPはタイム ウィンドウを利用して、パフォーマンスのデータ コレクションとデータの移動について特定の動作を定義します。2つのウィンドウ タイプを使用できます。

パフォーマンス タイム ウィンドウ

データ移動タイム ウィンドウ

パフォーマンス タイム ウィンドウは、パフォーマンス データをEnginuityで収集する期間の指定に使用します。

データ移動タイム ウィンドウは、階層間のデータ移動に必要なデータ再配置を実行する期間を定義します。FASTおよびOptimizerによって実行されるLUN全体の移動とFAST VPによって実行されるサブLUNのデータ移動に対して、異なるデータ移動ウィンドウを定義できます。

パフォーマンス タイム ウィンドウおよびデータ移動タイム ウィンドウは、includeウィンドウまたはexcludeウィンドウとして定義できます。includeタイム ウィンドウは、定義されたタイム ウィンドウ内でアクションが実行されることを示します。excludeタイム ウィンドウは、定義されたタイム ウィンドウ内にアクションを実行しないことを示します。

タイム ウィンドウを定義するには、従来の方法と拡張された方法の2とおりの方法があります。従来の方法では、Symmetrix Optimizerインタフェースを使用してタイム ウィンドウを作成および管理します。拡張された方法では、タイム ウィンドウ管理インタフェースを使用します。

Symmetrix VMAXアレイでは、従来の方法と拡張された方法の両方がサポートされています。ただし、同時に使用できるのはいずれかの方法だけです。従来の方法はデフォルトの方法ですが、レガシー タイム ウィンドウは拡張タイム ウィンドウに変換できます。

注:レガシー タイム ウィンドウから拡張タイム ウィンドウへの変換は一方向の変換です。拡張タイム ウィンドウからレガシー タイム ウィンドウに変換する方法はありません。

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FAST VPの構成

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レガシー タイム ウィンドウの特性

従来の方法を使用すると、includeとexcludeのタイム ウィンドウを周期または非周期として定義できます。周期ウィンドウでは、毎週または毎週特定の曜日として繰り返しパターンを指定できます。非周期ウィンドウは、1回だけ実行されるように定義されます。パフォーマンスとデータ移動の両方について複数のタイム ウィンドウを定義できます。

同じタイプの複数のレガシー タイム ウィンドウに相互に重なる時間範囲がある場合、最後に追加されたタイム ウィンドウが、システムのデフォルト タイム ウィンドウなどその他のウィンドウより優先します。

定義されたすべてのタイム ウィンドウは、Symmetrixアレイ内に構成されているすべてのデバイスに適用されます。

Symmetrix VMAXストレージ アレイは、定義済みのレガシー タイム

ウィンドウを128個までサポートします。各タイム ウィンドウ名には、32文字までの英数字、ハイフン(-)、下線(_)を使用できます。

拡張タイム ウィンドウの特性

拡張された方法を使用すると、パフォーマンス メトリックの収集またはデータの移動を行う曜日と時刻を指定することで、includeウィンドウが定義されます。各タイム ウィンドウは、30分単位の開始時刻および終了時刻と、ウィンドウを適用する曜日を指定して定義します。

excludeウィンドウは、パフォーマンス値の収集やデータの移動を禁止する期間として定義します。各excludeウィンドウには、開始日時と終了日時が含まれ、複数の日にまたがってもかまいません。開始時刻と終了時刻は30分単位で指定します。

include拡張タイム ウィンドウとexclude拡張タイム ウィンドウは複数定義できます。excludeタイム ウィンドウの優先順位が最も高く、重なっているincludeタイム ウィンドウが上書きされます。

拡張タイム ウィンドウには、タイム ウィンドウ名が関連づけられま

せん。

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FAST VPの構成

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パフォーマンス タイム ウィンドウ

パフォーマンス タイム ウィンドウはSymmetrixアレイのビジネス サイクルの特定に使用されます。FAST VPパフォーマンス分析用にパフォーマンス サンプルを収集するか、収集しない日付および時間の範囲を指定します。パフォーマンスのタイム ウィンドウを定義するのは、どのアクティビティ期間を最適化に考慮すべきであるかをFASTに示すためです。

たとえば、週末は、最適化から除外されるべき特別なユーティリティの運用に使用される可能性があります。週末をパフォーマンスのタイム

ウィンドウから除外するということは、週末直前のアクティビティは、週末明け直後の運用を予測するための最善の判断材料と言えます。週末のワークロードが週の他の日と同様であった場合、パフォーマンスの感度は同じで、その週のすべての曜日を使用するのが妥当である可能性があります。

レガシー タイム ウィンドウの場合、デフォルトのパフォーマンス タイム ウィンドウには、1日24時間、週7日、年365日のすべてのパフォーマンス データ サンプルが含まれています。

注:レガシー タイム ウィンドウの場合、FAST VPのパフォーマンス統計情報が継続して収集されないように、最初のユーザー定義のウィンドウを作成して、データ収集を除外する必要があります。次に、このexcludeタイム

ウィンドウの上にincludeタイム ウィンドウを作成できます。

拡張タイム ウィンドウの場合、デフォルトの動作も、パフォーマンス

データを1日24時間、週7日収集することです。最初のincludeパフォーマンス ウィンドウを作成すると、デフォルトの動作が上書きされ、パフォーマンス値は定義されたウィンドウ内にのみ収集されます。

データ移動タイム ウィンドウ

データ移動タイム ウィンドウは、いつデータ移動を許可または拒否するかについて、日付と時刻の範囲を指定するために使用されます。FAST

VPのデータ移動は、Symmetrixバックエンドで優先度の低いタスクとして実行されます。処理のオーバーヘッドがバックエンドに加わりますが、ホストI/Oには影響しません。データ移動ウィンドウは、より重要な他のワークロードのパフォーマンスに与える影響を最小化するように計画できます。

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FAST VPの構成

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レガシー タイム ウィンドウでは、デフォルトのデータ移動タイム ウィンドウにより、データ移動が、1日24時間、週7日、年365日禁止され

ます。

拡張タイム ウィンドウでは、デフォルトのデータ移動ウィンドウはありません。ただし、includeウィンドウが定義されるまでは、デフォルトの動作によりデータ移動が行われません。

FAST VPの設定

FAST VPの動作に影響を与える設定が、複数あります。以下があります:

FAST VP データ移動モード

ワークロード解析期間

初期解析期間

PRC(プール リザーブ容量)

FRR(FAST VP 再配置率)

FAST ポリシーによる VP の割り当て

FAST VP 圧縮までの期間

FAST VP 圧縮率

ここでは、これらの設定、FAST VPの動作への影響、および、設定の可能な値とデフォルト値について説明します。

FAST VPデータ移動モード

FAST VPが有効な場合、[Automatic]と[Off]のいずれかのモードで動作します。

[Automatic]モードでは、パフォーマンス ワークロードに基づいてデータを移動するために、データ移動リクエストが生成できます。また、容量使用率に応じたデータ移動リクエストも生成できます。これらの操作はデータ移動ウィンドウによって許可された期間に実行されます。

[Off]モードでは、データ移動要求は生成されません。したがって、データ移動は発生しません。ただし、パフォーマンス値は継続して収集されます。デフォルトのモードは[Off]です。

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FAST VPの構成

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ワークロード解析期間

ワークロード分析期間は、FAST VPメトリックがどの程度最近のホスト

アクティビティの影響を受けるか、かつどの程度それほど最近のものでないホスト アクティビティの影響を受けるかを判断します。このアクティビティはパフォーマンス タイム ウィンドウが開いていると考えられる間に行われるものです。

ワークロード分析期間で定義される時間が長ければ長いほど、少し前のホスト アクティビティに割り当てられる重みが大きくなります。

ワークロード分析期間は、2時間~4週間の値を設定できます。デフォルトは1週間(7日)です。

注:ワークロード分析期間の影響の詳細については、「FAST VPパフォーマンス データ コレクション」(26ページ)を参照してください。

初期解析期間

最初の分析期間では、パフォーマンスに関連するデータ移動が適用されるまでにシン デバイスがFAST VPの管理下にある最短時間を定義します。この期間は、パフォーマンス タイム ウィンドウがオープンしている間に経過した時間のみを占めます。

FAST VPがそのデバイス上で一般的なワークロードの適切な特性を確立するための十分なデータ サンプルを得るためには、この値を設定しておく必要があります。この値を使用すると、必要に応じて、ワークロード分析期間が完全に経過する前に、FAST VPがデバイスに対する分析と移動アクティビティを開始できます。

最初の分析期間は、2時間~4週間の値を設定できますが、ワークロード分析期間を超えることはできません。このデフォルトの値は8時間です。

プール リザーブ容量

PRC(プールの予約済み容量)は、非FAST VPアクティビティに対して、VP階層に含まれる各プールのパーセントを予約します。これにより、FAST VPデータ移動によってもシン プールが満たされず、ホスト書き込みの結果として新しいエクステント割り当てが失敗しないようになり

ます。

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FAST VPの構成

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シン プール内の未割り当てスペースの割合がPRCに等しくなると、FAST VPはそのプールにデータを移動しなくなります。ただし、そのプールの外側の他のプールへのデータ移動は継続して発生します。未割り当て領域のパーセントがPRCより大きくなると、FAST VPはそのプールへのデータ移動を再開します。

PRCは、システム全体に設定するか個別のプールごとに設定できます。デフォルトでは、システム全体の設定はVP階層定義に含まれているすべてのシン プールに適用されます。ただし、この設定は、プール レベルの設定を使用することで、個別のプールについて上書きできます。

システム全体のPRCは、1~80%パーセントの間で設定できます。デフォルトのシステム全体のPRCは10%です。

プール レベルのPRCは、1~80%の間で設定するか、NONEに設定できます。PRCをNONEに設定すると、システム全体の設定が使用されます。デフォルトのプール レベルのPRCはNONEです。

FAST VP再配置率

FRR(FAST VP再配置率)は、FAST VPのQoS(サービス品質)設定であり、FAST VPによって生成されるデータ移動リクエストのアグレッシブ性に影響を与えます。このアグレッシブ性は、任意の時点での移動リクエストのデータ量およびプール間のデータ移動に与えられる優先度として測定されます。

FRRには1~10の値を設定できます。最もアグレッシブ性が高いのは1です。デフォルトは5です。

注:プール間のデータ移動レートは、Symmetrixのサービス品質VLUN設定で制御することもできます。

FASTポリシーによるVPの割り当て

FASTポリシーによるVPの割り当て機能を使用すると、シン デバイスが関連づけられているFAST VPポリシーに含まれる任意のシン プールから新しい割り当てを行うことができます。

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FAST VPの構成

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この機能が有効な場合、FAST VPは、利用可能なパフォーマンス値に基づいて、新しい書き込みをまず最適な階層で割り当てようとします。パフォーマンス値が利用できない場合、デバイスがバインドされているプールから割り当てようとします。

データを割り当てるために最初に選択されたプールがいっぱいの場合、FAST VPはFAST VPポリシーに含まれている他のプールを探し、そこから割り当てます。ポリシー内の1つ以上のプールに領域がある限り、新しいエクステントの割り当てはすべて成功します。

ポリシーによる割り当て機能は、Symmetrixアレイ レベルで有効になり、FAST VPによって管理されるすべてのデバイスのすべての割り当てに適用されます。この機能は有効または無効のいずれかになります。デフォルト設定は無効です。無効な場合、新しい割り当ては、シン デバイスがバインドされているプールからのみ行われます。

注:FASTポリシーによるVPの割り当て機能の意思決定プロセスの詳細については、「FASTポリシーによるVPの割り当て」(45ページ)を参照してください。

FAST VP圧縮までの期間

FAST VP圧縮は、FAST VPが管理するシン デバイス用のサブLUNレベルでVP圧縮を自動化します。

FAST VP圧縮までの期間パラメータは、FAST VP圧縮の使用を可能にし、データが圧縮対象となる非アクティブの閾値を設定します。

圧縮までの期間は40~400日、さらにはneverに設定できます。デフォルトはnever、つまり、FAST VPがデータを自動的に圧縮することはありません。

特定の日数に設定すると、少なくともその日数の間非アクティブであったFAST VPが管理するデータはすべて圧縮対象とみなされます。

注:FAST VPによって圧縮されるシン バイスのデータには、デバイスが関連づけられているポリシーが、圧縮が有効になっているプールを含んでいる必要もあります。

自動化されたVP圧縮の詳細については、「FAST VPデータ圧縮」(49ページ)を参照してください。

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FAST VPパフォーマンス データ コレクション

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FAST VP圧縮率

FAST圧縮率は、FAST VPが実施する自動VP圧縮用のQoS(サービス品質)設定です。これは、圧縮までの期間の値を超えて非アクティブであった期間が経過した後、データが圧縮されるアグレッシブの程度に影響を与えます。

圧縮率は1~10の値を設定できます。最も積極的なのは1です。デフォルトは5です。

FAST VPパフォーマンス データ コレクション

前述のとおり、FAST VPで使用するためのパフォーマンス データは、Symmetrix Enginuityによって収集および保持されます。このデータは、FASTコントローラで分析され、アレイ内で定義されたVP階層にシン デバイス データを配置するためのガイドラインが生成されます。

ここでは、シン デバイス パフォーマンス値の収集と消滅方法について説明します。

シン デバイスのパフォーマンス収集

FAST VPによって収集されるパフォーマンス値は、ポリシーに関連づけられたすべてのシン デバイスについて、フルLUNレベルとサブLUNレベルの両方で測定されます。

サブLUNレベルでは、各シン デバイスは、エクステント グループおよびエクステント グループ セットと呼ばれる複数の領域に分割されます。各シン デバイスは複数のエクステント グループ セットで構成され、エクステント グループ セットには複数のエクステント グループが含まれています。

図4に、これら各個別の領域に分割されたシン デバイスの図を示します。

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FAST VPパフォーマンス データ コレクション

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図4. シン デバイスのパフォーマンス収集領域

各エクステント グループは、連続する10個のシン デバイス エクステントで構成されます。各シン デバイス エクステントのサイズは12トラックであり、1つのエクステント グループがデバイスの120トラックを表します。

各エクステント グループ セットは48個の連続するエクステント グループで構成され、デバイスの5,760トラックを表します。

各サブLUNレベルで収集されたメトリックにより、FAST VPは、デバイスの各エクステント グループ(120トラック)に対し、個別のデータ移動要求を実行できます。

エミュレーションの留意事項

FAST VPは、FBAとCKDの両方のエミュレーションをサポートしています。エクステント グループとエクステント グループ セットのサイズは、トラックに関して、両方のエミュレーションで同じサイズです。しかし、トラックサイズはエミュレーションごとに異なっており、FBAは64 KB、CKDは57 KBです。

以下の表に、FBAとCKDの、シン デバイス エクステント、エクステント グループ、エクステント グループ セットの相対サイズを示します。

Element トラック FBA CKD

シン デバイス エクステント

12 768 KB 684 KB

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FAST VPパフォーマンス データ コレクション

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FAST VPエクステント グループ

120 7,680 KB/

7.5 MB

6,840 KB/

6.7 MB

FAST VPエクステント グループ

セット

5,760 360 MB 320.6 MB

パフォーマンス メトリック

LUNレベルおよびサブLUNレベルのパフォーマンス データを収集してFAST VPで使用する場合、EnginuityはホストI/Oの結果のSymmetrix

バックエンド アクティビティに関連する統計情報のみを収集します。

収集されるメトリックは以下のとおりです。

読み取りミス

書き込み

プリフェッチ(シーケンシャルな読み取り)

読み取りミスのメトリックは、実行される各DAの読み取り処理を表します。シン プール内に割り当て済みの領域を持たないシン デバイスのエリアの読み取りはカウントされません。また、キャッシュから提供される読み取りヒットは考慮されません。

書き込み処理は、実行される異なるDAオペレーションの数としてカウントされます。このメトリックは、書き込みがいつデステージされるかを表します。キャッシュへの書き込みヒットはカウントされません。

特定のRAID保護スキームに関連する書き込みはカウントされません。RAID 1保護デバイスの場合、書き込みI/Oのみミラーの1つとしてカウントされます。RAID 5およびRAID 6保護デバイスの場合、パリティ書き込みはカウントされません。

プリフェッチ処理は、FAST VPエクステント内にあるデータのプリフェッチに実行された個別のDA処理の回数を集計したものです。このメトリックは、実行された各DA読み取り処理をプリフェッチ処理とみなします。

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FAST VPパフォーマンス データ コレクション

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

ドライブ再構築、クローン処理、仮想LUN移行、FAST VPデータ移動などの内部コピー処理に関連するワークロードは、FAST VPメトリックに含まれません。

注:パフォーマンス メトリックはユーザー定義のパフォーマンス タイム

ウィンドウのみで収集されます。

I/Oアクティビティ レート

各シン デバイスについて、短期間と長期間のアクティビティ レートがサブLUNレベルで保持されます。どちらのアクティビティ レートも重み付き移動平均として計算され、シン デバイスの各領域での最近のワークロードと最近のものでないワークロードをモデル化しています。

新しいパフォーマンス値が収集されるときに、以前格納された短期間および長期間のアクティビティ レートが、指数減衰関数の適用により減少します。これにより、以前収集されたメトリックの影響が小さくなります。その後、新たに収集されたメトリックが減衰レートに加算され、新しい短期間と長期間のアクティビティ レートが計算されます。

保存されているI/Oレートに適用される減衰の率は、ユーザー定義のワークロード分析期間に応じて変わり、短期間のレートは長期間のレートよりも早く減衰します。

注:減衰関数は、ユーザー定義パフォーマンス タイム ウィンドウが開いている間の、以前収集されたメトリックのみに適用されます。

たとえば、デフォルトのワークロード分析期間である168時間を使用して長期アクティビティ レートを計算する場合、受信したばかりのI/Oは24時間前に受信したI/Oの2倍の重みがつけられます。

シン デバイスのパフォーマンス スコア

収集したパフォーマンス統計情報に基づき、各シン デバイスのエクステント グループについて、優先順位が設定されたパフォーマンス スコアが生成されます。このスコアは、Enginuityで保持されている2つのアクティビティ レート(短期アクティビティ レートと長期アクティビティ レート)を加え、FASTポリシーに関連づけられたときにストレージ グループに割り当てられた優先度で決まる係数を掛けることで計算されます。

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FAST VPパフォーマンス データ コレクション

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

FAST VPは、パフォーマンス スコアが最も高いエクステント グループを、関連づけられているポリシー内でパフォーマンスが最も高い階層に配置します。

ストレージ グループの関連づけ

前述のサブLUNパフォーマンス値は、バインドされているすべてのシン

デバイスに対して収集されます。

ストレージ グループのFASTポリシーから関連づけを解除したり、ストレージ グループからデバイスを削除したりすると、FAST VPのために、Enginuityは分析に含まれるそれらのデバイスのパフォーマンス値の取り込みを停止します。

シン デバイスが再びFASTポリシーに関連づけられた場合は、再びデータ移動を実行できるようになる前に、最初の分析期間が経過する必要があります。

再関連づけ

ストレージ グループは、新しいポリシーに再度関連づけることで、進行中のFAST VPの管理を中断することなく、ポリシー間で移動できます。

再関連づけを実行するとき、ストレージ グループ内のデバイスに対して以前収集されたすべてのパフォーマンス値は、Enginuity内で保持されます。また、優先度など、関連づけのすべての属性は、新しいポリシーへの関連づけのために保持されます。

キャッシュの消費

Enginuityで収集されたサブLUNレベルのメトリックを保持するために、Symmetrixアレイは、バインドされているシン デバイスごとにキャッシュ スロットを1個割り当てます。

FBAメタデバイスを管理する場合、メタ ヘッドおよびそれぞれのメタ

メンバーに対してキャッシュ スロットが割り当てられます。

注:Symmetrix VMAXシリーズ アレイの各キャッシュ スロットのサイズは1

トラックです。

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FAST VPパフォーマンス データ分析

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

FAST VPパフォーマンス データ分析

FAST VPは、パフォーマンス重視と容量割り当て重視の異なる2種類のアルゴリズムを使用して、デバイスが属する適切な階層を決定します。そのアルゴリズムは、以下のとおりです。

インテリジェント階層化アルゴリズム

アロケーション コンプライアンス アルゴリズム

インテリジェント階層化アルゴリズムは、FAST VPで制御されるすべてのシン デバイスのパフォーマンス値を考慮し、各エクステント グループに適切な階層を決定します。

アロケーション コンプライアンス アルゴリズムを使用して階層ごとのストレージ容量使用量の制限を実施します。

以下のセクションでは、各アルゴリズムについて追加のデータを示し

ます。

インテリジェント階層化アルゴリズム

インテリジェント階層化アルゴリズムの目標は、サブLUNレベルで収集されたパフォーマンス メトリックを使用して、各エクステント グループがどの階層に配置されるべきか決定し、必要なデータ移動をVLUN

(仮想LUN)VPデータ移動エンジンに送信することです。

どのエクステント グループを移動するべきかという決定は、Symmetrix

アレイ内で実行されるタスクによって実施されます。

アルゴリズム構造

インテリジェント階層化アルゴリズムは、次の2つのコンポーネントで構成されています。

Enginuityの中で動作する主要コンポーネント

サービス プロセッサの FAST コントローラの中で実行されるセカンダリ(サポート)コンポーネント

主要コンポーネントは、FAST VPストレージ階層の使用を最適化するためにエクステント グループを移動する必要があるかどうかを評価します。必要なデータ移動リクエストがVLUN VPデータ移動エンジンに発行されます。

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FAST VPパフォーマンス データ分析

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

各エクステント グループに適切な階層を決定する場合、主要コンポーネントは、前述のように、FAST VPメトリックとサービス プロセッサ上の2番目のコンポーネントによって実行される確証計算の両方を利用し

ます。

階層の順位づけ

外部階層は、特定の技術としてユーザーが定義することができ、その階層のパフォーマンス期待値を設定します。

FAST VPポリシー内では、階層は各階層内のプールのドライブ技術(EFD、FC、またはSATA)、さらには階層の場所(内部または外部)の場所基づいて位置づけられます。

FAST VPポリシーに含めることができる6つの階層タイプについては、ランキングは次のとおりです。

内部 EFD

外部 EFD

内部 FC

外部 FC

内部 SATA

外部 SATA

注:FAST VPポリシーは、最大4個の階層のみを含み、内部階層が最大3個、外部階層が1個含まれています。

プロモートおよびデモート閾値

サービス プロセッサで動作する、インテリジェント階層化アルゴリズムのサポート コンポーネントは、明示的なデータ移動要求を行いません。代わりに、シン階層へのデータ配置変更の推奨事項を定義する、プロモートおよびデモート閾値のセットを生成します。

複数階層構成では、ポリシーに含まれる階層の数に応じて、いくつかの閾値を生成できます。以下があります:

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FAST VPパフォーマンス データ分析

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

内部 EFD プロモート閾値

外部 EFD プロモート閾値

内部 FCプロモート閾値

外部 FCプロモート閾値

内部 SATA プロモート閾値

外部 EFD デモート閾値

内部 FCデモート閾値

外部 FCデモート閾値

内部 SATA デモート閾値

外部 SATA デモート閾値

ただし、1つのFAST VPポリシーには最大4個の階層しか含めることができないため、各エクステント グループは最大4個の閾値とのみ比較されます。

注:データが内部EFD階層にデモートされることはないため、内部EFDデモート閾値はありません。同様に、データが外部SATAにプロモートされることはないため、外部SATAプロモート閾値はありません。

これらの閾値は、FAST VPの制御下でシン デバイスの割り当てを最適化するためのデータ移動を、Enginuityが決定およびスケジュールできるようにすることです。

閾値は、収集されたパフォーマンス値と各階層で利用できる容量を使用して計算されます。そのため、閾値は動的なものであり、FAST VPによって管理されるデバイス上のワークロードの増減に伴って増減します。

閾値を計算するときの目標は、FAST VPポリシー内のパフォーマンスが最も高い階層の使用率を最大化しつつ、非アクティブまたはアクセスが少ないデータを最もコスト パフォーマンスに優れた階層にプロアクティブにデモートすることです

インテリジェント階層化データ移動リクエスト

インテリジェント階層化アルゴリズムによって生成されるデータ移動要求のサイズは、適切な階層上にないと思われる容量の量に依存します。また、VMAXアレイのサイズにも依存します。

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FAST VPパフォーマンス データ分析

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

アレイ内の各バックエンドDA(ディスク アダプタ)は、データ移動の実行の責任を負います。使用できるDAの数が多いほど、一度に多くのデータを移動できるため、要求サイズが大きくなります。

FAST VP再配置率は、生成される要求のサイズには影響しませんが、要求を実行しデータを移動するペースには影響があります。

インテリジェント階層化アルゴリズムの実行

FASTが有効でFAST VP動作モードが[Automatic]の場合、Enginuity

の中で動作するインテリジェント階層化アルゴリズムの主要コンポーネントは、データ移動ウィンドウが開いている間は継続的に実行されます。そのため、パフォーマンス関連のデータ移動は、データ移動ウィンドウが開いている間に継続的に発生することがあります。

サービス プロセッサ上のFASTコントローラで動作するサポート コンポーネントは、10分おきに実行されます。FAST VPによって管理されるデバイス上のワークロードの変化に基づいて、プロモートおよびデモート閾値が再計算されます。

アロケーション コンプライアンス アルゴリズム

アロケーション コンプライアンス アルゴリズムの目標は、シン ストレージ階層内の特定のストレージ グループの割り当て容量が、関連づけられたFASTポリシーによって許容される最大容量を超える状況を検出して修正することです。

ポリシー コンプライアンス

ストレージ グループは、ストレージ グループ内のシン デバイスの構成済み容量がポリシーで定義されている階層にあるとき、および、各階層の使用量がポリシーで指定されている階層使用量制限の上限内にあるとき、関連づけされたFASTポリシーに適合しているとみなされます。

準拠していない場合、次のように複数の理由が考えられます。

FAST VP によって管理されているシン デバイス用に、新しいエクステント割り当てが実行された。

VP 階層用の使用上限が FAST ポリシーで変更された。

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FAST VPパフォーマンス データ分析

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

それ自体が違反しているストレージ グループにシン デバイスが追加された。

シン デバイスの VLUN VP 移行が手動で行われた。

コンプライアンス データ移動要求

準拠違反が存在すると、アルゴリズムによって、割り当てを必要な制限内に戻すデータ移動リクエストが生成されます。このリクエストは、どのシン デバイス エクステントを移動するかを明確に示し、また移動先の具体的なシン プールも示します。

データ移動リクエストのサイズは、現在適合していない容量によって異なりますが、ユーザー定義の[Relocation Rate]によっても異なります。割り当て準拠アルゴリズムによって生成可能な要求の最大サイズは、10

GBのデータ移動に相当します。

[Relocation Rate]が1以外の値に設定されると、FASTコントローラは10

GBを[Relocation Rate]で除して、新しい最大値を求めます。たとえば、「Relocation Rate」が2に設定されると、最大リクエスト サイズは5 GBになり、10の場合は1 GBになります。

注:割り当て準拠アルゴリズムは、データの一括移動のためのツールとして設計されていません。大量のデータをプール間で移動するには、特定のデバイスに対して、VLUN VPを使用します。VLUN VPでは、正確なデータを移動するため、ソース プールとターゲット プールの両方にゼロを指定でき

ます。

インテリジェント階層化アルゴリズム調整

準拠アルゴリズムは、準拠を補正するために、実行される移動の量を最小化しようと試みます。これにより、今度は、インテリジェント階層化アルゴリズムによって実行される移動が生成されます。

準拠違反は、移動要求をインテリジェント階層化アルゴリズムによって実行される分析と整合させ、最も適切な階層に移動する最も適切なエクステントを決定することで修正できます

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FAST VPパフォーマンス データ分析

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割り当て準拠アルゴリズムの実行

FASTが有効でFAST VP動作モードが[Automatic]の場合、準拠アルゴリズムは、データ移動ウィンドウが開いている間は10分ごとに実行されます。

FASTコントローラの可用性

サービス プロセッサ上に常駐しているFASTコントローラが使用できなくなった場合、縮退モードではりますがFAST VPは動作を継続します。この間、FAST VPの各コンポーネントは違う角度から影響を受けます。

インテリジェント階層化アルゴリズムでは、アルゴリズムは、次の2つのコンポーネントに構成されています。

Enginuityの中で動作する主要コンポーネント

FAST コントローラ(SP 上)の中で実行されるサポート コンポーネント

FASTコントローラは、確証解析の実行、プロモートおよびデモートの閾値の計算を担当しています。閾値が再計算されEnginuityに渡されるたびに、有効期限のタイムスタンプが閾値に添付され、作成から4時間に設定されます。同時に、作成から4日間の有効期限のタイムスタンプを使用して、さらに控えめな閾値のバックアップ セットが作成されます。

FASTコントローラが使用できなくなり、新しい閾値が生成されない場合、Enginuityは4時間の最後の有効な閾値を使用し、その後、4日間のバックアップの閾値に切り替えます。4日が経過すると、パフォーマンス移動が停止します。

パフォーマンス データ収集は、完全にEnginuityの中で行われるので、コントローラの停止による影響を受けません。短期および長期のアクティビティ レートも、Enginuity内で計算および記憶されるので影響を受けません。パフォーマンス データ情報は失われません。

FASTコントローラが再起動されると、最新のアクティビティ レートがEnginuityから読み出され、最新のワークロード情報に基づいて新たな閾値が計算されます。

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FAST VPデータ移動

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ただし、アロケーション コンプライアンス アルゴリズムの場合は、FASTコントローラが使用できなくなると、コンプライアンスベースの移動リクエストが生成されません。そのため、アロケーション コンプライアンス違反を修正するFAST VPの機能が損なわれます。ただし、パフォーマンス移動は、データを移動する際にコンプライアンスを修正できます。

FAST VPデータ移動

FAST VPの下で実行されるデータ移動は2種類あります。インテリジェント階層化アルゴリズムに関連する移動と割り当て準拠アルゴリズムに関連する移動です。このデータ移動は、両方ともユーザー定義データ移動ウィンドウでのみ実行されます。

インテリジェント階層化アルゴリズムに関連する移動は、Enginuityによって要求され、実行されます。これらのデータ移動は、各エクステント グループ上のワークロードによって管理されますが、関連づけられたFASTポリシーの制約内でのみ実行されます。つまり、パフォーマンス移動により、ストレージ グループがそのFASTポリシーに違反することはありません。

割り当て準拠アルゴリズムに関連する移動は、FASTコントローラによって生成され、Enginuityによって実行されます。これらの移動により、関連づけられたポリシーによって指定された境界内で、ストレージ グループの容量が戻ります。インテリジェント階層化アルゴリズムからのパフォーマンス情報は、違反の是正時に移動する、より適切なサブ エクステントを決定するために使用されます。

データ移動エンジン

FAST VPが実行するデータ移動はVLUN VPデータ移動エンジンが行います。このデータ移動では、アレイ内のシン プール間でシン デバイス

エクステントを移動します。

エクステントは移動処理によってのみ移動します。プール間ではスワップされません。

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FAST VPデータ移動

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エクステントまたはエクステント グループの移動は、シン デバイスのバインディング情報を変更しません。シン デバイスは、元々のバインド先のプールにバインドされた状態を維持します。FAST VPによるVPの割り当てが有効でない限り、シン デバイスの新しい割り当ては、ホスト書き込みの結果として、バインドされたプールからの割り当てを継続し

ます。

移動に関する考慮事項

移動を完了するには、以下の条件を満たしている必要があります。

FAST VP 動作モードは[Automatic]である必要があります。

VP データ移動ウィンドウが開いている必要があります。

影響を受けるシン デバイスは、固定されていてはいけません。

デスティネーション階層に含まれるシン プールに、移動データを受け入れるための未割り当て領域が十分に確保されている必要があります。

デスティネーション階層には、PRC(プールの予約済み容量)を超過していないシン プールが少なくとも 1つ必要です。

注:選択されたデスティネーション階層にPRC制限に達したプールしかないと、移動タスクは代替階層を考慮する場合があります。

移動に関するその他の考慮事項には、次のようなものがあります。

割り当てられたエクステントのみが移動される。

FAST VP データ移動の間、バックエンド構成変更は行われず、そのため、この処理の間は、構成ロックは維持されない。

スワップは実行されないため、データ移動を促進するためにDRV

のようなスワップ領域は不要です。

データ移動プロセス

次のセクションでは、FAST VPデータ移動中のプロセスの詳細について説明します。

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FAST VPデータ移動

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次の図では、デバイス100がFCシン プールにバインドされている。そのデバイスは、EFDプールとSATAプールを持つ階層も属するFASTポリシーに関連づけられています。

時間が経過し、FAST VPは複数のデバイス コンテキストをポリシー内の別の階層に移動する必要があると判断しました。

シン データ移動タイム ウィンドウが開いている間、データ移動が継続的に発生するため、FAST VPが実際に管理している間に、1個のデバイスの割り当てが複数回変化することがあります。

初期割り当て

図5に、FC階層のシン デバイスとその初期バインディングおよび割り当てを示します。FASTポリシーの一部として、デバイスが関連づけられているその他の階層も示されています。

図5. FAST VPデータ移動: 初期割り当てと関連づけられている階層

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FAST VPデータ移動

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エクステント移動

最初の分析期間が経過した後、デバイス100に対して収集されたパフォーマンス メトリックがFASTコントローラによって分析されます。このパフォーマンス分析に基づいて、複数の割り当て済みエクステントがFAST

ポリシー内の別の階層に移動する必要があることが決定されます。

アクティビティのレベルがより高いため、1と6のラベルが付けられたエクステントがEFD階層にプロモートされます。一方、2、3、7、8のラベルが付けられたエクステントは、アクティビティがより低いと定義されていたため、SATAへデモートされます。

データ移動は各DAのキューに登録され、データが転送されます。図6に示すように、データ転送が終了すると、FC階層内でエクステントが元々消費していた領域の割り当てが解除され、その階層内の空き領域が報告されます。

図6. FAST VPデータ移動: エクステントの再配置

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FAST VPデータ移動

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アレイ内の別の階層にデータが移動された場合でも、シン デバイスは元々バインドされていた、FC階層に属するプールにバインドされたままになります。

新規のホスト書き込み

デフォルトでは、ホスト書き込みの結果発生する新しい割り当ては、シン デバイスがバウンドされているプールから行われます。

注:デバイスがバインドされているプールから新しいエクステントを割り当てるというデフォルトの動作は、変更できます。「FASTポリシーによるVP

の割り当て」(45ページ)を参照。

図7に、プールに割り当てられていた、その他のエクステント9および10

を示します。

図7. FAST VPデータ移動: 新規のホスト書き込み

継続的な運用

より長い時間が経過すると、新しいデータが生成され、より多くの割り当てが発生します。また、データ アクセス パターンが変化すると、さらにプロモートやデモートが発生することがあります。

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FAST VPデータ移動

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図8に、デバイス100のスナップショットと3階層にわたるデータ割り当てを示します。

図8. FAST VPデータ移動: 継続的な運用

データ移動制御

FAST VPで制御されるシン デバイスに関連するデータの移動を制御するために複数のメカニズムがあります。

デバイス固定

FAST VPがシン デバイスの現在の階層割り当てを変更するのを防止するには、デバイス固定と呼ばれる機能を使用します。デバイスを固定すると、デバイスのすべてのエクステント割り当てがその時点の場所にロックされ、FAST VPはこれらを再配置できません。

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FAST VPデータ移動

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固定デバイスのために実行された新しい割り当ては、デバイスのバインド先のシン プールから生じます。ポリシーによる割り当てが有効になっている場合、デバイス用に利用できるパフォーマンス値がないかのごとく固定されたシン デバイスに対する新しい割り当てが実行されます。これらの割り当ては、FAST VPによって移動されません。

データ移動を再度有効化するには、シン デバイスの固定を解除する必要があります。

注:デバイスが固定されている間、そのデバイスに対するパフォーマンス統計情報は、継続して収集されます。

FASTポリシー関連づけ解除

デバイスを固定してFAST VPによるシン デバイスの割り当て変更を防止する他に、デバイスがFASTポリシーに関連づけられたストレージ グループから削除できます。ストレージ グループからデバイスを削除すると、デバイスがFASTポリシーとの関連づけが解除され、デバイスはFAST VPの管理から除かれます。その結果、それ以降はそのデバイスでデータの移動が実行されません。以前にFAST VPによって移動された割り当て済みデータは、現在のロケーションのままであり、シン デバイスのバインドされたプールに自動的に戻ることはありません。

注:FASTポリシーからデバイスの関連づけを解除すると、そのデバイスでのパフォーマンス統計情報の収集が妨げられ、以前に収集されたメトリックはすべて破棄されます。シン デバイスが再びFASTポリシーに関連づけられた場合は、再びデータ移動が実行できるようになる前に、最初の分析期間が経過する必要があります。

サービス品質の変更

FAST VPによるデータ移動の実施が、Symmetrixアレイ内の他のアプリケーションまたはレプリケーション タスクに影響を与えている場合、データ移動のペースの変更にQoS(サービス品質)ツールが使用されます。FAST VPのデータ移動の低速化によって、Symmetrixバックエンドで実行中の別のタスクに高い優先度が与えられます。

VLUNコピーのペースは、0~16までの整数値で設定します。0が最も速く、16が最も遅い設定値です。QoSのデフォルト値は0です。

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高度な FAST VP機能

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ペースの値を16に設定すると、FAST VPデータ移動にはアレイ上で最も低い優先度が与えられます。無関係のコピー タスクが完了すると、ペースの設定値は0にリセットできます。

注:QoSを使用してFAST VPが制御する各デバイスのコピー ペースを変更できます。FAST再配置率を使用して、FAST VPの制御下のすべてのデバイスのコピー速度を変更できます。

Operating Mode

FAST VPが制御するすべてのシン デバイスでのデータ移動を停止するには、動作モードを[Off]に設定します。[Off]である間、パフォーマンス統計情報はEnginuityによって継続して収集されます。ただし、EnginuityまたはFASTコントローラによって、データ移動要求は生成されません。

高度なFAST VP機能

これまでに説明した機能に加えて、FAST VPの管理のしやすさと操作性をさらに改善する高度な機能があります。

これらの高度な機能には次の機能が含まれます。

FAST ポリシーによる VP の割り当て シン デバイスを、デバイスがバインドされているプール以外のシン プールからの割り当てることができる。

FAST VP SRDF®調整: シン R2 デバイスに属するデータのプロモートとデモートの決定で、対応するシン R1 デバイスを考慮することができる。

FAST VP 圧縮: FAST VP が管理するシン デバイス用のサブ LUN

レベルで VP 圧縮を自動化します。

ユーザー定義の FTS 階層: 外部 FTS を最下層以外の階層として指定できるようにします。

以降のセクションで、これらの機能について詳しく説明します。

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高度な FAST VP機能

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FASTポリシーによるVPの割り当て

デフォルトでは、シン デバイスへの書き込みによる新しいエクステントは、デバイスがバインドされているシン プールから割り当てられます。この動作には2つの結果が考えられます。まず、バインドされているプールから割り当てられたデータは、割り当てのすぐ後にプロモートまたはデモートされる可能性があり、バックエンドでデータの追加の移動の原因となります。第2に、バインドされているプールがいっぱいになると、プールへの新しい割り当てを生成する書き込みが失敗します。

FASTポリシーによるVPの割り当て機能は、FAST VPで管理されているデバイスの、これらの潜在的な帰結に対処します。この機能を有効にすると、シン デバイスが関連づけられているFAST VPポリシーに含まれる任意のシン プールから新しい割り当てを行うことができます (割り当ては、バインドされているプールに制限されません)。

ポリシーによる割り当て機能は、Symmetrixアレイ全体で有効または無効にする設定です。デフォルト設定は無効です。無効な場合、新しい割り当ては、シン デバイスがバインドされているプールからのみ行われ

ます。

この機能が有効な場合、FAST VPは、利用可能なパフォーマンス値に基づいて、最も適切な階層から割り当てます。選択されたプールがいっぱいの場合、FAST VPポリシーに含まれている他のシン プールから代替プールが選択されます。

以降では、割り当て元のシン プールを選択するための意思決定条件について説明します。

ポリシー決定条件による割り当て

前述のように、FAST VPはパフォーマンス値を、シン デバイスの3つの異なるレベルで収集します。3つのレベルとは、フルLUN、エクステント グループ セット、エクステント グループです。各エクステント グループ セットについてすでに収集済みのパフォーマンス値を、それら各セットの中の新たに割り当てられたデータに適用できます。

ポリシーによる割り当てがSymmetrixアレイで有効になっている場合、FAST VPは、まず新しい割り当てを生成するエクステント グループ

セット上のパフォーマンス値の存在を確認します。

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高度な FAST VP機能

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パフォーマンス値が利用できる場合、ワークロードの観点から、エクステントの割り当て元として最適な階層を決定するために使用されます。階層が選択されると、階層内のプールが選択され、割り当てが試みられます。

書き込み先のエクステント グループ セットにパフォーマンス値がない場合(これは、セット全体が未割り当ての場合に起こります)、FAST

VPは、新しいエクステントを、デバイスがバインドされているプールから割り当てようと試みます。

いずれの場合にも、選択されたプールがいっぱいの場合、ポリシー内の代替プールが選択されます。

代替プールを決定するため、階層は、各階層の設定済みの容量の昇順にソートされます。各階層について、階層内の各プールの中の空き領域が確認され、割り当てが試みられます。選択されたプールがいっぱいの場合、FAST VPは階層内の次のプール(存在する場合)を確認するか、リスト上の次の階層を確認します。

選択された階層に複数のプールが含まれている場合、割り当てプールは無作為に選択されます。

この処理が、割り当てが成功するか、ポリシー内のすべてのプールがいっぱいであると判断されるまで続行されます。ポリシー内の少なくとも1つのプールに利用可能なスペースがある限り、新しいエクステントの割り当てはすべて成功します。

注:割り当てを生成したデバイスが固定されている場合、パフォーマンス値の存在は無視されます。FAST VPは、まずバインドされているプールから割り当てを試みます。バインドされているプールがいっぱいの場合、ポリシー内の代替プールが選択されます。

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高度な FAST VP機能

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FAST VP SRDF調整

FAST VPのSRDFデバイスを管理するための機能に制限はありません。ただし、FAST VPのデータ移動は、FAST VPが動作しているアレイに制限されることを考慮する必要があります。ただし、デフォルトでは、ソース アレイとターゲット アレイの間でデータ移動の調整は行われません。FAST VPは、両方で独立して動作します。

R1デバイスで読み書きワークロードが実行されている場合、対応するR2

デバイスでは、書き込みワークロードのみが認識されます。(R1に対する読み取りは、リンク経由で通知されません)。そのため、R2デバイスのデータは、R1デバイス上の関連するデータと同じ階層に配置できま

せん。

FAST VP SRDF整合性により、R2デバイスに属するデータのプロモートとデモートの決定を行う際に、R1のパフォーマンス値を使用することができます。

SRDF整合性は、FAST VPポリシーに関連づけられたストレージ グループによって有効または無効にされます。デフォルトの状態は無効です。

注:FAST VP SRDF調整では、ローカルとリモートの両方のSymmetrixアレイがSRDF調整をサポートするコード レベルである必要があります。

この機能は、ストレージ グループにポリシーが関連づけられている場合に有効にできます。また、既存の関連づけを変更することでも有効にできます。

この機能を有効にする必要があるのは、R1デバイスを含むストレージ

グループに対してのみです。R2デバイスを含むストレージ グループに対して有効にしても効果はありません。これが当てはまらない唯一のケースは、SRDF入れ替え操作が発生し、R2デバイスがR1デバイスに変換される場合です。

FAST VP SRDF調整は、次のすべての操作モードで単一の同時かつカスケード型SRDFペアリング向けにサポートされています。同期、非同期、アダプティブ コピー、SRDF/EDP、およびSRDF/Star。

カスケード型のSRDF構成の場合、R21デバイスはR2デバイスにR1メトリックを伝送する中継器として機能します。

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高度な FAST VP機能

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R22デバイスの場合、メトリックは、現在アクティブであるSRDFリンク経由でのみ受信されます。

注:FAST VP SRDF調整は、PPRCを実行しているメインフレーム環境でサポートされます。

実効パフォーマンス スコア

ストレージ グループに対して有効になっている場合、R1デバイスの収集されたFAST VPパフォーマンス値は、SRDFリンクを介して対応するR2デバイスに定期的に送信されます。

注:パフォーマンス値は、対応するR2デバイスがFAST VPによって管理されている場合に、R1デバイスについてのみ送信されます。

R2デバイスでは、R1のパフォーマンス値が実際のR2のパフォーマンス値とマージされます。これにより、R2デバイス上のデータの実効パフォーマンス スコアが作成されます。

リモート アレイに対してプロモートとデモートの決定を行うとき、R2

データの実効スコアが使用され、R1のワークロードがR2データの移動に影響を与えることができます。R1デバイス上で頻繁に読み取られるデータは、R2デバイスが関連づけられているポリシー内の上位階層にプロモートされる可能性が高くなります。

注:R2デバイスの実効パフォーマンス スコアは、リモート アレイに対するプロモートとデモートの閾値の計算にも影響します。

SRDF調整に関する考慮事項

R1デバイスとR2デバイスの間のSRDFリンクの準備ができていない場合、R1のパフォーマンス値はR2デバイスに送信されません。リンクが回復すると、メトリックは再度送信されます。

SRDFペアの状態が以下の状態のいずれかである場合、SRDFリンクの準備ができていないとみなされます。

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高度な FAST VP機能

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スプリット

Suspended

Failedover

Partitioned

メトリックが送信されていない間、以前受信したR1メトリックが、通常どおり収集されたパフォーマンス データと同様の方法で減衰します。

注:パフォーマンス値の減衰の詳細については、「I/Oアクティビティ レート」(29ページ)を参照してください。

SRDFパーソナリティ スワップ操作を実行するとき、パフォーマンス値は、新しいR1デバイスを含むストレージ グループでSRDF調整有効になっている場合のみ送信されます。

注:スワップ操作の後、ストレージ グループがR2デバイスを含んでいる間にSRDF調整を以前有効にした場合に限り、パフォーマンス値は自動的に新しいR1デバイスから送信されます。

FAST VPデータ圧縮

VP圧縮はシン デバイスに属するデータを圧縮する機能を提供します。圧縮されたデータは、シン プール内で消費する物理的なスペースが減少します。そのため、プール内のスペースが増えるので、より多くのデータがプールに書き込まれるようになります。

仮想プロビジョニングおよびFAST VPの環境向けのEMC圧縮機能によって、お客様は、使用頻度が低く、非常にまれにアクセスされるデータを2:1以上でデータ圧縮できます。EMCでは、月末、四半期末、年末のアクティビティの中でアクセスされないデータ、またはフル バックアップ処理の過程でアクセスされないデータをアクセス頻度の低いデータと定義しています。

データは、Solutions EnablerやUnisphere for VMAXを使用して、個々のシン デバイスまたはデバイスのグループに対して手動で圧縮することができます。

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高度な FAST VP機能

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

または、FAST VPによって管理されるシン デバイスに属する非アクティブ データは、FAST VP圧縮を使用して自動的に圧縮することができます。

注:VP圧縮の詳細については、「Best Practices for Fast, Simple Capacity

Allocat ion with EMC Symmetrix Virtual Provisioning」テクニカル ノート(http://support.emc.com)を参照してください。

FAST VP圧縮は、圧縮までの期間のパラメータの値を40~400日の間に設定することにより、システム レベルで有効になります。このパラメータの値の期間を超えて非アクティブであるとされたデータは、自動圧縮の対象とみなされます。圧縮までの期間のデフォルト値は、neverです。

自動圧縮

FAST VP圧縮は、FAST VPが管理するシン デバイス用のVP圧縮を自動化します。この自動圧縮は、サブLUNレベルで行われます。圧縮の決定は、プロモートおよびデモートの決定と同様に、個々のエクステント グループ(120トラック)のアクティビティ レベルに基づきます。ただし、実際の圧縮自体はシン デバイス エクステント(12トラック)ごとに実行されます。

ユーザーが定義した期間(圧縮までの期間)にわたってディスク上で非アクティブになっているエクステント グループは、圧縮の対象とみなされます。圧縮までの期間パラメータは、40~400日の間に設定することができます。デフォルトの圧縮までの期間はneverです。

シン デバイス エクステントがFAST VPによって自動的に圧縮されるには、次のすべての基準を満たす必要があります。

エクステントは、圧縮までの期間より長い期間にわたって非アクティブであったエクステント グループに属している必要があります。

エクステントは、圧縮が有効になっているシン プールに配置する必要があります。

エクステントは、少なくとも 50%圧縮する必要があります。

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高度な FAST VP機能

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ポリシー コンプライアンス

FAST VPは、ストレージ グループのポリシー コンプライアンスを計算するためにグループ内のデバイスのいずれかに対して行われた圧縮を考慮しません。デバイスによって消費される論理的な割り当て容量が考慮されます。

たとえば、ストレージ グループに属する50 GBのデータがSATA階層にデモートされ、その後圧縮されて20 GBのみ消費するようになった場合、ストレージ グループのコンプライアンスの計算はSATA階層内で消費される50 GBに基づいて行われます。

プールの予約済み容量

PRC(プールの予約済み容量)は、非FAST VPアクティビティに対して、VP階層に含まれる各プールのパーセントを予約します。PRCは、シン

プール内に割り当てられた実際の容量に基づいています。これは、プール内に割り当てられたデータが圧縮されている場合にも適用されます。

圧縮タスクの実行

エクステント グループはプロモーションまたはデモーション向けに評価されるのと同時に、圧縮向けに評価されます。ただし、パフォーマンス関連のプロモーションおよびデモーションは、圧縮アクティビティよりも優先度が高いため、エクステント グループが圧縮対象になるのと、それが実際に圧縮される間には、一定期間のタイム ラグがある場合があります。

SRDFの相互運用性

デフォルトでは、FAST VPは、SRDFリンクのそれぞれの側で独立して実行され、各アレイのローカルに見られるワークロードに基づいて移動が決定されます。このことは、FAST VP圧縮にも適用されます。つまり、R1側で行われた圧縮の決定は、必ずしもR2側で行われるわけではないことを意味します。

FAST VP SRDF調整がFAST VPポリシーに関連づけられたストレージ グループに対して有効になっている場合、R1デバイスに関して収集されたパフォーマンス値がR2に転送され、R1ワークロードがR2データに対するプロモートおよびデモートの決定に影響を与えることが可能になり

ます。

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高度な FAST VP機能

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収集されたパフォーマンス値の一部として、データが非アクティブだった時間の長さも転送されます。R1データ上のこの非アクティブの期間は、対応するR2データに対する圧縮の決定に影響を与える可能性があります。

ただし、これにより、R1側で圧縮されたデータによって、R2側の対応するデータが圧縮されるのが保証されるわけではありません(その逆もまたしかりです)。

SRDFリンクのそれぞれの側での圧縮の決定は、各アレイ上で設定された圧縮までの期間パラメータや、圧縮向けに有効になったプールによっても影響を受けます。

ユーザー定義のFTS階層

デフォルトでは、FAST VPポリシーに追加された外部階層はすべて、ポリシー内の最もパフォーマンスが低い階層(SATA階層よりも低い)であるとみなされます。ただし、外部階層構成に応じて、内部SATA、またはFC階層よりも高いレベルのパフォーマンスを提供することも可能

です。

外部階層が1つ以上の内部階層より高いレベルのパフォーマンスを提供することが期待される場合には、相対的なパフォーマンス期待値をユーザーが定義できます。これは、FAST VPポリシーに階層を追加する際、他の階層の中での階層の位置づけに影響を与えます。

注:外部アレイのパフォーマンスは、外部配列がVMAX I/Oに完全投入されていない場合は特に、変化するワークロードのもとで異なる可能性があります。その結果、FAST VPは、ストレージの最下層以外として定義されたFTS

ベースの階層で使用すると、データ配置の最適な選択を常に行えなくなる可能性があります。

外部テクノロジー タイプ

外部階層が作成されると、外部の場所に加えてオプションの技術タイプ(EFD、FC、またはSATA)を指定できます。技術タイプを指定することによって、それに関連するパフォーマンスの期待値が階層に関連づけられます。

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高度な FAST VP機能

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たとえば、技術タイプFCで作成された外部層は、ローカルおよび外部のストレージ アレイ間のSAN接続によって引き起こる可能性のあるレーテンシーをある程度許容しながら、内部FC階層のパフォーマンス特性と同様の特性を持つことが期待されます。

このように、外部のFC階層は内部のFC階層よりも下に位置付けられますが、多階層のポリシーに含まれた場合は、内部SATA階層よりも上に位置付けられます。

外部階層を作成した後に技術タイプを変更することができます。タイプが変更された場合、階層の順位は、それが含まれているポリシー内で変化します。このように、外部階層はポリシー内でアップグレードしたりダウングレードしたりできます。

注:階層の技術タイプは、外部階層に対してのみ変更できます。内部階層に対しては変更できません。

外部階層のパフォーマンス検出

SATA以外の技術タイプが外部階層に指定されると、この階層はFAST

VPポリシーに含まれている他の階層よりも高いレベルで実行することが期待されます。ただし、これには該当しない状況も考えられ、その場合、パフォーマンスの期待値を満たすことはできません。

たとえば、SANにおける予想外のレーテンシーにより、外部階層のパフォーマンスが比較的下位の技術の内部階層のパフォーマンスを下回ることがあります。上位の階層のパフォーマンスが下位の階層のそれよりも低い場合は、FAST VPの動作に潜在的な悪影響を及ぼす可能性があります。

そのような可能性に対処するために、Enginuityは、それが当初FAST

VPのポリシーに追加された際に階層の初期パフォーマンス検出を実行します。これは、外部階層のパフォーマンスがユーザー定義の期待値どおりであることを確認するために実施されます。この初期のパフォーマンス テストはフル検出テストとして知られています。階層の基礎となるeDiskに対して変更が行われた場合、または技術タイプが階層定義で変更された場合にも、同様のテストが行われます。

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FAST VPの相互運用性

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パフォーマンスのフル検出が完了すると、進行中のタスクが定期的により簡易的なパフォーマンス検出を実行します。これは、検出検証テストとして知られています。この検出の目的は、以前に検出された性能です。パフォーマンスを検証または段階的に調整することです。

いずれかの時点で、外部階層のパフォーマンスが期待を下回った場合、その事実をユーザーに警告するイベントがトリガーされます。

外部層の変化のパフォーマンスは、期待されるレベル以下に低下したときにイベント(イベントID 1511)がトリガーされます。

このアラートに基づいて、ユーザーは階層の実際のパフォーマンスと期待されるパフォーマンスとの間の不一致に対処することができます。これは、外部階層のパフォーマンス低下の原因に対処するか、または階層の期待値を下げることによって実施できます。

FAST VPの相互運用性

FAST VPは、次のSymmetrixのレプリケーション技術すべてと完全に相互運用できます。EMC SRDF、EMC TimeFinder®/Clone、TimeFinder/Snap、およびOpen Replicator。Symmetrixデバイス上のアクティブなレプリケーションはすべて、デバイスからのデータの移動中も維持されます。同様に、すべての差分関係は移動またはスワップされたデバイスにおいても維持されます。

また、FAST VPは、Symmetrix Optimizer、Dynamic Cache Partitioning、自動プロビジョニング グループ機能などのSymmetrix機能と並行して動作します。

SRDF

シンSRDFデバイスのR1またはR2は、FASTポリシーと関連づけることができます。SRDFデバイスのエクステントは、デバイスが同期モードまたは非同期モードでレプリケーションされる一方で、階層間で移動することができます。

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FAST VPの相互運用性

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注:FAST VPとSRDFの使用については、「FAST VP SRDF調整」(47ページ)を参照してください。

TimeFinder/Clone

TimeFinder/Cloneセッションのソース デバイスとターゲット デバイスはともにFAST VPで管理できます。ただし、ソースとターゲットは独立して管理されるため、各階層で異なるエクステントの割り当てが生じる可能性があります。

TimeFinder/Snap

TimeFinder/Snapセッションのソース デバイスは、FAST VPで管理できます。ただし、ターゲット デバイス(VDEV)はFAST VP制御の下に置くことはできません。

TimeFinder VP Snap

TimeFinder VP Snapセッションのソース デバイスは、FAST VPで管理できます。ターゲット デバイスもFAST VPで管理できますが、複数のターゲット デバイスで共有されるエクステントの割り当ては移動されません。

Open Replicator

プッシュ/プルのOpen Replicatorセッションの制御デバイスは、FAST

VPで移動されたエクステントを保有できます。

仮想プロビジョニング

FAST VP制御であるかどうかにかかわらず、各シン デバイスは、単一のシン プールにのみバインドが可能です。すべてのホスト書き込みで生成される割り当てまたはユーザー要求による事前割り当ては、このプールで実行されます。FAST VPのデータ移動はシン デバイスのバインド情報を変更しません。

デバイスの現在のエクステント割り当てを変更せずにシン デバイスのバインド情報を変更できます。ただし、FAST VPで制御されているデバイスを再バインドする場合、デバイスの再バインド先になるシン プールは、デバイスが関連づけられているポリシーのいずれかのVP階層に属する必要があります。

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FAST VPの相互運用性

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仮想プロビジョニングのスペース再利用

スペース再利用は、FAST VPで制御されるシン デバイスに対して実行できます。ただし、スペース再利用プロセスでは、サブLUNのパフォーマンス値は更新されず、データの移動も実行されません。

注:FAST VPによるデバイスのエクステントの移動がアクティブな場合、デバイスへのスペース再利用要求は失敗します。スペース再利用タスクを発行する前に、デバイスをまず固定する必要があります。デバイスを固定すると、デバイスに対するFAST VPによるアクティブなデータ移動は中断され、要求を実行できるようになります。

仮想プロビジョニングT10の割り当て解除

FAST VPで制御されているシン デバイスに対してunmapコマンドを発行できます。

シン デバイスに対するT10 SCSIのunmapコマンドは、ターゲット シン

デバイスに対して、ある範囲のブロックがすでに使用中でないことを知らせます。この範囲がシン デバイスのエクステント全体をカバーしている場合、そのエクステントを割り当て解除して、空き領域をプールに返すことができます。

unmapコマンドの範囲がエクステントの一部のトラックのみをカバーしている場合、これらのトラックはNWBH(ホストによる書き込み不可)としてマークされます。エクステントは割り当て解除されません。ただし、読み取り要求が実行されても、それらのトラックをドライブから取得する必要はありません。代わりに、Symmetrixアレイがすぐにすべてゼロを返します。

注:T10 SCSIのunmapコマンドは、オープン システム(FBA)環境のみでサポートされます。

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FAST VPの相互運用性

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仮想プロビジョニングのプール管理

FAST VPのVP階層にあるシン プールとの間でデータ デバイスの追加または削除が可能です。シン プールに対する移動の入出を問わず、FAST

VPに関連するデータ移動は、データ デバイスが変更されても継続し

ます。

シン プールにデータ デバイスを追加する場合、プールの再配分を実行できます。同様に、データ デバイスを無効にしたり、プールから削除したりする場合、データ デバイスは割り当て済みのトラックをプール内の他の有効なデータ デバイスに排出します。

VP階層に含まれるシン プールで、データ デバイスの排出と自動プール再配分のいずれを実効できますが、どちらの処理もFAST VPのデータ移動のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。

仮想LUN VPモビリティ

FAST VPで制御されるシン デバイスは、VLUN VPを使用して移行できます。こうした移行の結果、デバイスのすべての割り当て済みエクステントが単一のシン プールに移動されます。

移行中、FAST VP関連データの移動は実行されません。移行が完了すると、シン デバイスのすべての割り当て済みエクステントを再階層化に使用できます。

移行直後は移行後のデバイスに対してFAST VPによる再階層化を行わないようにするために、最初にデバイスを固定することを推奨します。FAST VP関連データの移動を再び有効にするために、後でデバイスの固定を解除できます。

FAST(Fully Automated Storage Tiering)

FASTおよびFAST VPは、1つのSymmetrixアレイ内で共存可能です。FASTはシン デバイス以外のデバイス全体の移動のみを実行します。そのため、FAST VPによるシン デバイスの管理には影響しません。

FASTおよびFAST VPは一部の構成パラメータを共有します。以下のとおりです。

ワークロード解析期間

初期解析期間

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FAST VPの相互運用性

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Performance Time Windows

Symmetrix Optimizer

Symmetrix Optimizerはシン デバイス以外のデバイスのみで動作します。そのため、FAST VPによるシン デバイスの管理には影響しません。

OptimizerおよびFAST VPは一部の構成パラメータを共有します。以下のとおりです。

ワークロード解析期間

初期解析期間

Performance Time Windows

動的キャッシュ パーティション設定

DCP(Dynamic Cache Partitioning)を使用して、各種アプリケーションのストレージ処理を分離できます。データ移動はアプリケーションと同じキャッシュ パーティションを使用するため、1つのアプリケーションとしてのデータ移動は同じキャッシュ パーティションを共有していないアプリケーションのパフォーマンスには影響を与えません。

FBA自動プロビジョニング グループ

FBAデバイスの自動プロビジョニング用に作成されたストレージ グループは、FAST VPにも使用できます。ただし、デバイスは、自動プロビジョニング用の複数のストレージ グループに含めることができますが、FASTポリシー(DPまたはVP)と関連づけられている場合、含むことができるのは1つのストレージ グループのみです。

ストレージ グループにシンとシン以外のデバイス タイプが混在する場合、グループが関連づけられたFASTポリシーのタイプと一致するデバイスのみがFASTで管理されます。

自動プロビジョニング ストレージ グループ内の両方のデバイス タイプをFASTとFAST VPで管理する場合は、別個のストレージ グループを作成する必要があります。シン デバイス以外のデバイスを含むストレージ

グループは、DP階層のポリシーに関連づけることができます。シン デバイスを含む異なるストレージ グループは、VP階層のポリシーに関連づける必要があります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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個別のFASTポリシーを適用するために個別のストレージ グループが作成されている場合、カスケードSG機能を使用して、これらのグループを親ストレージ グループに追加できます。その後、マスキング ビューを親SGに適用し、両方のデバイスのセットをプロビジョニングできます。

注:FASTポリシーは、デバイスを含むストレージ グループのみに関連づけることができます。他のストレージ グループを含む親SGをFASTポリシーに関連づけることはできません。

ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

以下のセクションでは、FAST VP環境の実装を計画するにあたり、推奨されるベスト プラクティスについて説明します。

ドキュメント化されたベスト プラクティスは、Enginuity 5876.229.145、Solutions Enabler V7.6、Unisphere for VMAX 1.6で利用可能な機能に基づいています。

FAST VPの構成パラメータ

FAST VPには、その動作を制御する複数の構成パラメータがあります。これらのパラメータには、データ解析における過去のワークロードの効果、データ移動に関するQoS(サービス品質)、非FAST VPに関連しないアクティビティ用に予約されているプール スペースを決定する設定値が含まれています。また、パフォーマンス収集およびデータ移動のタイム ウィンドウを定義できます。

以下のセクションでは、これらの構成パラメータごとに推奨されるベスト プラクティスについて説明します。

注:これらの各構成パラメータの詳細については、http://support.emc.com;

で入手できる「Implementing Fully Automated Storage Tiering for Virtual

Pools (FAST VP) for EMC Symmetrix VMAX Series Arrays」テクニカル ノートを参照してください。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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パフォーマンス タイム ウィンドウ

パフォーマンス タイム ウィンドウは、FAST VPパフォーマンス分析用にパフォーマンス メトリックを含めるか、含めない日付および時間の範囲を指定します。デフォルトでは、パフォーマンス メトリックは、1日24時間、毎日収集されます。ただし、タイム ウィンドウを特定の曜日(複数可)の時刻だけを含めたり、特定の期間を除外したりするように定義することもできます。

パフォーマンスのタイム ウィンドウが開いている間に、収集されるパフォーマンス メトリックに加えて、長期および短期のアクティビティ

レートも増やされ、減衰されます。そのため、パフォーマンスのタイム

ウィンドウがデータのパフォーマンス スコアに大幅に影響を与える可能性があります。

たとえば、一部のデータが午前8時~午後8時の本番稼働時間中のみビジーの場合、パフォーマンスのタイム ウィンドウをこの時間帯のみに制限すると、本番稼働時間中にアクセスされるデータがデフォルトの24時間のウィンドウよりもはるかに高いスコアになってしまう可能性があります。

ベスト プラクティスとしては、パフォーマンス タイム ウィンドウをユーザーが最適化したい特定のワークロードに対して設定してください。たとえば、一般的な本番稼働ワークロードが通常平日午前8時~午後8時の間に発生する場合、パフォーマンスのタイム ウィンドウをこれらの期間と一致するように設定する必要があります。

同様に、週末や休暇の期間中のワークロードが、その他の曜日ほど重要でない、またはその他の曜日の状況とは異なる場合は、パフォーマンスのタイム ウィンドウからそれらを除外することを検討してください。

注:パフォーマンス タイム ウィンドウはシステム全体に適用されます。複数のアプリケーションがアレイ上でアクティブであるが、週末を含むそれぞれ異なる時間にアクティブである場合は、デフォルトのパフォーマンス タイム ウィンドウの動作はそのまま変更しないようにする必要があります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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データ移動タイム ウィンドウ

データ移動タイム ウィンドウは、いつデータ移動の実行を許可または拒否するかについて、日付と時刻の範囲を指定するために使用されます。

推奨されるベスト プラクティスでは、データ移動ウィンドウはパフォーマンス タイム ウィンドウがデータ収集を許可する期間と少なくとも同じ期間はデータ移動を許可する必要があります。これにより、FAST VP

はアレイで発生するワークロードのあらゆる変化に迅速かつ動的に反応できるようになります。

バックアップ ウィンドウ中にデータ移動を避けるべき特定の期間がない場合、たとえばFAST VPが1日24時間、毎日データ移動を実行できるようにデータ移動ウィンドウを設定する方が適している場合があります。

注:本番のワークロード中に発生するデータ移動による影響が懸念される場合は、FAST VP再配置率を使用することで影響を最小限に抑えることができます。

ワークロード解析期間

WAP(ワークロード分析期間)は、パフォーマンス タイム ウィンドウが開いているとみなされる期間に実行された最近のホスト アクティビティおよび最近のものではないホスト アクティビティが、FAST VPメトリックに影響を与える程度を決定します。

WAPで定義される時間が長ければ長いほど、最近のものではないホスト

アクティビティに割り当てられる重みが大きくなります。

WAPを低くすることで、FAST VPがより迅速にワークロードの変化に反応できるようになる可能性はありますが、階層間で移動されるデータ量の増加につながる可能性があります。

WAPの設定の影響は、パフォーマンスのタイム ウィンドウが開いている場合のみ適用されます。たとえば、パフォーマンスのタイム ウィンドウがデフォルト(24時間365日オープン)のままの場合、デフォルトのWAP(1週間)は1つのカレンダー週を対象とします。ただし、パフォーマンス ウィンドウが1日12時間365日開くように設定されている場合、デフォルトのWAPは実際には2つのカレンダー週を組み込みます。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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ワークロード分析期間向けのベスト プラクティスとして推奨されるのは、1つのカレンダー週を対象とするようにパフォーマンスのタイム ウィンドウにWAPを一致させることです。

初期解析期間

IAP(最初の分析期間)では、パフォーマンスに関連するデータ移動が適用されるまでにシン デバイスがFAST VPの管理下にある最短時間を定義します。

このパラメータは、FAST VPがそのデバイス上で一般的なワークロードの適切な特性を確立するための十分なデータ サンプルを得ることができる値に設定しておく必要があります。

FAST VPの初期導入時には、一般的な1週間のワークロード サイクルを確認できるように、IAPを168時間(1週間)に設定するのが適切です。ただし、FAST VPのデータ移動が始まった後では、IAPを24時間(1日)に減らすことができます。これにより、新たに関連づけられたデバイスがFAST VPの移動の推奨によるメリットをより早く受けられるようになります。

FAST VP再配置率

FRR(FAST VP再配置率)は、FAST VPのQoS(サービス品質)設定です。FRRはFAST VPによって生成されるデータ移動リクエストのアグレッシブ性に影響します。このアグレッシブ性は、任意の時点での移動リクエストのデータ量およびプール間のデータ移動に与えられる優先度として測定されます。

FRRを最もアグレッシブな値である1に設定すると、FAST VPはできるだけ大量のデータをできるだけ迅速に移動しようと試みます。FRRを1に設定すると、移動されるデータ量によっては、FAST VPのデータ移動によって生じるバックエンドの追加オーバーヘッドにより、ホストI/Oのレスポンス タイムに影響を与える可能性が高くなります。ただし、階層間のデータ配布はより短い時間で完了します。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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FRRを最もアグレッシブでない値の10に設定すると、FAST VPは移動するデータ量を大幅に削減し、移動するペースを大幅に低下させます。この設定は、ホストI/Oのレスポンス タイムへの影響はありませんが、階層間でデータの再配布が完了するまでにより長い時間がかかります。

図1は、同じワークロード(OLTP2型、1,500IOPS)をFC(ファイバ

チャネル)とEFD(エンタープライズ フラッシュ)の2つのFAST VP階層を含む環境上で動作させた様子を示しています。同じテストを3種類の異なる再配置率 (1、5、8)で実行しました。

FRRを1に設定すると、レスポンス タイムの最初の増加がFAST VPのデータ移動が開始されてから2時間目のマークの箇所で見られますが、再配置率を8に設定するとレスポンス タイムの増加は見られません。一方で、レスポンス タイムの定常状態は、低い値(アグレッシブな設定)では非常に短い時間だけに見られます。

図9. さまざまな再配置率におけるワークロードの例

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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FRRのデフォルト値は5です。ただし、推奨されるベスト プラクティスでは、FAST VPの初期導入時は再配置率をより控えめな値(7または8など)に設定することから始めます。この理由は、FAST VPを初めて有効にした場合、一定期間FAST VPを実行し続けている場合に比べて、移動されるデータ量が大きくなる可能性が高いためです。

後日、階層間のデータ移動量が少なくなったことが確認されたら、FRR

をよりアグレッシブなレベル(2または3など)に設定できます。これにより、FAST VPはワークロードの小さな変化により迅速に適応できるようになります。

プール リザーブ容量

PRC(プールの予約済み容量)は、非FAST VPアクティビティに対して、VP階層に含まれる各プールのパーセントを予約します。シン プール内の未割り当てのスペースの割合がPRCに等しくなると、FAST VPはそのプールにデータを移動しなくなります。

PRCはシステム全体設定として、および個別のプールの両方に設定できます。PRCがプールに対して設定されていない場合、またはプールに対するPRCが[NONE]に設定されている場合、システム全体設定が使用されます。

システム全体設定について、推奨されるベスト プラクティスではデフォルト値である10%を使用します。

個別のプールに対して、シン デバイスがプールにバインドされている場合は、推奨されるベスト プラクティスではそのシン プールに対する最低の割り当て警告レベルに基づいてPRCを設定します。たとえば、シン

プールの割り当てが容量の80%に達した場合に警告がトリガーされる場合は、PRCは20%に設定する必要があります。これにより、プールの残りの20%は新たにホストが生成した割り当てのみに使用され、FAST VP

のデータ移動には使用されなくなります。

シン デバイスがプールにバインドされていない場合、またはバインドされる予定がない場合は、PRCは可能な限り低い値である1%に設定する必要があります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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注:VMAXストレージ アレイ内で階層が2つのみ構成され、FASTポリシーによるVP割り当てが有効になっているような環境では、すべてのシン プールに対してPRCを1%に設定することが有益である可能性があります。

FASTポリシーによるVPの割り当て

FASTポリシーによるVPの割り当て機能を使用すると、シン デバイスが関連づけられているFAST VPポリシーに含まれる任意のシン プールから新しい割り当てを行うことができます。

この機能が有効な場合、FAST VPは、利用可能なパフォーマンス値に基づいて、新しい書き込みをまず最適な階層で割り当てようとします。利用できるパフォーマンス値がない場合、割り当てはデバイスがバインドされているプールで試行されます。

データを割り当てるために最初に選択されたプールがいっぱいの場合、FAST VPはFAST VPポリシーに含まれている他のプールを探し、そこから割り当てます。ポリシー内の少なくとも1つのプールに利用可能なスペースがある限り、新しいエクステントの割り当てはすべて成功します。

ポリシーによる割り当て機能は、Symmetrixアレイ レベルで有効になり、FAST VPによって管理されるすべてのデバイスのすべての割り当てに適用されます。この機能は有効にも無効にもできます(デフォルト設定は無効です)。無効な場合、新しい割り当ては、シン デバイスがバインドされているプールからのみ行われます。

ベスト プラクティスとしてFASTポリシーによるVP割り当てを有効にすることをお勧めします。

注:FASTポリシーによるVP割り当て機能の意思決定プロセスの詳細については、「Implementing Fully Automated Storage Tiering for Virtual Pools (FAST VP) for EMC Symmetrix VMAX Series Arrays」テクニカル ノートの「Advance FAST VP features」セクションを参照してください。

FAST VP階層の構成

Symmetrixストレージ階層は、同一のディスク テクノロジー タイプ(EFD、FC/SAS、SATA、FTSストレージ)と特定のRAID保護タイプ(RAID 1、RAID 5、RAID 6、保護されない)の組み合わせ、および同一のエミュレーション(FBAまたはCKD)からなるリソースの組を指定します。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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注:未保護のRAIDタイプは、FTSで接続されたストレージ アレイ上に存在する階層のみに適用できます。

FAST VP階層は1~4個のシン ストレージ プールを含むことができます。FAST VPに含めるには、シン プールが同じドライブ テクノロジーと同じエミュレーション(およびFC、SAS、SATAドライブの場合は同じ回転スピード)で構成されたデータ デバイスを含む必要があります。

複数のプールを単一の階層に含めるには、プールは同じRAID保護タイプのデータ デバイスを含み、同じドライブ テクノロジーで構成されています。

階層に複数のプールが含まれている場合、階層へのFAST VPの移動は、階層に含まれるすべてのプールに対してストライピングされます。

ドライブ速度に関する考慮事項

速度が異なるがドライブ技術が同じドライブ上で構成されたデータ デバイスを含む2台以上のシン プールは、単一のVP階層において組み合わせることができます。これは推奨されません。ただし、ドライブの速度の差が原因で、階層全体でパフォーマンスが一定でない可能性があるので前述の手段が考えられます。

ドライブ サイズに関する考慮事項

ドライブ サイズはシン プールにデータ デバイスを追加する際の要因にはなりません。たとえば、300 GB FC 15kドライブで構成されたデータ

デバイスは、600 GB FC 15kドライブで構成されたデータ デバイスと、プール内に共存できます。

同じ階層で異なるサイズのドライブを組み合わせることは推奨されません。最終的に、大きなドライブは小さいドライブよりも多くのデータを含むようになります。そのため、大きなドライブは小さなドライブよりもI/Oのワークロードが高い可能性があるので、階層全体にわたってデータ ドライブ上でパフォーマンス レベルが異なる結果となってしまう可能性があります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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同じストレージ階層内で異なるドライブ サイズのデータ デバイスを組み合わせざるを得ない場合は、ドライブ サイズごとに別の2つのプールを作成してから、これらのプールを1つの階層にまとめることをお勧めします。

注:シン プールの構成に関するベスト プラクティスの詳細については、http://support.emc.com ;で入手できる「Best Practices for Fast, Simple

Capacity Allocat ion with EMC Symmetrix Virtual Provisioning」テクニカル

ノートを参照してください。

外部階層

外部階層は、外部プロビジョニング用に構成されたストレージ上にのみ構成できます。FAST VPではカプセル化されたストレージはサポートされていません。

外部アレイ上に階層を作成する場合、外部プールおよび階層に関しては、内部シン プールおよび階層の作成向けのベスト プラクティスの内容に従うことを強く推奨します。そもそも外部のシン プールは、同様のパフォーマンス プロファイルを持つeDisk上に構成する必要があります。

注:eDisksの構成に関するベスト プラクティスの詳細については、http://support.emc.com;で入手できる「Design and Implementation Best

Practices for EMC Symmetrix Federated Tiered Storage (FTS)」テクニカル

ノートを参照してください。

そのためには、外部のシン プールは、単一の外部ストレージ アレイからeDisk上に作成する必要があります。また、これらのeDiskは、同一のRAID保護を使用する外部LUNの、同一のドライブ テクノロジーで構成される必要があります。

同様に、2つ以上の外部シン プールが外部階層に追加された場合も、外部プールは同一のRAID保護およびドライブ テクノロジー タイプを共有する、同じ外部アレイ上に構成する必要があります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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ただし、外部プールと階層を作成するにはより細心の注意が必要です。その理由は、Symmetrixアレイは外部LUNのRAID保護やドライブ テクノロジーを可視化できないためです。そのため、ディスク グループ内のすべてのeDiskが内部シン プールと階層に適用されるルールに確実に従うようにするようなソフトウェア保護はありません。

ユーザー定義の技術タイプ

外部階層(外部RAID保護および技術タイプ)の構成によっては、階層が内部SATA、さらには可能性として内部FC階層よりも高レベルのパフォーマンスを提供できる可能性があります。

外部階層が1つ以上の内部階層より高いレベルのパフォーマンスを実現することが期待される場合、相対的なパフォーマンス期待値は、期待されるパフォーマンスに相当する技術タイプを指定することでユーザーが定義できます。

外部階層が最初にFAST VPポリシーに追加されると、Symmetrixアレイは、実際のパフォーマンスがユーザー定義の期待値と一致しているかどうかを評価するためにパフォーマンスの検出を実行します。

このパフォーマンスの検出のため、ホストのワークロードが比較的軽いときに外部階層をFAST VPポリシーに追加することをお勧めします。そうすることで、フル検出のワークロードとホストのワークロードとの競合が減少します。

同様に、外部階層も、事実上ホスト アプリケーションが外部ストレージにアクセスする前に、できる限り早くFAST VPポリシーに追加する必要があります。

FAST VPポリシー構成

FAST VPポリシーは、1~4個のVP階層をグループ化し、各ストレージ階層の使用上限を割り当てます。この上限により、ポリシーに関連づけられたストレージ グループの容量のうち、特定の階層上で使用できる最大容量が指定されます。各ストレージ階層における容量の使用上限は、関連づけられたストレージ グループの構成済みの論理容量の割合として指定します。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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各階層の使用量制限は、1~100%でなければなりません。組み合わせた場合、ポリシーにおけるすべてのシン ストレージ階層の使用量上限は合計で少なくとも100%でなければなりませんが、もちろん100%を超えてもかまいません。

階層の順位づけ

FAST VPは、既知のパフォーマンス モデルに基づいてポリシー内の階層を順位づけします。階層は各階層内のプールのドライブ技術(EFD、FC、またはSATA)、さらには階層の場所(内部または外部)の場所基づいて位置づけられます。

階層の使用量制限

合計使用上限が100%を超えるポリシーを作成すると、柔軟性の高いストレージ グループの構成が可能になります。たとえば、階層間でデータを移動する際に、同じストレージ グループ内の一致する容量の他のデータを再配置する必要がなくなります。

デフォルトのFAST VPポリシーとして、含まれている階層すべてに100%

を指定することが考えられます。このポリシーでは、100%のストレージ

グループ容量を必要に応じてポリシー内のあらゆる階層にプロモートまたはデモートできるようになるため、関連づけられたストレージ グループに対して最高の柔軟性を提供できます。

運用上100/100/100ポリシーを導入するには適切でない場合があります。アレイ内の特定の階層に対するアクセスを制限するには、いくつかの理由があります。

例として、EFDに配置できるストレージ グループ容量を制限する方が適している場合があります。この制限は、単一のストレージ グループまたはアプリケーションがすべてのEFDリソースを消費することを防ぐために使用される場合があります。この場合、EFDには小さな割合を設定したポリシーをお勧めします。

注:ただし、ポリシー内のパフォーマンスが高い階層に対して、低すぎるポリシーのパーセンテージを設定しないようにも注意する必要があります。パーセンテージが低すぎると、FAST VPがアクティブなデータを下位の階層に残したままになり、結果的にその階層が過負荷になってしまう可能性があります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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同様に、ストレージ グループが使用するSATA容量を制限する方が適している場合があります。時々非アクティブになる可能性があるアプリケーションでは、再びアクティブになる際に最低レベルのパフォーマンスしか必要としない場合があります。このようなアプリケーションの場合、SATA階層を除外したポリシーが適切な可能性があります。

FAST VP実装の適切なポリシーを決定する最適な方法は、FAST VPによって管理されるアプリケーション データに対してワークロード スキューを検証することです。ワークロード スキューとは、時間経過に伴うデータ使用の不均衡のことです。これは、アレイ上の小さな割合のデータがアレイ上のワークロードの大半を占めていることを意味します。このワークロード スキューを把握できるツールの1つがTier Advisorです。

Tier Advisor

Tier AdvisorはEMCテクニカル スタッフが利用可能なユーティリティで、Symmetrix VMAXファミリ ストレージ アレイ内で異なるテクノロジー

タイプ(EFD、FC、SATA)のドライブを混合させる場合のパフォーマンスとコストを見積もります。

Tier Advisorでは、Symmetrix、VNX®、CLARiX®ストレージ アレイから収集したパフォーマンス データを検証し、LUN全体でワークロード

スキューを判断できます。また、このユーティリティではワークロード

スキューをサブLUNレベルで見積もることもできます。

この情報を基にしてTier Advisorは、目的のコストとパフォーマンス設定値が得られるまで各種のストレージ階層とストレージ ポリシーを対話形式で実験できる機能を提供します。これにより最適なストレージ アレイ構成をモデル化できます。

シン デバイスのバインド

FAST VP制御であるかどうかにかかわらず、各シン デバイスは、単一のシン プールにのみバインドが可能です。デフォルトでは、すべてのホスト書き込みで生成された割り当てまたはユーザー要求による事前割り当ては、このプールから実行されます。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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容易な管理とレポート作成の観点から、すべてのシン デバイスをSymmetrixアレイ内の単一のプールにバインドすることをお勧めします。

注:FAST VPのデータ移動はシン デバイスのバインド情報を変更しません。

適切なプールを決定する際、シン デバイスの事前割り当てとシステムのライト ペンディングの上限の使用と同様に、パフォーマンス要求と容量管理の両方を考慮に入れる必要があります。

注:非常に具体的なパフォーマンス ニーズがない限り、FAST VPに制御されているシン デバイスを、EFD階層内のシン プールにバインドすることはお勧めしません。

パフォーマンスに関する考慮事項

FASTポリシーによるVP割り当てが有効の場合、FAST VPは新しいエクステントを最適な階層に割り当てることを試みます。これは割り当て先のシン デバイスで利用可能なパフォーマンス値に基づきます。パフォーマンス値が利用できない場合、割り当てはシン デバイスがバインドされているプールから行われます。

その結果、推奨されるベスト プラクティスは、すべてのシン デバイスを、ポリシー内のFC階層のプールにバインドすることです。

容量管理に関する考慮事項

すべてのシン デバイスを単一のプールにバインドすると、最終的にそのプールはオーバーサブスクライブになります。ポリシーによる割り当て機能が無効の場合、これによりプールがいっぱいになる問題が発生する可能性があります。バインド プールに十分なスペースがない場合、シン

デバイスの未割り当ての領域へのホスト書き込みは失敗します。

EFD、FC、SATA構成では、FC階層がSATA階層より大幅に小さい場合、すべてのシン デバイスをSATA階層にバインドすることで、バインド

プールがいっぱいになる可能性が低下します。

パフォーマンス ニーズによってシン デバイスをFCにバインドする必要がある場合、プール リザーブ容量、FAST VPポリシー構成、または両方の組み合わせを使用してプールがいっぱいになる可能性を低下させることができます。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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注:Symmetrix VMAXアレイ上でFASTポリシーによるVP割り当てを有効にすると、容量管理に関する考慮事項を大幅に軽減できます。

事前割り当て

プールが完全に割り当てられていることによる、シン デバイスへの書き込み失敗を避ける方法は、プールにバインドした際にシン デバイスを事前に割り当てることです。ただし、事前割り当てを使用する前に、新たに書き込まれるデータのパフォーマンス要件を考慮する必要があります。

FAST VPがデータ移動を実行する際は、割り当て済みのエクステントのみを移動します。これは、ホスト書き込みの結果として割り当てられたエクステントだけではなく、事前割り当てされているエクステントにも適用されます。これらの事前割り当てされたエクステントは、まだデータが一切書き込まれていない場合でも移動されます。

注:事前割り当てされているがまだ書き込まれていないエクステントを移動する際は、実際に移動するデータはありません。エクステントに対するポインタが対象の階層のプールにリダイレクトされるだけです。

事前割り当てされているがまだ書き込まれていないエクステントは非アクティブとして示され、結果として関連づけられたFAST VPポリシーに含まれる最下位の階層にデモートされます。これらのエクステントが最終的に書き込まれる際、書き込みのパフォーマンスはデモートされる階層のパフォーマンスになります。

推奨されるベスト プラクティスでは、FAST VPで管理されるシン デバイスには事前割り当てしません。事前割り当ては、プールがいっぱいになったことによる書き込み失敗が決して許容できないデバイスに対してのみ選択的に使用します。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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システムのライト ペンディングの上限

FAST VPは、ライト ペンディング数がシステムのライト ペンディングの上限に近づくと、プロモートおよびデモートの両方のデータ移動を抑制するように設計されています。この抑制によって、非常に高い優先度がホストI/Oに与えられ、ライト ペンディングとしてマークされたトラックが適切にデステージされるようになります。

注:デフォルトでは、Symmetrix VMAXアレイのシステム ライト ペンディングの上限は、利用可能なキャッシュの75%に設定されています。

ライト ペンディング数がライト ペンディングの上限の60%に達した場合、FAST VPのデータ移動は停止します。ライト ペンディング数がこのレベルを下回ると、データ移動は自動的に再開されます。

SATAディスク上で非常に負荷の高いワークロードが実行され、SATA

ディスクが100%またはそれに近い使用率になって高いライト ペンディング数が発生している場合には、FAST VPによるFC階層またはEFD階層へのアクティブなエクステントのプロモートに対して影響があります。

高い書き込みワークロードが発生している環境では、FC階層のプールにシン デバイスをバインドすることをお勧めします。

注:SATA階層で大量の書き込みアクティビティが発生している場合、SATA

上で構成されているDATAデバイスを別の動的キャッシュ パーティションに配置することを検討する価値はあります。そうすることで、書き込み保留数の増加を防止し、FAST VPおよびストレージ アレイ全体に対する影響を軽減することができます。

シン デバイスの再バインド

デバイスの現在のエクステント割り当てを移動せずにシン デバイスのバインド情報を変更できます。この作業は再バインドと呼ばれるプロセスによって実行できます。

シン デバイスを再バインドすると、デバイスのバインド先のプールのサブスクリプション レベルは増加し、デバイスが以前にバインドされていたプールのサブスクリプション レベルは減少します。ただし、両方のプールの割り当てレベルは変更されません。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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注:FAST VPで制御されているデバイスを再バインドする場合、デバイスの再バインド先になるシン プールは、デバイスが関連づけられているポリシーのいずれかのVP階層に属する必要があります。

シン プールのオーバーサブスクリプション

シン プールのオーバーサブスクリプションにより、シン デバイスによって表されるスペースのすべてを完全に割り当てるだけの十分な物理ドライブを購入せずに、ホストやアプリケーションに対して必要以上のデバイスを提供できます。

注:オーバーサブスクリプションの詳細については、http://support.emc.com;で入手できる「Best Practices for Fast, Simple

Capacity Allocat ion with EMC Symmetrix Virtual Provisioning」テクニカル

ノートを参照してください。

FAST VP構成では、シン デバイスで使用可能な容量は複数のプールに広がります。Symmetrixアレイで使用可能な容量をオーバーサブスクライブする予定がない場合でも、構成されたシン デバイスの容量を提供するための十分なスペースが通常は単一階層内にありません。

前述の推奨事項に従って、FAST VPで管理されているすべてのシン デバイスを1つのシン プールにバインドした場合、必然的にそのプールはオーバーサブスクライブされます。その結果、プールのオーバーサブスクリプションの制限は100%を超える値に設定する必要があります。

有効容量

オーバーサブスクリプション制限に設定するレベルを決定するためには、FAST VPに制御されているデバイスの使用可能な総容量を最初に計算します。

FASTポリシーによるVP割り当て機能が有効の場合は、ポリシー内の各プールの容量の100%が使用できます。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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ポリシーによる割り当て機能が無効の場合は、次の点を考慮します。

シン デバイスにバインドされているプールは、容量の 100%が使用できる。

シン デバイスにバインドされていないプールは、プールの 100%から PRCで予約済みの容量を引いた値が使用で

きる。

注:プール リザーブ容量の値は、FAST VPのプールへの移動にのみ影響します。PRCは、プール内のエクステントを割り当てるシン デバイスの機能には影響しません。

オーバーサブスクリプション制限

FAST VPで使用可能な容量を決定した後で、バインドされるプール デバイスのオーバーサブスクリプション制限を計算できます。

アレイの構成済み容量がオーバーサブスクライブされないようにするために、制限値は、すべてのプールの使用可能な容量を、バインディングに使用されるシン プールの容量で割って計算できます。この値に100を掛けてパーセント値が得られます。

例として、1 TBのEFDプール、5 TBのFCプール、10 TBのSATAプールからなる構成について検討します。利用可能な容量の合計は16 TBです。すべてのシン デバイスがFCにバインドされる場合、オーバーサブスクリプション制限は320%に設定できます((16/5)*100)。

最初にアレイの構成済み物理容量をオーバーサブスクライブし、後で必要に応じてストレージを追加する予定である場合、より高い値に設定できます。

デバイスがバインドされないシン プールでは、サブスクリプション制限を0%に設定できます。これにより誤操作によるプールへのバインディングや移行を防止できます。

RAID保護に関する考慮事項

仮想プロビジョニング構成を設計する際、特に対応するRAID保護戦略を選択する際は、デバイス レベルのパフォーマンスと可用性の両方の影響を注意深く検討する必要があります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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注:これらの考慮事項の詳細については、http://support.emc.com ;で入手できる「Best Practices for Fast, Simple Capacity Allocat ion with EMC

Symmetrix Virtual Provisioning」テクニカル ノートを参照してください。

FAST VPでは、パフォーマンスの観点からこれらの考慮事項および推奨事項を変更しません。ただしFAST VPでは、単一のシン デバイスのデータをアレイ内のさまざまなRAID保護およびドライブ テクノロジーを持つ複数の階層に分散できる点が異なっています。

このため、個々のシン デバイスの可用性は、デバイスがバインドされているシン プールの可用性の特性だけには左右されません。代わりに、最も低い可用性を持つ階層の特性に左右されます。

最終的にはパフォーマンスおよび可用性の要件によってSymmetrixアレイ内の各階層の構成が決定されますが、ベスト プラクティスとしては、EFDにRAID 1またはRAID 5(できれば3+1)保護を選択することをお勧めします。EFDの再構築は高速であるため、その階層の保護スキームに対して高い可用性を実現します。

また、SATA階層にはRAID 1またはRAID 6(できれば6+2)のいずれかを使用することをお勧めします。これは、SATAドライブの再構築が(EFDおよびFCに比べて)低速であり、RAID 5保護ではデータが利用できなくなるドライブ2台の故障の可能性が高いためです。

FC階層では、RAID 1が推奨される保護レベルです。FCプールのミラー

データ デバイスは、RAID 5およびRAID 6よりもパフォーマンス レベルが高く、書き込みのワークロードに対しては特に高くなります。ドライブ2台の故障に関しても、RAID 1の可用性はRAID 5よりも高くなります。FCのRAID 1可用性対応数を最大にするために、低容量のドライブの使用をお勧めします。

注:FAST VPの実装に備えて構成された新たな環境、または階層を追加した既存の環境では、EMC担当者に各階層に適切なRAID保護スキームを決定するサポートを依頼することを強くお勧めします。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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ドライブ構成

ベスト プラクティス構成ガイドラインでは、ほとんどのお客様のシステム構成に対して、DA(ディスク アダプタ)およびDA CPU全体に対する物理ディスクの均等な配分をお勧めしています。

これはEFDでは特に重要です。EFDはそれぞれ1秒あたり何千ものI/Oをサポートするため、複数のハード ディスク ドライブに対する負荷と同等の負荷がDA上に発生する可能性があるためです。

すべてのDA CPUに対するI/Oの均等な配分は、DA CPUの能力およびSymmetrixアレイの全体性能を最大化するのに最適です。ただし、ディスク リソースの均等な分散が適切でないシナリオもあります。これはたとえば、お客様が、保有している複数の環境とVMAXアレイ内のワークロードを分離するために、ディスク リソースのパーティション化と分離を希望している場合です。

一般的に、EFD階層でもFC階層でも、少数の大きなドライブを構成するよりも、多数の小さなドライブを構成する方が適しています。これによりI/OロードがSymmetrixバックエンド全体に可能な限り広く分散されます。

ストレージ グループ優先度

ストレージ グループがFASTポリシーに関連づけられると、優先値もこのストレージ グループに割り当てる必要があります。この優先度値は

1~3を指定でき、1の優先度が最も高くなります。デフォルトは、2です。

推奨されるベスト プラクティスでは、FAST VPポリシーに関連づけられたすべてのストレージ グループに対して、デフォルトの優先度である2

を使用します。これらの値は、たとえば高い優先度のアプリケーションが上位の階層から十分なリソースを得られていないことが分かった場合には変更します。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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SRDF

SRDFデバイスをFAST VPで管理する機能に制約はありませんが、データの移動はFAST VPが動作しているアレイに制限されることに注意が必要です。デフォルトではデータ移動は調整されず、FAST VPは、ローカル アレイおよびリモート アレイに対して独立して動作します。しかし、FAST VP SRDF調整を有効することで、R1のパフォーマンス値をR2デバイスに属するデータのプロモートとデモートの決定の際に使用できます。

注:FAST VP SRDF調整の操作の詳細については、http://support.emc.com;で入手できる「Implementing Fully Automated

Storage Tiering for Virtual Pools (FAST VP) for EMC Symmetrix VMAX

Series Arrays」テクニカル ノートの「Advance FAST VP features」セクションを参照してください。

一般的なベスト プラクティスとして、特にリモートR2アレイも階層型ストレージ容量で構成されている場合は、FAST VPをR1デバイスおよびR2デバイスの両方で採用します。可能であれば、同様のFAST VP階層およびポリシーを各サイトで構成します。

可能な場合、FAST VPポリシーと関連づけられているSRDFデバイスを含む各ストレージ グループで、FAST VP SRDF調整を有効にします。

ただし、各SRDF構成は独自に動作とワークロードを実行します。SRDF

環境にFAST VPを実装する前に、以下のセクションの情報を考慮する必要があります。

注:次のセクションでは、仮想プロビジョニング用に構成されているすべてのSymmetrixアレイにSRDFが実装されており(すべてのSRDFデバイスはシン デバイス)、FAST VPを実行できるものとします。

FAST VPの動作

SRDF R1デバイスでは、FAST VPはR1デバイス上のリードおよびライトのアクティビティに基づいて、エクステント グループをプロモートおよびデモートします。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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一方、デフォルトでは、通常の運用時にSRDF R2デバイスでは、一般的にライト アクティビティのみが発生します。この結果、FAST VPは、書き込みが発生しているR2デバイスのエクステントのみをプロモートする可能性が高くなります。

読み取りアクティビティのみが発生するR1デバイスのエクステントが存在する場合、R2デバイス上の対応するエクステントにはI/Oアクティビティが見られません。このため、これらのR2デバイスのエクステントはSATA階層にデモートされる可能性が高くなります(この動作がFAST

VPポリシーに含まれていた場合)。

SRDF調整は、R1デバイスで収集したFAST VPパフォーマンス値をSRDF

リンクを通じて対応するR2デバイスに定期的に送信することでこのデフォルトの動作を変更します。R2デバイスでは、R1のパフォーマンス値が実際のR2のパフォーマンス値とマージされます。

その後FAST VPによるR2デバイスに対する移動の決定が、マージされたパフォーマンス値に基づいて行われます。このようにしてR1デバイス上のリード アクティビティをR2に反映させることができます。

SRDF動作モード

EMCのベスト プラクティスでは、SRDF動作の同期モードおよび非同期モードの両方において、ローカル(R1)およびリモート(R2)のSymmetrixアレイの両方で均等構成を実装することをお勧めしています。各アレイのデータが同じドライブ タイプ上の同じRAID保護タイプで構成されているデバイス上に配置されるのが理想的です。

FAST VPは各アレイで独立して動作し、またサブLUNレベルでデータをプロモートおよびデモートするため、この均衡が維持される保証はありません。

SRDF同期モード(SRDF/S)では、ホスト書き込みは同期的にR1からR2に転送されます。これらの書き込みの確認は、データをリモートのR2

アレイ上のキャッシュに受信した際にのみホストによって送信されます。これらのキャッシュへの書き込みはR2アレイ上のディスクに非同期にデステージされます。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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注:SRDF/Sの詳細については、http://support.emc.com;で入手できる「EMC Solutions Enabler Symmetrix SRDF Family CLI Product Guide」を参照してください。

不均衡な構成では、R2データはR1データよりも性能が低い階層に存在し、R2アレイでライト ペンディング数が増え、キャッシュへの書き込みが遅延した場合、ホストではパフォーマンスへの影響も見られることがあります。

FAST VPを使用する場合、R2側で発生するプロモートはライト アクティビティの結果であるため、このことは一般的には問題になりません。書き込みワークロードが大きいシン デバイスの領域はプロモートされ、R2アレイ上の性能が高い階層に維持される可能性が高くなります。

構成が不均衡になることによる潜在的な問題を回避するために、SRDF/S環境でFAST VP SRDF調整を有効にすることをお勧めします。

SRDF非同期(SRDF/A)モードでは、ホスト書き込みは事前定義された期間またはデルタ セット内に非同期に転送されます。実際には、収集セット、転送/受信セット、適用セットという 3つのデルタ セットが常にあります。

注:SRDF/Aの詳細については、http://support.emc.com;で入手できる「EMC Solutions Enabler Symmetrix SRDF Family CLI Product Guide」を参照してください。

SRDF/Aでは適用セットがディスクへのデステージを完了させるまでデータは1つのデルタ セットから次のデルタ セットに移行できないため、均等なSRDF構成がより重要になります。データがR1に比べてR2アレイの性能が低い階層に存在する場合、SRDF/Aサイクル タイムは長くなり、最終的にはSRDF/Aセッションをドロップする可能性があります。

ほとんどの環境のSRDF/Sモードと同様に、書き込みワークロードを受けているデータはプロモートされ、性能が高い階層に維持されるため、これは大きな問題にはなりません。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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構成が不均衡になることによる潜在的な問題を回避するために、SRDF/A環境でFAST VP SRDF調整を有効にすることを強くお勧めし

ます。

R2アレイに反映された書き込みが下位の階層にデステージし、SRDF/A

サイクル タイムが長時間化する可能性がある状況では、SRDF/Aセッションがドロップしないようにするために、SRDF/A DSE(デルタ セット拡張機能)を考慮する必要があります。

注:SRDF/DSEの詳細については、http://support.emc.com;で入手できる「Best Practices for EMC SRDF/A Delta Set Extension」テクニカル ノートを参照してください。

SRDFフェイルオーバー

FAST VPはR1アレイおよびR2アレイの両方で独立して動作するため、SRDF調整が有効でない場合、データのレイアウトはそれぞれのアレイで異なることが想定されます。SRDFフェイルオーバー動作が実行され、ホスト アプリケーションがR2デバイス上で起動された場合にも、R2のパフォーマンス特性はR1のパフォーマンス特性とは異なることが想定されます。

この場合、FAST VPがワークロードの変化に適応し、混在する読み取りおよび書き込みのワークロードに基づいてプロモートおよびデモートのアクティビティを開始するまで少し時間がかかります。

フェイルオーバーへの備えを向上させ、新しいワークロードの調整にかかる期間を短くするには、FAST VP SRDF調整を有効にします。

注:FAST VPのパフォーマンス値はR1からR2にのみ送信されます。フェイルオーバーが発生し、R2デバイス上でアプリケーションが実行されている場合、パフォーマンス値はR2からR1には送信されません。

パーソナリティ スワップ

SRDF パーソナリティ スワップでは、SRDFフェイルオーバー シナリオと同様の動作パターンになります。以前R2デバイスだったデバイスでアプリケーションが起動されます。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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新しいR1デバイスから対応するR2デバイスにパフォーマンス値が送信されるようにするためには、R1デバイスが含まれるストレージ グループでSRDF調整を有効にする必要があります。

事前にR2デバイスが含まれるストレージ グループでSRDF調整を有効にすることもできます。ただし、この設定はパーソナリティ スワップが実行され、R2デバイスがR1デバイスに変更された後にのみ効果を持ちます。

双方向SRDF

推奨されるベスト プラクティスは、双方向SRDF環境では少し異なります。この場合、各SymmetrixアレイでR1デバイスとR2デバイスの両方が構成されます。

SRDF調整が有効の場合、R2デバイスに属するデータが、より高い階層にあるR1デバイスに属するデータとリプレースされる可能性があります。これはR2デバイスに対応するR1デバイスが、ローカルのR1デバイスよりもワークロードが高い場合に起きる可能性があります。

このシナリオでは、R1デバイスで使用するため、EFD階層を予約することをお勧めします。この予約は、R2デバイスに関連づけられているポリシーからEFD階層を除外することで実行できます。

フェイルオーバーが実行された場合、EFD階層はR2デバイスに関連づけられているポリシーに動的に追加できます。または、R2デバイスを含むストレージ グループをEFDを含むポリシーに再度関連づけることもできます。

注:この推奨事項は、R2デバイス上の想定されるSRDF書き込みワークロードを処理するのに十分な容量とI/O能力が下位の階層にあることを前提としています。

EFDの考慮事項

リモート アレイ上により小型のEFD構成がある場合、R2アレイのFAST

VPポリシーにEFD階層を含めないことをお勧めします。同様に、R2アレイ上のEFD構成がDA全体で均等にするベスト プラクティス ガイドラインに従っていない場合、R2側でEFD階層を含まないようにします。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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注:この推奨事項は、R2デバイス上の想定されるSRDF書き込みワークロードを処理するのに十分な容量とI/O能力が下位の階層にあることを前提としています。

FAST VPデータ圧縮

FAST VP圧縮は、FAST VPが管理するシン デバイス用のVP圧縮を自動化します。

FAST VP圧縮の動作は、FAST VP圧縮までの期間およびFAST VP圧縮レート という2つの構成パラメータによって制御されます。また、FAST

VP圧縮には、ポリシー内の少なくとも1つの階層が、VP圧縮が有効になっているシン プールを少なくとも1つ含んでいる必要があります。

FAST VP圧縮までの期間

FAST VP圧縮までの期間パラメータは、FAST VP圧縮の使用を可能にし、データが圧縮対象となる非アクティブの閾値を設定します。

圧縮までの期間は40~400日、さらにはneverに設定できます。デフォルトはnever、つまり、FAST VPがデータを自動的に圧縮することはありません。

FAST VP圧縮を有効にする前に、ユーザーは自身の典型的なビジネス サイクルと、全データをアクティブとみなすことができる周期について理解しておく必要があります。たとえば、月末レポートまたはバッチ処理などです。

ベスト プラクティスとしては、圧縮までの期間は当初最低40日の値に設定してください。これにより、データが作成された月の月末のアクティビティに必要なデータが、その月の月末まで圧縮されないようになり

ます。

データの標準的なアクセス サイクルがビジネス四半期(3か月)以上にわたる場合は、圧縮までの期間を最低100日以上に設定するのが適切

です。

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FAST VP圧縮率

FAST圧縮率は、FAST VPが実施する自動VP圧縮用のサービス品質設定です。これは、圧縮までの期間の値を超えて非アクティブであった期間が経過した後、データが圧縮されるアグレッシブの程度に影響を与え

ます。

圧縮率は1~10の値を設定できます。最も積極的なのは1です。

圧縮率を1に設定すると、FAST VPができる限り迅速にデータを圧縮しようとします。ただし、圧縮されるデータの量が多い場合には、バックエンドにオーバーヘッドが加わる可能性があり、潜在的にホストI/Oの応答時間に影響が及びます。

圧縮率を最もアグレッシブでない値の10に設定すると、FAST VPは圧縮されるデータ量を常に大幅に削減します。この設定は、ホストの応答時間に影響を与える可能性は低いですが、圧縮が完了するまでにより長い時間がかかります。

圧縮レートのデフォルト値は5です。ただし、推奨されるベスト プラクティスとしては、FAST VPの初期導入時はより控えめな値(7または8など)に設定することから始めてください。

後日、圧縮がアレイに与える影響のレベルが観察されたら、圧縮をよりアグレッシブな設定に上げることができます。

圧縮が有効になった階層

データを自動的に圧縮させるには、データを圧縮が有効になっているシン プールに配置する必要があります。圧縮は、任意のプール、任意の場所(内部または外部)、および任意の技術タイプ(EFD、FC、SATA)で有効にすることができます。

一般的には、圧縮までの期間よりも長い期間非アクティブであったデータはすべて、ポリシー内の最下層にすでにデモートされています。そのため、FAST VP圧縮に対して推奨されるのは、内部または外部のSymmetrix VMAXアレイ用に構成された最下層にのみ圧縮を有効にするようにしてください。

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FAST VP環境への移行

非階層環境から階層環境への移行には、いくつかの課題が存在します。容量とパフォーマンスの両方に関して考慮するようにしてください。

容量の観点からすると、単一階層のストレージ アレイ上のデータは、多層アレイ上のいずれかの階層にすべてが収まるわけではないことが考えられるので、移行は非常に慎重に計画する必要があります。

シン デバイスへの移行を実行する際に、シン デバイスが移行の結果、完全に割り当てられる可能性があります。このため、移行されるターゲットのシン デバイスは、移行を完了するために必要な領域の100%が使用可能であるように構成されるべきです。

注:ターゲットのシン デバイスを完全に割り当てる移行の可能性は、既存のゼロ スペース再利用ツールを採用することによって軽減することができます。詳細については、88ページの「ゼロ スペース再利用」を参照してくだ

さい。

パフォーマンスの観点からは、考慮すべき2つの異なる側面があります。まず、移行が完了したターゲット アレイ上のデータのパフォーマンスです。2つ目の観点は、移行自体のパフォーマンスです。

複数階層環境への移行では、FAST VPが適切に複数の階層間でデータを再配布することができるようになるまで、ターゲット階層が移行したアプリケーションに十分なレベルのパフォーマンスを提供できるかどうかを考慮する必要があります。同様に、移行が許容されるタイム ウィンドウで完了できるようなパフォーマンス レベルでターゲット階層が大量の書き込みを吸収できる必要があります。

移行計画

複数階層のFAST VP環境に移行する場合、3つの主な移行方法を使用することができます。それぞれの方法には、ターゲットのシン デバイスが必要なスペースを利用できるようにするオプションがあります。3つの方法は次のとおりです。

単一階層への移行

複数階層への移行

FAST VP ポリシーへの移行

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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次のセクションでは、各移行方法において正常に移行を完了するのに十分なスペースを必ず利用できるようにするのに使用できるオプションについて説明します。

単一階層への移行

シン デバイスに移行する場合、デバイスは単一のプールにのみバインドできます。一般的には、単一のアプリケーションに使用されているすべてのシン デバイスは、同じプールにバインドされます。このシナリオでは、移行が正常に完了することを保証するために、ターゲット プールは各シン デバイスを完全に割り当てられるように十分な領域を含んでいる必要があります。

ターゲット プールの空き領域が必要とされるよりも少ない場合、領域を利用できるようにするために、移行前にPRC(プール リザーブ容量)を増加させることができます。PRCを増やすと、FAST VPが使用するプール内の領域が減少します。その結果、プールのPRCがプール内の空き領域のパーセントを超えるレベルまで増加されると、FAST VPは新しいPRC値に合った空き領域の割合を確保するために、プールからデータを積極的に移動させ始めます。

たとえば、プールのサイズが200 TBで、10%のPRCが定義されている場合、FAST VPは180 TBを利用できます。PRCを20%に増やすと、FAST

VPは160 TBのみ利用できるようになります。PRCの値を増やす前にFAST VPが管理するデバイスに170 TBのプールが割り当てられていた場合、FAST VPは割り当てレベルを160 TBに減少させるために10 TB分のデータを再配置しようとします。

移行を開始する前に、ターゲット デバイスにバインドされているプールに、必要な容量が蓄えられるレベルまでPRCを変更する必要があります。

単一階層に移行する場合、移行が完了するまでターゲット デバイスをFAST VPポリシーに関連づけるべきではありません。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

注:移動するデータの量およびアレイ上での既存のアクティビティ レベルに応じて、新しいPRCレベルに到達するようにプールからデータを移動するのにはかなりの時間がかかる可能性があります。そのため、移行の目的でPRC

を増加させようとする決断は、移行を実行する前に十分余裕を持って行うようにしてください。

複数階層への移行

移行するすべてのデータの受け入れに十分な領域が単一のプールにない場合、ターゲット アレイ上に複数のシン プールを含める必要があり

ます。

複数階層に移行するということは、ターゲットのシン デバイスが単一のプールにすべてバインドされるわけではないことを意味します。実際は、移行を完了するために複数のターゲット プールが使用されます。

個々のターゲット デバイスは、各デバイスの移行を完了するのに最も適したプールにバインドする必要があります。

使用されるプールの妥当性は、プールの空き容量の量だけでなく、移行されるデバイスのパフォーマンス要件に基づいて判断できます。たとえば、最もアクティブなデバイスはFC階層にあるプールまたは複数のプールに移行することができる一方で、それほどアクティブでないデバイスは、SATA階層にあるプールまたは複数のプールにバインドされます。

移行の計画の前に、移行されるデバイスのパフォーマンス データを利用できるのが理想的です。そのような情報を利用できない場合は、移行されるデバイスの中でどのデバイスが最もパフォーマンスの影響を受けやすいかについて決定すべきです。

SATA階層に大量のデータを移行する際には注意が必要です。階層がRAID 6保護を使用して構成されている場合、移行のアクティビティは、より高いレベルのディスク ドライブへの書き込み動作を実現します。これは、移行のパフォーマンスとターゲットのストレージ アレイの全体的なパフォーマンスの両方に影響を与える可能性があります。

複数階層に移行する場合、移行が完了するまでターゲット デバイスをFAST VPポリシーに関連づけないでください。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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FAST VPポリシーへの移行

単一のターゲット プールにすべての移行データを受け入れる十分なスペースがない場合、FAST VPポリシー機能によるVP割り当てを使用して移行を支援することができます。ポリシーによる割り当てを使用して、ターゲットのシン デバイスを単一のプールにすべてバインドすることができます。移行を開始する前に、ターゲット デバイスもFAST VPポリシーに関連づける必要があります。

ポリシー機能による割り当てを有効にすると、ターゲット デバイスがバインドされているプールが移行中にいっぱいになった場合、FAST VPポリシー内の他のプールに対して割り当てが行われます。FAST VPポリシー内のプールに十分な領域がある限り、すべてのデータが正常に移行されます。

複数階層への移行と同様、RAID 6保護を使用して構成されたドライブに大量のデータを移行する際には注意が必要です。

また、FAST VPは、パフォーマンス履歴をまったく利用できないので、移行されるデータのパフォーマンス要件を考慮できません。つまり、使用頻度の高いデータがパフォーマンスの低い階層に配置され、非アクティブなデータがよりパフォーマンスの高い階層に配置される可能性があることを意味します。移行後の一定期間、FAST VPが実際のワークロードに対してデータのレイアウトを最適化する機会があるまで、移行されたデータのパフォーマンスが低下する可能性があります。

FAST VPのポリシー戦略への移行を使用する場合、移行を開始する前にターゲット デバイスをポリシーに関連づける必要があります。

ゼロ スペース再利用

ターゲットのシン デバイスを完全に割り当てるための移行の可能性が原因で、移行に続けて仮想プロビジョニングのゼロ スペース再利用を使用することで、移行中にコピーされたゼロ データを割り当て解除する必要があります。シン デバイスに対してゼロ スペース再利用タスクを開始する前に、FAST VPによって管理されるシン デバイスを固定することを推奨します。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

SRDFまたはOpen Replicatorのいずれかを使用している場合、移行中にはそれぞれのゼロ検出機能を使用する必要があります。これにより、シン デバイスが移行中に完全に割り当てられることを防ぐことができます。

アップグレード計画

複数階層のFAST VP環境においてドライブのアップグレードを計画する際の最大の問題は、どの階層に容量を追加する必要があるかということです。このことを判断するためには、容量が追加された結果として発生する、ストレージ アレイの全体的なワークロードの増加を理解する必要があります。

余分なワークロードはあまり発生しないことが予想され、既存の構成が十分なパフォーマンスを提供している場合、単にSATA階層に容量を追加するのが適切である可能性があります。

注:1つの階層にのみ容量を追加すると、他の階層に収容できるデータの相対的な割合が変化し、移行の対象の現在のワークロードの一部が将来的に新しい(おそらく下位の)階層に移行される可能性があります。

ただし、ワークロードの大幅な増加が予想される場合、容量を追加する必要がある場所を決定する前に、アレイの全体的なパフォーマンスと各ストレージ階層のパフォーマンスを考慮する必要があります。

以下のセクションでは、ドライブのアップグレードを計画すべきか判断するためにいくつかの一般的な考慮事項に加えて表示できる、Performance Analyzerで利用可能ないくつかのKPI(主要パフォーマンス指標)について説明します。

システム

実行されるI/Oの総数、読み取り/書き込みのワークロードの組み合わせなど、アレイの全体的なアクティビティ レベルは、システム レベルから検討する必要があります。フロントエンド ワークロードとバックエンド ワークロードを区別するためにパフォーマンス メトリックを検討する必要があります。

Performance Analyzerで確認すべきパフォーマンス メトリックには、次のようなものがあります。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

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ホスト I/O/秒

• 読み取り%

• 書き込み%

ホスト MB/秒

BE I/O/秒

• BE 読み取り/秒

• BE 書き込み/秒

キャッシュの書き込み保留中%

書き込みの数が多い、または書き込みの割合が高いシステムでは、よりパフォーマンスの高い階層であるEFDおよびFCにドライブを追加することを検討する必要があります。FCがRAID 1として構成されている場合、この階層が拡張するのに最も適しています。

注:書き込み保留中のレベルが高いシステムは、アレイの使用可能な容量を大幅に増加させる一環として、追加のキャッシュをインストールする必要があります。

仮想プール階層

主にバックエンドにおいて、個々の階層のワークロードおよび動作も検討する必要があります。Performance Analyzerで確認すべきメトリックには次のものが含まれます。

BE リクエスト/秒

• BE 読み取り%

• BE 書き込み%

BE 平均応答時間

プールの総容量(GB)

プールの使用済み容量(GB)

注:階層に複数のプールが含まれている場合、これらのメトリックは、階層内の個々のプールごとに検討すべきです。

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ベスト プラクティスに関する考慮事項および推奨事項

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

拡張の恩恵を受ける可能性が最も高いのは、応答時間が長い、または使用済み容量の割合が高い階層です。上位の階層を拡張すると、より使用頻度の高いデータが上位にプロモートされるので、下位の階層のワークロードが軽減されることがあります。

バックエンド ダイレクタ

FAST VP向けのベスト プラクティスの推奨事項の1つは、VMAXストレージ アレイのバックエンドをバランスの取れた構成にすることです。その結果、同じようなワークロードが各DA(バックエンド ダイレクタ)に見られるのかどうかを判断するために、各DAのワークロードを検討する必要があります。そうしない場合、バランスを改善できるようにアップグレード計画にドライブを含める必要があります。

DAに関連するパフォーマンス メトリックには、次のようなものが含まれます。

IO/秒

• 読み取り%

• 書き込み%

% Busy

理想的には、上記の各メトリックについて、論理DAごとに同じようなワークロード プロファイルを持たせる必要があります。バランスの状態が悪い場合、DA上でバランスを良くするために、ドライブのアップグレードに正しい組み合わせのドライブを含める必要があります。

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評価結果

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

評価結果

仮想プロビジョニング環境向けのEMC Symmetrix VMAX FAST VPでは、アレイ内のパフォーマンス/容量が異なる階層間でデータを再配置するためのアクティブまたは非アクティブなアプリケーション データの識別が自動化されます。FAST VPはLUNおよびサブLUNレベルのワークロードをプロアクティブに監視して、高性能のドライブに移動した方がよいビジー データを特定します。また、FAST VPは現在のパフォーマンスに影響を与えずに大容量ドライブに移動できるビジーでないデータを特定します。このプロモート/デモート アクティビティは、シン ストレージ プールを介して複数のドライブ テクノロジー(RAID保護スキーム)とストレージ グループを関連づけるポリシーに基づきます。また、ストレージ グループ内に含まれるアプリケーションのパフォーマンス要件にも基づいています。このアクティビティでのデータ移動はビジネス継続性やデータ可用性に影響を与えずに、無停止で実行されます。

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付録 A:FAST VPの状態

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

付録A:FAST VPの状態

FASTコントローラについて報告される状態は5つあります。それは以下のとおりです。

有効: FAST VP のすべての機能が実行される。パフォーマンス

データ コレクション、パフォーマンス データ分析、データ移動要求生成、データ移動の実行。

無効: パフォーマンス データ コレクションのみが実行される。データ分析は実行されず、データ移動は実行される。

Disabling: FAST コントローラは Enabled からDisabled の状態に移行中です。

DisabledwithError: FAST コントローラは、内部エラーが原因で動作を停止。統計情報の収集と FAST VP パフォーマンス データの移動は実行が継続され、FAST VP コンプライアンス移動は実行されま

せん。

Degraded: FAST VP はその機能の一部またはすべてを実行できる。ただし、各機能を完全に実行することはできません。

Enabled状態

FASTコントローラの状態が照会され、状態が[Enabled]のときは、コントローラによって実行されている現在のアクティビティも表示されます。有効なアクティビティは以下のとおりです。

アイドル: FAST コントローラは現在アイドル状態。

RunningPlan:現在実行中のアクティブなデータ移動タスクがあり、階層間でシン デバイス データが移動中。

Degraded状態

FASTコントローラの状態が「Degraded」の場合にFAST状態が紹介されると、デグレード状態になっている原因を示すリーズン コードが表示されます。

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付録 A:FAST VPの状態

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

以下のリーズン コードがあります。

Invalid Swap/Performance time windows: 定義済みのタイム ウィンドウの少なくとも 1 つが無効。修正するには、各タイム ウィンドウを調べて、無効なタイム ウィンドウを削除または修正します。

Invalid device attributes: FAST ポリシー内で、1 個以上のストレージ グループの優先度が無効。修正するには、ストレージ グループが関連づけられている FAST ポリシー内の各ストレージ グループの優先度を調べます。無効な優先度はすべて有効な値に修正してくだ

さい。

Invalid FAST parameters: 1 個以上の FAST コントローラ構成設定が無効。修正するには、各構成設定を調べて、有効な値に設定し

ます。

Performance time window is not present or does not extend into the

future: デフォルトかユーザー定義かにかかわらず、パフォーマンス タイム ウィンドウが一切存在しないか、または存在するパフォーマンス タイム ウィンドウはすべて期限が切れている。修正するには、有効な includeパフォーマンス タイム ウィンドウを作成します。

FAST thin move time window is not present or does not extend into

the future: デフォルトかユーザー定義かにかかわらず、シン データ移動タイム ウィンドウが一切存在しないか、または存在するシン

データ移動タイム ウィンドウはすべて期限が切れている。修正するには、有効な includeシン データ移動タイム ウィンドウを作成し

ます。

FAST VP compliance movement failed: FAST VP コンプライアンスを実行する最後の試行が失敗。EMCカスタマー サービスまでご連絡ください。エラーの原因を調査させていただきます。コンプライアンス移動の今後の試行が正常に実行されれば、デグレード状態は解消されます。

FAST VP performance movement policy update failed: データ移動ポリシーを生成する最後の試行が失敗。EMCカスタマー サービスまでご連絡ください。調査させていただきます。移動ポリシーを生成する今後の試行が実行されれば、デグレード状態は解消されます。

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付録 A:FAST VPの状態

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

FAST VP is not licensed: FAST VPを含む権限ファイルが、Symmetrix

アレイにロードされていない。修正するには、適切な権限ファイルをEMCから取得し、Symmetrix アレイにロードします。

Statistics collection is failing for thin devices - No Performance

movement will happen: FAST VP の制御下にあるシン デバイスのパフォーマンス統計情報が収集されていない。EMCカスタマー サービスまでご連絡ください。調査させていただきます。統計情報を収集する今後の試行が正常に実行されれば、デグレード状態は解消されます。

Timed out attempting to communicate with the FAST controller: サービス プロセッサ上で動作している FAST コントローラが使用できないか、サービス プロセッサ自身が使用できない。EMCカスタマー サービスまでご連絡ください。調査させていただきます。

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付録 B:機能サポート

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

付録B:機能サポート

以下の表に、さまざまなFAST VP機能をサポートするために必要な最低Enginuityと管理インタフェース レベルを示します。

特徴 Enginuity プールを作成

FAST VP(ベース) 5875.135.91 Solutions Enabler V7.3

SMC 7.3

Unisphere for VMAX 1.0

プールごとのPRCの設定 5875.198.38 Solutions Enabler V7.3.1

SMC 7.3.1

Unisphere for VMAX 1.0

FASTポリシーによるVPの割り当て

5876.82.57 Solutions Enabler V7.4

Unisphere for VMAX 1.0

FAST VP SRDF調整 5876.82.57 Solutions Enabler V7.4

Unisphere for VMAX 1.0

マルチサイトSRDF用のFAST VP SRDF調整

5876.229.145 Solutions Enabler V7.6

Unisphere for VMAX 1.6

外部階層(FTS) 5876.82.57 Solutions Enabler V7.4

Unisphere for VMAX 1.0

ストレージ グループの再関連づけ

5876.82.57 Solutions Enabler V7.4

Unisphere for VMAX 1.0

CKDのFAST VP 5876.82.57 Solutions Enabler V 7.4

Unisphere for VMAX 1.0

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付録 B:機能サポート

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

IBM iのFAST VP 5876.82.57 Solutions Enabler V 7.4

Unisphere for VMAX 1.0

FAST VPデータ圧縮 5876.159.102 Solutions Enabler V7.5

Unisphere for VMAX 1.5

FAST VPポリシー内の4つの階層

5876.159.102 Solutions Enabler V 7.5

Unisphere for VMAX 1.5

ユーザー定義のFTS階層 5876.159.102 Solutions Enabler V7.5

Unisphere for VMAX 1.5

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付録C:ベスト プラクティスのクイック リファレンス

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

付録C:ベスト プラクティスのクイック リファレンス

以下に、FAST VP環境の実装計画に関して一般的に推奨されるベスト プラクティスへのクイック リファレンスを提供します。

ドキュメント化されたベスト プラクティスは、Enginuity 5876.229.145、Solutions

Enabler V7.6、Unisphere for VMAX 1.6で利用可能な機能に基づいています。

注:これらの推奨事項の詳細については、59ページの「ベスト プラクティスに関する考慮事項」を参照してください。

FAST VPの構成パラメータ

FAST VPには、その動作を制御する複数の構成パラメータが含まれています。この付録では、ベスト プラクティスの各推奨事項の簡単な要約を提供します。各推奨事項の詳細については、見出しをクリックしてください。そうすると、文書の適切なセクションにリダイレクトされます。

パフォーマンス タイム ウィンドウ

デフォルト パフォーマンス タイム ウィンドウを使用して、パフォーマンス メトリックを1日24時間、毎日収集します。

データ移動タイム ウィンドウ

パフォーマンス タイム ウィンドウがデータ コレクションを許可する期間と同じ期間、データ移動を許可するデータ移動ウィンドウを作成します。

ワークロード解析期間 (WAP)

ワークロード分析期間向けのベスト プラクティスとして推奨されるのは、1つのカレンダー週を対象とするようにパフォーマンスのタイム ウィンドウにWAPを一致させることです。

初期解析期間 (IAP)

FAST VPの初期導入時には、一般的な1週間のワークロード サイクルを確認できるように、最初の分析期間を168時間に設定します。この期間が過ぎた後で、この値は24時間に減らすことができます。

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付録C:ベスト プラクティスのクイック リファレンス

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

FAST VP再配置率 (FRR)

FAST VPの初期導入時は再配置率をより控えめな値(7または8など)に設定することから始めます。後日、FRRをよりアグレッシブなレベルに徐々に下げることができます。

プール リザーブ容量 (PRC)

バインドされたシン デバイスを持つ各プールでは、シン プールに対する最低の割り当て警告レベルに基づいてPRCを設定します。バインドされたシン デバイスを持たないプールでは、PRCを1パーセントに設定する

FASTポリシーによるVPの割り当て

FAST VPポリシーによるVP割り当てを有効にします。

FAST VP圧縮までの期間

FAST VP圧縮までの時間は、一般的な月次ワークロード サイクルを考慮して最低40日に設定するか、または3か月のサイクルを考慮して100日以上に設定する必要があります。

FAST VP圧縮率

FAST VPの初期導入時に、圧縮率をより控えめな値(7または8など)に設定することから始めます。後日、圧縮をよりアグレッシブな設定に上げることができます。

FAST VPデータ圧縮

FAST VP圧縮には、Symmetrix VMAXアレイ用に構成された最下位の階層(内部または外部)のみに対して圧縮を有効にすることを推奨します。

FAST VPポリシー構成

理想的なFAST VPポリシーは100%EFD、100%FC、100%SATAになります。理想的なポリシーであるにもかかわらず、運用上100/100/100ポリシーを導入するには適切でない場合があります。アレイ内の特定の階層に対するアクセスを制限するには、いくつかの理由があります。

FAST VP実装の適切なポリシーを決定する最適な方法は、FAST VPによって管理されるアプリケーション データのワークロード スキューを検証することです。これはTier Advisorなどのツールを使用して実施できます。

シン デバイスのバインド

推奨されるベスト プラクティスは、すべてのシン デバイスを、FC階層のプールにバインドすることです。

FAST VPポリシーによるVP割り当てを有効にします。

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付録C:ベスト プラクティスのクイック リファレンス

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

シン デバイスをFAST VP制御下でEFD階層にバインドすることはお勧めしません。

推奨されるベスト プラクティスでは、FAST VPで管理されるシン デバイスには事前割り当てしません。

RAID保護に関する考慮事項

EFDの場合、RAID 5(3+1)保護を選択します。

FCにはRAID 1保護を選択します。

SATAの場合、RAID 6(6+2)保護を選択します。

ドライブ構成

可能な限り、DA全体に対して物理ドライブを均等に分散します。できるだけI/Oロードを分散させるために、少数の大きなEFDを構成するよりも、多数の小さなEFDを構成します。

ストレージ グループ優先度

推奨されるベスト プラクティスでは、FAST VPポリシーに関連づけられたすべてのストレージ グループに対して、デフォルトの優先度である2を使用します。

SRDF

一般的なベスト プラクティスとして、特にリモートR2アレイも階層型ストレージ容量で構成されている場合は、FAST VPをR1デバイスおよびR2デバイスの両方で採用します。同様のFAST VP階層およびポリシーが各サイトで構成される必要があります。

SRDF R1デバイスが含まれるストレージ グループのFAST VP SRDF調整を有効にします。

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参考資料

EMC Symmetrix VMAX シリーズ アレイの FAST VP 実装のテクニカル ノート

参考資料

「EMC Solutions Enabler Symmetrix Array Controls CLI Product Guide」

「EMC Solutions Enabler Symmetrix Array Management CLI Product

Guide」

「EMC Solutions Enabler Symmetrix CLI Command Reference HTML

Help」

「EMC Solutions Enablerインストール ガイド」

EMC Symmetrix VMAX Series Product Guide

EMC VMAX シリーズ アレイの FAST VP(Fully Automated Storage

Tiering for Virtual Pools)の実装

「Best Practices for Fast, Simple Capacity Allocation with EMC

Symmetrix Virtual Provisioning Technical Note」

z/OS および仮想プロビジョニングのベスト プラクティス

「Design and Implementation Best Practices for EMC Symmetrix

Federated Tiered Storage (FTS) Technical Note」

「EMC Symmetrix仮想 LUNによる無停止での階層化に関するベスト

プラクティスのテクニカル ノート」

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