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根系調査法 v1.3 Ver.1.0 1998.7 Ver.1.2 2000.6 Ver.1.3 2003.1 長野県中信農業試験場 村上敏文

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根系調査法 v1.3

Ver.1.0 1998.7 Ver.1.2 2000.6 Ver.1.3 2003.1

長野県中信農業試験場

村上敏文

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根系調査法 長野県中信農業試験場 村上敏文

ようこそ根の世界へ!ご存じのとおり根は養水分吸収を行う重要な器官です。しかし土の中に

あるため簡単には見えず、その研究はなかなか進んでいません。根をとらえる最も基本的な指標

としては、重さや長さなどがあります。しかし、それらを得るには今のところ土を掘って、根を

丹念に回収するほかなく、たいへんな労力と時間がかかります。根気、根性、土根性とはよく言

ったものです。

さてこのマニュアルは、運悪く根の分布を調べるはめになった人々のために、できるだけ少な

い労力で根を回収し、重さ、長さを測定する方法を紹介するものです。既存の方法と異なる点と

しては、土壌を煮沸して迅速に根と土・ゴミを分離する点、交点法による根長測定において、格

子の部分のみ透明にした交点計数板(クロスカウンタープレート)を用い、測定時間を 30%短縮

したこと(当社比)、これらをすべて家庭用品を使って安価にできるようにしたことなどがあげ

られます。なお、この方法は灰色低地土、黒ボク土の2つの土壌において、水稲(大部分の根の

直径約 0.04mm)、コムギ(0.2mm)、レタス(0.2mm)、ハクサイ(0.1mm)、ソバ(0.08mm)で

使用できることを確認しています。下図は作業の流れ図です。手順は、大きく土壌採取法、根の

土からの分離法、根重・根長測定法の 3つに分かれています。これからこの順で、詳しく説明し

ます。また、根の成分分析、根のデータ処理についても簡単に紹介します。

作業の流れ

はじめに

土壌サンプル採取

土壌の電子レンジによる煮沸

水洗による根の分離

ゴミの除去

冷蔵保存 5℃

冷凍保存 -20℃

遠心脱水

一部根長測定用に分取

染 色

メッシュ上で分散

交点計数板で根長測定

残りは60℃で2

(無機成分分析

根乾物重測定

根新鮮重測定

↓ ↓

↓ ↓

↓↓

①土壌採取

②根-

土分離

③根重根長測定

土壌サンプル採取

土壌の電子レンジによる煮沸

水洗による根の分離

ゴミの除去

冷蔵保存 5℃

冷凍保存 -20℃

遠心脱水

一部根長測定用に分取

染 色

メッシュ上で分散

交点計数板で根長測定

残りは60℃で2

(無機成分分析

根乾物重測定

根新鮮重測定

↓ ↓

↓ ↓

↓↓

①土壌採取

②根-

土分離

③根重根長測定

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根の回収で一番問題となるのは、前作物の根の混

入である。特に水田の場合、水を張るので根の分解

はなかなか進まない。従って、根を調査する水田に

ついては、何年か休耕して根を分解しておく、ある

いは、無作付け区を設けてその根量を差し引く(作

付け区と同程度に根が分解される保証はない)等の

処置が必要になる。

畑の場合も同様な問題はある。しかし、水田に比

べて根の分解は早いので、1 年以上休耕した畑を使

えば前作物の根の混入は少なく、問題はない。

(1)水 田

用意するもの

(1)ステンレスまたは鉄製の枠(1 株占有面積分

用:縦 15×横 30×深さ 20cm)または、コアサン

プラー

(2)スコップ

(3)ビニール袋(25cm×30cm厚さ 0.04mm程度の

もの、それ以下の厚さでは破れることがある)

(4)ものさし

方 法

(1)平均的生育を示す株を選び、枠をハンマーで

打ち込む(図 1)。

(2)枠の外の土壌を少し掘り、枠を掘り上げる(図

2)。

(3)枠をはずし、土塊を適当な大きさに分割し、

ビニール袋に入れ、5℃で保存(図 3)。

(4)コアサンプラーの場合は、適当な位置へ打ち

込み(株際、株間など)、土壌を採取し、ビニ

ール袋へ入れて保存。

根堀りに王道なし

図 1 ステンレス枠を打ち込んだところ

図 2 ブロックを取り出したところ。穴は

下のコアサンプラーで採取した部分

図 3 水田用コアサンプラー

1.土壌試料採取法

わしもこんな

ことしなきゃ

いけないの?

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15

方 法

(1)土壌採取位置を決める。図 5は株が分かれて

いる作物で、占有面積の 1/4 を採取する例であ

る。得られたデータを株当りの値にするには、

単純に 4 倍する(全ての 1/4 の根張りは同じと

仮定)。土壌ブロックには、株の位置を起点に

した番号をつけ区別する。

(2)平均的な生育をする 2株を選ぶ。同じ畦で適

当に離れた 2 株を選ぶと、その間に 1 カ所穴を

掘るだけですむので作業が効率的になる。1/4採

取の場合、北西面と南東面または、北東・南西

面の組み合わせで土を取る。

図5 占有面

積の 1/4を採

取する例

図 4 畑土壌採取セット

用意するもの(図 4)

(1)ものさし(2)スコップ(3)包丁(刃渡りができるだけ長いもの)(4)お好み焼き

用ヘラ(5)かなづち(6)移植ごて(7)黒マジック(8)100mlの採土円筒(9)ビニール

テープ(10)採土器(11)採土補助器(12)包丁洗い用水入れ(13)かご(14)ステンレス板、

A4サイズぐらいで厚さ 2-3mm 数枚。長辺をグラインダーで削って刃をつけておくと良い。

(15)ビニール袋(25cm×30cm厚さ 0.04mm程度のもの)(16)山中式土壌硬度計(17)バック

ホー(深い穴の時)

(2)畑

45

20

10

30

40

9 180

(cm)

2516.6

8.30

NW

SE50

N

22.545

20

10

30

40

9 180

(cm)

2516.6

8.30

NW

SE50

N

22.5

12

34 5

67

8

9

10 1112

13

14 1516

12

34 5

67

8

9

10 1112

13

14 1516

17

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(3)図6はうね間隔 30cm でドリル播された作物

の採取例である。

(4)地上部を地際で刈り取り、新鮮重を測定する。

必要なら乾燥して分析に供する。

(5)サンプリングする面積分を残し、まわりの土

を掘る(図 7)。掘る深さは、植物の生育、労力

に応じて変える。植物が小さく、根が少ないと

きは、1L程度のコアで土を採っても良い。なお、

小型のコアサンプラーの場合、根がぶつ切れに

なり、後の回収作業に時間がかかる。

(6)ステンレスの板を打ち込んで土層を切り取る

(図 8)。

(7)必要であればさらに包丁などで分割し、ビニ

ール袋へいれる。土塊の大きさは、後の根の洗

浄を考慮して最大 9cm 角(約 800g)ぐらいにす

る。(図 9)。

(8)100mL採土コアで深さ 10cmごとに土を採取し、

重さを計る。(土重を体積に換算するため)

(9)山中式土壌硬度計で深さ 10cm ごとに土の硬

さを測定する(P13注1)。

(10)サンプルは、5℃以下で保存する。(5ヶ月の

保存で根に損傷はみられなかった) 図 9 土壌ブロックを包丁で分割

図 8ステンレス板を打ち込み、土層を切

り取る

図 7 土壌採取する面積分を残して掘る

0

20

10

30

40

10 20 30

1020

30

0

cm

**

N

0

20

10

30

40

10 20 30

1020

30

0

cm

**

N

図6 ドリル

播きの場合

の採取例

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方 法

(1)土壌サンプル重を測定する。

(2)サンプルの入ったビニール袋に熱湯を注ぎ良

く撹拌する(土 1000gに対し湯 300ccぐらい)。

土が硬いときはあらかじめ金槌などで土を細か

くしておく(図 11)。

図 11 土壌に熱湯を注ぐ

2.根の土壌からの分離

これまで、根を回収するのには、土を水道水で洗い流すのが普通であった。しかしその方法では、

細断された根などは流されてしまい正確なデータは得られない。小麦の例では最大で全根長の

40%が損失するとの見積もりもある(P13注2)。そこで、以下のような煮沸法を開発した

用意するもの(図 10)

(1)家庭用電子レンジ(2)直径 30cm のステンレス製ざるに網の目の大きさ約 0.2mm の布製メ

ッシュ(P13の注 3。以下メッシュという)を緩く張ったもの 2個(1kgサンプル用)(3)深型あ

みかご(30×22×10cm)(4)浅型バット(30×25×5cm)1 枚。大サンプルの時は 50×35×10cm

程度の大きなものを使用。(5)直径 20cmのプラスチック製ボウル(6)直径約 20cm、目の大き

さ 1.5mm~2mm の金属製のザル 1 個(7)直径 15cm 程度の刺繍用の丸枠にメッシュを張ったもの

(200gサンプル用)2個(8)ビニール袋(25cm×30cm厚さ 0.04mm程度のもの)(9)チャック

付きのポリエチレンバッグ(70×115mm)(10)直径 15cmのシャーレ(11)直径 10cmの蒸発皿(12)

ピンセット(13)直径 10cmのシャーレ(14)茶こし(目の細かいもの)(15)冷蔵庫

図 10 根洗

い道具一式

12

3

45 6

7

8

9 1011

1213 14

12

3

45 6

7

8

9 1011

1213 14

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(3)それを電子レンジで沸騰するまで加熱する

(図 12)。1kgの土壌に 300ml の湯を入れたサ

ンプルを 500Wのレンジで 3個同時に加熱する場

合で 12分。煮沸によって冷凍保存されて硬くな

った粘土質土壌も柔らかくなり、根が分離でき

る。

(4)ポタージュ状になった土を冷やしてから、メ

ッシュに注ぐ(図 13)

(5)水道水で細かい泥を流し去る(図 14)。

(6)メッシュ上の根、残渣をバットに移し、水を

7 分目まで満たし、良く撹拌する(図 15)。な

お、1回に入れる土の適量はバットに土が薄く

広がるぐらいの量である。

図 12 電子レンジで煮沸

図 14 細かい泥を洗い流す

図 15 メッシュ上の根をバットに空ける

ころ

図 13 土壌スープをメッシュに注ぐ

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(7)根を含む上澄みをメッシュに注ぐ(図 16)。

半分注いだところでもう一度バットを揺らして

撹拌し、残りを注ぐ。このとき多少の残滓、泥

がメッシュに入っても構わない。なお土壌中に

残る根はほとんどどない。

(8)メッシュ上の根、ゴミ(未分解有機物、前作

の根等)をボウルに移す。

水を 8 分目まで入れ、棒または水道の水流を

利用して水を回転させる(図 17)。この操作に

よって、残渣がボウル中心の下方へ溜まり、根

とゴミの分離が容易になる(P14注 4)。下に沈

むのは、煮沸により空気が追い出されるため。

(9)水の回転が止まる寸前にボウルを静かに傾け、

ゴミの混入を避けながら上層に浮遊している根

をボウルの上に重ねたザルに入れる(図 18)。

(10)ボウル内でザルを上下前後によく振とうし、

ザル上に長い根と大型ゴミ(大画分)を残し、

ボウルに短い根と細かいゴミ(小画分)を集め

る、大画分はザルの真ん中に寄せて回収する(図

19)。

図 16 上澄みをメッシュに注ぐ

図 17 棒で水をを回転させる。

図 18 浮遊している根を回収する

図 19 ザル上に長い根を集める

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(11)小画分は茶こしを使って回収する(図 20)。

(12)回収した根は、サンプルの入っていたビニー

ル袋に入れ、直ちに冷凍保存する。一度煮沸し

た根は 5℃程度では腐敗するので-20 度以下で

冷凍する。手順 3から 9までに要する時間は 1kg

のサンプル 1個当たり約 4分である。

(13)冷凍保存した根を解凍し、ゴミの除去を行う。

大画分については大型のシャーレに水を張って

そこに根をひろげ、ピンセットでゴミを拾い出

して捨てる(図 21)。小画分については、椀状

の容器に入れ、上で述べたのと同様に水を回転

させ根を回収する。

(14)なお、株際の太い根や他の根より明らかに太

い根は、それに付いている側根をハサミで切り

離した後、マップメータで長さを測る(図 22)。

それらは太根として、細根とは区別して、重さ

などを計測する。

(15)ゴミを除去した根はチャック付きの小型ビニ

ール袋に入れ、再び冷凍保存する。

図 21 あまり根を詰めない方がいい。

図 20 短い根を茶こしで集める

図 22 マップメータで太根長を測定

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図 23 根重・根長測定セット一式

用意するもの(図 23)

(1)浅型バット(30×25×5cm) 1 枚(2)小型網かご(30×22×5cm)10 枚以上(3)中型

網かご(35×25×6.5cm)。紙ポットを切って作成した仕切(1枠 50×25mm)を入れたもの 3-4

枚(4)中型バット(40cm×30cm×5cm)1 枚 (5)メッシュ(40×30cm)20 枚程度(6)マ

ジック 1 本(7)ピンセット(8)カウンター(9)染色液、次のどちらか一つ。①ダイロン

黒染色液:500mlの熱湯にダイロン 1缶を溶かし、食塩を大さじ 1杯入れよく攪拌。②メチレン

ブルー2%液:90%エタノール 100mlにメチレンブルーを 2g溶かしたもの(P14注 5)。(10)50ml

遠沈管。口にメッシュを緩く張って輪ゴムで固定する。白色プラ板(45×30cm)1 枚(11)キル

ビメーター(12)スポイト(13)ハサミ(14)1.5mL 小型遠心チューブ サンプル数分(15)交

点計数板 1枚(16)乾燥機(17)遠心分離機(18)電子天秤(19)遠心チューブ立て

3.根重、根長測定

根長測定法には様々な種類があり、それぞれ一長一短がある。画像処理法は正確であるが、試料の

前処理に時間がかかる。ルートスキャナー法は、時間がかからないが、高額(300万円)で 0.1mm以

下の直径の根は測定できない。交点法は安価で正確であるが、時間と労力がかかる。ここでは時間短

縮ができるように改良した交点法を紹介する。

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作り方:

(1)210×296×1mm の透明の塩ビ板に、2cm 間隔

の格子を書いた紙を貼る。

(2)格子に沿って幅 1mmに切ったメンディングテ

ープを貼る(図 24、図 25)。このときテープを

板によく圧着させないと、隙間からラッカーが

にじんできれいな仕上がりとならない。特にテ

ープが交差する部分はすきまができやすいので、

よく爪などでおさえる。

(3)油性ラッカーをスプレーする(図 26)。色は、

白が普通。(写真は半透明のものを作っている

ところ。これは、根が全部みえてしまい、あま

りよくなかった)

(4)乾燥後、テープをはがして出来上がり(図 27)。

図 27 テープを剥いで出来上がり

図 25 テープを格子状に貼る

図 24 テープを 1mm幅に切る

(参考)交点計数板の作り方

図 26 ラッカーをスプレーする

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方 法

(1)冷凍保存した根を解凍する。

(2)50mlの遠沈管に張ったメッシュに、根を 2cm

程度に切って入れ(図 28)、2000rpm で 1 分間

遠心し、根表面の水分を取り除く(図 29)。(P14

注 6)。

(3)手早く根重を測定する(水蒸発を回避)。

(4)サンプルの 1 部を1-2個分取して秤量し、

小型の遠心チューブに入れてフタをする(P15注

7)。レタス根で 0.05g、ハクサイ根で 0.03g 程

度が適当(25×30cm の大きさに分散させた時、

交点法による交点数が 200-300 ぐらいとなりち

ょうど良い)。

(5)チューブをチューブ立てにさし、根長測定ま

で、5℃で保存する。

根長測定は全サンプルについて行う必要はな

い。例えば 2 連のうち片方で根長を測定しその

データを他に使っても大きな差は出ない(P15注

8)。

(6)ダイロン黒染色液またはメチレンブルーをス

ポイトで 4~5滴、チューブ内の根にたらし、染

色する(図 30)。このとき、ピンセットで根を

上下させ、液がよく根全体に染みるようにする。

ダイロンの場合は色を固定するため、チューブ

の入った容器ごと乾熱器に入れ、80℃で 20分間

加熱する。

(7)水を張ったバットに小型網かご(30×22×

5cm)を入れ、その上にメッシュを置く。水深は

3cmぐらい(図 31)。

図 28 遠沈管に根を切って入れる

図 29 遠心分離機にセット

図 30 染色液をチューブに滴下

図 31 水を張ったバットにカゴを入れる

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(8)染色された根をチューブから出し、余分の染

色液を洗ビンで洗い流す。

(9)根をハサミで 7~10mm程度に切断する。

(10)水中のメッシュ上でピンセットなどを使いラ

ンダムに分散させる(図 32)。

(11)カゴごとゆっくり水から引き上げる。10サン

プルぐらいまとめてやる(図 33)。

(12)メッシュを白いプラ板の上に広げる(図 34)。

(13)根を全て覆うようにして交点計数板(クロス

カウンター)を置き、交点を数取り器で数える

(図 35)(P15注 9)。

以上、1kgの土壌 1個あたり、煮沸から根長測定

まで、約 16分かかる。

図 33 カゴを水から上げたところ

図 34 メッシュを広げたところ

図 35 交点が黒点となって現れる

図 32 根を分散させる

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(14)数え方のルールは、Tennantの方法に従う(図

36)(文献 1,2,3,5,8)。

(15)カウント終了後、計数板を水を入れた中型バ

ットに浮かべて軽くたたき、付着した根を落と

して次のサンプルに備える。

(16)根長用サンプルを取った残りの根は、乾物重

の測定に使用する。紙の仕切を入れた中型網カ

ゴに、ポリエチレンバッグのチャックを開けて

並べる。カゴごと乾燥機に入れ 60℃で 2 日間置

き、秤量する。このときサンプルが吸湿しない

よう、手早く行う。

注1 土の硬さは根の伸長に大きな影響を与える。

山中式土壌硬度計の目盛りで 20-22mm 以上の硬

度では、根の伸長が著しく阻害される。

注 2 左図は、小麦の試験で、水道での水洗によっ

て損失する短い根を推定した例(文献 7)。これ

は、2mm のふるいを通過した根を短根(長さ 5mm

以下)、残った根を長根として長さを計測したも

の。短根の長さは、最大で全体の 40%を占めて

おり、これが洗い流される可能性がある。

注 3 メッシュは光洋合繊加工のテトロンシーア

No1126、東レテトロン C-119 スカイラーク等。

これは衣料用の布で価格が安い。この目のサイ

ズでは水稲の細根が少し漏れるが、あまり目が

細かくなると粘土分を洗い流しにくくなるので

このサイズが適当である。目の大きさは 0.2mm

と記載しているが、実際の目の様子は左の図の

ようになっている。縦は 0.2mm 程度であり、横

は、0.1~0.3mmとなっている。平均で 0.2mmぐ

らいとなる。

メッシュの目の実態

69-98 99-109 267-297 μm

198 ~ 228

図 36 交点のカウントのしかた。

根と格子が交わったら1カウント、根

が格子と平行になるときは、2カウントと

数える。さらに計数板独自のルールとし

て「格子の幅の中央に達しない根を数え

ない」を付け加える。これにより測定精

度があがる。

0

100

200

300

400

500

600

NPK -N -K -NPK -P

根長

m/6L土

処理区

短根

長根

0

100

200

300

400

500

600

NPK -N -K -NPK -P

根長

m/6L土

処理区

短根

長根

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注 4 煮沸/回転法と水洗法の比較

左が煮沸/回転法によって回収された根。ゴミが

よく取れて明るい色になっている。下の表に示すよ

うにこの処理によって、ゴミ混入率が 1/5 になり、

ゴミ除去時間が 1/3以下になる(文献 5,8)。

注5 ダイロンは家庭用染料で安く、根が黒く濃く

染まるので稲、ハクサイなど細根向き。但し、

80℃で加熱しないと色が固定しない。メッシュ

はごく薄く染めるが実用上問題はない。メチレ

ンブルーは、根を藍色に染めるので、小麦、レ

タスなど少し太めの根向き。液を滴下するとす

ぐ染まり、加熱の必要がない。但し、プラスチ

ック類を薄く染めるので注意。メッシュは染め

ない。

注6 この回転速度と時間で脱水すると、根をさわ

っても水が手につかない。遠心分離器を使うの

は、同じ条件で水分を除去するため。これがな

い場合は、根をメッシュで包んで洗濯機の脱水

装置で 1~2分脱水するか、紙タオルで水を除去

する。

左: 煮沸&回転 右: 水洗(レタス)

図 ダイロン

根の回収法がレタスの根のゴミ除去効率におよぼす影響†‡ 根回収法 根新鮮重 ゴミ新鮮重 ゴミ混入率¶ ゴミ除去時間 根長

(g 試料-1) (g 試料-1) (分:秒) (m 試料-1)

水洗 0.670 0.364 a 0.35 a 10:53 a 36.0

煮沸 0.575 0.126 b 0.18 b 7:22 a 28.2

煮沸+回転 0.704 0.051 b 0.07 b 3:07 b 33.7

† 結果は3連の平均値で示す。各項目の数値の後ろのアルファベットが同じ場合は、5%水準

で差が無いことを意味する(LSDによる)。アルファベットを付していないのは、分散分析で有

意差が認められなかったもの。

‡ 使用した根試料は大画分及び小画分の2つを含んでいる。

¶ (ゴミ新鮮重)/(ゴミ新鮮重 + 根新鮮重)

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注7 根長測定用の分取サンプル数は、根の均一度

と希望する精度によって変わる。通常は、1土

壌サンプルあたり 1個で十分である。

注8 根長/根重の何点かの平均値と根重データで

根長を推定しても、問題はない。その場合、表

層の株に近い部分は根が太いのでそこは別にし、

また、太い根をきちんと取り除いておく。

注9 下の表に示すように、計数板により、計数時

間は 30%短縮される。2cm の格子の場合、変動

計数を 5%以下にするには、2m 以上のサンプル

が必要である。あまり根量が多いと交点が多く

なり分散に時間がかかるので、上限は 4mぐらい

である。これはカウント数でいうと、127-254

の間になる(文献 5,8)。

表 交点計数板の有無による、標準試料の長さの推定値、変動係数、測定時間の比

較 † (格子の大きさ2×2cm).

測定材料 実長 推定長 変動係数 計数時間

(cm) (cm) (%) (分:秒)

板有り 板無し 板有り 板無し 板有り 板無し

ナイロン糸 100 99 103 5.7 4.0 0:39 0:55

200 196 199 1.8 5.6 0:56 1:18

300 300 303 2.3 2.8 1:10 2:00

400 402 404 4.0 3.9 1:37 2:17

500 504 492 2.4 3.5 2:02 2:48

600 606 598 2.3 3.4 2:21 3:21

700 700 693 1.6 3.5 2:41 3:46

レタス根‡ 200 207 209 3.8 3.9 1:00 1:24

300 304 311 4.9 3.4 1:18 1:51

平均値(指数)# 100 100 85 100 70 100

t-検定@ N.S. N.S. **

†結果は、4連の平均値で示す。

#板無し法の値を100とした指数

@ N.S.は有意差なし、**は1%水準で有意

‡ 実長は、物差しによる直接測定

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4.根の成分

煮沸処理や水洗処理が根の無機成分含量におよぼす影響を以下に示す。窒素以外は、水洗、煮

沸によって成分含量が減少または増加することがわかった。窒素以外の成分含量の測定には、水

を使わないで集めた根を用いる必要がある。なお、水洗処理でカルシウム含量が増加する理由は

不明である。詳しくは文献 5,8を参照。

図 根の回収法がその成分含量に及ぼす影響。

根手取は根を手でよりわけて土から回収するものでこれを標準とする。根水洗はビニール

袋に水を注ぎ土壌と攪拌し、根を回収。根煮沸は本書で紹介した煮沸による回収法。レタス

は、マイケル(定植後 46日)、ハクサイはメゴヒメ(定植後 31日)を使用。分析は、回収

した根を乾燥粉砕し、硫酸-過酸化水素で熱分解した後、窒素は水蒸気蒸留法、燐酸はバナ

ドモリブデン酸法、カリとカルシウムは原子吸光法で行った。

各作物内の棒グラフで、同一アルファベットが付されているのは、5%水準で有意差がない

ことを意味する。

レタス、ハクサイの成分含量(g kg-1)

shootno water

waterboil

shootno water

waterboil

0 10 20 30 40 50

shootno water

waterboil

shootno water

waterboil

0 5 10 15 20 25

地上部

根手取

根水洗

根煮沸

地上部

根手取

根水洗

根煮沸

0 10 20 30 40 50

地上部

根手取

根水洗

根煮沸

地上部

根手取

根水洗

根煮沸

0 2 4 6 8 10

レタス

ハクサイ

ハクサイ

レタス

NN

CaCaPP

KK

Root Project

レタス:マイケル 46日、ハクサイ:メゴヒナ 31日

a b

b b

a b

bc c

a a

b c

a b

c d

a a

b b

a a

bc

a b

ab c

c b bc

c

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6.関連文献

1. 植物栄養実験法 1990 植物栄養実験法編集委員会編、41-42 博友社

2. 根の事典 1998 根の研究方法 根の事典編集委員会編 371-418 朝倉書店

3. Tennant, D. 1975 A test of a modified line intersect method of estimating root length. J. Ecol., 63, 995-1001

4. 村上敏文・米山忠克 1988 画像解析を利用した根長の測定 NARC研究速報、5, 33 ー 37

5. 村上敏文・山田和義・吉田清志 1998 簡便迅速なレタス・ハクサイの根-土分離法および 根

長測定法 長野県中信農業試験場報告 15, 95-105

6. Murakami, T. and Yoneyama,T. 1988 Comparison of root length of two rice (Oryza sativa L.) varieties by using an Image Analyzer Plant Soil, 105, 287-289

7. Murakami, T., Terada, Y., Yazaki, Z. and Yoneyama, T. 1990 Fractionation method for the determination of the root length of field-grown wheat. Soil Sci. Plant Nutr., 36, 683-687

8. Murakami T, Yamada K, and Yoshida S 1999 Improved method for easy and rapid determination of root length of vegetables. Soil Sci. Plant Nutr., 45, 471-478

9. Murakami, T, Yamada K, and Yoshida S 2002 Root distribution of field grown crisphead lettuce (Lactuca sativa L.) under different fertilizer and mulch treatment. Soil Sci. Plant Nutr., 48, 347-355

10. Murakami T, Yamada K, and Yoshida S 2002 Root distribution of field grown Chinese cabbage (Brassica campestris L.) under different fertilizer treatment. Soil Sci. Plant Nutr., 48, 393 -400

11. Murakami, T, Murayama, S, Uchitsu, M and Yoshida, S 2002 Root length and distribution of field-grown buckwheat (Fagopyrum esculentum Moench) Soil Sci. Plant Nutr., 48, 609 -613

5.根のデータ処理

土壌ブロック 1個について、入力するデータは、土重、土重/容積、根重、根乾物率、分取サン

プル重、交点数などであり、それらのデータをもとに、根長密度(根長/土体積)、比根長(根長

/根乾物重)などを計算する。土壌ブロックあたりの根長は、比根長×根乾物重で計算する。デー

タシート(エクセル)は、調査時期やデータ数にかかわらず、同じフォーマットのものを用いる

とよい。こうすると、エクセルのピボットテーブル機能を使うことができ、異なるシート間の同

じアイテム(例えば、表層 10cmの根重)を、簡単に比較しグラフ化することができる。

データシート例

土深さ

土重 土体積 根新鮮重 根乾物重 根乾物率 分取根新鮮重

残根乾物重

交点数 分取根長 土ブ ロック根長

根長密度 根長/根乾物重比

cm g cm3 g g % g g 0 cm cm cm/cm3 cm/g10 646. 0 658. 5 0. 0000 0. 0000 0. 0 0. 0000 0. 0000 0 0. 0 0 0 010 646. 0 658. 5 0. 4708 0. 1010 21. 5 0. 0482 0. 0907 285 447. 7 4373. 3 6. 64 4328110 319. 0 325. 2 0. 4551 0. 1110 24. 4 0. 0362 0. 1022 201 315. 8 3969. 8 12. 21 3575410 494. 0 503. 6 0. 2977 0. 0682 22. 9 0. 0323 0. 0608 210 329. 9 3040. 7 6. 04 4458510 930. 0 948. 0 0. 1683 0. 0340 20. 2 0. 0406 0. 0258 295 463. 4 1921. 1 2. 03 5649910 375. 0 382. 3 0. 4700 0. 1053 22. 4 0. 0408 0. 0962 318 499. 6 5754. 9 15. 05 5463010 1087. 0 1108. 1 0. 1950 0. 0420 21. 5 0. 0342 0. 0346 232 364. 5 2078. 1 1. 88 4952820 491. 0 500. 5 0. 2221 0. 0401 18. 0 0. 0359 0. 0336 256 402. 2 2488. 1 4. 97 6208120 862. 0 878. 7 0. 1763 0. 0358 20. 3 0. 0463 0. 0264 262 411. 6 1567. 3 1. 78 4377620 1089. 0 1110. 1 0. 0677 0. 0149 22. 0 0. 0332 0. 0076 232 364. 5 743. 2 0. 67 4983520 790. 0 805. 3 0. 2329 0. 0455 19. 6 0. 0462 0. 0365 252 395. 9 1995. 7 2. 48 4383120 921. 0 938. 8 0. 0715 0. 0163 22. 8 0. 0391 0. 0074 311 488. 6 893. 4 0. 95 5471120 904. 0 921. 5 0. 0905 0. 0182 20. 1 0. 0382 0. 0105 253 397. 5 941. 6 1. 02 5182620 810. 0 825. 7 0. 2161 0. 0443 20. 5 0. 0390 0. 0363 254 399. 0 2211. 1 2. 68 49918

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付 根-土分離、根長測定全体図